慰安兵 sec.2



 「ん・・・」
 セフィロスは、顔にあたる眩しい光で目を覚ました。
 もう朝か・・・。
 今日は軍事会議があるから、それまでに資料の作成をしなければならないな・・・
 目をつぶったまま、深くため息をつく。
 忙しいのはオレの宿命だ。抵抗はすまい。でも、もう少し寝かせてくれ・・・・・・
 セフィロスは、掛けられていたシーツを握ると、寝返りを打ち、頭から被った。
 「二度寝とはいただけないなぁ、英雄様」
 突然の声に、セフィロスは文字通り飛び上がった。
 がばっと身を起こせば、にやにやと笑う少年の顔。
 「ク、クラウド?!」
 それを合図に、セフィロスの頭の中に昨晩の情景が次々と浮かび上がった。
 まるで誘うかのような妖艶な青の瞳。椅子に押し付けられ、見動きが取れないまま開かれた両脚。そして、その中心を弄ばれ、不覚にも感じてしまった奇妙な感覚―――。
 「―――――!!」
 セフィロスは、目の前に堂々と居座る少年を咎めるより先に、手元のシーツを胸にまで引き寄せていた。
 「何女みたいなことしてンだよ」
 クラウドがシーツを退けようと手を伸ばすが、セフィロスは渾身の力で自分の身を守る。
 そして、目の前の、自分に何の礼儀もわきまえない無礼な少年を睨み付けた。
 「き、貴様・・・今日が何の日かわかっているのか?!」
 ただでさえ、今日は忙しいのだ。
 そんな時に、朝から弄ばれるなど、どうしても許せなかった。
 けれど、セフィロスのそんな思いなど気にもかけず、クラウドは彼の腕を掴んだ。
 「・・・っやめろ・・・!」
 「あんたわかってる?今はまだ夜だぜ・・・」
 笑いを含んだ声に周囲を見渡すと、確かにカーテンは閉められ、部屋の明々とした電灯だけが自分を照らしている。
 てっきり太陽の光だと思って目を覚ましただけに、セフィロスは大変に青ざめた。
 「や・・・だっ・・・!」
 「何言ってんだよ。朝まではまだたっぷりあるんだ。楽しませてやるぜ・・・」
 シーツの上からセフィロスの体をまさぐる。雄を捉えられ、セフィロスは息を呑んだ。
 みるみる朱く染まっていく彼の顔に、クラウドがくすりと笑う。
 「そんなに恥ずかしがらなくたっていいんだぜ?こんなのただの生理反応なんだし」
 手のひらで大きく動かしてやれば、外からの刺激でそれがすぐに立ち上がってくる。
 「これで、俺に欲情するようになればカンペキなんだけど、ま、今のあんたじゃ俺を抱けないな」
 しょうがねぇな、というように小さく笑うと、セフィロスに乗り上げる。抵抗を見せる腕を、クラウドは指先を絡めてシーツの上に縫い止めた。
 慈しむように、首筋に唇を寄せる。嫌って首を振る彼を追いかけ、顎を伝い唇をついばんだ。
 「・・・クラウド、お前を・・・・・・抱く・・・?」
 キスの合い間に、セフィロスが呟く。
 自分が主語のその言葉の意味がよくわからなかったのか、組み敷かれた青年が反芻するように呟いている。
 その声を聞きつけると、クラウドはふふっと笑って唇を離した。
 「そうだよ、セフィロス」
 2人を隔てていたシーツをはぎ取り、べッドの下に落とす。
 若さ故のみずみずしい肌が自分の肌にぴったりと密着し、セフィロスはびくりと震えた。
 クラウドはセフィロスに身を寄せている。彼の肩に顔を埋め、セフィロスの手をとると、クラウドは自分の背へと導いた。
 「あんたが、俺を抱くんだ。ほら」
 指先がクラウドの後孔に触れ、思わず手を引っ込める。
 けれど、すぐにクラウドに引き戻され、セフィロスは自分が犯されているわけでもないのに顔を赤く染めた。
 他人のそこに、自分の指が触れている。
 それを意識するだけで、何故か自分の体の奥がうずくような気がした。
 「そう、そうやって、俺の中に指を入れていくんだ・・・・・・」
 クラウドの指に絡め取られたまま、セフィロスのそれがクラウドの内部へと押し入れられていく。
 クラウドはその感触に耐えるかのように、軽く目を細めた。
 中はセフィロスの指を歓迎するかのように、きつく絡んで離さない。
 「・・・あつ・・・い・・・・・・」
 指先に感じる熱そのままに、セフィロスが言葉を漏らす。
 その熱はセフィロスの全身に伝わり、初めて「他人」を犯す彼の興奮を高めた。
 「指・・・動かしてみな」
 クラウドに言われ、おそるおそる中に埋めた指を動かしてみる。
 すると、熱い内壁が彼の指に広げられ、より深くセフィロスを呑み込んでいった。
 ふと見れば、肩口に顔を埋めていたクラウドの顔が上気し、快感に耐えるべくぎゅっと目を瞑っている。
