Black Cherry



空を見上げると、そこは忌々しいほど綺麗な夜空が広がっていた。
そうして、冴え冴えとした月の影。
自分の住まいと事務所を兼用している億ションの、屋上からそれを見ていた折原臨也は、
ちっ、と忌々しげに舌打った。
彼の体には、今はコートに隠れていて見えないが、無数の傷がついている。
それも、ただ喧嘩をして殴られた後、などという可愛らしいものではない。
鋭いナイフで付けられた痕や、内出血を起こした故の青痣だとか、一目見ただけでもわかる、
手首足首のみならず全身に縛られたような青痣。
折れる程に捻りあげられた関節や、漸く出血が止まっただけの傷から感じるズキズキとした痛みは、
彼が身体を動かすたびに彼を苛む程。
こんな時は、腹いせ、というわけでもないが、
事務仕事を任せている矢霧波江を半ば無理矢理呼びつけて我侭に付き合わせたり、
チャットで参加者たちを翻弄したりと楽しむのだが、
今日は珍しく波江は希望休(というより勝手に休むと宣言していた)を出していたから、
呼びつけたところで絶対に来ないだろうし、
チャットも今日は珍しく誰もいない。
けれど、このまま独りではいたくなかった。誰か、自分の相手をしてくれる人間を探して、臨也は己の携帯のアドレス帳を確認する。
あまり気乗りのしない名前を適当に流し見ていて、ふと、
指が止まる。
画面に表示されているのは、あの、彼にとって一番因縁のある男―――平和島静雄。
数秒その名前を見つめて、
今度は、逆ポケットに入れていたスマートフォンで終電時間を確認する。

新宿から池袋へ行く電車は―――、まだ出てるな。
口許だけで、ニヤリと笑み。



かくして、折原臨也は、満月の夜の下、池袋への道のりを軽い足取りで歩む。










・・・平和島静雄の家に辿りついたのは、それから1時間後、
時間は、ほとんど深夜1時を回った頃だった。
さすがに、深夜1時となると、池袋の街は眠っていて、外を歩いている者はほとんどいない。
そして、あの池袋最強の喧嘩人形と言われる彼もまた、
あたかも普通の人間であるかのように、自室で眠りについている時間だろう。
そう、あんな人間離れ≠オている男でさえ、だ。
忌々しい、と思いながらも、心の中はかなり浮かれ切っている。
今から、彼の部屋に忍び込み、夜這いをかけてやるのだから。
周囲に無頓着な彼の事、侵入者に気づくはずもないだろう。
そうして、無防備に晒されているであろう彼の肌を辿り、彼の一番敏感な箇所を刺激してやれば、一体どんな顔をしてくれるのだろう?
そう考えるだけで、臨也の身体の奥はどくどくと疼いてくる。
ああ、楽しい。
勿論、彼を道具にして遊ぶということは、それなりの危険も伴うものではあるが―――。
それでも、ヤクザ共、しかも幹部レベル相手ではなく、
組の下っ端の奴らに輪姦される、などという最低な状況よりはマシと言うものだ。

臨也は、微かな音を立てて静雄の部屋に忍び込んだ。
窓や扉をこじ開けて、などという手間の入ったことはしていない。
普通に、鍵を開けて入ってきただけだ。彼の鍵の合鍵を、彼に隠れて作ることぐらい、この青年にとっては朝飯前だ。
案の定、部屋の中は既に暗く、寝室からは、予想通り彼の寝息が聞こえてくる。

(まったく・・・相変わらず、寝相悪いよね、シズちゃん)

今は、初夏。本格的な暑さはこれからとはいえ、上半身のシャツをほとんど捲り上げ、
なだらかな腹を外気に晒しているのだ。
体力馬鹿の静雄なのだから風邪などひくわけもないだろうが、
それでも寒くないのだろうか?

