初めてを独り占め。     (※深グレ注意)



「なぁなぁ」

夜も更けた頃。
2人きりになったグレンの部屋で、深夜はごそごそとソファに腰かけて本を読んでいるグレンの隣に座りこんできた。
今はもう、誰の視線もない。他人がいる所では、頑なに深夜が絡んでくるのを拒むグレンだが、
2人きりになってしまえば、別にわざわざ押しとどめる必要もない。
単純に、面倒だから勝手にさせている、といったほうが正しいのだが・・・
まぁとにかく、深夜は2人きりの時は、いつもべたべたと引っ付いてきた。何が楽しいんだかわからないが、
こちらがうざったそうな顔をすると、更に嬉々として絡みついてくるのだから手に負えない。
そんな深夜が、自分の手元の本を取り上げ、自分のほうを向くよう要求してくる。
なんだよ、と軽く睨みつけてやると、深夜は目をキラキラと光らせたまま口を開いた。

「もうすぐ、11月22日なんだよねー」
「それがどうした」

確かに、今日は11月21日で、あと数分もすれば、翌日は22日だ。
だが、11月22日、という日付に予定もなかったし、特に重要なイベント事などなかった気がするのだが。
少なくともグレンの記憶ではない。
怪訝な顔を深夜に向けると、

「ええ〜!!?グレン、11月22日が何の日かも知らないの〜?!」
「・・・・・・(怒)」

深夜の、あからさまに馬鹿にしている態度に、少しだけムッとしてしまう。
いや、しかし、全国民が知っているレベルの国民の休日でもないだろうし、勤労感謝の日は・・・23日だったはずだ。
22日に、一体何があるというのか。

「ったく、これだからグレンは真面目すぎって言うんだよ」
「うるさい、俺は興味ない。だから話は終わり・・・」
「11月22日はねぇ〜、いい夫婦の日だよ〜」
「―――っ、」

間近に顔を寄せていた深夜が、唐突に唇を重ねてきた。
それも、首に両腕を絡ませて、甘えるように。逆にグレンはあまりに下らない発言に
思いっきり冷めてしまったのだが。
それでも、まぁ、彼を振りほどくのは容易ではなかったから、
半眼で彼の熱の篭ったくちづけの、その最中の顔を眺めてやる。まぁほとんど近くて焦点は合わなかったのだが、
それでも深夜は真剣に自分の唇を緩ませようと何度も角度をかえて重ねてくるし、
歯列を割ろうと舌を伸ばしてくるものだから、少し笑った。
ほとんど経験がない故の、ぎこちない動き。まぁ自分も別に慣れているわけではないのだが、
そこは棚に上げておく。ただ彼は、自分でリードしたくて必死なようだった。
唇を軽く離す度に荒い息を吐き、そうして頬は上気している。
そんな必死な彼に折れ、口内に濡れた舌を受け入れる。間髪入れず、こちらも舌を絡め、そうして
強く吸い上げてやった。彼の身体が微かに震える。快楽を得ているのは明らかだった。

「っとーに、くだらないな」
「だって僕たち、新婚さんみたいなもんでしょ?」
「お前頭沸いてるだろ」

苦笑する。ここ最近の鬼呪の研究についてはかなり進展があったし、真昼の包囲網も随分狭まってきていて、
もう、こんな場所で、悠長に過ごせるわけではないのだが。
だから今日、こうやって夜を2人で過ごせるのは、確かに珍しかった。
身体を重ねるのは、まぁある程度は予想していた。
だから別に抵抗はない。むしろ久しぶりの行為に、密かに期待している自分もいた。

鬼を受け入れた今、自分の欲望ははっきりと認識できるようになっていた。
今までは、野心という強い意志が邪魔して、自分が本当に大切なものや、欲しいものについて、あまり見えていなかった。
それが今は、悔しいことだが、浅ましい自分の欲が、他人と馴れ合うことが嬉しいと思う気持ちがわかる。
それを認めるのは、今でも正直難しいけれど―――
物思いに耽りそうになる自分を、深夜は引き戻した。真正面で向き合って、そうして、視線を絡め合う。

