好奇心は怪我の元



渋谷にある高層マンションのグレンの部屋は、至って何も変哲のない、質素な部屋だった。

深夜は、微かに聞こえてくるシャワーの音を聞きながら、ベッドの端に座り、足をバタつかせながら彼の部屋を観察する。
当然ながら、部屋を飾るための額や置物、観葉植物といったものは全くない。
ビジネス用の黒い事務机と、効率を重視した収納、箪笥の中の衣服がぴっちりと畳まれている。
彼の従者たちが整理整頓しているのかと聞くと、俺の部屋には一切触れさせていない、と言っていたから、
これは彼の性格なのだろう。
そういえば、ホテルで一夜を共にするときでも、彼は衣服を脱ぎ捨てたまま放置しておくことはほとんどなかったことを思い出す。
自分が乱雑に投げ捨てているのを、イライラしながら畳んでいた姿を見て、お母さんかよ、と茶化したものだ。
ふと立ち上がって、本棚のほうに歩み寄ると、並んでいるのは主に柊の信徒たちに公開されている呪術書と剣術指南、
高校の教科書や資料ばかりで、特にこれといって反柊思想につながるものはない。
ごく年相応の高校生が読むような、(きっとフェイクなだけで本当に読んでいるわけではないだろうが)漫画雑誌やファッション雑誌、すこしキワドイ漫画作品などが並んでいて、
深夜はパラパラとそれを捲り、けれどこちらも特に興味が湧かずすぐに本棚に戻してしまう。

グレンがいつも勉学に励んでいる(?)はずの質素な黒机の椅子に座り、回転するそれでつまらなそうにくるくると回っていると、ふと、呪法の気配がして机の引き出しを見つめた。
1つは、もう知っている。真昼から貰ったという《終わりのセラフ》の研究資料。
グレンは先日、自分たちの目の前でそれを解除し、公開して見せた。再び同じ場所に戻したから、きっとそれが入っているのだろう。
問題はもう1つの引き出しだ。
こちらも、かなり厳重に鍵がかけられているようだった。
通常の物理鍵と、幾重にも折り重なるように存在している結界。手を翳して探ってみたが、
自分の知識では簡単にわかりそうになかった。おそらくそれは、柊のものではなく、一瀬の特殊な呪法なのだろう。
もちろん、少々手間はかかるが、自分の実力なら強引に解呪することは可能だ。
どうせグレンは先程シャワーを浴びに行ったばかりで、当分は戻ってこない。となれば、
暇つぶしに解呪してみるのも一興だろう。
深夜は自分の荷物から護身用の呪符と身代わり札を取り出し、そうして真言を唱えて改めて解呪に取り掛かる。
魔術は効果を純粋に消滅させることが出来るが、呪術はそうもいかない。
もちろん術者自身ならば可能だろうが、他人が無理矢理解こうとすれば、それなりの反動が来る。
それでも、深夜は特に緊張した面持ちも見せず、口笛を吹きながらそれを解析し始めた。
何重にも折り重なっているパスワードを解くようなものだ。柊以外の呪法ならば、
似たような構成の術でアプローチしていくしかない。その度に札が切り裂かれたように粉々になる。
相応の準備をしなければ、自分の身体も同じようにボロボロになっていただろう。

「おお〜怖。どんだけ頑丈なの」

そう言いながらも、確実に数を減らしていく。
厄介だったのはその自分の知らない構成の、一瀬独自の結界術くらいで、あとは自分にはどうということはなかった。
物理鍵のほうが、解除に戸惑ったくらい。
まぁこれも、グレンの机の上にあったクリップでなんとか解鍵できたが。

「さって〜グレン君が必死に隠していたモノ、御開帳〜」

にやりと顔を歪めて、もったいぶったようにそこを引き出していく。
けれど深夜は、1/3くらいそれを開けたところで、
いきなりそこを再び締めてしまった。
深夜の顔は、目が大きく開かれ、そして唇がわなわなと震えている。

