Bathers



「ひゃあ〜すいてるなぁ、セフィロス」
「・・・それ以前に、誰もいない気がするんだが」
 クラウドに続いて湯気の立つこの部屋へ足を踏み入れたセフィロスは、広い中を見渡してそう言った。
 久しぶりの休暇に、クラウドがセフィロスの部屋に泊まることになったのはよかったのだが、運悪くシャワー室の湯栓が故障していた。
 いつもなら壊れていても水ですませるのだが、今日はそうもいかない。
 クラウドがいたからだ。
「水なんて心臓マヒおこして俺死んじまうよ!」というクラウドの言葉に負け、セフィロスは本来ならばあまり行かない神羅の公衆浴場に来ているのだった。
 しかし、公衆といっても、今は2人の他には誰もいない。
 4時という時間は、まだ風呂には早すぎるということだろうか。
「こんなに早く来るからだろう」
「あんた、人が多いトコ嫌だっていってたじゃないか。だから早く入ろうと思ったんだけどな」
 言いながらも、クラウドはさっさと腰掛けて髪を洗い始める。
「ほら、あんたも突っ立ってないで・・・・・・ハイ、タライ」
 にっこりと笑って手渡すクラウドに、セフィロスもまた苦笑して腰掛けた。
 長い銀の髪を前に持ってきて洗剤を泡立てるセフィロスが、なぜか笑いを誘った。
「あんた、さ。メンドくさくない?その髪。なんで伸ばしてるんだ?」
「え・・・・・・?」
 思いもよらないクラウドの言葉に、セフィロスは戸惑いを隠せない。
 自分の髪に伸ばされる腕に、銀髪の青年はかすかに頬を染めた。
「・・・別に理由はないが。ただ、子供の頃からずっとこうだったから・・・・・・」
「ふうん。いいけどね。あんたにはよく似合ってるし」
 長い髪を弄んでいた指先が頬に触れ、セフィロスに暖かな感触を残してゆく。
 見つめられて赤くなる彼に笑いかけると、クラウドは手早く終わらせて熱い湯に浸かった。
 (・・・確かに、短いほうが扱いにはラクだろうがな・・・・・・)
 クラウドの様子を見るともなしに見ていたセフィロスは思う。
 クラウドはああ言っていたが、実際自分が髪を切ったら、絶対理由を聞いてくるに決まっている。
 その時、「クラウドの髪がラクそうだったから」などとは口が裂けても言えないセフィロスであった。
「セフィロス―!気持ちイイから早く入れよ―」
「わかったから・・・呼ぶな!そこで!」
 広いフロア中に響くクラウドの声が、自分の名を呼ぶ。
 それが外に漏れるくらいの大音量で、セフィロスは羞恥心を覚えた。
 やっと洗い終えた体と髪の泡を落とし、長い銀糸を頭上で器用に留める。
 クラウドが漬かっている側までくると、セフィロスは湯の中へおそるおそる足を差し入れた。
「・・・あっつ・・・・・・」
 足から伝わる熱い痛みに顔をしかめる。
  そのまま硬直するセフィロスに、クラウドは目を丸くした。
「あんたって、熱いの苦手なんだっけ」
「う、うるさい。お前こそ、よくこんな熱いの平気でいられるな・・・・・・」
「こんなの、全然ぬるいほうなのになぁ」
 肩をすくめると、クラウドはセフィロスの方へと腕を伸ばした。
 タオルを押さえていない方の手を握り、、自分のほうに引っ張る。
「や、やめろっ、オレが落ちるっ!」
「大丈夫だから、早く入れよ」
 あわてるセフィロスに声をかけてやる。
 強引なクラウドの手に怒りを覚えながらも、仕方なくもう一方の足を湯へと入れた。
 その時、予期せぬことが起こった。
「・・・っ!」
 軸にしていたほうの足を滑らせ、セフィロスが後方へと倒れこむ。
 それを察したクラウドが、後頭部を打ち付けるよりは、と握った手を強く引く。
 気づけば、熱い湯の中で、クラウドに身を預けてしまっていた。
「・・・っつ―・・・」
 顔をしかめて呻く姿は、湯のあまりの熱さからか、それとも足を滑らせ、膝を打ち付けた際の痛みからか。
 自分にしがみついて耐えるセフィロスに、クラウドは笑みを浮かべた。
 転んだ拍子にほどけてしまった銀髪に手を差し入れ、ゆっくりとそれを梳く。
