恋の熱情



深夜は、自分の机の上で頬杖をついたまま、ぼぅ、と隣の男の顔を眺めていた。
渋谷第一高校では、今日も『帝ノ鬼』の幹部候補となるエリートを養成すべく、熱心な教師が熱心な教育を行っていたが、
無論、柊家で過酷な訓練を受け続けてきた深夜には、こんな授業の内容はつまらない以外の何物でもない。
そしてそれは、同じく分家とはいえ柊に匹敵する厳しい訓練を受けてきた彼も同じで、
隣の一瀬グレンもまた、時折欠伸を噛み殺しながらも、なんとか眠ってしまうことなく話を聞いている。

(・・・かっこいいよなぁ、ほんと)

相変わらず、態度は悪い。それでも、普段の彼や、任務中の真剣な表情を思い出して、
深夜は思わず口元を緩めてしまった。
揺らがない理知的で真っすぐな眼光、いくら弱者を装っていても端々から自信めいたものが溢れている態度、
油断なく周囲を伺っている視線は鋭い。出会った頃は自分もまたすっかり騙されてしまっていたけれど、
彼の実力は自分はもちろん、生徒会長である兄ですら一目置くレベルなのだ。
それに何より、自分が彼に惹かれたのは、彼の、その人間性。
柊の世界で見てきた、冷酷で残酷な、効率を重視した部下の扱い、まるで人を駒のように使う柊と違って、
彼は、彼の生きてきた世界は情に厚い。
それは、従者である2人が、あれだけ生き生きとした姿で、本心から主を慕っていることからも
一瀬グレンの人柄がうかがい知れるというものだ。
ましてや、あの百夜教の襲撃事件の時の行動や、任務中の、ふとした瞬間に仲間想いの発言や行動を取る彼がとても人間的で、深夜にはひどく嬉しかったのだ。
これが、真昼の想い人。
自分等より、幼い頃から冷たい世界で生きてきた真昼が縋った存在なのだと思うと、
確かにそれは納得できた。きっと彼ならばいつか、真昼を救えるだろう。
この狂った世界から、彼女を救える。
だが、そのためには今なお君臨する、柊を倒さねばならず、
裏切者の烙印を押された彼女を取り戻す必要もあった。ましてや彼女は鬼呪のせいで既に鬼と化していて。
道のりは険しい。
どれほど実力を持っていたとしても、たかが1人や2人の実力ではどうにもならない世界が
目の前には広がっているのだ。
それでも、もちろん、彼は諦めた風など微塵もなくて。
彼が、彼の背負う『帝ノ月』が柊から離脱するためにどうでればいいのか、
世界を破滅から救うにはどう動けばいいか、
常に意識して行動していた。
自分と違って、彼には確固たる野心と目的があって。
それを想うと、少しだけ嫉妬してしまう。何もない自分、親に、柊に、真昼に流されてきた自分よりよほど
彼は人としてかっこよくて。
しかも彼は、ついこの間、鬼と化して学校であばれたあの事件の前、
真昼を抱いたというのだ。
婚約者の自分を差し置いて、
そんなことを考えて見つめていると、

「・・・んだよ」
「・・・・・・あ、いや〜別に?」

なんとなく、暇だから?そう小声で告げる深夜に、グレンはますます表情を険しくする。
深夜は私語をしていてももちろん何も言われないが、自分はそうもいかない。
暮人の部下、という名目になってからというもの、明らかな差別表現は減ったものの、嫌がらせのように
課題が増えるのはあまり変わらないのだ、うざったいことこの上ない。
かといって、暮人の名を持ち出して、それを理由に突っぱねるのも癪で。
だからグレンは、ノートの端にサラサラと筆記具で何か書き殴り、深夜に見せつけてきた。
深夜が覗き込むと、そこには

