Blieve



・・・んーあーあー。(マイテスらしい) えー、お集まりの皆様。
今作品は鋼の錬金術師、月刊少年ガンガン7月号掲載の36話ネタでございます。

36話読んでいらっしゃる方はさくっとこちらへ飛んでくださいませ。→「Believe

読んでいらっしゃらない方は、ネタバレがお嫌ならば読まないようよろしくお願いいたします。
ネタバレどんとこい!なアニメ派もしくは単行本派の方は、こちらへ飛んでくださいませ。→「まずはネタばらし。

よろしくお願いいたします。

















読んでくださるのですか・・・。ありがたいようで申し訳ないようで。
アニメ派+単行本派のネタバレOKな貴方に35、6話の関係のあるあらすじをお伝えしましょう。

セントラルに移り、マスタングは徐々にヒューズ事件の真相を追い始めます。
それを疎ましく思ったウロボロス組は、
マリア・ロス少尉を実行犯としてしたてあげ、留置所に拘留。
だが、身に覚えのない罪を着せられたマリアは、説得され拘置所を脱走。
うまく逃げ切れたと思った矢先、
その目の前に立ちふさがるのはロイ・マスタングだった。

裏路地で響く、強烈な爆発音。

ヒューズ事件の真実を問おうと、こちらもマリアを追っていたエドワードは、
その爆発を聞きつけ駆けつける。

「―――――!!どういうことだ・・・説明しろ―――――っ!!!」

目の前に横たわっていたものは、見るも無残な人の焼け跡。
真っ黒に消し炭と化したそれは、あのマリア・ロス少尉であった。


・・・これって35話だよな(汗)36話は、
まぁ怒るエドが大佐に殴りかかって逆に「身の程をわきまえろ」と殴られたり、
ひどく冷徹で残酷なマスタングに切れたり、グレイシアさんと話してヘコんだりと、そんな感じです。

・・・まぁ、参考にしてください。

それにしても、すんげー展開ですよ、こちらも・・・。(苦笑)

それでは、引き続き小説をお楽しみくださいませ。→「Believe














Believe




信じられないことが次々に起こった。
いや、起こったのではなく、起こっていたのだ。
自分たちが自らの望みのためだけに突き進み、そして走っていた時に。
目を瞑れば、次々によみがえってくる光景。
賑やかな男のくったくのない笑顔。それが死に絶える様。
それなりに心を許していた女性のその姿。男を手にかけたという信じがたい光景。
そして最後に・・・、その彼女を手にかけ、それでいて一切の動揺も顔に見せなかった男の表情。
・・・一番信頼を寄せていたはずだった。
まさか、と思い走ったその先で見たものは、エドワードにはあまりに信じがたいもので。
考えれば考えるほどに、エドワードは胸が痛んだ。
駆けつけた先の焦げたような臭いは、今でもまざまざと思い出すことができる。
目の前で誰かが殺されている、そのような場所に、エドワードはほとんど立ち会ったことなどない。
ましてや、それを下したのが知り合いというにはいささか無理があるほどの近しい存在だったなどと。
震える声で問い詰める自分に対し、彼の口調は普段以上に冷徹に響いていた。
信じていた者に裏切られ、信じてくれと言っていた者にも裏切られ。
もう、誰を信じていいのかわからない。
何を信じていいのかすら、今のエドワードにはわからなかった。
もう、何も、誰も。
信じられない。

「・・・―――鋼の?」

街路の端で丸くなって蹲る少年に、いささか驚きを滲ませた声が投げかけられた。
待っていた。待っていた相手だったが、エドワードは顔を上げないまま、彼の足元を眺めていた。

「・・・・・・何をしている?」

男の声音は、いつもより硬質で、そして冷たい。
からかいも、優しさも、甘さも、何もない。無感情といってもいいくらいに事務的なそれに、
エドワードはぎゅっと抱えていた膝を握り締める。
意を決して顔を上げると、案の定無感動なままの端整な表情が視界に移った。

「・・・・・・・・・―――大佐」

思わず声がかすれ、エドワードは唇を噛んだ。

「あんたを・・・待ってた」
「何の用だ?」

絞り出すように必死に紡いだ言葉を軽く返され、エドワードの胸がズキズキと痛む。
用なんて、なかった。
ただ、彼にもう一度会いたかった。
冷徹で、残酷で、非情な彼の姿しか感じられなかったあの現場。
いつもの彼を探しに来た、というのが一番的を射た表現かもしれない。
だが、エドワードの求めるものは、今もなかった。
男の口から洩れる声音は、相も変わらず冷たい刃のようなそれだ。