「で、さ。
 問題は、僕は苦しくも、君に処女を捧げてしまったわけよ」
「・・・まーなぁ」

結果的には、まぁそうなるか。
別にこいつの処女なんか、0.1%も欲しいと思ったことはないし、成り行きでそうなってしまっただけで
考えたことすらなかったのだが、どうやら彼は気にしていたらしい。
というより、そもそもどうしてこんな関係になってしまったのかといえば、

「お前から差し出してきたんだろ?」
「いやいや、グレンが差し出せって言ったじゃん」
「差し出せって言われて素直に差し出す奴のほうがおかしいだろ」
「だって、君が欲しかったから」

はぁ、と熱い息を吐いて、深夜がうっとりと男の背にしがみ付く。
そうして片手はシャツの前を開き、素肌を晒す。頬に口づけ、耳に口づけて、そうして首筋から、喉元を辿る。
血管の太い部分、熱い動脈を意識して、深夜はごくりと喉を鳴らす。
それは、彼の生きている証で、

「・・・僕のモノにしたかった。何とかして君を繋ぎ止めておきたかった。君を縛りたかった。閉じ込めたかった。
 ずっと、君に踏み込む手段を考えてた。
 だから、こういう結果になって、まぁ僕は後悔はしてないんだけど・・・」

どうやら、そこが悔しいわけではないらしい。
普通、男が男に組み敷かれて、ましてや突っ込まれて女の代わりのように扱われるのは
屈辱的ではないかと思うのだが、
まぁ、彼にとっては今更、そんなことはどうでもいいのだろう。
彼は、まぁ自分もだが、例えどんな拷問だろうと、例え肉体的な苦痛や屈辱であっても、屈しない自信がある。
そんなことくらいで、精神的に落ちるようでは生きていけない世界だからだ。

「・・・じゃあ、何の問題がある?」
「欲しいものがあるんだよね」
「何だ」
「君の処女を、僕にくれない?」
「はぁ?」

グレンは眉を潜めて、深夜の顔を見た。
彼の口元は笑っていた。だがしかし、表情は真剣で、返答に困ってしまう。
単純に断ることはできる。無理矢理彼を押しとどめることも。
力で負けることなど在り得なかった。自分が本気であれば、彼を殺すことすらできるだろう。
深夜の掌はいつになく大胆で、男の肌を、官能を煽るように何度もなぞっていた。まだベルトも外していないグレンの腰に腕を絡め、
そうして、ボトム越しから思わせぶりにその箇所を辿って行く。
少しだけ考えて、結局グレンは肩を竦めた。

「・・・残念だが」
「え、まさか処女じゃないとか」
「殺すぞ」

そもそも、男として生まれてきて、自分たちの処女がどうのこうのという会話をすることになるとは思いもしなかった。
まさか、こんな関係になるとは。
正直、今にして思えば、初めてこの男を抱いたときも、自分の雄がなぜ勃起したのか不思議だ。
それだけ、彼の中性的な顔は、そこらの女に引けを取らないどころか、
下手をすればそこらの女よりも美しかったのだ。
無論、口には出さないが。

「んん〜じゃあ、お願いがあるんだけど」
「・・・何だ」
「僕の筆おろし、してくんない?」
「死ね」

今度は即行でお断りする。
というより、言い方を変えただけで、同じことを要求しているだけで、
結局、彼が求めているのは、端的にいえばたまには攻めてみたいと―――そういうことだ。
いや、それより、筆おろしをしろと言っていたか。
そんな、一般的に考えれば男の沽券に関わるような内容を軽々しく自分に話してしまう深夜は、
それなりに自分に対する信頼が厚いのだろう、とは思うが・・・
まぁ、相変わらず馬鹿な奴だとは思う。

