My Sweet Honey.



その日は珍しく仕事が早めに終わった日で、気付けばグレンは自ら深夜の元に足を運んでいた。
普段、仕事をサボり気味の深夜が、その何倍も面倒な仕事を押し付けられる率の高いグレンよりも
遅く上がることはあまりない。だから基本的に、夜に逢うとすれば、
深夜が執務室に押しかけてくることが大半。
自室に篭って待っているのでもよかったが、それよりは、少し彼の仕事ぶりを見るのも面白いとグレンは思ったのだ。
深夜は、今日はデスクワークではなかった。
渋谷本隊の中の、とある狙撃チームの訓練に付き合っていたはずだ。
グレンが演習場に足を運ぶと、予想通り、深夜は居た。
入口すぐの壁に背をつけ、グレンはなんとなしにそれを見遣る。
自分の銃剣を構えて狙い方をアドバイスしたり、構えている部下に持ち方を教えたりと、
同い年ながら、成長したなぁと密かに思う。
なにせ、自分も彼も、もともと、銃の扱いはさすがに修練の項目には入っていないのだ。
だから、深夜がプロトタイプではなく彼自身の鬼を選んだ時、
まさか銃剣を選ぶとは思わなかった。
けれど、遠距離攻撃としては確かに優秀で、今では量産型鬼呪でも、遠距離系では弓部隊と銃部隊は
重要なポジションにある。
帝鬼軍では、一定の能力と戦果が認められた者は積極的に下の者の教育に当たらせているから、
ここまでサポート部隊の規模を大きくした彼の貢献は大きかった。
的を指さして、至って真剣に教える彼の横顔は、ひどく凛々しくて、大人びている。
厳しい顔や、時には声を荒げて指示を飛ばしていても、
普段は自信に満ちた、あの優しげな笑みを浮かべるのだから、部下からの信頼も厚いのだろう、と感じる。
まぁ、もう24歳だ。
出会ったときは高校生だった自分たちも、随分年を取ったなぁと
改めて感じながら眺めていると、

「あ、グレン?!」

こちらに気付いたのか、深夜が遠くから叫んで手を振ってきたので、
グレンは顔を顰めて、首をしゃくった。
彼が今、構え方を教えていた少年はまだ若く、それこそ18歳くらいだろう。
きっと、最近この本隊に配属されて、しかも柊深夜の部隊に配属されて、士気に燃えている時期だ。
そんな表情がうかがえた。
なのに、今の深夜の表情に、ひどくいぶかしげな表情を浮かべているのに、
グレンは気づいてしまった。
まったく、恥ずかしい奴だと思う。
何度注意しているかわからないくらいなのだが、
深夜は、自分の顔を見ると、一気に表情が緩む。さっきまでの、あの厳しい表情や、
大人びた凛々しい表情はどこへやらだ。
モードがオンからオフに切り替わるように、彼の表情の変化は明らかで―――
昔からの深夜の部下などは、もう諦めたように溜息をついている。
だが、これは断じて自分のせいではないはずだ。
それに、今は、もう予定の訓練の時間は過ぎていて、残っているのは、まだ新人の子供たちや、
訓練に熱心な者達だけだ。
まぁ、自分がここで見ていても、罰は当たらないだろう。
案の定、深夜はすぐに訓練を切り上げ、こちらに歩み寄ってきた。
こういう所が、玉に傷、という噂はちらほら聞こえてくるのだが、彼が気にしていないようだ。

「グレン〜どうしたの?仕事。早いじゃない」
「まぁ、珍しく早く上がれたからな。それより、いいのかお前」
「なにが?」

深夜は小首を傾げて、そういう態度を取ると、一気に年齢が下がるようだ。
先程、あんな大人びた顔だな、と思っていたのに、まったく、この変わり身の早さはなんなのか。
しかも、全く自分の言っている意味を理解していない様子。
はぁ、とグレンは溜息をついた。

