銀糸の契り



「疲れたか?深夜」

漸く喧騒から逃れ、グレンと深夜は寝室に入った。
広い部屋、大きなベッド。
雰囲気は主の好みに合わせ、派手な色合いはなく、落ち着いたダークブラウンの壁と毛足の長い絨毯。
少し顔色の悪い深夜をベッドの端に座らせ、グレンはテーブルの水差しからコップに水を継いだ。
式のあとの宴会の席で、それなりに酒を飲まされたはずだから、
あまり量は飲めないはずの彼には辛かったのかもしれない。
頬が上気していて、瞳がとろんとしている。
単純に疲れて眠いのかもわからなかったが、グレンがコップを渡すと、深夜はにこりと笑ってそれを受け取った。

「大丈夫。ていうか、こんなところで潰れちゃったら駄目でしょ?」
「まぁな」

肩を竦める。今日は、一瀬家の婚礼式の日。
まさかこんな世界が崩壊した後で、改めて妻を迎え、正式に一瀬の当主として立つ日が来ようとは
グレンも思わなかった。
しかも、妻というのが、この―――男で、
本来ならば、一瀬家との繁栄を願うのならば、当たり前だが女性を娶るべきで。
けれど、今は、そんな堅苦しいことを言う、一瀬の幹部の年寄り達はもういなかった。
というよりも、一瀬の婚礼の式とはいえ、大した人数はいない。
皆、帝鬼軍の軍人だった頃にグレンや深夜についてきた、気心の知れた仲間たちだけ。
本当ならば、形式ばった結婚式などあげたくなかったグレンだったが、
吸血鬼との不可侵条約も締結し、柊家も瓦解し、いざ、自分が国をまとめなければならない、となった時点で、
仲間たちが「いい加減身を固めておかないと、面倒くさいことになる」と散々言うから
こういうことになった。
確かに、今のグレンには深夜以外選ぶつもりはなかったし、
一瀬家として、その血統を維持したいと思ってもいないから、
自分の後を継いで誰が国を総べるかは、昔のように投票で決めればいいと思っている。
これからは、戦いよりもそういう面倒なことにも頭を使わねばならないのだろうと思うと、
やはり、傍にいてくれる存在は必要だ。
グレンもまた隣に座り、今までも、そしてこれからもずっと自分についてきてくれるであろう男の顔を見つめた。

「・・・綺麗だな」

長く美しい銀の髪、自分だけに見せる艶やかな表情、多少着崩れた胸元から滑らかな肌が露わになっている。
グレンは、腰下まで流れる彼の銀糸のひと房を手に取り、その手触りを楽しんだ。深夜はくすぐったそうに身を捩る。
この髪は、彼の地毛だ。
婚礼の式の日取りを決める時に、折角だから髪を結いたい、と言い始めたのは深夜だった。
式に参加する人間はすべて深夜が男だと分かっているのだから、とグレンは言ったのだが、
この式だけはちゃんと女ものの花嫁衣裳を着たいと言ったのは深夜だ。髪も伸びるまで待ってくれと言われ、
1年後の、11月の彼の誕生日の日に式をあげることに決めた。
男が何を、とも思ったが、
実際、彼が婚礼の席で着ていた、白地に刺繍で鶴が描かれた白無垢は見違える程似合っていたし、
髪の長い深夜も意外に・・・というべきか、かなり綺麗だった。
知らない人間が見たら、男とは思えないかもしれない。
それほどに、彼は美しかった。
淡い紅が引かれた唇が、妖艶に微笑んだ。

「ふふ。だから言ったでしょ。折角ちゃんと式あげるなら、思い出に残るコトしないとね」
「そうだな。折角の初夜だしな」
「初夜とか〜。昨日もヤったじゃん?」

はは、と笑って、それでも深夜はグレンの胸に顔を埋めてきた。
昨日どころか、2人はもう、8年も前から関係を持っていて、
こういう事をするのは今更、何もトクベツな事などではないのだが。
それでも、グレンは腕の中の彼を抱き締め、そうして髪に唇を寄せた。手に取ったひと房に口づけ、
そして軽く引っ張り、深夜の顔をあげさせる。
濡れたような唇に、己のそれを重ねた。