こんな無防備な姿を晒す静雄を見下ろしながら、
臨也は一瞬、彼を殺したい衝動が持ち上がるのを感じていた。
今ならば。
彼が意識を失っている、この時ならば、彼の心臓を一突きすることができるかもしれない、と。
一瞬、懐から愛用のナイフの刃をギラつかせて、臨也はニヤリと笑う。
さて、どこから彼を喰い尽してあげよう?
下手にナイフを突き立てた所で、いつものように徒労に終わると嫌だから、
まずは丁寧に衣服を切り裂いていく。
下肢に纏わりついている布地を全て切り裂いてしまえば、
彼の大切な部分が目の前に晒される。ハハ、無様な格好だよね、シズちゃん?
軽く扱き上げると、微かな呻き声。だが、まだ静雄は完全に目が覚めたわけではないようだ。
そうなると、臨也の中で、更なる悪戯心が持ち上げる。
少しは使えるんじゃないか、と用意してきた鋼鉄製の手錠を彼の手首にかけ、ベッドヘッドに絡めてしまえば、
普通の人間ならば逃げ出すこともできない危機的な状況。
その時、静雄は微かに身を捩り、鼻にかかったような声を漏らし始めた。
さすがに、もう、目が覚めてきた頃だろうか?
構わず臨也は、静雄の下肢にある、まだ熱を孕んでいない彼自身を掌に包み込んだ。
アノ時は、信じられないほど質量を増す彼自身だが、今はまだ、臨也の掌でも収まるくらいの大きさでしかない。
真っ最中の、あの大きさを思い出して、舌打ちをしながらもゆっくりと扱いていけば、
案の定、すぐに反応を示してくる。
芯を持ち始めたそれの、先端を舌で舐め上げながら、カリの部分を口に含んでは舌で砲身を辿り、
ぐんぐんと大きさを増してくるそれの根元を両手で締め上げるようにしながら、
夢中になって彼自身にむしゃぶりつく。
それは、言うなれば、飢え≠ニでもいう感覚だろうか。
穢れた男共に輪姦された時の、無理矢理口内に突っ込まれたあの最低な気分とはまるで違う。
自らの意思で、男の昂ぶりを追い上げていく愉悦。
覚醒と眠りの狭間にいる静雄の口許が、時折鼻がかかったような甘い声音を漏らす度に、自分の興奮も増していく。

(やっばい・・・勃ってきたw)

もう、ここまで来てしまえば、静雄が起きてしまおうと構わない。
だから、臨也は男の両脚に乗り上げ、そうして再び熱を煽ろうと躊躇いもなく口内に受け入れる。
と同時に、片手で己の下肢もまさぐった。
窮屈そうに締めつけられているベルトを性急に緩めて、そうして己自身を扱き上げる。
ぐちゅぐちゅと簡単に溢れだす先走りを絡めて、激しく擦るだけで、
一気に追い詰められる下肢。そうして、口淫を施していたそれも、一気に熱を増して、含み切れない程の大きさになる。

と、突然、頭の上から、地獄の底から響いてくるような声が聞こえてきた。

「・・・・・・・・・・おい」
「なに?シズちゃん」
「手前・・・一体、なんの真似だコラァ!?」

同時に、ガチャガチャと金属が擦れる音。顔をあげると、両腕を無様に頭上に拘束され、
悔しげに睨みつける男の姿。ハハ、シズちゃんをこうしてるのってホント楽しいよ。
ま・・・問題は、あんな適当な拘束具じゃ、本気のシズちゃんを拘束することなんてこれっぽっちもできないわけだけど。。。
今まで、何度も強力な薬を盛ったり猛獣用の拘束具やスタンガンなど、
彼を壊すことだけを目的に使用してきた臨也だが、未だ、有効と思える方法には巡り合えていない彼である。
だから、決まって最終的に返り討ちに合うのは自分なのだが―――、
それでも臨也は、事あるごとに彼をからかいに来ては、彼の神経を逆撫でするのが趣味となっていた。

「別に、見ての通りだよ?シズちゃんはー、夜這いされたこともまったく気付かないまま、今現在こうして俺に寝込みを襲われてるってわけ。
 ていうか、不用心だよねぇ?窓とかあけっぱなしだし?」

夜風の侵入を許している寝室の窓を指さして、ニヤリと笑う。
無論、合鍵を持っているなどとは知られてはいけないから、敢えて嘘をついてみる。
だが、そんな嘘を見抜ける彼ではないから、
静雄は悔しげに顔を歪ませた。ふふ、シズちゃん、可愛いw

「ま、そう怒らないでよ。俺はさ、喉が渇いてただけなんだ。ちゃんとイかせてあげるから、大人しくしててよ。ね?」
「うるせぇ!誰が、テメェなんかに・・・っ!!」

反抗的な言葉を紡ぐ静雄に、お仕置きのように先端に歯を立ててキス。
静雄のそれは、普通の男のよりも数段丈夫に出来てるから、遠慮はいらない。それどころか、
そんな強い刺激のほうが、彼は感じるらしい。
先程よりもガチガチに上向いた砲身を、愛おしげに両手で包みこみ、溢れる蜜をすすっては、呑みこんでいく。
ふるりと腰が震えた。
ハハ、やっぱり寝起きのカラダは、欲望に忠実だよねぇ。