 思わず顔を上げたセフィロスに口付けると、突然の行為に驚いて目を見開いた。
「んっ・・・!クラ・・・っ」
 クラウドを押し戻そうと抵抗する手首を掴み、妨害されるのを阻止する。
 そのまま歯列を割り口内を舐め回すと、必死に抵抗していたはずのセフィロスの体の力が抜けていくのを感じた。
 逃げようとする舌を追い、執拗に絡め合わせる。
 濃厚な口付けは、いつ終わるかもわからないくらいに長く長く続いた。
「・・・っはぁ・・・・・・」
 やっと解放された唇が、艶やかな光を放つ。
 言葉もでないまま睨みつけるセフィロスの視線に、クラウドはしてやったり、という顔をした。
「ホラ、気持ちイイだろ?セフィロス」
「・・・お前・・・」
 刺し殺されそうなほどの眼光をなぜか快く感じながら、クラウドはセフィロスの中心に手を伸ばした。
「あんたのココ、キスしただけでこんなになってる」
 セフィロス自身は、クラウドの強引な行為によって勃ちあがり、堅さを増している。
 その事実を指摘された彼は、上気した頬を更に赤く染めた。
「やめ、ろ・・・」
「なんで?このままじゃ、あんたがつらいだろ?」
 セフィロスの体を壁に押し付け、自身を両手で包み込む。
 焦らすように上下に動かすと、口元から甘い声がこぼれた。
「あっ・・・はっ・・・こ、こんなとこで・・・!」
「こんなトコって、風呂の中で、ってことか?」
「ち、違う・・・!誰か来たら・・・!」
「誰かに見られるか、って思うと興奮するだろ?」
 セフィロスの抗議も意に介せず、クラウドは愛撫の手を強めた。
 首まで湯に浸かる彼の前を片手で扱きながら、もう一方の手を背中に這わせる。
 軽く背骨の浮き出た背中の感触を存分に楽しみながら、背骨の続きである谷間から裏筋に向かって撫で上げた。
「ひあっ・・・!」
 クラウドの淫らな指先が秘められた場所に触れる。
 瞬間、それから逃げるようにセフィロスの体を浮かせていた。
 すると、それによって水面に浮き出た色彩やかな胸上の突起をクラウドが舌で舐めねぶる。
 クラウドの舌から逃れようと身を引くと、また後ろにある指先がセフィロスを責め立ててくる。
 その繰り返しだ。
 逃れられないクラウドの意地の悪い愛撫に、セフィロスは肩に爪を立てた。
「ク・・・っクラウ・・・ド・・・!」
「イイだろ?たまには違う環境でヤるのもさ」
 耳元で囁くクラウドの声が、自分の聴覚を犯してゆく。
 耳朶を甘噛みされ、長い舌が耳の中に侵入してくると、それだけで背中がぞくぞくする。
「あ・・・っく・・・!ああっ・・・」
「いつもより感じてるな、あんた。・・・やっぱり、興奮してるんだろ?この状況に」
 さっきよりも堅さを増した熱を動かしてやる。
「ん・・・!・・・あ、違う・・・」
「何が違うんだ?そんなにイイ声だしてるのに」
 クラウドの言う通りだった。
 全身を支配する熱と浸かる湯から立ち上る湯気は、それでなくとも喘がずにはいられないセフィロスの呼吸に火をつけ、体中に行き渡る快楽は喉から甘い声を引き出す。
 壁のタイルによって反響し、自分の耳へと届く淫らな声に、思わずセフィロスは口元に手を当てていた。
「塞ぐなよ。俺が聞こえなくなる」
 セフィロスの両手首を片手で押さえ、頭上の壁に縫いとめる。
 首筋に唇を這わせながら、空いているほうの手でセフィロスの奥へと侵入した。
「・・・い・・・やっ・・・だ・・・っ」
 指を一本挿入させると、セフィロスの口から漏れる言葉とは裏腹に、彼のそこがクラウドを待ち望んでいたかのようにきつく絡んで離さない。
 奥を突く度に体を強張らせ、指先を締め付ける彼の体を愛しげに眺めて目を細めた。
 押し入れる指を増やして中をかき回すと、そこから生じる痛みと快楽にセフィロスの双眸から滴が零れていた。
「も・・・っ・・・クラ・・・ウドっ・・・!」
 セフィロスの体が震える。
 限界を感じ取ったクラウドは、自分の膝でセフィロス自身に刺激を与え、後ろにある指先を激しく動かした。