「ん・・・、」

今までにない位、彼の唇の感触を噛み締めるように愉しんだ。ただ触れ合うだけで感じる、
薄いくせに柔らかな唇、甘い吐息、下唇を舐めると息が上がる。
自然に開かれた唇を、しかし強引には侵入しない。歯列を舐め、そうして歯茎の粘膜の感触を味わっていると、
熱い吐息が漏れ、そうして腕に抱いていた深夜の力が抜ける。細腰に腕を回して
彼の身体を支え、今度こそ深く口内に侵入する。濡れた舌が絡み、こちらも息をするのも忘れて
彼の甘い吐息をむさぼった。鼻から漏れる甘い声音が、耳に響くたびに、腰の奥が疼く。
さすがに苦しくなったのか、深夜の、グレンの背に回されていた腕が彼の背を叩いた。
名残惜しげに唇を離し、真剣な眼差しで彼の蒼の瞳を見つめる。

「っ・・・っは・・・、すごい、ね、今日」
「そりゃ、いつもよりは気合いれたいところだけどな」

にやりと笑って、濡れた唇を拭い、そうして本格的に彼の身体を抱き締める。
誘うようにゆっくりと、スプリングのきいた真っ新なシーツに押し付ける。グレンを見上げて、
深夜はくすくすと笑った。
長くさらさらとした髪が、シーツの上に広がる。
求めるように両腕を伸ばして、グレンの背を抱き締める。

「・・・みんな、まだどんちゃん騒ぎやってんのかな?」
「わかんないぜ?昔の風習みたいに、障子の穴から俺たちのこと見てるかもな」
「やだ、公開処刑じゃん」
「俺は構わないけどな」

もう、どうせ、隠すものでもない。
グレンにとって、今ではもう、愛するべきは深夜ただ1人だったし、深夜は元々グレンがすべてだった。
そして、今日、まさにそれを公言することにしたのだから、何のことはない。
深夜は少しだけ頬を染めて、恥ずかしげに笑った。
それでももちろん、目の前の男を求めることはやめない。
こちらもグレンの柔らかな黒髪に触れ、そしてくしゃりとかき混ぜて、引き寄せる。
だが、グレンの唇が落とされたのは、今度は深夜のそれではなかった。
頬に、彼の唇が触れる。濡れた道を作るようにして、首筋を辿り、そうしてゆっくりと下に降りていく。
鎖骨を丁寧に舐められ、深夜の身体が仰け反る。
くすぐったいのと、快楽の電流が走る様が、深夜の身体を竦ませる。
逃げたいわけではないのに、怖いわけでもないのに、思わず震えてしまう。
こんな、慣れきった行為のはずなのに。
今日はとにかく、ひどく甘くて―――、やはり初夜とは、
愛する者同士にとっては特別な意味をもつものなのか。グレンが丁寧に愛撫を続けるものだから、尚更。
どうしようもなく欲しいという感情が突き上げてくる。

「グレン・・・」
「綺麗だ」

しゅるり、と音がして、帯紐が解かれる。
手を差し入れるようにして、肌蹴られる布地。背を抱かれたまま、胸元の飾りに吸い付かれて深夜は思わずびくりと身体を震わせた。
最初から、容赦のない刺激。歯を立てて、やわやわと食まれた後、舌で押しつぶすように何度もこねくり回される。と思うと、強く吸い付かれて、真っ赤に染まったそれが完全に立ち上がる。
小さいそれは、しかし明らかに深夜の弱い部分で、
グレンが唇で愛しているほうの反対の飾りは、グレンの親指がもどかしい刺激を与えている。
そのギャップにも、ひどく興奮する。
無意識に膝を立ててしまうと、グレンの膝が、深夜の足の間を思わせぶりに刺激を与えてきた。
とっくに、深夜の下肢は興奮を隠せずにいる。
そもそも着物の下も何の着衣もなく、せっかくの着物が先走りに濡れてしまいそうだ。
グレンの手のひらが布地を拡げ、その部分を露わにした。
拡がった着物の上で、艶めかしい白磁の肌を晒す深夜に、グレンもぞくりと下肢を疼かせる。