“こっちみんな、死ね”
「っく、・・・はは、」

背筋がぞくりと震えた。
自分が笑ったことにますます機嫌を損ねたのか、
男らしくくっきりとした線を描いていた眉が更に寄る。野生の荒々しい気配を感じさせるそれは、
あのときのグレンそのもの。
鬼に取り付かれ、欲望を抑えきれずに暴走してしまった時のあの獣のようなグレンで、
それを見ているこちらまで己の欲望を煽られそうになる。
下半身が疼いた。
あの時、彼は真昼を抱いたと言った。
婚約者の立場で、今まで、散々、ただの種馬だのと陰で蔑まれてきたものの、
深夜自身、真昼とそういった行為に及ぶ自分を意識したことなどなかった。第一、出会ったその瞬間に
触れさせてもくれないとわかったから。そんな相手として見るより、
同じ視線で、一瀬グレン、という、打倒柊を胸に秘めているはずの男に思いを馳せることになったからだ。
だからこそ、・・・少し、意識してしまう。
彼は、どんな顔をして真昼の想いを受け止めたのだろう?
彼の腕の中で、あのいつも寂しそうな顔をしていた 彼女は漸く本当に笑うことができたのだろうか?
再度、グレンの横顔を見やる。
すると、彼が彼女の身体を?き抱いて、耳元で愛を囁く光景が浮かんでしまい、
深夜はこっそりと唇を噛み締めた。
ずっと孤独の戦いを続けてきた彼女の想いを遂げさせるために自分も協力してきたつもりだが、
いざ、それが現実になってしまうと、嫉妬めいた感情が渦巻いていて。
けれど、深夜には、これが、婚約者を寝取ったグレンに対する嫉妬なのか、それとも、
柊にあって、同じように孤独を抱えてきた彼女が、漸く救われたことに対する羨ましさなのか、
よくわからなかった。
もしこれが、グレンと真昼が文字通り相思相愛で、全ての柵から逃れて駆け落ちでもしたというなら、
いっそ清々しい気持ちでいられただろうに。
現実はもっとひどい状況で、
真昼は既に鬼と化してしまい、救いようのない状況で、
それでも彼女を救いたいと思う彼は、時折魘されては、苦悩した表情を見せるのだから居た堪れない。
恋とは、愛情とは非常な厄介な存在だと思った。
こんな冷たい、残酷な世界にあっては、傷つくだけの感情だ。
自分にそんな相手がいなくてよかったと、深夜は苦笑いする。もしそんな人間がいたら、きっと執着してしまうだろうから。

と、その時、丁度チャイムが鳴り響いた。
授業が終わる。次は実技訓練で、着替えなければならない。更衣室に向かうクラスメイトを後目に、
深夜はそちらとは反対方向へと向かう。

「・・・深夜?」
「ああ、ごめん、ちょっとトイレ」

あながち間違いでもない嘘をついて、ひらひらと手を振って彼の視線から逃れた。
くだらない妄想をしていたせいで、身体が熱かった。
主に下半身が。あまり己の性衝動を自覚することがない深夜は、けれど欲情してしまった身体を隠すようにしながら、
校舎の中でも特別教室の並ぶ、閑散とした場所にある男子トイレに滑り込むようにして入り込む。
個室の一番端に入り、そうして腰を落とした。
そっと股間を掌で探ると、改めて自分の下肢が興奮して頭を擡げさせていることを実感する。
汚らわしい。浅ましい身体だと思う。
唇を噛み締めながら、深夜はガチャガチャと性急にバックルを緩め、ジッパーを下ろして己の欲の証を露出させた。

「っは・・・、最低、」

苦笑いするものの、中途半端に興奮を見せているそれは、
そう簡単には収まりそうにない。深夜は下肢に這わせた指先を下着の中に入れ、芯を持ち始めているそれを握りこんだ。

「っ・・・はぁ、」

指先で亀頭を握り、そこを中心にぐりぐりと揉みしだいた。くびれの部分から先端にかけてのそこは、一番男の身体で敏感な箇所で、
正常な男ならば、刺激を与えればすぐに血が流れ込み、膨張し始める。深夜ももちろん例外ではない。
宥めるように緩やかに何度も擦ってやれば、次第に全体が大きく、堅くなっていく。下着に収まりきらず、深夜は軽く腰を上げてボトムとそれを太腿のあたりまでずらす。腹にぺたん、とぶつかる己自身。既に先端からはぬめる蜜が溢れている。それを指先で掬い、塗り拡げるようにして砲身まで擦りあげた。

「ん・・・は、あっ、んんっ・・・」

次第に強まる快感、抑え切れない声音と吐息が漏れてくる。けれど、幸い、誰かがくる気配はない。
深夜は目を閉じて、下肢から湧き上がる感覚に溺れていった。悔しいが、1人でするこんな行為だけでも、
それなりに快楽を感じられる。
見たくないものから目を逸らすために、現実逃避のために、抱えたストレスを少しでも吐き出すために、
少しでも意味のあるものならば、こんな行為でもする必要があるだろう。
第一、自分は男なのだ。
確かに溜め込むのは身体によくないことくらいの知識はある。

・・・なら。
なら、グレンは?
自分よりよほど、辛い経験と屈辱とストレスを抱え込んできた彼は、
こんな汚らわしい行為をしているのだろうか?
あんな自制心の強い、強い野心への渇望以外の誘惑にはまったく耳を貸さなそうな男は、
けれど、心の奥底では、あれほど強い独占欲を抱えていたのだ。
もしかしたら、知らない場所で、彼もこうして自慰行為をしているのかもしれない、と、
そう思ってしまうと、更に深夜の下肢の興奮は収まらない。