「まぁ、いいけど。こんなことばっかしてたら、部下も離れてくぞ?」
「ええ?そうかなぁ。僕、結構人気あると思うけど」

それは、1つだけ欠点を除けばな、と突っ込みたい所だが、
面倒臭いので、グレンは言わなかった。
一度オフモードになってしまえば、とことんオフモードの彼である。
部下から、お疲れ様でした、やら、ありがとうございました、との声に深夜は笑顔で手を振るが、
その顔の緩みようが半端ない。
それどころか、修練場を後にして、俺の部屋に行く流れなのはいつも通りなのだが、
こう、気づけば俺の腕に絡み付いてくる。
しかも、幻術とか使わず、まったく他人の目線に憚りなく、なのだ。
本当は振りほどきたかったが、しがみ付く力は結構すごかった。
それに、身長が一緒のくせに、にこりと笑って、上目遣いに見上げてくるのだ。
この、可愛らしい生き物をどうにかしろ、とグレンは思う。
グレンにとって、深夜は恋人だ。
いや、正直な話、恋人と言うのは些か抵抗があるが―――、
それでも、ただの身体の関係というには深い関係を続けていたし、
いい加減、恋人と認めろ、と迫ってきたのは深夜だった。
まさか、こんな世界崩壊した状況で、コイビト、などという甘酸っぱい関係の相手が出来るとは思わなかったが。
それでも、深夜は非常に楽しげに、グレンとの恋人同士という関係を愉しんでいた。
だからこそ、柊や上層部からは、更に反感を買い、
自分と同じ、嫌われ者になってしまったわけだが・・・
それでも、深夜にとっては、自分の傍にいるほうが重要らしかった。
ここまで手放しで好きだとアピールされて、さすがのグレンも絆されないはずもない。
こんな楽しそうな深夜を無碍に扱うこともできず、
グレンは足早に、自分の自室に滑り込んだ。

「グレン・・・明日、お休みでしょ?」
「ああ」
「じゃあ、ゆっくりできるねぇ」

改めて正面向きに抱きついてきて、ついばむようにキス。深夜はひどく楽しげで、
けれどそれほどがっつく様子でもない。
ただただ、甘い空間。
正直、吐き気がするくらい甘い。
ここでこんな時間を過ごしていると、本当に世の中が終わったなんて思えないくらい、平和だと思う。
勿論、長くても、こんな時間は明日までではあるのだが、
それでも深夜と一緒の時間は、ささやかな喜びだ。
お互い、上からは無茶な命令を押し付けられ、しかも特にグレンは子供たちを扱うことが環境だから、
いろいろとストレスがたまることも多い。
そんなとき、こうして彼が手放しで自分に甘えてくると、
やはりこちらも同じように破顔してしまうのだった。

「夕ご飯は?食べたの?」
「いや、まだだな」
「ん〜、どうする〜?ご飯にする?お風呂にする?それとも・・・」

唇に指を当てて、わ、た、し?とお決まりの3択。
もう、新婚とか言うには程遠い慣れきった関係なのだが、まぁそれでも可愛らしいので、そのまま深夜の腰を抱く。
別に、性急に身体を求めるほど焦っているわけでもない。
特に今は、時間はゆったりと流れている。
だから、このまま夕飯にしてもよかったのだが。

「まずはお前で腹ごしらえしてから、夕飯、風呂、その後ベッドってとこかな」
「腹ごしらえしてから夕飯、って意味わかんないよね〜」

ふふ、と深夜は笑って、それでもグレンの首に抱きついてきた。
グレンは、彼の身体を抱えて、隣の、寝室にゆったりと歩む。深夜を座らせて、自分もまた、隣に座る。
どちらからともなく、互いの頬に腕が伸び、そのまま唇が重なった。
抵抗なく、舌が絡む。
溢れる体液を共有し、何度も角度を変えて、唇を離す度に銀糸が2人の間を伝う。
どちらかというと、今日は深夜のほうが乗り気だった。
両手が、既にグレンの襟元を緩ませ、そうして体重をかけ、グレンの身体を押し倒していく。
グレンもまた、深夜の背中を抱えるようにして、スプリングの利いたベッドに深く沈んだ。
自分に乗り上げてくる彼は、それでもじゃれている犬のように見える。
下肢に、激しく揺れている尻尾が見えるのは、よほど自分の頭が沸いているんだろうな、とグレンは苦笑する。
けれど、それくらい、自分の上に、四つん這いになって圧し掛かってくる彼は可愛らしかった。
この体勢でも、また唇が重ね合わされて、
もう深夜の唇は、紅を引いたように赤く腫れ上がっている。