「な、んだよ、コレ・・・アイツ、何考えてんだよ」

愕然としたように呟いて、再びこっそりと問題の引き出しを開ける。
勿論、締めて再び開けたところで、マジックのように中身が変わるわけもない。
そこに鎮座していたのは、結構な量の調教具だった。
拘束具や手錠、荒縄・・・この辺りは、まだわかる。調教以外にも、もし命を狙う暗殺者などがいれば使えるかもしれない。
が。
一緒に入っているものがマズかった。
まずディルドだ。男性器を模したものというより、拡張用の・・・プラグのような形のそれは、明らかに男に対して利用するべく作られている。
他にも、挿入用の器具はわんさかあった。アナル用のパールバイブや、それこそ強引にアナル拡張するためのネジのついた拘束リング。待ってくれ。どんだけ変態なんだよこいつは?
極め付けは、黒いレザーケースに収納されている銀色の棒。しかも細いのから太いのまで8本セットになっている。これは、考えるまでもない。この細さは、明らかに・・・後ろ用ではなかった。
ひぃ、と深夜は喉を詰める。
これは、尿道を拡張するための道具だ。
ちょっと待ってくれ。
深夜が蒼ざめて動けずにいると、いつの間にか、グレンのシャワー音は止んでいた。
勿論、衝撃を受けている深夜がそれに気付くはずもなく、
次の瞬間、後ろのドアがギイ、と音を立てて開かれた。びくりと身体を反応させて、振り向いてしまう深夜。

「ぐ、グレン・・・」
「・・・大人しくして・・・なかったみたいだな」

グレンは大して驚いていなかった。
確かに、この術はグレンがかけたものであるし、少々強引にこじ開けたから、気づいていたのかもしれない。と思うと、
改めて今夜のプレイが非常に怖くなってきた。
深夜が手に取っている玩具をちらりと見やり、グレンはにやにやと口元を歪める。
普段、こういう好色な表情などしないし、実際、性欲なんか二の次どころか、まったく眼中にないような男だと思っていたが、
どうやらそれは間違いだったらしい。
深夜は気持ち後ずさったが、勿論、バスローブの彼がつかつかと歩み寄り、己の手首を掴まれても動けない。

「勝手に見たお仕置きをしないとなぁ?」
「っていうか・・・これ、本気で君が買ったの?何のために?」

まさか、『自分で使うためだ』なんて言ったら、きっと自分はひっくり返ってしまうだろう。
信じられない、と言ったようにグレンを見遣ると、相変わらず彼は楽しげで、
むしろあれくらい厳重に呪術を張り巡らせていたのは、呪術にそれなりに自信を持っていた深夜の解呪欲を煽る為だったのではなかろうか、と今更思う。
だとしたら、これは罠だった。ごくりと息を呑む。

「なんだよ、その顔。使ってみたいのか?」
「っば、馬鹿言うなよ・・・」
「正直、今気づかれるのは予定外だったんだよなぁ。もうすぐお前、誕生日だろ?その日にお披露目してやろうと思ったのに」
「っは・・・ぁぁあああ?!!」

思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。だがもちろん、グレンは深夜の反応を面白そうな顔で見つめている。
今回ばかりは、取り繕うこともできなかった。
勿論、グレンが自分の誕生日を(こんな形でも)意識して、祝おうとしていたと思えば、
非常にテンションがあがる話ではある。
もちろん嬉しいと思う。
だが、こんな形で、しかもこんな・・・まさかグレンが変態じみたモノを自分に対して使おうと思ってた事実に愕然とする。
これから正に今、自分の身に起こりうる可能性を想像して・・・
いや、しかもその想像は限りなく現実に近かったから、無意識に恐怖を覚えてしまった。

「や、やだよ僕、そんなの」
「はぁ?気持ちいいのスキだろ、お前」
「そりゃ、君とのセックスは嫌いじゃないよ。でも玩具でイかされるとかごめんだね」
「慣れればヨくなる」
「無理だって!」
「いいから、ちょっとやってみろって」
「っやだ・・・っんう――っ!」

腰を抱かれて、有無を言わさず唇を塞がれる。
最初は胸を突っぱねて抵抗してみたものの、グレンの舌遣いは呆れる程に上手かった。
逃げようとする深夜の舌を絡め取り、そうして舌の裏の柔らかな粘膜の部部分を執拗に舌先で刺激する。
ぞくりと背筋が震え、含み切れなかった唾液が頬から流れ落ちる。
元々、今夜はグレンと一緒に快楽に溺れようと思っていただけに、グレンから与えられる感覚に抵抗できるはずもない。
グレンは深夜の抵抗がなくなっても、しばらく男の口内の味を楽しむように口づけを繰り返していた。
腫れ上がった唇の感触を愉しむように押し付けては、下唇を噛んで顔を左右に揺らす。
焦らす様に腰を引き寄せ、下半身を押し付けられると、男の熱を意識した。
そうなれば、深夜も黙っていられない。自らグレンの唇に己のそれを強く押し付け、クロスキスを誘う。
挑発するように舌を噛み、ふと視線を合わせると、グレンの紫色の瞳が妖しく光った。
それは明らかに、今夜は離さない、と訴えている色合いで。