「っこ、殺してやる・・・」
「いいよ、でも、その前に・・・」
「っあ、・・・く、―――う・・・!」

両手で激しく擦り上げるのと同時に、部屋中に響くほど大きな音を立ててそれを吸い上げれば、
不本意ながらも臨也の愛撫に慣れた静雄の身体は、簡単に精を吐き出す瞬間にまで膨れ上がる。
快楽に気を取られている静雄は、残念ながらすぐに拘束具を破壊できなかった。
ベッドヘッドのパイプが、ぐにゃりとひん曲がった程度。

「っう。。。く!!!」
「イってよ、シズちゃん・・・早く、ほら。」
「ち、くしょ・・・!!!」

悔しげに呻くが、追い詰められる下肢の熱には逆らえない。
激しい衝動の波に、静雄は息を詰めて精を吐きだした。それも、大嫌いな男の口の中で!
静雄は、なおも下肢にむしゃぶりついたままの臨也を、刺すような形相で睨みつけた。
静雄のすべてを吸い尽してしまって、ゆっくりと顔をあげる臨也は、
ひどく卑猥で、そうして口の端から溢れる白濁がなんともいやらしい。再び、身体に熱が灯るのを、静雄は信じられずに顔を背けた。

「っ・・・」
「ん、美味しいよ、シズちゃん・・・ほら、シズちゃんにも、おすそわけv」
「っば・・・!!!」

上気し、熱に浮かされたような表情で近付く臨也に、静雄は恐怖すら覚えて逃げ出そうとした。
だが、力の抜けた今の状況で、両腕で抵抗することは不可能だ。と、なれば―――、

「っざ、けんな!!!」
「っッ―――・・・」

ゴン、と、尋常でない音がした。
と、思ったと同時に、頭上に広がる激痛。一瞬、視界が真っ暗に染まった。眩暈。身体すら支えきれずに、臨也は横倒れになった。
その間も、頭の中ではガンガンとひどい音と揺れが臨也を襲う。視界もなかなか戻ってこない。
臨也は、このまま意識を失うのではと本気で思った。
それは、ただのヘッドバットだった。
しかも、後日静雄に聞いてみると、結構軽くやったつもりだったそうだ。
だが、勿論、鋼鉄で出来たハンマーかと思える程の静雄の頭と、臨也の至って普通の―――、いや、どちらかといえば華奢な部類に入る男の、
その小さな頭では、少し間違えれば完璧に脳漿をぶちまけさせてしまうだろう。
さすがに、相手がノミ蟲であろうと、殺人はしたくない静雄である。
当たり前だ。ノミ蟲ごときのためにムショ入りなど、まっぴら御免だ。
話は戻るが―――、そんな気を使った(つもりの)攻撃は、
けれど、静雄の予想に反して、臨也はほとんど意識を朦朧とさせたまま、静雄の身体に倒れ込んだ。
一応意識は失っていないようだったが―――、しばらくは、まともに動けないだろう。
へっ、ざまぁ。
激痛に呻く男にニヤリと笑い、そうして一気に両手首の拘束具を引き千切る。多少両手首は赤くなっていたが、
もちろん、静雄の前では、どんな無機物もネジ曲がり、無様な格好を晒してしまう。

「おい、ノミ蟲・・・覚悟はできてんだろうなぁ?!」
「う・・・かはっ・・・シズちゃ、大嫌い!」

ハハ、と笑ってそう吐き捨てる臨也に、静雄の嗜虐心がむくむくと持ち上がった。
臨也の着ていた服の喉元を締め上げ、そうして体勢を入れ替える。
ベッドにうつ伏せに押し付けて、重なる男の逞しい身体。そうして、尻を剥かれ、無遠慮に指を突っ込まれる、既に腫れ上がった後孔。
引き裂かれるような痛みは、ただの乱暴な愛撫によるものではない。
つい先ほど、何人もの男に輪姦された故の傷だ。だが、もちろん、そんなものに気づく静雄ではないし、
気付かれたくもなかった。
いつも通り、乱暴に抱いてくれればそれでいい。
ヘタクソな優しさなんて、反吐がでる。
そもそも、こんな男のどこがいいのかなんて、考えてみたってちっとも出てこないだろう。
人間という種≠ェ好きな臨也にとって、人間から逸脱した存在である平和島静雄≠ヘいつだって大嫌いで、敵で。
愛している?冗談じゃない。
愛されたくもない。欲しいのは、ただ、時折心にぽっかりと風穴を開ける得体の知れない空虚感を埋めてくれるほどの、
狂おしい程に激しい快楽。
この、憎らしい男に求めているのは、それだけだ。
だから、シズちゃんは、いつだって俺を最高に悦ばせてくれなきゃ。