「・・・・・・」
「・・・っ、早く・・・来てよ」

じっと見られるのに耐えられず、深夜はますます顔を赤らめた。
けれど、身体を動かさない。熱い吐息を零すだけだ。自分の身体で、グレンの欲求がより高められていくのを見つめ、
深夜は嬉しそうに笑う。グレンが愛してくれるのは、ひどく心地いいと思う。
自分がグレンを愛しているのは当然のことだったが、グレンが自分をどう思っているのかは、
今までだって本当はいつも、不安だった。
彼の心が欲しい。自分を見て、自分を欲しいと思ってくれる彼が欲しかった。
だから、自分が愛するんじゃなくて、愛されたいと思った。
さて、それならば、彼に愛されるためにはどうすればいいか?

「グレン」
「ああ」

彼の頬に腕を伸ばし、続きを強請るように彼の肌をなぞれば、
彼は先走りをこぼす深夜自身に、そろりと指を這わせた。
深夜は腹に力を込める。羞恥と快楽、すべての感覚が込み上げる。グレンの手の中に包み込まれるのは、
心地よかった。大きな手の中にすっぽりと収まり、自分の居場所を知る。
彼の中に無理矢理作った居場所だ。
最初はこっぴどく否定されたものだが、今ではこうして受け入れてくれる。
それが酷く嬉しい。
グレンの手のひらが軽く深夜の雄を撫でるだけで、一気に射精感が込み上げてきた。

「っ、う・・・も、イきそう・・・」
「早いな?」
「だ、って・・・今日、」
「ん?」
「最初から最後まで、ずっと、グレンかっこよかったじゃん・・・」

深夜が恥ずかしげにそっぽを向いて、唇を尖らせる。
彼もまた、グレンの婚礼衣装・・・つまり、黒の紋付袴にひどく興奮していたのだ。
自分だって男のくせに。
本来ならば、深夜だって可愛らしい女性を娶って、その隣で同じように紋付袴を履いているのが当然だというのに
深夜はそんなものより、自分の傍にいたい、と言ってくれた。
自分の隣で笑っているほうが自分らしい、と、はにかんで言った深夜の姿を、
グレンはいつも思い出す。
馬鹿げたことだと思った。自分などについてきて、何もいいことがないと思うのは、
至って理性的な判断だ。これは第三者が見れば、絶対に揺らがない事実。
けれど、それでも自分についていくほうがいい、とこの馬鹿は・・・彼らは言ったのだ。
全然理性的じゃない顔で、泣きそうな、あるいは照れたような顔で。
そんな、手放しで自分に付いていきたい、とストレートに言われてしまって、
さすがに自分も感情を吐露する羽目になってしまった。
仲間を信じて、大切なものを抱えたまま、これからも戦っていきたいという感情だ。
そしてそれは叶った。
確かに大きな犠牲も払ってしまった。皆、大切な存在だったから。
それでも。
だからこそ、今の自分がある。

「お前は、本当に馬鹿だ」
「ん・・・もう、聞き飽きたって・・・ンっ!!」

グレンがきゅ、と深夜のそれを握り込むと、途端に耐えきれず、深夜は精を放ってしまった。
それはあまりに早い絶頂で、思わずグレンは笑ってしまう。
深夜はハァハァと息を付きながらも、自分を笑うグレンに、少しむっとしてしまった。
自分だって、ひどく興奮して、上気したような表情をしていたくせに。
唇を尖らせて、深夜はグレンの背を抱き締め、強く抱き寄せる。