「っふ、ぁ・・・ホント、ケダモノ」
「お前が悪いんだろ?俺の本心に、ずかずかと入り込んできやがって」

にやりと笑われる。
本当に、今、昔に戻れるなら、昔の自分に言ってやりたい。
一瀬グレンは、ただのクズでネズミなどではなく、柊を転覆する強い野心を持ちながら、それと同等以上の欲深な人間で、
一度欲しいと思ったモノは、絶対に諦めない貪欲な奴だと。
だから、ホイホイ近づけば、喰うつもりでこちらが喰われるハメになるぞ、と、そう忠告したいのに。
だがその一方で、彼に喰われてみて、今までの15年の人生を覆す程の幸福感に満たされたことは事実だったから、
やはり、運命だったのだろう。
柊という感情を必要とされない世界で、夢も希望も、全て失った自分の最後の希望の光。
想像とは少し違う、こんな穢れた関係にはなってしまったが、
やはり深夜は後悔していない。
グレンの美しく磨かれたアメジストの石をはめ込んだような瞳に、
自分が映るのが、酷く嬉しかった。
嬉しかったが・・・それとこれとは別である。

「君を好きになったことは後悔してないけど、玩具にされるのは御免だね」
「ただのジョークグッズだろ?」
「じゃあグレンがやればいいじゃん!」
「お前のほうが開発に手間かからなそうだし」
「意味がわからない!」
「もう黙れよ」
「離せ!」

じたばたと暴れる深夜の身体を抱え上げて、グレンは奥の寝室のベッドに放り投げた。
勿論、調教グッズもちゃんと抱えている。
今日は深夜の抵抗を加味した上で、拘束用の縄と、先程深夜が衝撃を受けて思わず手に取ってしまっていた尿道プレイ用のセット。
抵抗の尽きない深夜の手首を掴み上げて、後ろ手に縛り上げる。
手早く下半身をめくり上げ、膝を胸に押し付けるようにして足を折り曲げさせ、太腿と足首をきつめに縛り上げて、そうして更に両手首に紐を通せば、簡単に深夜は屈辱的なM字開脚をグレンの目の前に晒してしまう。
既に深夜は涙目で、責めるような瞳を自分に向けていた。
それすらも、可愛らしいと思ってしまう。
普段はこんな弱気な顔をする男ではない。いつも飄々としていて、
常に柊の人間として羨望を受け止めている仮の彼ではない。
だからそれが、ひどく微笑ましいと思う。

「っ・・・変態・・・っ」
「とか言いながら・・・見られて興奮してるのは、どっちだよ?」

既に半勃ちの深夜の雄を指先だけで触れてやれば、ひっ、と深夜の喉がなる。
はぁはぁと熱い息を零す深夜は、嫌がるそぶりをしていても、明らかにこの状況に興奮していた。
目元をほんのりと赤らめる彼は、普段白磁のように滑らかな白さを保っているだけに、こういった状況で肌を紅色に染め上げると非常に映える。
目を細めて、上半身にまとっていたローブを脱がせた。手首を拘束してしまったが完全に
脱がすことはできないが、裾が長いから、腰にバスタオルを引いた感じになるだろう。
早々にローションやお漏らしされてプレイ中に気が削がれてはたまらない。

白状すれば、深夜の尿道を開発しようなどと、本気で思ったわけではなかった。
単純に、ネタのつもりで、男性向のSMグッズ詰め合わせをプレゼントにしてやろう、と中身お任せセットを注文しただけだった。
が、いざ中を見てみれば、結構本格的なセットが揃っていて・・・
正直、これは万一柊に家宅捜索を行われたら少々まずいことになるだろう。
そんなわけで、早々には処分の必要があった。だが、折角だからその前に一度くらい使ってみたい、と実はうずうずしていたのだ。