長い指が、ぐりぐりと乱暴に己の内部を掻き回していくのを感じながら、
臨也は瞳を閉じた。と、不意に鼻先に感じる甘い香り。熟れた桃のようなほのかな残り香が、
静雄の身体から発していることに気づいた。
そういえば、抱き方だっていつもと違う。いつもだったら、臨也の身体になど触りたくもない、とばかりに
性急に下肢を繋げるだけで、こうして背後から腕に収められることなんて、なかったのに。

・・・シズちゃん、まさか、

「・・・最近、女の子と寝たでしょ」
「!っ、・・・てめーには関係ねーだろーが!!」

確かに、静雄の言葉は正しい。
静雄は、臨也にとってただの忌々しい敵であって、決して恋人などではないし、
静雄がどんな女と付き合おうがどうでもいい話だ。
けれど―――、
それでも、臨也の中で、得体の知れないどす黒い感情が芽生えるのを感じていた。
彼を罵る言葉はいくらでも頭に浮かんだが、臨也は敢えて言葉にせず、
快楽に震える身体を無理矢理捻じ曲げ、そうして上から己を睨みつけてくる静雄と視線を絡めた。
静雄は、既に興奮を隠せない表情で、ハァハァと息をついたまま、
それでも忌々しげな表情を崩さない。ハハ、最高だよね、君。
思わず、臨也は両腕を伸ばす。
渇いた唇を舌で濡らし、そうして静雄の首にしがみつく。キスが絡んだ。間近で静雄の眉間が更に皺を刻んだが、
臨也は気にしない。自ら舌を絡ませ、そうして体液を貪る。
そうしている間に、こちらもぐちゅぐちゅと濡れそぼった下肢が、もっと深い場所に欲しいと何度も収縮を繰り返す。
ハッ、と、静雄が嘲るように笑った。
それすらも身体の熱を疼かせる要素の一つでしかない。

「もっと、ちょうだい・・・シズちゃん」
「うるせー・・・」

くぽっと水の弾ける音と共に、一気に引き抜かれる指先。
唐突な空虚感に震える下肢は、もっと激しい熱を求めて収縮を繰り返す。
自ら腕を伸ばして、静雄の雄を辿ればこちらも十分に天を向いていて、
臨也は興奮に朦朧とした頭の中で、歓喜の声音をあげる。
その瞬間、ズキリと全身が痛みを訴えた。

「・・・っ―――」

なんで、今頃になって。
臨也は忌々しげに唇を噛み締めた。幸い、室内はそれほど明るくない。だから、本当は全身に刻まれている無数の傷に、
彼は気付かなかっただろう。
けれど、痛みは容赦なく臨也を苛んでくる。
静雄につけられた傷とはまた別の―――、汚らわしくて、洗っても洗っても洗い流せないような、
そんな忌々しい傷が。

「・・・ノミ蟲?」
「・・・犯してよ、シズちゃん。早く、」

両手で包みこんだ静雄のそれを、己の下肢に押し付ける。
まるで鋼鉄のように硬く、質量のあるそれに押し広げられる苦痛は、慣れた今でも尋常ではない。
けれど、そんなものは臨也にとって耐えがたいものではなかった。
笑みさえ浮かべて、その痛みを受け入れる。
じわり、じわりと身体の奥を侵していく感覚は、まるでスローモーション。一瞬一瞬が、すべて身体に刻み込まれていくような、
そんな充足感。

「っ・・・キツ・・・」
「あ、ぁ、んんっ・・・・・・!もっと、奥・・・っ!」
「は・・・ハハっ・・・上等だぜ。壊れても知らねえぞ、ド変態!」
「ん、うんっ・・・あ、あ!すご・・・っ!」