「っ―――、」
「っ次は、僕の番だからね?!」
「はぁ?」

グレンが不可解な顔をする前に、深夜はグレンを抱き締めたままごろんと寝返りを打った。
というより、グレンの上に乗り上げる体勢になる。グレンの身体を挟むように膝をついて、そうしてグレンの頬を両手で包み込み、キス。
噛みつくようなキスも、可愛らしいと思う。
グレンは彼の背に腕を回して、なだらかな背の感触を確かめた。
深夜の長い髪が、自分の周囲をすだれのように塞いでいた。彼がひどく丁寧に手入れしていたのを
グレンは知っているから、尚更それに興奮する。
けれど、こういう場面で、グレンが髪をあまり弄ると、深夜はひどく非難してきたから、
あまり遊べなかったのだ。
まさに今、婚礼の儀も終わった今なら、彼もきっと許してくれるだろう。

「髪、邪魔そうだな」
「ま・・・ちょっとね。自分からキスするときは、ちょっと邪魔かも」

長い髪を指先で耳に掛ける仕草も、ひどく可愛らしい。
露わになる項も。首筋も。生え際も愛おしいと思う。グレンもまた手を伸ばし、彼の髪をすべて右側に寄せてしまう。
そうして、露わになったそこに、耳元に、首筋に、口づける。
深夜はグレンに与えられる感覚に溺れながらも、今度こそグレンの着ていた着物も緩ませる。
こちらも、披露宴の時には着やすいものに着替えていたから、肌蹴させるのは簡単。
もちろん、グレンの雄も反り返って熱く固くなっている。
はやく口づけて、受け入れたい。そう思って身体をずらそうとして、不意にグレンが髪を引っ張った。
痛みに顔をあげると、グレンはひどく興奮した顔で、自分を見下ろしていて。

「・・・髪で」
「え」

耳を疑った。
今、なんて言った?

「・・・俺は、その長い銀の髪が好きなんだ」
「何馬鹿なこと言ってんの?グレン・・・そんなことしたら、汚れちゃ・・・っ」

しかし、グレンは深夜の抵抗など耳も貸さず、
深夜の髪を強めに引き寄せた。自らの指に絡め、そうして己の雄に絡めていく。髪を絡めたまま、そこを擦れば、たちまち銀の髪が先走りのべとりとした体液に濡れる。深夜は顔を顰めた。
グレンの手のひらに己の手のひらも置いて、咎めるように視線を絡めて。

「・・・べとべとじゃん」
「いいだろ?・・・もう、大事な式は終わったんだし」
「っとにもう〜」

嫌だといいながら、それでもグレンがしたいのなら、ともうひと房グレンの雄に絡めて、
そうして深夜は掌を動かす。下手に擦ると引っ張られて自分の頭が痛いので、深夜は前傾姿勢で
己の髪ごと男のそれを扱いていく。掌も、髪もべとべとだ。すぐに洗って乾かしておかねば、大変なことになるな、と
ぼんやり思ったが、もう今更だった。

「気持ちいいわけ?」
「ん〜・・不思議な感覚だな。だが悪くない」

にやりと笑うグレンに、深夜は息を呑む。
こちらもまた、下肢に熱が走る。当然のことだが、1回抜いて、それで終わりのはずもなかった。
それも、今日はただの夜ではない、初夜なのだった。
それを意識して、深夜もまた、興奮する。グレンの雄に刺激を与えるのに、一段と熱が篭った。
欲しくて堪らなくなり、彼の下肢に唇を寄せる。
砲身に髪を絡めて扱きながら、溢れる先走りを舌で掬い、そうしてキスをするように口づける。

