夜明けを切り裂いて



夜明け・・・・・同室の住人が帰って来る気配でザックスは目を覚ました

凍るような冷たい空気を纏って部屋へ入ってきたクラウドを見てザックスは、はっとした
全身の血の気が失せたように肌が青白い
それは冷たい夜気のせいばかりではあるまい
蒼い瞳はうつろで何を映しているのかさえ、はっきりしないような状態だ



なぜ突然にそんな行動に出たのか、後々になってもザックスはそのときの自分の衝動を説明する事が出来なかった

ぐいと手をつかんで引き寄せて抱きしめる
クラウドの体は本当に冷たい
生きているのかと疑いたくなるような無機質な肌触りがザックスの心を余計に切なくさせた
(なんだ、どうしたんだ・・・・クラウド・・・今までどこで何やってたんだ・・・)


いつものザックスなら同室の住人の朝帰りの理由を軽口で聞くことなど、なんでもないことだ
しかしこの時は、思わず抱きしめてしまった衝動と同じく、なぜか口に出せなかった
(冷たいなぁ・・・本当に息してんのか・・・こいつ・・・)

自分の腕にしっかりと抱きしめていながらも、手の中のクラウドはあまりに儚くザックスを不安にさせた
クラウドの瞳を覗き込もうとその目を見た次の瞬間、ザックスはクラウドの血の気の失せた唇に自分の唇を重ねていた

突然に抱きしめたそのときと同じく、口付けの理由などザックスに説明できるはずもなかった
ただしっかりと自分の手の中に抱きしめてその存在を確認していなければ
すぅっとどこかに消えていってしまいそうなそんな不安に突き動かされていた
しかし、ザックス自身はそのことをはっきりと認識していなかった、ただそうせずには居られなかった

(ふ・・・息してるじゃねぇか・・・)

ザックスはゆっくりと自分の舌を侵入させクラウドの舌を絡めとる
クラウドの反応を確かめながらゆっくりゆっくり口腔内を味わう
そうしているうちに、ザックスは少し落ち着きを取り戻し、クラウドに向かって軽口を叩く気持ちになった

「おい・・クラウド・・・・お前あんまりだぞ、もちっと俺のキスに応えてくんねぇの?」
「はん!・・・キスをねだった覚えはないぜ、ザックスが勝手にキスしてきたんじゃないか」


ザックスが心からの口付けをしたことは間違いなかった、しかし一方的な衝動で勝手に口付けたことも事実だった
その事がザックスの心をかき乱した
「んじゃ、拒めばいいだろ!」

そう言いながらザックスは乱暴にクラウドの衣服を引きちぎった
軽口を叩くまでにほぐれたザックスの心を何がそんな風に荒立てたのかなど、勿論誰にもわからなかった



◆◆◆◆



クラウドは恋をしていた、そして絶望していた

力の限り抱きしめたら確実に壊してしまうガラス細工のような存在
その人を手に入れたくて、手に入れられなくて・・・・・

他の誰かに汚されてしまうくらいなら、自分の手で壊してしまおうと今夜出掛けて行ったのだった
しかしやっぱり、その人を壊してしまう事も手に入れることも出来ないばかりか
その人は、自分の前を通り過ぎ、自分でない男の手に落ちていった・・・・


◆◆◆◆


突然着ていた物を引きちぎられクラウドは顔を赤らめ、「やめろよ!」と言いながら
まるで女の子がそうするように両腕を自分の胸の前にあわせ身をよじりザックスの視線から自分の肌を隠した

その反応にザックスもそしてクラウド自身も驚いた

クラウドにしてみればザックスのその無理矢理な行動は、かなわぬ相手に横恋慕していた自分自身そのものだった
(ザックスは・・・ザックスは・・俺の醜いそして情けないこの気持ちを知ってるんだろうか、まさか・・・・でも・・・ザックスには、ザックスだけには知られたくない・・・・)

いつもどこか拗ねたような生き方しか出来ないクラウドは真っ直ぐで暖かで太陽のようなこの青年が好きだった
同室に暮らすうち、ほんの少しづつザックスには笑顔を見せられるようになっていた
それは勿論、あの人に寄せる熱い思いとは異なる穏やかな気持ちであった

その気持ちの事をザックスを含む普通の人は「友情」と呼び、その感情を人生の中でいくつも育てていく
しかし不器用なクラウドにとっては初めてのそして無二の気持ちであった



ザックスにしてみれば口付けの後の強気なクラウドからは、皮肉のひとつも飛び出す物と思っていた
(どうして今夜のお前はそんなに脆くて儚いんだ・・・いつものクラウドらしくない、何かあったんだ・・・・何か)

「クラウド・・・何があったんだ・・・・どこで何してた・・・こんなに冷たくなるまで・・・・」
「別に俺がどこで何しようと俺の勝手だ、アンタに報告の義務なんかないね」

クラウドが生意気で皮肉屋な事など十分承知だった、この反応にしても不思議な事は何もない むしろクラウドらしい反応といえるかも知れない

それなのにザックスは、無性に切なかった相変わらず理由は説明できない、ただただ切なかった
自分が露わにした裸の胸を自分の腕にしっかりと抱きしめ

「そうさ、クラウドお前はお前のもんさ、誰の物でもないさ、だから誰かのせいで傷ついたりしてるの見てるのヤなんだ、お前は気持ちのいいくらい傲慢で孤高なヤツだろ、誰かのせいで魂まで抜かれちまったようなそんな目されたら俺が堪えられないんだ」