静雄の長いそれが、他の誰にも貫くことの出来ない最奥にまで到達する。
汗ばんだ肌がひどく密着する感触を楽しみながら、
臨也は止まらない喘ぎ声と共に、時折笑い声を混じらせた。
その、蔑んだような表情にチッと舌打ちをして、静雄もまた、ただただ己の快楽のために、
臨也の内部を犯していく。
悔しいが、彼の内部は、気を抜けばすぐに意識を持っていかれそうになるほど気持ちがよかった。
苦痛を伴うほどの激しい締め付けは、その場所を擦り上げれば擦り上げる程に卑猥に収縮を繰り返す。

「へっ・・・気持ちいいかよ、ノミ蟲」
「あ、うん・・・っ、サイコーだよ、シズちゃん・・・もっと、」
「ああ、俺も最高に気分がいいぜ。テメーのそんな無様で惨めな姿、こんな時じゃないと見れねぇしよ!」
「んあっ・・・!」

ぐり、と抉るように腰を押し付けられて、再び沸き起こった激しい快楽に身を震わせる臨也。
無意識に顔を隠すように折り曲げていた両腕を、静雄の腕が掴み、激しい力でシーツに縫い止められる。
そうして、まるで両脚を抱え上げるようにして、重力に任せ押し付けられる腰。
臨也は止められなかった。
そうして、ぼろぼろになった顔を見下ろして、静雄はいいザマだと嗤う。
だがそれすら、快感を煽る要素にしかならない。

「あ、ぁあ、シズちゃん、もう、イきそ・・・っ」
「っく・・・締めんな・・・っ」

早くあの絶頂の感覚を味わいたくて、自分の気持ちいい部分を擦ろうと腰が揺れる。
すると、意識的に力を込めたわけではなかったが、静雄もまた、余裕のない表情で己の腰を掴んだ。
いいよ、一緒にいけばいいさ。
俺の内部で感じて、イっちゃうとか、シズちゃんこそ、マジ惨めじゃないの?
ハハ、と吐息で笑って、静雄の腰を両脚で挟みこむ。
ほら、シズちゃんだって、限界なんでしょ?

「一緒に、イこ・・・?」
「っざ、けんな!」
「ね、中に出して・・・っ、あ、いっぱ、い、シズ、ちゃんの、ああっ・・・」
「っく・・・」

もう既に、快楽を追うだけに酔っている臨也に、忌々しげに舌打ったが、
静雄だとて、もう限界。こうやって臨也のいいように性欲を煽られ、彼の中に劣情を吐き出すなんて、
なんというくだらない行為だろう。そう思いつつ、己の欲望で細腰の奥を貫いて、
そうしてこの生意気な男の口許から、普段は聞くことのない、弱音じみた言葉を引きだすのが、
どれほどの快感か。
そう自覚して、静雄が口の端を歪ませた。
いいぜ、テメェが望んだことだ。
両脚を抱え上げて、細い躯を折れる程まで抱え上げ、結合部を晒す。
腰を引くたびに、引き攣れたような内部の赤さが眩暈を覚える程。悔しいが、これだけはどうしようもなく煽られる。

「イくぜ、臨也・・・覚悟しやがれ!」
「あ、あ、ぁあ、シズ、ちゃ・・・!イッ・・・も、ああっ!!!」

臨也の一番善がる部分を、敢えて乱暴に貫いてやれば、限界点など一瞬で振り切れた。
互いの腹の間で、涙をこぼしていたそれの先端から、勢いよく白濁が飛び散った。そうして、飛び散ったそれは、
涎と涙でぐちゃぐちゃになった臨也の顔を汚し、更に歪んだ表情を見せる。へっ、ざまぁ。
そうして、繋がる個所からは、激しい収縮。
搾り取られるようなそれに導かれ、静雄もまた、唇を噛み締めて内部を穢す。
静雄の吐き出す逸れに合わせて、ア、アっと声が漏れるのが、
堪らなく興奮した。
こんな、世界中で一番大嫌いで、顔も合わせたくない宿敵の躯を犯して、穢して、
悦んでるとか、馬鹿みてぇ。
そう、理性では思っているものの、身体はそう感じてはいないようだ。
彼の内部に収めたまま、既に次の興奮の熱が湧きあがってきている。

「・・・っちょ・・・待ってよ、また・・・?」
「ああ!?テメェから襲ってきたくせに、文句あるのかよ?ええ!?」
「っ・・・あー・・・ハイハイ。わかってますよ。シズちゃんが絶倫だってことはね・・・」

