崩壊前夜。Ep.03



<<百夜教>>と『帝ノ鬼』の全面戦争が始まってから、既に2週間が過ぎようとしていた。
ついでに言えば、仲間たちが自分の住んでいるマンションに住み始めて1週間。
そもそも、何故かたまって過ごしているかと言えば、
通っていた第一渋谷高校が閉鎖され、自宅待機を命じられたことに加え、
全面戦争の首謀者である柊真昼の捜索に当たっている柊暮人から
直々に指令が来るのを待つ身であるからである。

―――ではあるのだが。

「・・・暇ですね」
「暇だな」
「確かに」
「ほんと、全く音沙汰ないな」
「平和だなぁ〜♪」

最後の能天気な台詞は、ご想像の通り柊深夜である。
だが実際、彼らの言う通り、あれ以来自分たちの周囲ではまったくもって何も起こっていなかったのだ。
無論、暮人からの指令もない。
彼が既に前線に出ていて、連絡が取れない状況、というわけでもない。
連絡をしても、待機していろ、の一点張りなのだから。
だから皆、持ち込んでいたTVゲームもそろそろ飽きてきて、無論ボードゲームもとうに飽きてしまっていた。
(ちなみに、これでもちゃんと修練もしている)
TV番組は、相変わらず当たり障りのないニュースばかりやっていた。
ドラマもお笑い番組も、芸能人もだ。まったく何事もなかったかのように
くだらない話題や恋愛のもつれ話をテーマにしたドラマばかり流れていた。
そして、既に2週間が過ぎている。
『帝ノ月』や『帝ノ鬼』サイドから入ってくる情報では、各地で派手な戦闘が行われているはずなのだが
そのどれもが、ニュースとして表に出ることはなかった。
多少派手に破損があったものは、事故で・・・等のあいまいな表現ばかりだった。
というわけで、今の所、自分たちの周りでは本当に何もなかったのだ。
おかげで、自分も含め、鬼呪によって底上げされた力を実践で扱うのに十分な修練を積む余裕も出来た。
だが、正直自分たちだけ蚊帳の外である感も否めない。
ましてやグレンは、皆には言っていないが、1か月以内に真昼を殺さなければ、
『帝ノ月』所属の人間たち・・・まずは当主である父親を殺す、と暮人には脅されているのだ。
顔には出せないが、内心では焦燥感が渦巻いていた。
こんな所でくすぶっている場合ではない。
本気で真昼を殺すかどうかはともかく、会わねば進展もなければ、今後どう出るべきか、
その対策すら見えてこないというのに。
グレンはポーカーフェイスの下で、無意識に組んでいた両手を握り締める。
それをちらりと見やり、深夜は肩を竦めた。

「ま、平和なのはいいけど、世の中から取り残されてる気もしなくもないしねぇ。
 グレンのつまんなそうな顔もいい加減見飽きてきたし、そろそろこっちから動いてみる?」
「ちょ・・・///深夜様、それは・・・w」
「・・・深夜様・・・!うまい!!」
「お前ら、早く帰れ!!」

いい加減、くだらない会話を聞いているのも飽きた。
手元の呪術書をぱたんと閉じて立ち上がると、2人の従者たちは、主に迷惑をかけまいとそそくさと片づけを始め、
五士もまた背伸びをしながらひとつ大きく欠伸をして、「じゃ、また明日〜」と手を振ってくる。
生真面目に時雨たちと部屋の片づけを手伝っていた美十も帰ってしまうと、
あとは部屋にはグレンと深夜だけが残された。
深夜はというと、まだ自分の部屋に戻るつもりがないのか、ゲームの攻略本(最近SLGにハマっているらしい)を読み耽っている。
だが、追い出す気力も湧かないグレンは、
完全に無視して従者たちが準備してくれていた湯船に浸かった。
毎日のように、これが最後だろうと思いながらいろいろ物思いに耽りつつ長湯をしているのだが、
ここ1、2週間は本当にゆったりと時間が過ぎていた。
TVや新聞だけの情報を見ている分には、何も起こりそうな気配はない。
12月のクリスマスまで2か月を切った。今は10月半ば。
真昼の言う通り、クリスマスに世界が滅びるなら、果たして何がきっかけになるのだろう?
ウィルスが捲かれる、というのなら、そもそも本当に自分たちは生き残れるのか?
少しだけ、グレンは自嘲するように笑った。
その時、果たして自分の野心にはどれほど意味があるというのか。
世界が滅びた先にどんな未来が待っているのか、今のグレンには想像もつかなかった。
とにかく、明日は深夜の言った通り、自ら動いて現状を探ろうと決意した、まさにその時だった。