「・・・用がないなら、早く帰りたまえ。もう夜も遅い」
「・・・っ」

普段の彼ならば、家に押しかけてきたエドワードを追い返すようなことをするはずがなかった。
嫌がるエドワードさえ家に連れ込むような男だ、嬉々として家に招き入れるだろう。
男の言葉に圧力を感じたエドワードは、それを跳ね返すように首を振った。

「嫌だ」

男のコートの裾を掴んだ。
ふわり、と香る匂いは、先ほど染み付いた人の焼けたそれ。
恐ろしかった。けれど、エドワードには手が離せない。

「・・・鋼の」

呆れたような声音に、しかしエドワードは首を振り、なおさら掴む指の力を強めた。

「嫌だ!あんたを・・・っ」

確かめたいんだ・・・、と小さな声で呟いて。
そして、ひたすらに見上げる。
男の顔に、普段見せるような優しさがないか。自信家なあの表情はないか。
憎たらしいほど皮肉屋で、それでいて嫌になる寸前で掬い上げるような甘い笑みがないか。
男はしばらく少年を見下ろしていたが、やがて軽くため息をつくと、
少年の腕を掴んで立ち上がらせ、玄関へ引き入れた。
少年の身体は、どこかぎこちなく、固い。だが、それも当たり前だ。
あんな現場を目にしたのだ。しばらくは顔すら見せないだろうと思ったのに。
家主はエドワードの見えないところで少しだけ笑みを滲ませた。
わざわざ自分からここに足を運んだということは、それがどういうことか少しはわかっているのだろう。
ならば、存分にその身体を貪ってやってもいい。
久しぶりの再会で、丁度身体も飢えていたところだ。

「・・・さて」

上着と軍服を脱ぎ捨て、やっとゆったりとした普段着に着替えたロイは、
ベッドに座り込んだまま動かないエドワードに手を伸ばした。
本当はリビングで茶でも出そうかと思ったが、今のエドワードと言葉を交わすことなど何もなかった。
どうせ互いに沈黙するだけならば、さっさと行為に及んだほうが手っ取り早いというものだ。
だが、俯き加減のエドワードの顎を掴んで顔を上げさせると、
少年はひっ、と息を呑み怯えたような表情を見せる。
それがなぜか気に食わず、ロイは剣呑に目を細めた。

「何を怯えている?わかっていたことだろう」

どうせ、そのつもりで来たんだろうがと揶揄するように声をかけられ、エドワードの頬が染まる。
怯えるエドワードに、ますます硬質な声を漏らす男は、
そのまま強引に少年をベッドに押し倒した。
気付けば飢えたように彼を貪ろうとしている自分に、ロイは内心舌打った。
先ほどみた反抗的な態度と、今の怯えたような表情のギャップが、なんともいえずロイの嗜虐心を煽る。
相変わらずの中性的な滑らかな肌は、
以前逢瀬を交わしたときにつけた痕すらすっかり消え去っていた。

「・・・っ、あ・・・っ」

抵抗の強い身体を、強引に押し開いた。
つっぱねる腕をシーツにきつく押し付け、指先ではなく唇で衣服を肌蹴させて。
仰け反った胸に唇を寄せ、乳首に強く歯を立てると、それだけでエドワードは悲鳴のような声を上げた。
こちらも久しぶりだからか、敏感な肌は上気し、ピンク色に染まっている。
少しきつめに吸い付くだけで簡単に痕のつくその肌を、ロイは気に入っていた。
・・・そのかわり、刻みつけたはずのそれは、すぐに跡形もなく消え去ってしまうのだけれど。

「・・・エド。エドワード」

唇を噛んで横を向くエドワードに、ロイはその名を呼んだ。
こんな行為をしているというのに、喉から洩れた声音は甘さどころか冷たささえ滲んでいて、
エドワードは泣きそうになりながらかろうじて彼のほうを向く。
だが、目を泳がせる自分が気に食わなかったのか、ロイは顎を掴み、強引に視線を絡ませた。
恐怖。
少年の心が、ただ目の前の男への恐怖を訴えている。
エドワードの脅えた瞳に、ロイは目を細めた。