「真昼に頼めばよかっただろ」
「そりゃ、迫ったことあるけどさぁ」
「あるのかよ」

あまり聞きたくなかった、とばかりにグレンは顔を歪める。

「一応、婚約者だよ?仮面とはいえ、そういう、たまにはそういう機会もカモフラージュのためにはあってもいいと思ったんだよねぇ」
「ほー。・・・んで?」
「『私はグレンのために処女とってあげてるから、貴方とは無理』って言われた」
「・・・恥ずかしい奴だな・・・」
「でしょ!?めっちゃ恥かいたしさ。だからってそう簡単にホイホイ外で遊べる立場じゃなかったし。で、悔しいことに」
「今でも童貞ってかwww」
「笑うな!」

少しだけ顔を赤らめて、う〜と唸る。
そんな深夜は、いかにも背伸びしたいお年頃、という感じで少し面白いと思う。
その姿は、最初に出会った頃の、何か含みのある物言いばかりしていた彼とは全く違っていて、
ひどく素直に聞こえる。何の打算も計算もない彼の態度は、
常に緊張を強いられる立場にいたグレンにはとても新鮮で、その時ばかりは、自分もまた、一瀬の肩書きも何もない自分に戻れる気がした。
馬鹿な話だ。所詮、柊と一瀬の立場なのに。
こうして二人きりでいられる時だけは、ただの等身大の自分でいられる、など。

「だからさ〜グレン〜」
「うるせぇなぁ」

とはいえ、そもそもこんな関係になったのも、彼の我儘から始まったもので、
毎回こうやって彼の強引さに折れて夜も付き合ってやっていたから
正直、今回もまた彼にほだされてしまうのは癪に障る。
処女だとか童貞だとかは本当にどうでもいいのだが、こいつの望み通りに与えてやるのはつまらなかった。
どうせなら、もっともったいぶるほうがいい。
グレンはべたべたと引っ付いて強請る深夜の腹を蹴って引き剥がそうとした。

「今なら、真昼も相手してくれんだろ。
 よしお前今から屋上行って『真昼、僕の童貞卒業させて!』って叫んで来い」
「何その羞恥プレイ!」
「嫌なら諦めろ。ってか、お前だって、今なら女の1人や2人くらい手出しても殺されないだろ」
「んもぅ、僕はグレンで卒業したいの!」
「だからなんで俺なんだ」
「好きだからに決まってるだろ!」

まったく、どうしてこいつはここまで必死なのか。
臆面もなく自分を好きだと言ってくるところが逆に怖い。
形だけとはいえ、許嫁の女を寝取られておいて、怒りを覚えるどころか
好きだと訴え駄々を捏ねてくる所が。しかもそれが、本気で何の意図や悪意もないものだから
いよいよグレンも手に負えない。
鬼に欲望を食われ、己の秘めていたはずの欲望も引きずり出され、
彼は暴走しているのか。
深夜は、唇をとがらせて、今度こそグレンを離すまい、と腰を掴み、肌蹴られた腹に顔を埋めてきた。
ボトムの布ごしに、グレンの下肢の、中心部分に口づける。
グレンは眉を顰めた。
ここで自分の身体が何の熱も持たず、深夜の姿にまったく反応していないのなら、
このまま突っぱねることもできただろうが。
今ではもう、何度も何度も身体を重ねてきた故の条件反射なのか、
深夜が乗り上げてくるだけで、彼の身体を感じたいという欲望が擡げてくるのだった。
まったく、情けない話だ。
布地を押し上げて、ふくらんでいる箇所に、深夜は愛おしげに唇を寄せる。

「だって、今日は、僕の誕生日だからさ」
「・・・はぁ!?」
「だから、グレンも僕にプレゼントくれたっていいだろ?」
「・・・・・・。」

そんなのは、本当に、どうでもよかった。
どうでもよかったのだが、彼にとっては、この記念すべき16回目の誕生日に、
どうしても自分を抱きたいらしい。
今回ばかりは、どうあっても引く気がないらしい深夜に、
とうとう、グレンは折れた。
深々と、ながい溜息をつく。反射的に、深夜が顔を上げる。その顔は、ムカツクことに、期待に満ち満ちた顔。