「あ・・・ああ―――――っ!!」
 ひときわ大きな声を上げて、セフィロスが果てた。
 自身の先端からは、白濁した液体が勢いよく放たれ、湯の中へと溶け込んでゆく。
 戒めていた手首を解放すると、力が抜けてぐったりとなったセフィロスを腕で支えた。
「大丈夫か?」
「・・・ん・・・はっ・・・はあっ・・・」
 目をつぶったまま荒い息を吐き出すセフィロスの髪を撫で、頬を伝う滴を舌で舐め取る。
 そのまま、自分とセフィロスの場所を入れ替え、体勢を反転させた。
「・・・クラウド・・・?」
 不安げな碧の瞳が振り向く。
 それに笑顔で答えて、セフィロスに自分の上に座り込むような姿勢をとらせる。
「俺も、あんたが欲しい・・・・・・」
 捕らえた手を昂ぶる自分自身に添えてやる。
手で触れたクラウドが熱さと大きさを増しているのを感じて、セフィロスは頬を朱に染めた。
 両手でそれを包み込むと、この上ない愛しさがこみ上げる。
 これが自分を貫くことが信じられなかった。
「クラウド・・・・・・」
 セフィロスは頭をクラウドの肩に寄せ、両腕を首に回した。
歓喜の瞬間がもうすぐ訪れる。
愛する者同士が、与え、与えられ、そして満たし、満たされあう瞬間―――――。
ゆっくりと中へと入り込んでゆくクラウドの感覚がセフィロスの全身を包み込んだ。
震えるセフィロスの耳を甘噛みしながら、目指す奥へと侵入する。
それが根元まですっぽり収まると、セフィロスの口元から嬌声とも悲鳴ともつかない声がこぼれた。
「セフィロス・・・・・・」
奥までたどり着くと、クラウドは動き始めた。
セフィロスの内壁の感じる所を擦り、快感をもたらす。
背後から抱きしめ、指先で胸上で色づく飾りを弄ぶ。
それを軽く摘むと、それに反応して収縮するセフィロスのそこを思う存分楽しんだ。
「あんた・・・イイよ・・・・・・」
「んは・・・っ・・・ああっ・・・・・・」
セフィロスの腕の力が強められる。
もう一方の手でセフィロス自身の手に触れると、彼の昂ぶりそのままに固く、欲を露にしていた。
指を絡め、慰めるようにそれを愛撫する。
前と後ろの両方から敏感な部分を攻められ、いい加減セフィロスの体も限界へと近づく。
無意識下の中で腰を動かし、絶頂への階段を上っていった。
「はっ・・・ああ・・・っ・・・クラ・・・」
「セフィロス・・・!」
クラウドは手の中のセフィロス自身の先端に爪を立てた。
同時に、一度抜ける寸前まで引き抜いた自身を最奥まで一気に貫く。
その瞬間、二人の視界が真っ白に染まった。
「ああ―――――っ!!」
「・・・っ」
2人は同時に体内の燻る熱を解き放った。



気がつくと、セフィロスはクラウドの腕の中にいた。
顔を上げると、間近にあるクラウドの顔。
その表情があまりにも嬉しそうで、セフィロスは面と向かえなかった。
今までずっと自分を見ていたのだろうか。
自分の、快楽の果てた顔を。
「・・・よかったよ、セフィロス」
セフィロスはニヤニヤと笑うクラウドにみるみる顔を赤くすると、そっぽを向いてしまった。
「・・・・・・」
返す言葉もなく沈黙するセフィロスが愛しくて、クラウドはそのまま腕の中の彼をきつく抱きしめた。
「いい加減あがろっか。これじゃのぼせちまうよ」
立ち上がると、セフィロスに向かって手を伸ばす。
「・・・誰のせいだか」
「ん?なんか言った?」
ボソッとこぼすセフィロスに満面の笑みを浮かべてはぐらかすクラウド。
それを見て降参したように笑うと、セフィロスはクラウドの手をとった。

そして・・・・・・



・・・2人が風呂から上がった後に入ってきた神羅の兵士たちが、
「今日は濁り湯かぁ〜たまには神羅も気のきいたコトしてくれるじゃねーか!!」
と言ったかどうかは、定かではない。



***END***

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