どうしてそんな目で私を見る。
まるで、―――人殺し、と言いたげな。
そこまで考えて、ロイは冷徹な仮面の下でくくっと笑った。
そうだよ、エドワード。
私は人殺しだ。彼女のみならず、何千、何万と殺してきた。罪ある者ない者問わず。
いつ、どこで殺したかすら覚えていない。
だが。とロイは思う。
同じ軍の狗であるエドワードに、非難されるようないわれなどないはずだ。
ただ、経験があるかないかだけの違い。
自分と同じく、人を殺すことを強いられる立場で。
今はまだ、人を殺し、殺されるということにひどく抵抗感を覚え、そして怒りに震える彼は、
ロイにとってひどく新鮮で、そしてひどく苛立たせるものだった。

同じ、国家錬金術師のくせに。
同じ人間兵器のくせに、どうして自分だけが正義のように胸を痛ませる?
・・・気に食わない。

ロイは、半ば無理矢理唇を重ね、舌を絡めてきた。

「んっ・・・ふ、うんっ・・・」

乱暴に内部を蹂躙され、エドワードは眉を寄せたが、
ロイは彼のことなどお構いなしに好き勝手にエドワードを貪っている。
そんな荒い扱いに、心は恐怖に怯え、そして痛んだ。
だが、そんなエドワードの心とは裏腹に、身体は興奮し、下肢は反応を示していて、
そんな相反する自分が嫌で、それなのにロイの腕から逃れられない。
ただ、抱かれに来たわけではなかった。
冷徹な表情で自分に踏み込ませない男に踏み込みたかっただけだ。
そのためならば、少しくらいの身体の関係など平気だった。
それに、確かにエドワードもまた、ロイと同じように飢えていたから。
だが、どんなに肌を晒し、そして触れ合っていても、彼に踏み込めない。踏み込ませてくれない男は、ただただ自分を見下ろすだけ。

「んっ・・・あ、あっ・・・大佐・・・!」

手のひらに己のものを包み込まれ、エドワードは懇願するようにロイを見上げた。
ロイは相変わらず観察するような表情でエドワードを見つめていた。
冷たい。
触れる箇所は、こんなに熱いのに。
こんなに熱いのに、視線は冷たく、声音もまた、ひどく冷酷で。
―――胸が痛い。

「ああっ、ロイ、や・・・あっ!」

こんなに痛む心を持て余しているのに、強欲なこの身体は喘ぐことしか知らないのか、
押さえることもできないまま声が洩れてしまう。
涙目で見上げた先のロイの石のような表情が、切なくて、やるせなかった。

「ロイ・・・っ」
「相変わらず、はしたない身体だな」

バカにしたような言葉は、しかしそれほどの感情すら篭っていない。
ただ、感想、とでもいうのだろうか。
冷静な、視線。熱に溺れる自分とは裏腹に冷めた態度を見せる目の前のこの男。
羞恥と、寂しさがない交ぜになった気がした。
自分だけ堕とされて、それを上から見下ろされているような。
それを意識した途端、自制の効かない体がびくりと反応し、ロイの手の中のそれが一層大きさを増した気がした。

「や・・・っ、あ」
「もう・・・限界なのか?」

ロイの言葉に、しかし今のエドワードには抵抗する気力もない。
彼の言うとおり、もう、身体も限界だった。
ぐらつく視界が男の表情すら揺らす。
ロイの背にしがみ付いたまま熱い吐息を漏らすエドワードは、
次第に激しくなる男の手に煽られて、限界に震えた。

「あっ、も、や・・あああっ!!」

ロイが強く擦りあげると、エドワードはあっけなく精を手の中に放った。
満たされない心のまま達かされた行為が哀しくて、エドワードは唇を噛む。
噛み締めれば噛み締めるほど心の痛みは増し、ついには両の瞳から涙が零れていた。
・・・止まらない。
関を切った感情は、次々と溢れていくばかり。
もう、男の顔も見えない。
片腕を折り曲げて、顔を隠す。あの冷たい視線に晒されるのはごめんだった。
今更、意味のないことではあるけれど。