「〜〜〜っ。。。一度だけだからな!」
「うんっ」
「これからはもっと俺に尽くせよ」
「尽くす尽くす!もう一生お前についてくから!!」
「・・・嘘くせぇ」

ぼやくが、一度許可を与えてしまったからには、深夜は一気にテンションを上げていた。
グレンの気が変わる前に、と性急にベルトを緩め、下肢に顔を埋める。グレンのボトムを下肢から脱がせるように隙間に両の掌を差し込み、女のそれとは違う、鍛えられ、張りのある尻を辿っていく。
下肢を中途半端に脱がされ、そのまま大した余裕もなさそうに自分の雄に舌を絡めてくる深夜に、
グレンは苦笑した。もう、グレン自身は深夜の根本から茎の部分を包み込む手のひらの動きと、亀頭を舐め回す舌のせいで既に天を向き、男のナカに侵入するのを待ち望んでいるようだった。
だが、今回は違うという。
今回ばかりは、身体を明け渡さねばならないのは自分の方らしい。
その割には、かなり興奮したように己の雄に頬擦りしてくる深夜の姿は、なんとも官能を煽った。
今更、途中下車はできない。自分も、彼も。
深夜の、自分の背後に回った両手の指が、探るようにグレンの秘められた箇所へと到達する。
グレンは眉を顰めた。
確かに、経験のない場所でもあったが、そこまで自分で日常的に触れる場所でもない。
ましてや深夜は、かなり無遠慮にそこに触れていて、
ひどく興味深げに男の窄まった襞を撫でたり広げたりしている。
・・・ガキかよ。

「あ〜・・・やっぱ狭そう」
「当たり前だろ」

グレンは、くいくい、と指で洗面所の棚を指し示し、顎をしゃくった。

「ローション使え」
「なにそれずるい。僕の時は何も使ってくれなかったくせに」
「うるさい。いいから使え。殺すぞ」
「もーワガママ!」

不平不満を言いつつも、深夜は素直に洗面所にローションを取りに行く。
はぁ、とため息をつきつつも、グレンは脱がされかけたボトムを、ベルトを締めないまま履き直し、
リビングのソファから立ち上がった。
何にせよ、本気で肌を重ねるのであれば、ソファは狭すぎる。
というのもあるが、リビングのソファは、日中は他の仲間たちだって使うのだ。
下手に濃厚な行為でもして、シミを作ってしまってはいろいろと面倒なことになるだろう。
そんなくだらない事を気にしたまま、欲望に身を委ねたくはなかった。

「もってきたよ〜。じゃあ、改めて、君の初めてを僕にください!」
「きもい」

掌を合わせて、懇願してくる深夜に、深々とため息。
まぁもう、諦めてはいる。
ベッドサイドのライトだけをつけ、再び嬉々としてぶつかるように抱きついてくる男を受け止める。
唇を重ねたまま、体重をかけられ、ベッドに背が沈み込む。
膝の間に、深夜が身体を割り込ませてくる。
そうして再び、ボトムを脱がされる。11月とはいえ、室内はまだ寒いどころか、
今から始まるであろう行為の予感に、暑いくらいだった。自らシャツを脱ぎ、そして深夜の衣服もまた邪魔で
半ば強引に脱がせていく。舌を絡ませ、熱い息を吐き出しながら、
グレンは深夜の下肢にも手をかける。自分ばかり剥かれていては、やはり不公平な気がした。
それに、やはり肌を重ねている時に布地は邪魔なだけだった。
時間も気にせず、自室でゆっくりと愉しめる時は特に。

「お、グレン、乗り気なの?」
「まぁ折角だから、お前に楽しませてもらうわ」
「うわ、責任重大〜」

とかいいつつ、深夜はひどく楽しそうだ。
彼の下肢をちらりと見やると、こちらも既に勃ち上がっていて、早くも先走りの液のせいかぬらぬらと光っている。
手を伸ばして、彼のそれを弄びたい気持ちに駆られたが、今はとりあえず我慢する。
童貞といっても、セックス自体はもう何度もしていたし、また、相手が女でなく、ましてや自分であることも
彼にとってはやりやすい環境だっただろう。
問題は、彼を受け入れる羽目になってしまった自分の身体がどこまで持つかだが・・・。
まぁ、なんとかなるだろう。
明日になって、彼の初めての時がそうだったように、
自分もまた足腰が立たない状態になるのだけはまっぴらごめんだった。
そもそも、最近はそんな悠長に構えていられる状況ではないのだ。