「ちょっと、置いてかないでよ〜」

すこしだけ不満そうな、しかし楽しげな声音と共に、
ガラリとバスルームのドアが開けられた。目の前にはほとんど全裸の深夜。グレンは顔を顰めた。
この男の無遠慮さは今に始まったことではないが、最初の頃からいちいち付き合ってやるのも面倒で
無視してばかりいたからか、最近特にエスカレートしている気がする。

「本に夢中になってたんじゃないのか」
「もう飽きたよ。っていうか、ここはグレンから誘うところでしょ」
「はぁ?」

・・・まったくもって意味が分からない。
そもそも、端の部屋を宛がわれたにも関わらず、深夜は毎晩この部屋に居座っているのだ。
このまったりした空気のせいで、新婚生活気分か!?と突っ込みたくなる。
グレンは深々とため息をついた。

「いい加減、お前のくだらない恋愛ごっこに付き合ってる暇はないんだよ」
「いや、あるでしょ」

苦笑して、バスルームに足を踏み入れてくる。
追い出そうかと思ったが、バスタブに浸かっている今の状況では対処のしようがなかった。
というより、面倒臭かった。力ずくで彼を組み伏せることも出来たが、
今更である。もう何度も身体の関係を持っていたし、彼の言う通り、特にしなければならないこともない。
そもそも時雨にも小百合にもバレてしまっているから、抵抗する意味もないのである。

「少なくとも今日はさ。
 ・・・明日からは、こっちから動くんだろ?そしたら、何があるかわからない。
 一瞬で、この平穏は壊れるかもしれないんだ。案外、今夜が最後の晩餐かもしれないよ?」
「・・・まったく」

こういう時、たまに真剣な顔をしてくるから困る。
寒そうにシャワーのコックを回し、湯気が立つほど熱い湯を浴びて、既に先客がいるにも関わらず
湯船に足を入れてくる。幸い、多少広めの湯船だったからなんとか湯が溢れずに済んだものの、
男2人ではやはり狭い。
しかも、直ぐに深夜は、グレンの身体を跨ぐようにして身を寄せてきて、
今度こそグレンは彼の腹に膝蹴りをかました。

「ぐえ」
「邪魔なんだよ」
「そう言うなよ。いい思いさせてやるからさ」
「いい思いねぇ・・・。なんなら、泡姫でもやるか?」
「おっ、グレン、興味あんの?」
「別にねぇけど」

ない、といいつつも、深夜が下肢に手を這わせてくると、
グレンも満更でもないように目の前の男の腰に腕を伸ばし、引き寄せた。
深夜はきらきらと目を輝かせて顔を間近に近づけてくる。何を求めているのか、強請っているのか、
嫌でもわかる。身体は女性の柔らかな肢体とは違い、あまりいい感触とは思えないが、
キスをされて嫌な気はしなかった。
自分から重ねてくるくせに、少し舌を絡ませるだけで瞼を伏せて、頬を上気させる姿は
非常に悔しい話だが、妖しい色気がある。
目を細めて、それを眺めながら口内の柔らかな部分に何度も舌を這わせると、
腕の中の男の身体がぶるりと震えた。
確実に、抱かれることに慣れてきている身体だ。
彼自身が望んだこととはいえ、自分が慣らしたものだと思うと、それなりに心が動かされた。

「お、マットあんじゃん」
「ただの風呂マットで何するつもりなんだよ。しかもローションもないし」
「なんで用意してないわけ?有り得ないんだけど」
「あるわけないだろ!」

ついつい馬鹿な発言に乗せられて声を荒げてしまったが、
深夜は別に気にした風もなく身を起こすと、再び湯船から上がった。
立てかけていたマット(基本的にグレンは必要なかったので使ったことがなかった)を敷き、
そうしてシャワーの湯をかける。本来のプレイ用のマットはもっと厚みがあって不安定なはずだが
これはあまり厚みもなく、平べったい。
ローションももちろん、ない。これでは雰囲気も出ないと思うのだが、
深夜は何故か乗り気らしい。
というか、どこからそんな知識を仕入れる暇があったのだろう。
まぁ最初から不真面目そうな奴ではあったが。