「じゃあ、今日は、僕が君に奉仕してあげよっかな〜」
「どんなことをしてくれるんだ?」
「ん〜」

奉仕する、と言ったものの、何も考えてはいないらしい。
まぁ、グレンとて、普段彼と身体を重ねる時に、何かこういうプレイをしたいと思って
彼を押し倒すことは、今ではあまりなかったから、まぁ要するに成り行きだろう。
いつも通りだ。
ただ、今日は彼が上で、少しだけ新鮮だった。
深夜は唇を離し、今度は首筋にキスを与えてくる。
グレンの軍服を脱がしながら、露わになった箇所を、唇で辿っていく。たっぷりと唾液を乗せた舌でぺろりと舐められると、
その感触はくすぐったく、思わず身を捩ってしまう。それを、深夜は笑う。

「感じてるの?」
「まぁな」
「グレン、今日はすっごい素直だね。可愛い〜」

お前のほうが数倍可愛いけどな、とは言わない。
まぁ、たまにはこういう趣向もいいだろう。深夜がこうして自分に奉仕してくる姿だって、
彼の頬は興奮して上気しているし、息も荒い。キスを続けているから、鼻にかかった吐息だって時折漏れてくる。
首筋を辿った後、耳の裏から、耳殻に舌を這わせていく。
深夜の吐息が耳にかかり、それがひどく熱い。グレンもまた、深夜の衣服にゆっくりと手を掛けた。
上着を緩め、彼のなめらかな素肌に掌を這わせる。深夜はぴくりと反応したが、
それでも自分の奉仕をやめようとはしなかった。グレンの手のひらの感覚に耐えつつ、
耳朶を甘噛みし、耳の裏を辿って、今度は鎖骨にキス。
きつく吸い付かれて、グレンは顔を顰めた。きっと、痕が残るだろうなぁとぼんやりと思いつつ、
まぁそれでも、今は別に隠すほどのものでもない。
グレンの右手は深夜の背中を擦り、そうして反対の手のひらでは、銀の髪に指を差し入れ、後頭部を撫でていく。
深夜はその感触にも、甘い吐息を漏らした。
まったく、ほんとうに快楽に弱い身体だと思う。そんなところが、彼の可愛いところなのだが。

「んっ・・・グレン、大人しくしててよ」
「俺は何もしてないぞ?」
「っ・・・グレンの、嘘、つき・・・」

目元を朱く染めて、上目遣いに咎められても、逆に興奮してしまう。
深夜は引き続き、グレンの胸の、筋肉の張りがある部分を辿って、赤い小さな突起に舌で触れた。
自分だってあれほど感じる箇所なのだから、きっと、グレンも同じだと思い、
深夜は瞳を閉じて、一心不乱にそこを舐めた。
たっぷりの唾液に濡れたそこは、ぴちゃぴちゃと音さえ立てている。
胸元だから、グレンの視界に、彼の奉仕をしている様子が映ってしまい、己の快楽よりも、
彼のその必死ぶりに肩を震わせてしまった。
真っ赤な舌が、ねっとりと唾液を載せて、そこを濡らしていく様を。
いやらしい音を立てて、吸い上げるその瞬間が、
もう、非常にいやらしかった。

「美味しいか?」
「ってか・・・、グレンは、気持ちいい?」
「ああ」

もちろん、気持ちいいは気持ちいいのだが。
楽しいほうが、先行してしまう。内心、深夜に謝りながら、
今度は腹の筋肉を辿り、ヘソの部分に舌をねじ込むようにして舐め始める深夜に、
つい、声をあげて笑ってしまった。
くすぐったい。確かにくすぐったいが、もう、舐める様子が必死すぎて、深夜が興奮しているのがはっきりとわかる。
少し膝を立てると、深夜の下肢が当たる。
ぐりぐりと確認するだけで、明らかに勃ち上がっているのがわかった。
深夜の顔を上げさせると、既に涙目。
どうやら、グレンが膝で刺激を与えただけで、辛いらしかった。
可愛らしい。
全く、自分の頭はほんとうにどうかしている。