「・・・っグレン・・・本当に、するの・・・?」
「怖いか?」

もう、取り繕うこともできずに、こくこくと頷いてくる深夜に、グレンは宥めるように彼の頭を撫でてやる。
恥ずかしげに深夜は身を捩ったが、この体勢では逃げることも、縋り付くこともできなかった。
ただ、グレンの視線が下半身に移動すると、羞恥に身が千切れそうだと思う。

「み、見るなよ・・・」
「どうした?別に今更だろ?お前の弱い所も乱れた所も、全部知ってるよ、俺は」
「っあっ・・・」

つつ、と指先で砲身の裏筋を辿られて、ひくりと震える。
グレンの指先はそのまま後ろに鎮座する2つの膨らみを撫でるように触れ、そうして門渡りの部分を擽る。
思わず腰を上げてしまうと、当然の権利のように下肢の奥で息づく蕾に指を刺し入れた。思わず緊張が走るが、
グレンの指は奥まで入れることはなく、入口を解すように第一関節だけでその周囲をぐるりと辿る。

「あ、ああ、っ、」
声と共に、熱を持ち勃起した深夜の砲身から、とろとろと先走りが溢れてきた。
深夜の身体は本当に快楽に弱く、彼自身が嫌がっていても、すぐに口元を解けさせてしまう。
今まで、これといった欲求がなく、柊という世界で感情を押し殺して生きてきたことが原因なのか、
欲望を知ったその反動というものがすごかったらしい。
彼自身も驚くほどの快楽と、それを知った後の、2日と待てない身体の中の欲求といったらない。
知識としては知っていたものの、性欲のない身体は自慰などしたこともなく、
グレンと出会って初めて、抜きたいという欲望も理解した。どんな男にも女にも反応しなかったそれが、
グレンにだけは反応を示すことを、深夜は戸惑いながらも受け入れた。
だから、彼がグレンの愛撫を拒むことは、土台無理な話だった。

「グレン・・・はやく、イきたい・・・」
「イかせて欲しいなら、まずは俺を悦ばせろよ、深夜?」
「ん・・・わかった・・・」

唇を噛み締めて、これから起こることに対して漸く覚悟を決めたのか、上気した頬で深夜は瞳を閉じた。
その髪の色と同じ、艶のある銀色のまつ毛に、少しだけ涙がたまっている。
目尻を撫でてやり、そうして再び触れ合うだけのキスを与えた。
すると、深夜の身体から、少しだけ緊張が抜ける。
それにグレンは愛おしげに目を細めた。手を伸ばして、簡素なシングルベッドの隣に置いてあるサイドテーブルの引出しを開く。
今では当然のようにティッシュペーパーとタオル、避妊具、そしてローションが置いてある。
ごそごそと漁ってローションの小瓶を手に取ると、グレンは歯で咥えてキャップを開け、そうして躊躇いなく深夜の砲身にとろりと垂らした。

「んんっ・・・冷たっ・・・あ、いきなりっ・・・」

天井を向いた尿道口に向けて垂らしたローションを塗り拡げるように、亀頭を中心に何度も擦ってやる。人差し指でひくひくと開閉を繰り返すそこに指を挿入するようにぐっと拡げてやると、ひどく感じたのか深夜は身体をびくびくと痙攣させた。さすがにまだ指は入らないが、
細い管なら余裕で入りそうだと思う。
グレンはまるで医療用のカテーテルを挿入するときのように、深夜の横に8本の太さの違う尿道拡張用のそれを並べ、品定めするように顎に手を当てた。

「あ〜・・・下から3番目くらいからでいいよな?」
「っはぁ!?ちょ、待って!初めてなんだから普通に一番細い奴からにしてよっ!」
「だってお前素質あるし・・・」
「なんの素質だよマジで止めろ殺すよ?!」
「その格好で何言ってる」

なんだかんだ言いつつも、グレンは肩を竦め、一番細いブジーを手に取った。深夜の目の前にもっていくと、ごくりと彼は喉を鳴らす。
いくら細いとはいえ、長さは20cmほどもあり、片方は細く、後ろ程太くなっている。
まだ凹凸がないのがよかったが・・・しかしこのままエスカレートすれば、ビーズのついたものでないと気持ちよくなくなってしまうのだろうか?
人間の身体とは恐ろしいものだと、深夜は改めて思う。
だがその前に、目の前のこれだ。