「どうでもいいけど、君の従者たちって風呂の世話もさせてたの?」
「まぁ、やりたがってたからなぁ。背中くらい流させてくれ、とか言って」
「うわぁ、もしかしてとっくに手出してるわけ?」
「んなわけないだろ。
 ったく、何度俺に恋愛なんぞしてる暇はないって言わせりゃ気が済むんだよ」
「そりゃ〜、あんな可愛い子ほっとくグレンが悪いよねぇ」

非難しているのかそれとも肯定しているのかよくわからない顔で
深夜はグレンの手を引き、温かくなった(はずの)マットの上に誘った。
もういちいち突っ込みを入れるのも面倒なので、なすがままに、マットの上にうつぶせ寝になる。
俗に言う『裏』というヤツだ。
本当はローションを塗りたくったりするプレイのはずだが、
代わりに深夜はボディソープを大量に出し、男の背中に塗りたくり始めた。
水分と一緒になり、それなりにぬめった感触がしてこなくもない。とはいっても、別に手で塗られてもそれほど気持ちよくないし、
その後、既に息を荒げている様子の深夜が覆いかぶさってきて、
どうやら自分の身体を使ってボディソープを塗り広げようとしてきているようだったが、
これまたイマイチ気分が乗らなかった。
そもそも、骨ばったやせ形の男の身体で何かされても、気持ちよくも何にもないのである。
時折下肢にあたる深夜自身の昂ぶりのほうが気になってしまう、というのもあるのだが。

「っは・・・、グレン、気持ちイイ?」
「・・・残念だが、お前の努力は無駄かもなぁ・・・」

相手に体重をかけないように身体を支えながら、身体を触れ合わされる位置で動くというのは
なかなか辛い体勢のように思う。性的な興奮というよりは、純粋に体力的な問題で額に汗を滲ませながら
深夜は不満そうに唇を尖らせた。
もちろん、やったこともなかっただろうから、仕方のない話ではあるのだが。

「じゃあ、どんなプレイが好みなのさ?」
「知るか。風俗嬢のくせに、客に好みをソッコーで聞くなよ」

というより、正直自分もよくわからない。
ただ、悔しげになんとか相手の性感を高めようとしている深夜の様子はそれなりに面白かった。
ローションなら楽なのだが、ボディソープでは直接肌を舐めることができないと判断した深夜は、
再びシャワーを浴びせてくる。泡が流れた部分から下肢に向かって舌を這わされると、
それなりに欲望を煽られる。
最初はためらいがちな感触だったのに、途中から夢中になって吸い付いてくる音まで響いてきて、
グレンは少し笑った。深夜は気づかない。
尻まで舌を這わせた後、今度は両足を男の下肢の下に挟み込み、そうして腰を持ち上げる。
何をするのかと思いきや、出来た隙間に掌を差し入れ、深夜は熱を持ち始めている男の楔を包み込んだ。と同時に、
もう片方の手には鎮座する袋を包み込む。両手で男の大事な部分にやわやわと刺激を与え、そうして
舌でその周囲を弄るように何度も舐め上げていく。
男の弱い部分を集中的に責められて、さすがにグレンも唇を噛み締めた。
気持ちいい、というより、もう他人任せでは足りない、という欲望が擡げてくる。
そろそろ、深夜の好きにさせるのも飽きてきた。

「もういい、深夜」
「・・・っえ」
「お前だって、早くイきたいんだろーが」

身を起こして彼の下肢を見ると、もう既にはち切れんばかりで、天を向いている。
少し扱いてやるだけで、もう衝動を抑え切れずに深夜は切なそうな表情を浮かべた。更に頬が紅潮する。
逆に自分がうつ伏せに返され、腰を高く掲げさせられる。
そうして、先ほど自分がしたようにボディソープを秘部に塗り拡げられ、そうして一気に内部に押し込まれる指。

「っ、アァ―――ッ・・・」
「っは、ここ最近毎日ヤってるからなぁ。病みつきになってきたんじゃねぇか?」
「うるさ・・・」

口では否定していても、下肢は既に、物欲しそうにひくひくと痙攣を繰り返している。
ぎゅ、と自分の指を締め付けてくるナカに愉しげに笑い、そうして2本、3本と突き入れる。
内部は柔軟で、内壁をなぞると深夜の悲鳴のような嬌声が漏れてきた。
前立腺の位置を探ってやるだけで、もうたまらない、と頭が揺れる。