「グレン・・・ね、指入れてい?」
「いちいち聞くな」
「ん、じゃ、行くね・・・?」

ローションをたっぷり掌に塗って、ぬめる手で思わせぶりに砲身を撫でた後、後孔に触れる。
中指を宛がい、つぷりと、指の先を埋め込む。ローションのおかげで、先程確認したときはあれほど締まっていたはずのそこが、
深夜の指を歓迎するようにゆっくりと呑み込んでいく。深夜はごくりと喉を鳴らした。
見た目ももちろん興奮するのだが、ゆっくりと内部に指を埋め込んでいくほどに、熱さを感じる。指をしっかりと締め付けてくるのに、
内部に侵入するのはひどく容易だった。グレンは顔を横にしたまま、シーツを軽く指で握り締め、そうして唇を噛んでいる。

「あ・・・グレン、どう?気持ちいい?」
「知らん。気持ち悪い」
「あ、そう?」

内部の指を、くい、と折り曲げる。と、グレンの黒く長い睫が小さく震えた。だが、何も文句は言わない。
彼もまた、自分がそうだったように、ナカを他人の指に冒される感触を愉しんでいるようだった。
内部の熱さを楽しみながらゆるゆると抜き差しを繰り返し、そうして、少しだけ柔らかくほぐされたその箇所に、更に薬指を合わせて挿入する。
一段とナカの圧迫感が増す。
グレンもまた、いよいよ、理性的な思考を維持するのは厳しそうだった。
深夜の探るような指の動きはもどかしいが、微かにかすめる、快楽の根源であるはずの前立腺を弄られれば気持ちいいだろう、ということは、
深夜の身体で既に実証済みである。
今回、彼も、ぎこちなくではあるが、グレンの奥の、そのコリコリとした塊部分を強く何度も刺激していて、グレンもまた、熱い吐息を吐いた。
それでもまだもどかしい。
己の手のひらで、完全に勃起している己の雄に触れた。慣れた手つきで、亀頭や砲身への愛撫を続けていると、

「ちょ、グレン、何やってんの」
「あ・・・?」
「一人で気持ちよくなんないでよ〜」
「そりゃ今回、お前が奉仕する側だしなぁ。俺が気持ちよくなって何が悪い?ってか、お前が気持ちよくしてくれるんだろ?」

グレンの手が伸びてきて、頭を掴まれる。
グレンの顔を覗き込もうと、前のめり気味になっていた深夜は、そのままグレンの掌に髪を掴まれ、ぐい、と引かれた。
痛みに顔を顰めるが、もう遅い。グレンは、深夜の頭を、己のすっかり天を向いているそこへ押し付けた。

「どーせなら、両方やったほうがイける」
「そりゃ・・・そうでしょうよ・・・ったく、相変わらず横暴・・・」
「黙れよ」

グレンの砲身に再び口づけながら、更に内部の指を増やす。
人差し指を増やし、3本になる。内部を拡げるように、バラバラと動かしては、
奥の、快楽の根源への刺激を強める。
口内のグレンは、本当に今にも達きそうなほど張りつめていて、それがとても愛おしかった。
自分の3本の指をしっかりと締め付けてくれる内部は、それでも、抜き差しを繰り返すと、ローションのせいもあって
ぐぷぐぷと卑猥な音をあげている。
今から、ここに自分のモノを挿入するのだ―――それを想像するだけで、
深夜もまた、興奮も隠せない。荒い吐息が漏れ、下肢も限界まで質量もましている。
正直な話、今彼に少しでも刺激を与えられたら、イってしまいそうな気さえしたが、
今回は、自分が快楽に溺れているわけにはいかなかった。