「深夜」
「・・・っ、グレンの、頂戴・・・?」

括れの部分までを舌で円を描くように擦り上げれば、頭の上で微かに呻く声がする。
それは、グレンがイきそうなときの合図だった。
唇を噛み締め、そうしてぐっと深夜の頭を押さえつけ、そうして欲望を吐き出す。
そしてそれは、今回もそうだった。
深夜は一段と手の中の雄が質量を増すのを感じて、彼の亀頭を口内に含んだ。途端、吐き出される白濁。
喉の奥ではなかったから、更に深夜は舌の上でグレンの味を感じることができた。
独特の苦みとえぐみ。だが、他の男ではない、愛する男のものだからこそ。
深夜は笑った。舌の上に白濁を乗せ、グレンに見せ付けるように口を開けると、グレンが指で深夜の舌を強く押す。
真っ赤な口内に、白い精液の色合いはよく映える。
精液が絡んだまま、深夜は口の中に入れられた3本の指を、丁寧に濡らし始めた。

「すげぇ、えろい顔してる」
「・・・グレンもね」
「何せ、トクベツな日だからな?」

べっとりと濡れた髪をグレンの砲身から外して、そうして深夜は彼の上に乗り上げた。
男の腹を挟むようにして、股を拡げる格好はいつになっても慣れない。
羞恥心が込み上げるが、それでもグレンが深夜の雄に指を絡め、思わせぶりに感じる部分をなぞられて、
深夜はごくりと喉を鳴らす。
未だに口内に残っていた精液を呑み込んで、男のすべてを受け留めている気分になる。
グレンが、深夜の両の尻をやわやわと撫でた。
深夜の秘所を割り裂き、ひくひくと無意識に引き攣らせるそこに、先ほど濡らした指を宛がう。
深夜はグレンの胸に手を置き、異物が侵入してくる感覚に耐えた。
酷く飢えていたものなのに、この瞬間ばかりは、全身で男の存在を感じようとしてしまう。

「・・・熱いな・・・」
「っア、グレンっ・・・指、入って・・・?」

ずぷずぷと音を立てて、指が呑み込まれていく。
しかも、鳴れていたそこは、最初から2本、いや、3本もの指を受け入れていた。
簡単に根本まで侵入を許してしまい、グレンは嗤ってしまう。カッと深夜の頬が赤くなり、グレンの片方の手で弄ばれていた深夜自身に更なる熱が篭る。
グレンの指が、内部を掻き回す様にまるで生き物のようにバラバラに動かされて、
深夜は快楽の悲鳴を上げてしまった。
弱い部分を的確に刺激されてしまえば、もはや深夜に逃げ場はなかった。

「っ・・・あ、んッ・・・そこ、駄目ぇっ・・・」
「スキだろ?」
「ん、うんっ・・・スキ、だけどっ・・・」

深夜は何度も首を振って、快感に耐えていた。
奥を刺激されるもどかしい感覚、前を包み込まれる直接的な快楽、それ以上に今は、
深く響くような、重い快楽が欲しくてたまらなかった。
深夜の身体は、既にグレンがぴったり収まるように作り変えられていて―――、
はやく、満たされたいと思った。
グレンの太いそれで、満たされたい。深夜は求めるように、片腕でグレンの雄を指でなぞる。
まったく萎えていないどころか、自分の奥を貫けるくらいにそれは固くなっていた。
興奮する。
息を乱しながら、深夜は下肢にグレンの雄を宛がう。
グレンの指が抜け、一瞬、息が詰まりそうになる。

「欲しいか?」
「ん・・・ほしいっ・・・グレン・・・来て・・・?」
「俺も、お前を感じたいんだ」
「―――っ」

ぞくり、と。
背筋に電流が走った。
グレンのストレートな求めに、感じなかったことはなかった。
膝を折るようにして、腰を落とす。不安定な体勢に、グレンの肩に縋ろうとして、
両手の指を絡め取られた。強く握り締められながら、腰を落としていく。じわじわと、内部を抉る様は、
頭がおかしくなる程。
内臓が押し上げられるような、呼吸すら忘れそうになるような、そんな感覚。
触れ合う箇所すべてが熱い。
指先までが痺れそうな程に快感を覚えてしまい、
深夜は閉じられない唇から、断続的に嬌声を漏らしてしまっていた。
深く深くまで、グレンの男の証が己の中に呑み込まれていく。
すべてを収めてしまってはぁはぁと息をつくと、グレンの片手が、その接合部を指で撫でた。
ぎゅ、とその部分が締め付けられる。
内部が狭まり、男の雄の形まで、分かるくらいに締め付けがきつくなる。