「グレン・・・」
「奉仕してる側なのに、なに快感に負けてるんだよ?深夜」
「グレンが、悪戯してくるからだろ?!」
「いいから、ほら、指も舐めろ」
「っ・・・」

ぐっと、彼の唇に右の人差し指から薬指まで、3本突っ込む。
奥まで当たるくらいに根本まで受け入れた深夜は、少し涙目になりながらも、
なんとか舌を絡ませ、爪先から根本までも丁寧に唾液を絡めてくれる。
特に、指の間を丁寧に舌を這わせてきて、それがグレンの官能を煽る。
音を立てて吸い付く様子も、酷く下肢を疼かせた。
堪らなくなり、開いているほうの手で、深夜のベルトを緩ませ、そうしてボトムスをずり下げさせる。
深夜の尻は滑らかで、女のように柔らかい。
揉みしだくようにして、下肢の奥を割り割いた。
膝も使って、大事な部分を空気に晒す。
冷房の利いた部屋だ、下肢が晒されると、ひやりとしてしまう。
ひくりと深夜は震えてしまった。

「んっ・・・グレ、」
「よし、じゃあ俺のほうに尻を向けろ」
「っちょ・・・言い方がサイテー」
「興奮してるくせに」

グレンの勝ち誇ったその言い方に、深夜は唇を尖らせるが、事実を突かれ、閉口してしまう。
グレンはその隙に、深夜の衣服も剥ぎ取ってしまった。
ベッドの下に、シャツと、下半身の衣服もすべて投げ捨ててしまう。
これで、お互い全裸。普段は性急に、服を着たまま身体を繋げることが多いが、
まぁたまにはこういうのもいい。

「ほら、早く舐めろ」
「・・・〜〜っ」
「全身リップしてくれてるんだろ?まだ足が終わってないぞ、足が」
「・・・グレンの馬鹿」

顔を真っ赤にしながら、深夜はグレンの足に、舌を這わせていった。
体勢が逆さまだから、また少し変な感じがする。グレンの足の内股から膝裏、くるぶしのくぼみや踵、足裏や指の先まで、
舌を這わせていく。
グレンはグレンで、深夜の腰を高く上げさせて、己の身体を跨がらせるように膝を割り、
そうして両手で尻を拡げさせる。先程深夜に舐めさせた濡れた指を、
深夜のそこに突き立てた。
もちろん、彼のその部分は、ここ数年の行為によって、柔軟に蠢き、己の指を締め付けてくる。
グレンは、思わず渇いた唇を舐めてしまった。
本当に、深夜のそこは熱かった。
第一、一気に3本も呑み込んでしまうのだから、相当な淫乱だ。
自分の足指にむしゃぶりついている彼の内部を、指でぐりぐりと抉ってやる。
ひゃあ、と思わず声が漏れてしまうのを、思う存分に楽しんだ。
もう、深夜は明らかに、奉仕していることより、快楽を与えられているほうが優先してしまっていることに
グレンは笑う。
こちらも下肢で完全に勃起した己自身を、グレンは深夜のそれに触れ合わせ、擦り合わせてやる。
もう、深夜は限界。顔を上げ、背を仰け反らせて、快楽に耐えている。
グレンもまた、そろそろ、己の精を吐き出したいくらいに昂ぶっていた。
深夜の奉仕を見ているのも、そろそろ飽きた。

「こっち向いて、俺に乗っかれ」
「・・・・・・っ」

深夜は頬を更に赤く染めたが、騎乗位は彼の大好きな体位だった。
だから、いそいそと己の胸に手をついて、腹に乗り上げてくる姿が、実に可愛らしいし、そして淫らだと思う。
深夜は熱い吐息を吐きながら、グレンのそれに己の手を添え、
己の下肢に宛がった。
多少痛みは伴うが、それでも、先ほどグレンにほぐされている。
だから、比較的簡単に男のそれを呑み込んでいった。
熱くて、どうしよもうなく震える。鉄塊が、自分を犯し、内部から焼けてしまいそうな程。