「っは・・・もう、イきそうじゃねーか。それでお前、俺を悦ばせられんのかよw」
「もう!うるさいなぁ。
 そもそもグレンが筆おろししてくれるって約束でしょ」
「あーそうだった。初めてだもんなぁ、早漏くんw」
「なにその余裕!!グレンだって初めてのくせに!」
「まぁ、こっちはお前をヘタクソだなって笑うだけだからなぁ」
「・・・ムカつく・・・」

深夜は悔しげに顔を歪めたが、それでも実際、彼の欲望は限界だ。
指の根本まで押し込んでいた指を、襞を辿るように抜いていく。グレンが微かに呻いたが、それだけ。指をはなすと、ぬめった液体が糸を引く。
喪失感にひくついているその部分を、深夜はごくりと唾を飲んで見つめ、
そうして、グレンの両足を抱え、その部分を更に拓かせた。
おそるおそる、挿入する部分に己の雄を宛てがう。
宛てがったそこが、指よりはよほど質量のある感触に、おびえるように一瞬窄まった。
彼の無意識の反応とはいえ、一気に愛おしさがこみ上げる。

「っ・・・早く来い・・・」
「んっ・・・じゃ、いくよっ・・・」

腰を動かし、その部分をじわりと奥まで侵入させていく。
ローションのおかげで、驚くほど先端を挿し入れるのは容易だった。
彼の中は、目眩がするほど熱い。異物の侵入を拒むような生理的な反応が、けれど己の雄に強く絡みついてきて、正直痛いほど。
それでも、グレンの身体を挟むようにシーツに両手をつき、己の身体を支えたまま彼の顔を見つめると、
彼は不満そうに眉間に皺を寄せつつも、自分を受け入れようとすべく、ゆっくり息を吐いて力を抜こうとしてくれている。
ぞくり、と背筋が震え、下肢へ向かって重い快楽が走る。
すると、己の雄が、更に質量を増してグレンの中を圧迫してしまうのがわかった。

「っつーーーキツ・・・力、抜い・・・っ」
「これでも、やってる・・・!くそ、我慢しろ・・・っ」
「あ・・・グレ・・・もうすぐ、全部入りそっ・・・」
「く・・・っは、深夜・・・っ」

グレンが、両手を伸ばし、深夜の、初めての行為に興奮し、汗を滲ませる頬を挟むように掌で包み込んできた。
彼もまた熱に浮かされているというのに、薄く開けたままの瞳で、汗に濡れた深夜の銀の髪を指に絡ませ、そうして引き寄せる。
間近で互いの顔を見つめ合ったまま、深夜の下肢はいよいよ、完全に根本までグレンの内部に収まってしまう。はぁはぁと息をついて、
そうして彼の中を感じた。彼に受け入れてもらっている、という実感。

「・・・は、これで、童貞卒業、だな」
「うん・・・すごく嬉しい」

しがみつくようにして自分に抱きついてくる深夜は、それなりに可愛らしい。
グレンは、自分の下肢の奥を目一杯拓かされて、こうして体内に男を受け入れているという事実に、内心呆れたようにため息をついた。
痛くない、といったら嘘になる。
だがそれよりも、彼の存在を受け入れてやったという充足感というか、満足感はある。
ーーー正直、快感とはほど遠かったがーーー

「・・・動けよ」
「グレンは?痛くない?」
「・・・・・・もう、何やったって一緒だよ」
「ん・・・じゃ、動くね・・・っ」

深夜はゆっくりと腰を引いて、そうして再び最奥を貫くように身体を押しつけた。
その表情は、完全に己の雄から受ける快感に溺れている。
およそ、相手のことなど考えていない、乱暴で必死な動き。グレンは眉を寄せる。けれど、熱い息を苦しげに吐くだけで何も言わない。深夜は既に、ピストン運動をこなすだけで精一杯。額から汗が伝い、グレンの肌を汚す。
こちらもじとりと肌を濡らしていて、触れ合うと吸いつくような感触を覚える。
グレンは深夜の腰を掴み、ぎこちなく揺れるそれを強引に引き寄せた。
内部の熱く狭い襞に何度も擦られて、ただでさえイく寸前だった深夜の雄は、
もはや堪えることなど不可能だった。