「・・・っ、う・・・!」

洩れる嗚咽を、必死に噛み締める。
唇から血が出るほどに強く噛んでいたエドワードは、ふいにその唇を舐められ、そのまま歯列を割られた。

「あふ・・・、う、んっ・・・」

先ほどの貪るようなそれとは違う優しさの篭ったそれに、
また涙が零れた。
ロイが、エドワードの顔を隠す腕を取り上げる。
そのまま、寄せられる唇に、身体が震える。
いよいよ涙は止まらなくなり、男に吸い取られていくばかり。
エドワードはロイの胸元にしがみ付いた。

「なぁ、ロイ・・・っ!」

衝動に任せて、エドワードはロイにすがった。
それが、今の彼にどういう印象を与えるか、など考えが及ばない。
ただ、胸に湧く痛みに耐え切れないまま、その感情をロイにぶつける。
ロイは黙ってエドワードの言葉を聞いていた。
溢れる涙を唇で掬いながら。

「もう、俺っ・・・何を信じればいいのかわからねぇよ・・・っ!」

ぎゅっとシャツを握り締める指に力が篭る。
ロイは瞳を閉じた。エドワードの言葉を噛み締めるように。

「・・・・・・エド」
「あんたも・・・少尉も・・・みんな・・・みんなっ!!どうしてっ・・・あんな、ことに・・・!」

ひくつく喉元に口付けた。
嗚咽を漏らすエドワードは、幼い子供のようだ。
大人たち皆に裏切られ、何を信じればいいのかわからなくなった哀れな少年。
だが、今のロイには彼を慰める術など持っていなかった。
慰めるつもりもなかった。いつか、自分で答えにたどり着くしかないのだとわかっていたから。

「なんで、あんな・・・」

震える唇は、あの時見た光景を思い出しているのか。
自分が焔を駆使し焼き尽くした・・・あの人間の焦げた匂いと、硝煙と、そして渦巻いた憎悪と。
まだ15やそこらしかない少年には、本当は見せたくなかった光景。
だが、見てしまったなら仕方がない。
受け入れてもらうだけだ。
ロイは無言で下肢を探った。濡れた指で周囲をなぞれば、エドワードがひっと喉を鳴らす。

「う、ああっ・・・!」

ずっ、と容赦なく指を差し入れ、奥を探った。
きつい締め付けはぬるりとした体液に助けられ、ロイの指を呑み込んで行く。
一旦呑み込んでしまえばあとは周囲を軽く刺激してやるだけでひくつく内部は、
ロイにとって最高の場所でもあった。
じっくりと周囲をほぐし、たまに掠めるように前立腺を引っかいてやれば、ああ、と仰け反ってエドワードが悲鳴をもらした。

「っ、・・・どう、して・・・っ」

快楽に浮かされながら、少年の心を支配するのはやり場のない孤独感。
ロイは顔を顰めた。これでは、興ざめもいいところだ。いい加減、黙らせなければ。

「・・・、ロス、少尉っ・・・」
「・・・君は、ここに何をしに来たのかね」

ロイの一段と冷たく、そして低まった声音に、エドワードは恐怖に震えた。

「彼女を悼むためか?ならばお引取り願おうか。ここはふさわしくもなんともないよ」

彼女を殺した男に抱かれながら彼女を悼む?
冗談はやめてくれたまえよ、と口元を歪ませて。

「・・・っ、違・・・!」
「じゃあなんだ。私を責めるつもりか?私が何かしたとでもいうのかね」

我々は軍の狗だよ、鋼の?と耳元で囁かれ。
身体が竦むほどに、ロイの口元に引かれた笑みは妖しく、そして恐ろしかった。
そして、・・・ひどく、美しかった。

「あ・・・ロイ・・・っ・・・」

いつもの彼を求めるように、エドワードは腕を伸ばした。
皮肉屋で、憎たらしいほど自信家で、それでも触れた指と声音だけは優しかったロイを探す。
ロイの首に腕を回して、きつく抱き締めると、それ以上の力で背を抱かれた。

「あ・・・」

ぬるり、と下肢どうしが触れ合い、エドワードは息を呑んだ。
触れ合う箇所全てが熱い。狂わされそうなそれに、エドワードは耐えるように目を瞑る。
下肢から指を抜かれ、そして足を抱えあげられた。
宛がわれるものは、熱く昂ぶったロイのそれ。