腕を伸ばして、首に絡ませ、そうして身体を支える。
ぐっと縮まった距離感に、静雄は無論眉を寄せたが、臨也はうっとりとした表情で彼の肩口に顔を寄せる。

「っ・・・キメェよ、ノミ蟲!」
「うっさいなぁ!俺の勝手だろ!どーせ君だって俺のカラダを勝手に利用してるだけじゃん。気持ちよくもしてくれないくせにさぁ。―――いいから、早くキスしてよ。シズちゃんとのキス、意外と好きなんだよね」
「ノミ蟲・・・テメェ、死にてぇのか?ああ!?」

くっくっと笑い声すら響かせる臨也に、怒りにまかせた拳を振り上げそうになるのを、必死に抑える。
この怒りの分まで、今夜はとことん、臨也をヤり殺してやるのだと、心の中で誓って、
静雄は、己がされたように臨也の両手首を縛り上げ、
そうして鬼のような形相で、臨也を見下ろしたのだった。










多分、本当はずっと、愛してたと思う。
平和島静雄という男を、一目見た時から。敢えて乙女ちっくに言うなら、一目ぼれってやつ?
でも、すぐ、大嫌いで、憎んでも憎み足りない相手になってしまった。
愛と憎しみは紙一重、って、よく言うよねぇ。

「いつまでも寝てんじゃねーよ、ノミ蟲」
「あ・・・シズ、ちゃん・・・?」

目を開けると、煙草を咥えたままの静雄がこちらを見下ろしていて、少し驚いた。
周囲を見渡すと、そこは静雄の部屋。
そういえば、夜這いを仕掛けたんだっけ。にしても、静雄のベッドを占領して、今の今まで寝ていたとか意味不明だ。
まったく、どれほど体力を消耗していたのだろう、自分は。

「朝まで寝させてくれたの?シズちゃん。らしくないなぁ。俺なんか、窓から放り出してくれてよかったんじゃないの」
「そうして欲しかったンなら、今度はそうしてやるよ。臨也くんよぉ」
「冗談。俺はまだ死にたくないしね」

セックスした後は、必ずといっていいほどパターンが決まっていた。
恋人同士などではない。ただの身体の関係だから、すぐ互いの日常が待ち受けている。
2人で甘い時間を過ごす暇など、これっぽっちもない。ていうか、過ごしたくもなかった。
だから、
臨也はとりあえず、ベッド脇に投げ捨ててある、己の衣服を拾い上げた。
あーあ、ぐしゃぐしゃ。
これは、もう新宿に直帰して着替えてこないと駄目だな。
そんなことを考えて、床に腕を伸ばした時、

ぱし

不意に、取られた腕。
驚いている間に、臨也の腕が、静雄の力に叶わないまま捻りあげられた。
苦痛は辛うじて声には出さなかったが、顔が歪んだ。
きっと睨みつけると、けれどこちらは、ほとんど表情を崩さないまま、淡々としている。

「・・・なん、だよ」
「・・・てめぇよぉ。なんだよ、その傷」
「ああ、これ」

早朝とはいえ、かなり明るい。
だから、その光の中で全身の傷は、もはや隠せなかった。チッ、と舌打ち。
静雄にだけは、見せたくなかったのに。自分の失態だとか、慰み物にされた痕だとか、姿だとか。
ていうか、関係ないだろ、シズちゃん。
俺が誰と寝ようと、誰にヤられようと、ヤろうと、関係ないでしょ?

「ヤクザにやられた・・・って言ったら、シズちゃん、仇とってくれる?」
「はっ!誰が!テメェの自業自得だろうが。いい気味だぜ」
「だよねー」

はは、と笑う。本当は、少しだけ傷ついた。心配してくれたのかと、ちょっとだけ期待したから。
静雄の顔を見ているのが辛くなって、臨也は彼の腕を振り払った。
背を向ける。そうして、足元のシャツを拾い上げ、そうして身支度を始めた途端、

「やるよ」
「・・・・・・は?何これ」
「見りゃわかんだろうが。・・・その、防犯ベルってやつだ。
 最近の池袋は物騒だかんな。いくら手前でも、囲まれちゃ手出せねぇだろーが。そういうときは、ここをこうやって・・・」
「はっ!馬鹿じゃないのシズちゃん!俺が、そんなっ・・・オモチャみたいなもん使うわけないだろ!」

鼻で笑って、一蹴する。
ていうか、シズちゃんこそ、どこでそんなもん、手に入れたのさ!?
笑える、笑えるよシズちゃん!池袋最強の喧嘩人形が、防犯ベル?!ふさげるのも、いい加減にしようよ、ねぇ?