「っは、あ、グレ、でちゃ・・・!!!」
「っクソが・・・」

思わず悪態をつくも、その瞬間、グレンの内部で熱い飛沫が飛び散っていた。
深夜が内部の感触に堪えきれず、己の精を吐き出してしまったのだ。
そのぬめるような蟠りに、グレンは堪えるように眉を寄せる。
というより、これではきちんと処理しないと、明日に響くだろう。
もうさっさとベッドを出て、シャワーを浴びに向かいたいくらいだったが、
しかし深夜が、ぐったりと自分の身体に多い被さってきて、
グレンは仕方なくそれを受け止めてやった。

「・・・ヨかったか?」
「ん・・・すごいよかった。ありがと、グレン」
「・・・まぁ、」

素直にありがとうと言われて、嫌がる人間はいないだろう。
多少文句は言いたかったが、まぁ、彼が自身の望みをかなえられたのなら
それでいいだろう。恩を売っておくというのは悪くない。
内部に収まったままの深夜の雄を、ずるりと引き抜く。ナカを擦られる感触に、けれど唇を噛みしめて耐える。
深夜は体力を消耗したのか、このまま寝てしまいそうな位脱力してシーツに沈んでいた。
本当は、このまま眠らせてやってもよかったが・・・
問題は、

「俺はまだイってないんだが・・・」
「え、まじで?」

深夜がグレンの下肢を見てみると、先ほど自分が口で高めた時と変わらない、張り詰め、怒張したまま天を向いている男の雄。
悔しいが、やはり大きい。コンプレックスを感じてしまうほどの質量のそれに、
深夜は恨めしげにグレンを見やった。

「普通、一緒にイってくれてもいいじゃん・・・」
「お前が早すぎなんだよ。てか、もうほとんど挿れたばっかでイっちまったろーが」

事実だから、非常に悔しい。
それでも、グレンの中は本当に気持ちよくて、自身に襲い来る津波のような快楽を耐える余裕など全くなかったのは自覚していたから、
今度こそ深夜は柔らかな枕に顔を埋めてしまった。
穴があったら入りたいくらいだ。
こんなところまで自分の、グレンとの差を思い知らされて、
深夜は不貞腐れたように背を向ける。

「まぁいい。お前、そこで寝てろ」
「え、ちょ、何だよ・・・」

うつ伏せになっている深夜の腰を、グレンは半ば強引に上げさせる。
両膝を立てさせ、尻を開かせ、晒された深夜のその部分に指を突き立てる。
深夜はびくりと身体を震わせた。
やはり、こうしてグレンに触れられると、身体が反応してしまう。
何度も何度も彼に抱かれてきた身体は、既に先の予感だけで、再び熱をぶり返してしまっていて。
心臓が止まりそうなほど、興奮する。
悔しいが、己の身体が彼によって慣らされてしまったのは
認めざるを得ない事実だった。

「ちょ・・・と、折角あるのにローション使ってよ」
「いらねーだろ、お前の場合。もう、こんなに・・・・・・」
「ん・・・あ、やあっ・・・」

指を2本、深々と抉られて、ぎゅ、と目を瞑ってしまう。
下肢も思わず力を込めてしまい、彼の指を締め付けるが、そんなことぐらいで
グレンが手を引くはずもない。深夜の、一番気持ちいい部分ーーー前立腺の膨らみを、その長い指で的確に刺激してくる。
深夜は背をのけぞらせるようにして快楽に耐えた。
もう、己の雄は、再び熱をもって完全に勃起している。それを、グレンの掌に捕らえられる。唇を噛みしめるが、ぐりぐりと下肢の奥を刺激されれば、
甘い声が勝手に漏れてしまう。