「てか、そもそもそんな長いの、無理だろ・・・?」
「まぁ、抜けなくなっても困るからな。無理矢理はいれねぇから安心しろよ」
「安心・・・ねぇ・・」

まったく安心などできないレベルではあるのだが、とにかくグレンはもうやる気満々らしく、深夜の砲身を左手で緩やかに愛撫している。
長い銀色のステンレス製の棒をローションの瓶に突っ込み、たっぷりと濡らした後、今度こそ尿道口にそれを宛がう。深夜はひぃ、と声を上げてしまった。
顔を歪め、けれどそれから目が離せない。
研究室等で採血をされるときはついつい見つめてしまうタイプだが、それよりは何十倍も恐怖が付き纏う。

「あ、あ、グレっ・・・」
「いれるぞ」
「や、ああっ・・・あ、ちょ、っと、入って・・・っあああ、」

ズプリと埋められた金属の棒に、深夜は目を見開いた。
最初は異物が入ってくるような感覚だったが、2、3センチ侵入したところで、初めの難関が訪れる。裏筋の内部あたりで、どうやら尿道が狭くなっているらしかった。グレンはゆっくり挿入してくれていたが、いきなりの圧迫感に深夜は必死に身体を起こして止めるように首を振った。

「だ、駄目だっ、待って、待って!」
「動くなよ。傷ついたらどうすんだ」
「や、だって、そこ・・・あああ、拡がっちゃ・・・!」

そもそも拡げる為のプレイだというのに、とグレンは苦笑したが、もちろん深夜はそれどころではない。
そもそも、もう深夜の目の前には、自分の砲身から生えている銀色の棒が見えるのだ。15cmくらいの長さだが、ということは、既に自分の中に5cmも埋め込まれている、ということである。
そんなことを想像して、更にナカがぎゅ、と縮まった。
まだ金属の冷たさが残っているから、深夜は異物の存在をまざまざと感じてしまう。
手を放しても平気な程に、深夜のナカはブジーにしっかりと絡み付いていて、グレンはその卑猥な光景に満足げに目を細めた。
真っ白なシーツの上、淡いピンク色に染め上げた深夜の肌、赤い縄に拘束され、普段誰にもさらさないはずの箇所を強引に開かされ、そうして男の手でナカを弄ばれているのである。
深夜は涙を溜めた蒼の瞳で、懇願するように自分を見つめている。
けれど、あまりの痛みに辛がっているわけではなさそうだった。だからグレンは再びはみ出しているステンレス棒に指を絡めると、奥を目指してゆっくり沈めていく。

「っく・・・うう、んっ・・・」
「大丈夫か?」
「っな、なんとか・・・でも、もうちょっと、ローション追加してっ・・・」

深夜の求めるままに、銀棒を呑み込んでいる箇所にローションを垂らしてやる。
だらだらと垂れてくるそれを砲身に塗りたくりながら、再び挿入を開始する。
14cmを過ぎたあたりから、明らかに深夜の様子がおかしくなってきた。

「っひ、やあ、あああっ・・・っそ、ああ、」
「イイのか?」

声音は既に漏れていたが、身を捩りたくても捩れないようなもどかしい動きをしていて、首を何度も揺らしている。
瞳には、溢れんばかりの涙、唇は震えて、言葉にならない。
16cmを過ぎる。おそらくは、そこが深夜の一番感じる部分のようだった。
前立腺のある部分。そこから明らかに奥に侵入するのが辛くなり、グレンはこの辺りかな、と軽く抜き差ししてみた。

「あああ、やだ、そこっ・・・だめっ・・・ああっ・・・!」
「前立腺の辺りだろ?ここ。気持ちいいだろ?」
「っあ、ああんっ・・・ヨすぎて・・・おかしくっ・・・」
「はは。すげー反応」

ひくひくと痙攣を繰り返す鈴口はもう既にゆるゆるになっていて、
ローションの手助けもあったからか、あまり尿道壁を刺激していないようだった。ふむ、と考え、
グレンはもう1本、今度は下から3本目のブジーを手に取る。
おざなりに1本目のそれを抜くと、深夜はひぃ、と身体をこわばらせた。