「ちょ、いらないっていってるだろ!」
「でも、俺もいらねぇし」
「強引な男って嫌われるよ!ってか、マジでいいから!!!!」

「あ」
「あ」

咄嗟に追い払おうとナイフを取り出した臨也は、けれど一瞬にして固まってしまった。
ナイフを構えようとした瞬間、運悪く静雄が放り投げた瞬間、ナイフの鋭い刃が当たってしまったのだ。
ナイフの腹に弾き飛ばされた防犯ベルは、壁にぶつかり、床にぶつかり、当然のように・・

壊れた。

・・・その後の事は、容易に想像がつくだろう。

「・・・弟に貰った、大切な防犯ベルを・・・・・・」
「はぁっ!?」

幽君に貰ったのかよ!という臨也の内心の突っ込みは、全く意味をなさなかった。
もうすでに、目の前には、怒り爆発寸前の、世にも恐ろしい形相をした静雄が迫っていたからだ。

「ちょ・・・タンマ!!今のは、事故!事故だろ!!どうみたって俺のせいじゃないし!!」
「うるせぇ!!!!そもそも手前が受け取らないのが悪ィ!更にナイフなんぞ持ってんのが悪ィんだよ!覚悟しやがれ!!」
「ぎやああああああ!!!!」

着替え半ばで、半裸のまま必死で逃げ出す男と、
こちらも白シャツ1枚で羅刹の如き形相で追いかける男の怒鳴り声が、池袋の早朝に響き渡る。
後日、なにやら若い男どもが、半裸のまま池袋を走り回っていたという噂が流れるのは、
また別のお話。










end.









Black Cherry 歌詞。

V系バンド「Acid Black Cherry」様の曲なので、是非聞いてみてくださいw
めちゃくちゃイザビッチですのでw






Moonlight Shadow ひとりぼっち 喉が渇いてただけなのよ
かじりついた果実は甘い甘い猛毒で 犯されて
Black Cherry 濡れて堕ちて 私の中へ種を残し甦れ
愛してくれなくていいよ 愛してないから これ以上みじめにさせないで
二人のこのHistory ちょっとした寄り道なの
心はまだMistery 抱かれた夜の数だけ流した涙

赤いルージュ シャツの襟 言葉を呑みこみ口づける
インカントシャイン 私じゃない香り 知らない 腰遣い
まだエクスタシーレプリカント 折れた羽根を震わせながら
透明なスキャンダル 噛み締めた唇 スローモーション 刻み込まれ

Don't stop kiss me 離れられない
Don't stop kiss me でも許せない
Ah!Ah!Ah!Ah! 中に出して

Blackcherry 濡れて堕ちて 私の中へ 種を残して
愛さなくていいよ 愛してないから これ以上みじめにして
禁断のTerritry ずっと抜け出せなくなって
感じるBlack Cherry
キスの感触 ちょっと忘れられない


Don't stop kiss me 離れられない
Don't stop kiss me でも許せない
Ah!Ah!Ah!Ah! 中に出して

Black Cherry 濡れて堕ちて 私の中へ 種を残して
愛さなくていいよ 愛してないから こんなにみじめにして

Black Cherryちょうだい Black Cherryもっと
本当はずっと愛してたのに
短いHistory ちょっとした寄り道なの
これでFinaly けれどたまにはこんな私の事思い出して





イザシズイザでした。ていうか、イザの襲い受。

ていうか女の子抱いたってのはただの勘違いですとも、ええ。
・・・結構シズちゃんは「案外敏感」という設定のイザシズやシズイザが多い気がしますが
・・・普通に考えてめちゃくちゃ鈍感だろう。あれはw
ただ、臨也の気配にはめちゃくちゃ敏感だとは思うんですがwww
まぁそこは、敢えて気付かない方向でwww

あ、ついでに防犯ベルってのは、
茜ちゃんにあげるために静雄が用意してたものです(もちろん捏造話)
自分で買いにいって、よくわからなくて、とりあえず幽に頼んだら例の如く大量に送られてきました、と
そんなブツですね。超裏設定すぐるwwwww





Update:2010/06/14/WED by BLUE

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