「ひゃ・・・あ、やっ・・・め、」
「入れるぞ」
「っ・・早、い・・・っつ、」

自分はまだついていけていないというのに、グレンは強引に下肢を拓いてくる。
彼もまた、もう待ちきれない位に張り詰めていて、余裕もなく荒い息を吐いている。
ぎゅ、とシーツを指で噛みしめて、深夜は無遠慮な侵入を許した。
それでも、グレンの雄の圧迫感は、思考が摩滅するほどに気持ちいい。
ゆるく腰を引かれて、そして一気に貫かれる奥。それも、一番刺激の強い部分を、
執拗に狙って腰を押しつけてくる。
押し込まれるたびに、声が漏れてしまう。枕に頭を押しつけて、
甘い声音を必死に隠そうとする。
だがグレンは手を伸ばし、ぐい、と深夜の顎を上げさせた。
そのまま、指を口内に押し込み、声を出すまいと唇を噛みしめる深夜の歯列を割り、
そうして強く舌を押す。苦しげに眉を寄せ、それでも深夜は彼の指に舌を絡める。
こんな強引で身勝手な愛撫なのに、なぜか更に興奮する自分がいるのだ、
もう、彼のほうが自分よりも上手なことは、火を見るよりも明らかで。

「っ・・・も、ひどっ・・・」
「俺に尽くすっていっただろ?」

自分は動かず、深夜の腰を掴むようにして何度も最奥を責め立てる。
ぱたぱたと、自身から漏れる先走りが、既に皺くちゃになった真っ白なシーツに新たなシミを作る。
頭が真っ白になり、内部を犯される感覚に酔う。
この快楽は、正直なところ、ただの自身への刺激だけでは得られるものではなかった。全身がバラバラになりそうな、指の隅々まで、足の爪先まで感じるような快楽。
身体の血が沸騰しそうだ。
グレンの掌が更に深夜の首を傾け、噛みつくようにキスをしてくる。
その痛みに、快楽に、文字通り深夜は脱落した。
再び、己の欲望を押さえきれず、断続的に吐き出される白濁。深夜の内部が、ぎゅ、と更なる締まりを見せ、内部のグレンに絡みつく。
グレンもまた、唇を噛み締め、今度こそ己の精を吐き出した。
どくどくと内部を濡らしていくグレンのそれにすら、深夜は感じて、声を漏らしてしまう。
今度こそ、完全に力を失ってしまい、浅い息を何度も繰り返す深夜を、
グレンは内部に己を収めたまま抱きしめる。
やはり、こうして抱きしめているほうが気楽だった。この、敵であるはずの柊の名を持つ男が、自分のモノだと実感できる。
そもそも、危険を賭してでも、自分の中に踏み込んできたのはこの男だった。
こうしてすべてを明け渡してまで自分の傍にいたい、と臆面もなく言ってくるのだ。自分が絆されるのも、時間の問題だったように思う。

「ちょー疲れた・・・」
「少し休んでろ。先にシャワー浴びる」
「グレンは元気だねぇ・・・」
「鍛え方が違うからな」

ずぽっ、と音を立てて押し込んでいた内部から己自身を引き抜く。
深夜は一瞬だけ身体を震わせたが、もう続きをする気力はないようだった。
瞳を閉じる深夜の、濡れた銀糸のような髪をぽんぽんと撫でてやり、
薄掛け布団を裸の背にかけてやる。

「あ、グレン、ちゃんとナカ綺麗にしとかないと、明日お腹壊すよ〜」
「・・・わかってる」

グレンは顔をしかめた。
忘れかけていたが、そういえば自分も後ろを犯されたのだった。
確かに下肢の奥に蟠りを感じる。
そういえば、微かにじんじんと病んでいる気がする。
内部で深夜がイった事実を思い出して、ひとつため息。
とうとう、自分で指を突っ込む羽目になるとは・・・・・・
嫌そうに顔を歪めるが、何も言わない。
明日に影響がでるのはまっぴらだった。

「じゃ、とりあえず、僕はひと寝する。おやすみ、グレン」
「ああ、おやすみ」

布団にくるまった深夜の頬に、ひとつ口づけて。
グレンはシャワー室へと向かったのだった。





end.





もはやどこ見ても深夜受にしか見えなくなってきた・・・




Update:2015/06/25/THU by BLUE

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