「ザックス・・・・・ふるえてるのか・・・・俺の、俺のために・・・・俺の事を・・・・・」
クラウドは言葉を詰まらせた・・・ザックスの言葉が痛いようだった
こんな身勝手でひねくれた自分をそのまま受け入れて、そのままで居ろと言ってくれる
自分を丸ごと受け入れてもらう事はこんなにも心地のよいものだろうか・・・・・・

「ザックス・・・・・」
その名前を口にしたのはむしろ自分のためだったろう、口にしただけで安心できる、心安らぐその響き・・・
ゆっくりと自分から口付けたクラウドは自分らしからぬその素直な行動に戸惑っていた
暖かな心からの口付けを受けたザックスは、いつものザックスらしさを取り戻そうとしていた

臍のあたりからいきなりクラウドのバイク用の革パンツのウエストに手を差し入れクラウドの中心部分をむずっと掴み
「な、シようぜ」とあっけらかんと誘った

クラウドは一瞬あっけにとられたがここで「愛してる」とか「好きだ」とか安っぽく口にしないところがザックスらしいと思った
「何だ、ザックス溜まってんのか?この間自慢げに話していたスラムの美人はどうした?ヤらせてもらう前にふられたな」

「かーっ!お前かわいくねぇ、冷たいクラウドの体を温めてやろうって言ってんじゃねえか」
そういいながら革パンのジッパーを降ろし
「な、コレも窮屈そうだしさ」と、堅くなり始めたクラウド自身を引っ張り出した

「あ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれよ、この革パン高かったんだぜ、脱いじまうから無茶すんなって」
「クラウド・・・・お前積極的・・・」
「拒んだら避けられそうな状況か?」





全裸になった2人の体は対照的だった
浅黒い肌、きっちりした筋肉を纏ったザックス
透きとおるような白い肌、しなやかな体つきのクラウド

ザックスはしばしクラウドに見とれたが綺麗だなどと口にしたら怒るに違いないと
「少しは成長したじゃんか」とからかうように言った
「ふん、ぬかせ、筋肉バカ」
クラウドもまたザックスの美しい筋肉をほれぼれと見ていたが、それを口に出すことはしなかった


抱き合って口付ける、強気という堅いよろいを纏ったクラウドは思ったより華奢で柔らかい
ザックスは唇を首筋から鎖骨へと軽くちゅっと音をたてた口付けをしながらながら移動する
鎖骨に3つ、肩口に4つ、キッスを落とした後、薄いバラ色の胸の飾りを口に含んだ

「ザックス・・・・女に・・・す・・る・・みたいに、まだるっこしい・・・前戯なんか要らないぜ・・・・」
「ん?もう我慢できない、もう欲しい〜〜〜ってか?」
「ば・・・か・・そんなんじゃねぇ・・・けど・・・・」
「素直に言えよ・・・・声、上がっちゃいそうで照れくさいから乳首は舐めないでって」
「ちっ・・ちが!・・・・あ、はっ・・・ふぅん・・・・」

もう一度口に含み、かりっと軽く歯を立てるとザックスの予想どうり、声があがった
「ほれ見ろ・・・・・」
「ばっ・・・ばか!違うって!」
赤くなりながら否定するクラウドに、ザックスはあまりしつこくすると怒らせてしまうか・・・・と思い直し
クラウドを背中から抱きしめ直すと、自分の中心をクラウドの蕾にあてがった

「お望み通り、ねちっこいのはやめだ・・・あんま慣らしてないから力抜けよ・・・」
クラウドはザックスの顔が見えないせいか急に素直になってこくんと頷いた

感じやすいクラウドの肌はすでに桜色に上気し、蕾は潤み始めていた
ザックスはゆっくりと侵入した、クラウドは身を震わせながら受け入れた

「息・・・大きく吐いて・・・」
ザックスはクラウドの耳元にそう囁くと、自分自身を根元まで埋め込みながら胡坐に座った自分の上にクラウドを座らせる形をとった
さっき素直に頷いたクラウドを見て、顔が見えないほうが素直になれるなと感じたからだった

「やべ・・・もう少し慣らせばよかった・・・きっつーーーー」
「はっ・・・うっ・・・ふっ・・・・」
凄まじいほどのザックスの圧迫感にクラウドは息を逃がすのがやっとだ

ザックスはもう一度背中からクラウドをしっかりと抱きしめると耳朶をかりっかりっと齧りながら
すべらかな臍や胸を撫でていた
「くっ・・・・う・・・はぁ・・ふっ・・・ひっ・・・ひっ」
かなり切なげな声がクラウドからあがる

「クラウド・・・・辛いか・・・」
優しく囁くザックスにクラウドは
「バカぬかせ・・・・ザックスこそ、もう持ちそうもなかったら早めにイっても、早漏って他所にはバラさないでおいてやるぜ」

「こんのぉ・・・ぜってぇ、かわいくない!」
ザックスは口では大いに文句を言いながら嬉しそうだ、クラウドの肌の上を彷徨っていたザックスの手はつぅーっと下に移動し
クラウドの中心で立ち上がり打ち震えている茎を捕らえた

「今みたいにいつも強気でいろ、お前はお前らしく・・・どこで何しても、誰と何があっても・・・お前らしくいろ・・・・でも必ず、何があっても必ず、俺と暮らすこの部屋に帰って来いよ・・・・」
クラウドの茎を激しく扱きながらザックスは耳元に囁く
クラウドは意識を手放す直前にこくんと頷き、感謝の涙を一筋流した




気持ちを通わせ、抱き合ってぐっすりと眠る二人を朝の空気が二人包んでいた


***END***

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