「っひいいっ・・・だめ、もっと、ゆっくりっ・・・」
「わかってるよ。ほら、もう少し太いのがいいんだろ?」
「奥っ・・・疼いて・・・っっ」

既に深夜は、自分が何を言っているのかもわかっていないかもしれない。
瞳は既に濁ったように快楽に煙っていて、視点ももう宙を泳がせている。
ただ、初めて体験する、前立腺を直接刺激される快楽に浮かされているようだった。
つい数か月前まで、性的な行為にまったく興味を持てなかった彼がこれだから、人間とはわからないものだ。
グレンもまた、己の下肢がギンギンに勃起していて、早く深夜のナカを味わいたかったが、
それよりもまだ、深夜の惑乱する様子を見ていたいと思ってしまう。
今度は先程よりもふたまわりは太い。
けれどきっと深夜ならば大丈夫だろう。我ながら甘い考えだったが、同じようにローションで濡らして深夜の鈴口に宛がえば、
今度は簡単に呑み込んでいくそこ。
やはり狭い部分で、深夜は仰け反って悲鳴を上げたが、やめてくれ、とは言わなかった。唇を噛み締めて、涙が伝うのも忘れてナカから襲う快楽に耐える。確かに先ほどよりはキツかったが、ゆっくりと侵入していけば問題のないキツさだった。
グレンは思わず舌なめずりしてしまった。
先程とは違い、簡単に15cm位まで呑み込んでしまえば、
再びぎゅ、と内部が締まり始め、そうして深夜は汗に濡れた銀糸を振り乱し、快楽に溺れている。

「すごいっ・・・そこ・・・っあ、ああああ、カラダっ、痺れ・・・っ!」
「お前もすげぇな・・・やっぱ素質あるよ」

深夜の全身が緊張し、拘束した縄がきつく肉に喰い込んでいる。
既に痕が残ってしまっているであろうそこをグレンは撫でてやったが、もちろんそれを外すことはしない。深夜はグレンを見つめ、切なげに喘いだ。
それは、もう限界だ、という合図。

「イきそうなのか?」

こくこくと頷いて、ただただ下肢への快楽に溺れる。
グレンが前立腺を刺激するように緩急を付けて小刻みに抜き差しを繰り返すと、一瞬、深夜の身体が跳ねた。

「あ、ああ、ああああっ!!!」

ひくひくと痙攣したまま、深夜は開きっぱなしの口元からは涎が溢れてくる。グレンはそれを舌で舐め取り、そのままいまだに緩やかに痙攣を繰り返す身体を折り曲げる。
ただでさえ拘束されている身体を、更に持ち上げて尻を晒す。

「すげぇ気持ちよさそうだったぜ、深夜。やっぱこれは、今後ももっと開発してやらないとな」
「っ・・・ぐ、ぐれ・・・そんなっ・・・」
「嫌じゃないだろ?」
「っう―――っ・・・駄目・・・」

弱々しく首を振るが、まったく信憑性のない訴えだった。
いまだに奥に食い込むブジーをそのままに、
グレンは更にローションを掌に垂らし、そのまま指2本を深夜の下肢に宛がった。
性急に内部に入り込むそれに、深夜は再び悲鳴を漏らしてしまう。

「ひゃあ・・・っ!!そ、そこ、責めないで・・・っ」
「もう、俺もそろそろ限界なんだよ。いいだろ?深夜・・・」
「っあ、そんな、っこと・・・っ」

駄目、と言おうとして、けれどグレンのいやに甘えた声音を耳に吹き込まれ、深夜は更に感じてしまう。
下肢に蟠る熱、先ほどイってしまったときは射精のないイき方だったから、確かに余韻はひどく残っていてグレンが触れるだけでひどく感じるが、
それでもまだ、下肢は精を吐き出したいと燻っている。
そこに、グレンの指がいつものように後ろの入口をほぐし、性急に彼の熱塊を宛がってくるものだから、深夜は快楽に溺れざるを得なかった。

「深夜、入れるぞ」
「うんっ・・・来てっ・・・!」

グレンが深夜の頬を撫で、そのまま唇を重ねてくる。舌を絡めると同時に、ぐっと侵入してくる熱い感触。
ローションのせいで痛みなどはすでにない。
ただ、激しい圧迫感が己の内部を支配していて、今度こそ深夜は嬌声を上げた。待ち望んでいた男のモノ、支配される感覚、彼が自分だけを見てくれているという実感。
唇を離すと、グレンもまた熱く息を吐いていて、自分のナカで感じているのだとわかる。
それが嬉しくて、深夜は意思を込めて内部に力を込めた。
男の硬質なそれの形を、自らの粘膜で感じるように腰を揺らすと、
グレンは一瞬、自分を見失いそうになるほどに感じてしまい、慌てたように腰を引く。いつもよりも、深夜の内部は熱く、狭く蠢いているようだった。