「あ、あ、グレ、あっ、すっごく、熱いよっ・・・」
「もっと、奥まで呑み込め・・・」

中途半端に腰を下ろしただけで苦しげに喘ぐ様子に、
グレンは眉を寄せ、そうして彼の腰を掴み、ぐっと引き寄せた。
最奥まで、ぐり、と抉る。深夜は激しい嬌声と共に、グレンを根本まで受け入れる。
もう、既に息も絶え絶え。
汗も、だらりと垂れてきて、顎からグレンの腹に堕ちる。
涙なのか、汗なのか、もうわからない程、深夜の顔はぐちゃぐぐちゃ。
それでも、深夜は快楽を求めて、腰を揺らした。
最初は確かめるように恐る恐る腰を揺らす。そうしていると、自ら一番気持ちいい場所を見つけたのか、
同じ動きを何度もする。そこに宛がうように腰を揺らしながら、激しくなる嬌声。
グレンはそんな深夜を見上げ、こちらも熱い吐息を零した。
先程まで自分が彼の肌を愉しめなかった腹いせに、深夜の胸元の乳首を両手で抓む。
びくり、と身体を震わせ、内部の締め付けも、きゅ、と締まる。

「ひゃ、あ、あ、あんっ」
「可愛いな、お前」
「っ、あ、うんっ、すごい、だって、気持ちっ・・・!」

もう、きっと、自分で何を言っているかもわかっていないのかもしれない。
乱れに乱れている深夜に、苦笑する。
彼の腰の揺らし方も、先程よりはかなり大胆にはなっていたが、
それでも、自分が達くためには、もう少し、激しく擦って欲しかった。
ぐっと両腕で力を込め、下から突き上げてやる。更に深夜の嬌声が甘くなる。

「・・・このまま、イかせろ」
「うん、早く、グレンの、あついのっ、欲しっ・・・!」

喉を仰け反らせて、今にも背後に倒れそうになる深夜を、腕で支えて。
グレンは眉を寄せて、最奥に己の精を放った。
その熱い感触に、深夜もまた、身体の動きを止め、内部の熱を感じる。その衝撃で、
深夜もまた、己の欲を解き放った。
身体をがくがくと震わせ、己の欲望の丈を吐き出していく。
ぐったりと力の抜けた身体が、グレンの胸に倒れ込んできた。まったく、本当に、セックスをした後は、
こうして脱力し、彼は動けなくなってしまう。
それだけ、強い快楽を感じているのだろう。はぁはぁと何度も浅い息を吐く深夜の顔を見下ろしながら、
また、すぐに欲望がぶり返してしまった。
やはり、一度で済むはずもない。
セックスなんて、それほど重要な行為なわけでなくて、
大切なのは、2人で過ごす時間なのだ、と今ではわかっているのだけれど。

「深夜」
「・・・っ、も、しばらく、動けなっ・・・」

快楽の余韻に浸る深夜の背を、撫でてやる。
そうして、ふと、己の顔の横についている深夜の肘を見て、その下の、脇に唇を寄せた。

「ひ・・・な、何・・・っ、くすぐった・・・」
「お前、こんなに綺麗な脇、してたっけ」

マジマジと見つめられて、深夜は恥ずかしげに隠そうとする。けれど、グレンは許さない。
二の腕を掴み、ぐい、と持ち上げてしまった。
まだ、下肢は繋げたまま、更にグレンの舌は唾液をたっぷりとのせ、そこに這わせていく。
汗をかいてしまっていて、深夜はひどく恥ずかしかったが、
それでも、何故か興奮する。
グレンの舌が、己の肌を辿るたびに。
ねっとりと、濡れた道が創られる度に、興奮してしまった。

「・・・すごい、締め付け。
 このまま、2ラウンド目といくか?」
「・・・勘弁して、欲しいけど・・・でも、また、勃っちゃった・・・」
「はは。身体は正直だな?」
「っ・・・グレンの、せいだよ・・・」

涙目で、羞恥と快楽に歪む深夜の顔に、
グレンは唇を寄せる。
まだまだ、時間はたっぷりとある。視線を絡ませ合うと、ひどく甘い空気が互いの間に有るのがわかった。
まったく、馬鹿げた話だ。
今の自分たちには、世界の崩壊など関係なくて―――、
ただ、目の前の愛する存在を感じるだけの、ただの欲深な獣。

「・・・愛してるよ、深夜」
「僕も、愛してる、グレン」

恋人たちの夜は、まだ始まったばかり。
再び互いの間に灯った熱情の炎を散らすように、二人は素裸の肌に掌を這わせたのだった。





end.






Update:2015/08/15/SAT by BLUE

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