「早く・・・いれてよ・・・」
「どんだけ淫乱なんだよ」

苦笑して、指を抜き去る。喪失感を覚えると同時に、宛がわれる熱塊。
引き裂かれる―――いつだってこの時ばかりは恐怖しかない。どれほど慣らしてみても、
この男のそれを受け入れるくらいに下肢が拡がるとは思えなかった。
だが現実に、何度もナカで感じている感触を思い出し、
一気に興奮が高まった。
すっと添えるようにグレンの掌が男の欲望にかかり、そうして秘部はじわりと侵入を許していく。

「っア、グレ・・・っ!!」

強い締め付けと、内部の熱い感触。
それを愉しみながら、最奥まで男の内部へ侵入を果たすと、
既に深夜は、マットに額を押し付けたまま、息も絶え絶えだった。
背中を抑えながら少しだけ腰を引いて、そうして再び奥を貫く。反り返ったはち切れんばかりのそれが、
強く前立腺を刺激するものだから、そのたびにグレンの手のひらに包まれている深夜自身からは
先走りが溢れだしていた。
気が向いて、彼の背の骨の部分をなぞるように舌を這わせ、音を立ててアトをつけてやると、
甘い声と、ぞくりと震える肩。全身で快楽を受け止めようとしていう深夜に、
こちらも更に煽られる。

「深夜・・・ナカでいってもいいか?」
「今更でしょ・・・早漏のキミが、調節できるとは、思えないし」
「ほお〜。どっちが早漏か、試してみるか?」
「っあ、ア―――っ」

ぐっと手のひらに力を込めて、深夜の雄を、根本から先端までを指先でなぞるだけで、
一気に全身に走る快感。痺れるようなそれと、視界のホワイトアウト。
その後、グレンの手の中やマットに、溢れるほどの白濁が吐き出されていた。
いとも簡単にイかされてしまい、深夜の顔が悔しげに歪む。
だがしかし、横暴な男に文句を言っている暇などなかった。精を吐き出してしまい、ぎゅ、と締め付けをきつくしたナカを、
容赦なく男の硬く膨張したそれで擦られ、強すぎる刺激が痛みになる程。
それでも、不意に身体を返されて、下肢を繋げたまま、グレンが正面から唇を重ねてきて、
再び下肢が熱をぶり返し始めていた。思わず男の首に両腕を絡み付かせて、縋り付く。
何度も何度も擦られる内部からの粘着質な音が、ひどく羞恥心を煽った。
だが、もう、今更。
自分がグレンにこれほど感じていることは、どんなに取り繕っても隠すことはできなかった。

「また、先にイかせてやろうか?」
「・・・勘弁してよ・・・」

腹の間で再び勃ち上がったそれを掌で捕えながらの、意地の悪い言葉。
耳元のその声音がひどく心地よくて、深夜は唇を噛み締めながらも下肢の感覚を追った。
何もかも、どうでもよくなるような、快感。
自分の身体の全てが悦びに震え、この瞬間をこそ待ち望んでいたと訴える。
ぎゅ、と首にしがみ付きながら、深夜は男の肌に爪を立てた。
その瞬間、身体の内部にじわりと広がる、男の証。

「っは・・・はは、また腹壊すかなぁ・・・」
「ナカ洗えばなんとかなんだろ」
「ったく、簡単に言ってくれるよねぇ・・・ま・・・いいんだけど・・・」

男の熱を下肢に感じながら、深夜は再びキスを強請った。
繋がったままの体勢で抱え込むように唇を重ねながら、グレンはやばいな、とぼんやり思う。
このまま、何も起こらず、ゆったり時間が流れてしまっても。
世界の崩壊など関係なく、
このまま皆で、この隔離された環境で過ごしていても、それでもいいかな、などと一瞬でも思ってしまった自分に、
グレンは苦く笑って、しかしそのまましばらく動くことはなかった。





...to be continued ?





あ、リアルに普通のボディソープでナカを洗うのはやめたほうが・・・
てかギャグ路線が一気にエロ路線に・・・まぁいいか(爆)





Update:2015/03/08/SUN by BLUE

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