 それを見ただけで、下肢が熱を持ち硬さを増すのを、セフィロスは驚きとともにそれを自覚した。
 「どうだ・・・・・・少しはヤる気になってきたか?」
 先ほどより大きく動かしている指を感じて、クラウドが息を抑えながら言う。
 その言葉に一気に羞恥を高められ、セフィロスの全身が染まった。
 嫌がっていたはずのクラウドとの行為に、いつの間にか自分まで溺れ、思わず自分からその行為を続けていたことが信じられず、急に手を引っ込める。
 その瞬間、クラウドの口元から小さく苦悶の声が上がった。
 「・・・っ・・・人のことも考えないで、急に抜くなよ・・・・・・」
 その声にセフィロスははっとしたが、それが自分を辱めた少年であったことに気付き、情けをかけてやるものかとぎゅっと唇を噛み締めた。
 「こっ、これに懲りたなら、以後オレに一切関わるなっ!!」
 自分のしてしまった愚かな行為に動揺しながらも、セフィロスがクラウドを睨みつける。
 そんな様子のセフィロスがおかしくて、クラウドは吹き出してしまった。
 「・・・ま、いいさ。それより・・・・・・」
 クラウドがセフィロスのそれに手を掛けた。
 「?!!」
 「ヤる気になってきたんだろ?」
 クラウドの手の中のそれは、今度は外からの刺激ではなく、内部の溢れ出すような情欲のために熱をもち、勃ち上がっている。
 改めてそれを自覚させられたセフィロスは、体を硬直させてしまった。
 「嫌だ・・・・・・」
 「これを、さっきあんたが指を入れたトコに突っ込むんだぜ?わくわくするだろ」
 先端を舐め上げる。張り詰めた中心は、そり硬さを増して天を仰いだ。
 その様子に軽く笑うと、セフィロスを抱き起こし、自分は誘うようにゆっくりと足を開く。
 目の前に晒されたその部分に、セフィロスの目が釘付けになった。
 「・・・そん・・・な・・・・・・嘘だろう・・・?」
 想像も付かない結合に、セフィロスが身を引く。
 けれど、逃げようとする足を掴み、クラウドは自分の体に重ね合わせた。
 「何言ってるんだ。俺はこのためにいるんだぜ?いや、このためだけと言ってやってもいい・・・・・・」
 妖艶なまなざしに、息を呑む。
 それだけでより熱さを増す自分が信じられなかった。
 あまりの事に呆然としたまま動かないセフィロスに痺れを切らして、クラウドが青年の上に乗り上げる。
 自分を凝視したまま固まる彼をまたいで、クラウドは強引にセフィロスを受け入れた。
 「・・・っ・・・・・・!」
 その瞬間、セフィロスは大きく目を見開いた。
 自身を受け入れたそこが、きつく絡まる。
 まるで根元までを強く握り込まれたような痛みに、セフィロスは脂汗を流した。
 「痛・・・っやめ・・・!!」
 「・・・痛いのはこっちだぜ・・・・・・全く、手間かけさせやがって」
 根元までしっかりと銜え込むと、一つ大きく息を吐いて、ゆるゆると腰を動かす。
 けれど、意識の中で痛みが全てを支配している今の状況では、セフィロスにとってクラウドの動きも締め付けもその熱さも、なんの快楽も生み出さなかった。
 「やだ・・・クラ・・・抜けっ・・・!!」
 セフィロスの必死の懇願も無視して、クラウドが律動を続ける。
 彼の、行為に対する嫌悪感が、より彼の苦痛を強めていることはわかっていたが、自分もまた男である以上、途中下車はできなかった。
 クラウドは、セフィロスの意識を逸らそうと、体を倒して唇を重ねた。
 深いディープキス。セフィロスは嫌がるどころか、すがるかのように自分から舌を絡ませた。
 早く終わらせてやろうと、指先と自分の中でセフィロス自身に刺激を与えていく。
 数回扱いてやると、セフィロスの意識の爆発と共に熱い精が放たれた。
 どくどくと注ぎ込まれる感覚に顔をしかめながら、クラウドはセフィロスを見つめた。
 快楽に憔悴し切った顔ではなく、苦痛に喘いだ影がそこにあった。
 「・・・・・・無理させちまったかな」
 自分の中から彼を抜くと、彼を見つめて呟く。
 汗に濡れた髪を梳いてやると、普段より数段幼い子供のような彼がそこにいた。
 「ごめん、セフィロス」
 クラウドは小さく謝ると、彼の背に腕を回した。
 胸に手を当てると、小さく上下するリズムに沿って彼の鼓動を感じる。
 それを聞きながら、クラウドは心の中で誓った。
 今度彼が目覚めたら、俺が・・・セフィロスを愛してやろう。
 このせいで本当にクビにされても構わないから。
 クラウドはぎゅっと彼の体を抱きしめると、つかの間の眠りに瞳を閉じたのだった。





つづく


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