「っ深夜・・・お前のナカ、今日すっげぇ熱いな・・・」
「グレンのもっ・・・ああ、もっと、奥、擦って・・・っ!!」

深夜の望み通りに、前立腺を目がけて腰を揺らす。
拘束されたままの恰好で、それでも必死に自分の動きに合わせようとする深夜が愛おしくて、グレンもまた理性が飛んでしまった。
腰を掴んで、深夜の身体をぐるりと返す。
膝をついて、尻を高く上げさせた格好は屈辱的だったが、深夜は枕に顔を押し付けたまま、奥を抉られるグレンの雄の感覚に悲鳴をあげるばかり。
弛緩した尿道口から、先程まで内部を刺激していた銀のそれが抜け落ちる。
けれどそんなのはもはや既にどうでもいい。
グレンは己が縛ったままの深夜の手のひらを掴み、そうして握り締めた。深夜もまた、強く握り返してくる。その熱だけで酷く幸せに感じてしまう。
グレンは深夜の背に己の肌を重ね、強引に奥を求める。

「っ・・・深夜、も、いいか・・・?」
「んっ・・・ナカに、出して?」

グレンの問いになんとか応じて、そうして深夜は快楽に溺れる。
男の手のひらが前に伸びてきて、散々刺激を加えられて敏感になったそこを優しく包み込んでくる。それだけで悲鳴が漏れてしまった。
深夜は自制する余裕もなく、衝動的に精液を吐き出した。

「っあ・・・ああ・・っ・・・」

どくどくと、いつもよりも沢山の精を吐き出す。べっとりとシーツとバスローブが濡れたが、それはいつものことだ。弛緩しきった身体をグレンに預け、深夜は余韻に溺れる。
背後で己の首筋にキスを落としていた彼が、不意にぶるりと震え、身体を強く深夜の腰に押し付ける。吐き出される熱に、深夜もまたひどく感じ、びくびくと震えてしまった。
頭が、真っ白になるほど気持ちよかった。
2人してはぁはぁと肩で息をしながらも、グレンは繋がったままの身体を強く抱きしめてくれるから、深夜もまた、その感覚に目を閉じる。
拘束が解かれ、漸く自由になった手足を、けれどもう、深夜は動かす気力が湧かなかった。
真っ赤な痕、ところどころには血が滲んでいる。
グレンはそんな彼の痕を指先でなぞり、皮膚が破れた部分には優しくキスをしたり舐めてくれたから、痛みなんかよりも嬉しい気持ちのほうが先行してしまった。
こんな仕打ちをさせられているはずなのに、どうして愛されていると感じてしまうのだろう?

「・・・すごかったな」
「・・・不本意ながらね・・・」

唇を尖らせてみるが、散々喘いでしまい掠れた声で咎めてみても、
なんの意味もなかった。
グレンは、はは、と笑う。再び頭を梳かれて、髪を指先で弄ばれる。
もうこのまま眠ってしまいたくて、深夜はグレンの腕の中に顔を埋めた。
抱き締めてくれる腕が、心地いいと思う。

「ね、もう眠っていい?」
「ああ。疲れたろ?後始末は俺がしておくから」
「ん・・・」

それもひどく恥ずかしいことではあるが・・・それでももう、深夜は何も考えられなかった。
ふと視界に、先程まで自分のナカに埋め込まれていたらしい器具を見つけて、少しだけ顔を顰める。
これだけは・・・いや、すごくヨかったが・・・断じてクセになったら大変だ。
けれど、このままではきっと、グレンの変態っぷりはエスカレートしていくのではないだろうか・・・
澄まし顔の男の顔を見上げて、少しだけ疑いの目線を向けてしまう。

「なんだよ?」
「いや・・・・・・」

まぁ、もう仕方ないな、と深夜は力を抜いた。
何はどうあれ、自分には彼しかいなくて、たとえ彼にどんな猟奇的な扱いをされても、もう自分は逃げられない、と思う。
だって、彼に惚れてしまったから。
いつもの彼の、あの眩しい程に真っ直ぐな心に、惹かれてしまったから。

「・・・寝る」
「ああ、おやすみ」

再び腕の中に抱えられて、深夜は夢も見ずに深い眠りに着いたのだった。





end.






Update:2015/10/27/TUE by BLUE

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