「あっ・・・は、あんっ・・・!!」

ずずっ、と内壁を擦りながら、ロイの楔はエドワードの内部へと侵入してきた。
弾ける液体の音が生々しい。エドワードは今更のように赤くなる。
頬に唇を寄せられ、その甘やかな感触に酔わされた。

「んっ・・・あっ、はあっ・・・」

次第に激しくなるロイの動きに合わせて、エドワードの腰が揺れた。
痛みは常にエドワードを苛んだ。だが、それ以上の快楽に浮かされ、何も感じられない。
ぞくり、と下肢から震えが走り、吐息が洩れる。
息が詰まりそうなほどの快感に、
エドワードは細く息を切りながらせわしなく呼吸を続けていた。

「あっ、や・・・あ、ロイっ・・・!」
「エド・・・エドワード」

いささか快楽に掠れた男の声音が、どこか懐かしく、そして愛しかった。
ぱたり、と汗がエドワードの胸元にしたり落ちる。
ロイは舌を這わせ、突起を嬲った。
歯を立てれば、内部もそれに合わせてきゅっと収縮する。快楽に眉根を寄せる。

「あ、あっ!ロイ、やぁっ!」
「・・・・・・愛しているよ、エドワード」

突然のロイの言葉に、エドワードは呆然と彼を見上げた。
その声音は、先ほどまでずっと感じていた冷静さは健在していたが、それでも感情が篭っていることは感じ取れた。
唇を寄せられ、エドワードはそれを受け入れる。
甘く舌が絡んで、互いを奪い合うようなキスになった。
下肢が強く突き上げられた。エドワードは思わず目を瞑った。身体が痺れる。快感が走る。
ロイの指先がエドワードの前に絡みつく。蜜を掬い、砲身になすりつける。
朦朧とした視界の中で、一瞬だけロイの悼むような表情が見えた。
ただ、快楽に耐えていただけかもしれない。けれど、エドワードはふっと思った。
本当は、あんなことなどしたくなかったのかもしれない、と。
そして、死なせてしまった彼女を誰より悼んでいるのは、彼なのかもしれない、と。
勿論、確証などない。
自分が勝手にそう信じたいだけかもしれない。
冷たい瞳の奥で、悲しみに暮れているのだと、そう思いたかっただけかもしれない。
それでも。

「たい、さ・・・」
「エドワード・・・・・・」

甘い甘い声音が自分の名を紡いだ。
ああ、これだ。
求めていた声音を耳に吹き込まれ、熱がぐっと上がる。
繋がった下肢はロイに貫かれ、もう従順に躍動を続けていた。
エドワードは目を閉じた。

「あっ・・・好き・・・、好きだっ・・・、ロイ・・・!」

何度も、何度も。
たったそれだけを繰り返す。
そう、大好きだ。何度裏切られても、ずっとずっと。

「エド・・・」
「ああっ、や・・・もっ・・・ロイっ・・・」

きゅっとしがみ付く腕に力が篭る。
ロイは限界に眉を寄せ、エドワードの最奥を貫いた。
目の奥がはじけ、視界が真っ白に染まる。
眩暈のするような感覚に、そのまま意識が薄れる。
しっかりと抱き合いながら、2人はほぼ同時に果て、そのまま意識を快楽に委ねていった。










目が覚めたときは、すでに朝だった。
カーテンの隙間から日差しが洩れていた。寝過ごしてしまったことにエドワードはちっと舌打つ。
もちろん、隣にいた男はいなくなっていた。
あんなことを自ら手を下したのだから、事後処理やら聴取されたりといろいろと忙しいだろう。
サイドテーブルに鍵だけが置いてあった。
エドワードのために、置いていってくれたのだろう。
エドワードは隣のへこみに頬を寄せ、そのまま甘い余韻に瞳を閉じた。

「なぁ、ロイ。」

エドワードは今は居ぬ男に声を掛けた。
もちろん、反応などなかった。けれど、そのまま続ける。

「俺は・・・あんただけは信じたいんだよ。誰が敵でも、あんただけは・・・・・・」

―――信じてる。

たとえ、信じがたい行為を行おうと、彼を裏切る行為をしようとも。
きっと、ずっと信じているだろう。
愛する人を。自分を、ここまで導いてくれた人を。

だから、お願いだよ。
信じさせて。信じていいと思わせて。

皺のよったシーツに口付けながら、エドワードは呟いた。





end.




Update:2004/06/16/WED by BLUE

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