「っ・・・あ・・・グレ・・・っ」
「・・・動くぞ」
「あ、うんっ・・・っ、あ、ちょっと、最初からっ、激しっ・・・」
「黙れよ・・・っ」

グレンの声音もまた、普段の余裕が感じられない、興奮した男のそれ。
深夜はひどく嬉しくて、自らも腰を揺らした。突き上げに合わせるように、膝をバネのように動かして、
最奥を貫かれる。グレンの形に慣れた身体は、
簡単に熱を高める。
グレンは両腕で深夜の腰を掴み、己の快楽を貪るように強く内部を擦り始める。
そんな彼の自己満足的な動きが、しかし深夜にはひどく心地いい。

「ぐ、ぐれっ・・・もう、イ・・・イきそうっ・・・」
「ああ、俺もだ」
「ホント・・・?うれしいっ」

はぁ、と熱い吐息を零して、グレンを見下ろす。グレンもまた、深夜の顔を見つめて、
そうして笑った。
汗が滲んで、視界が霞む。銀糸が視界を遮るように、さらりと流れる。下肢は深く深くまで繋がっていて、
その部分から溶け合うようだ。
このまま境界線すらなくなって、一生傍にいられればいいと本気で思う。

「深夜・・・一緒にイくぞ」
「うんっ・・・」

グレンの言葉に、自ら己自身を指で慰める。
男の動きも、もはやラストスパート。結合部から漏れる濡れた音。
激しい肌と肌がぶつかり合う音。二人の呼吸音が室内に響く。その空気に、2人は酔う。

「っく・・・深夜・・・っ」
「っ・・・あ、グレンッ・・・グレ・・・っあ、ああ―――!!」

どくり、と結合部が脈をうったかと思うと、内部で飛沫が飛び散った。
その感覚に、深夜もまた、引き留めていた欲望を解放する。グレンの胸元や首に掛かるくらい、
熱い白濁を放ってしまうが、もう、何も考えられなかった。
頭が、真っ白に塗りつぶされる瞬間。
力が入らない。身体を支えることができず倒れ込んでくる深夜の身体を抱き留め、
グレンは深い吐息を吐く。
何度もしてきたはずの行為のはずなのに、何故か今日は違う気がした。
何故だろう?と。
そう思ったときに、ふと、腕の中の彼の表情を見遣り、実感した。
今日から、彼は、本当に自分のものなのだと。
友達でもなく、仲間でもなく、自分の嫁で―――、人生の伴侶で、つまり2人でひとつだった。
関係を問われて、言葉を濁す必要も、もう何もないのだった。
深夜は妻だった。
自分が死ぬまで、左に座していてくれるはずの、
たった1人の・・・

「・・・今日から、グレンは僕の旦那様か〜」

唐突に腕の中の深夜がそう言ったから、驚いた。
彼も似たようなことを考えていたのかと思い、苦笑する。
こうやって彼と考えることがシンクロするのは今までもよく合って、その度に破顔してしまう。
これは、きっと運命だったのだ。
彼と出会い、こうして触れ合い、繋がって、そして恋に落ちることは。
運命だった。

「こんなかっこいい旦那様でよかっただろ?」
「うわ、自分で言う〜?」

はは、と笑う。
べたべたと全身を汗と精液で汚したまま、それでも深夜は嬉しそうに笑う。
どうせ、このままでは、まだ手放せないから。
グレンは深夜を抱きかかえたまま、再び彼の銀糸をゆっくりと指で梳き始めたのだった。





end.






Update:2015/08/15/SAT by BLUE

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