「っ・・・は、グレン・・・」

口の中で呟いて、そうして脳裏に男の姿を思い描く。
彼が、彼の部屋で、ベッドに座って無心に下肢を擦っているところを想像した。
彼の雄が熱をはいて膨張している時は、どんな感じなのだろう?
一度だけ、チームの男同士で連れションをしたことはあったが、その時ちら見したグレンのサイズからは、
さすがに最中の彼のサイズは想像もつかない。
自分ですら、2倍か3倍かにはなるのだから、彼のモノはきっとすごいだろう。
少し興味はあったが、けれど、そもそも自分は男だ。
なぜ、他の男のソレに興味を抱く必要があるのだろう?それも、よりによってグレン自身を見たい、などと。

「っ・・・は、あ、すごい・・・、」

けれど、今はなぜか、いつも以上に興奮していて、深夜は戸惑うばかりだった。
グレンの姿を思い描いて、興奮を募らせている自分の身体は、ひどく背徳的で、
しかしだからこそ更に熱を持ってしまう。
脳内のグレンもまた、掌の動きが強まり、ラストスパートをかけているようだった。
自分もまた、滑りやすくなった砲身を何度も何度も根元から擦りあげ、そうして時折掌の腹で先端をぐりぐりと擦ってやる。
キモチイイ。勝手に脳が彼と共に自慰をしているのだと勘違いする。自分が醜い欲望を晒していて、
けれど彼もまた、彼自身の欲望を自分に晒してくれているのだと。
そう思うと嬉しくなる。
はぁはぁと、男子トイレの個室に、吐息が充満した。深夜は身体の熱が苦しくて、ワイシャツの胸元を緩ませる。
制服を汚すわけにもいかず、自らシャツを胸元まで持ち上げた。ひんやりとした指が、
胸元の小さな突起に思いがけず触れてしまう。
びくり、と身体が震えた。女のものではないそれが、けれどしこったように固くツンと尖っていて、
いったい自分の身体はどうしてしまったんだろう、とすら思った。
けれど、もう止まらない。止められない。
激しくなるばかりの掌の動きは、明らかにのぼりつめる瞬間を待ち望んでいる。

「っう・・・っは、あ、くうっ―――・・・!!」

なんとか唇を噛み締めて耐えたものの、吐き出す瞬間は、頭が真っ白になり思わず声が漏れてしまった。
下肢が痙攣し、掌の中のそれが、先端をぴくぴくとひくつかせて精液を吐き出した。
断続的に溢れるそれが、深夜の腹や下腹部を濡らしていく。どろりとしたそれを見やりながら、
深夜は自己嫌悪に顔を顰めた。
一気に、熱が冷める。何やってるんだろう、と目を逸らして、
カラカラとトイレットペーパーを片手で千切り、下肢を拭った。
はぁ、と大きくため息をつく。こんな状況で、何食わぬ顔でグレンと顔を合わせられるのだろうか。
幸い、時間は訓練中盤で、今日の学校の予定はこれ以上なかった。
ボトムを履き直しながら、もう今日はこのまま帰ってしまおう、と、そう考えて、
ガチャリと扉を開ける。

「よぉ」
「っ!??」

あまりに意外な声音に、深夜は飛び上がるほど驚いた。
扉を開いた目の前に寄り掛かっていたのは、一瀬グレン。腕を組んで、視線だけこちらに向けてくる。
その表情は普段のポーカーフェイスだが、紫の瞳は少しだけ野性味を帯びていた。
ギラギラと光る雄の瞳。
それになぜかまた心惹かれながらも、けれど深夜は努めて平然とした顔でグレンに笑いかけた。

「どうしたの?グレン。・・・授業は」
「それはこっちのセリフだ」
「・・・いやぁ、ちょっと腹壊しててさぁ・・・ごめんごめん」
「・・・違うだろ」

グレンが、ガッ、と深夜の腕を掴んだ。その動きは早すぎて、不覚にも深夜には捉えられなかった。
捻りあげるようにして、グレンは彼の身体を引き寄せる。そのままトイレの個室に逆戻り。
今までしていたことを思い出して、深夜の頬がカッと赤くなった。
けれど、グレンはそのまま深夜を壁に押し付け、後ろ手で鍵を閉めてしまう。
仄かに残った色香。それは、取り繕えない程で、深夜は唇を噛み締める。

「・・・何してたか、言ってみろよ?」
「っ・・・、関係ないだろ」
「関係ない?」

顔を背けようとする深夜の頤を掴んで、顔を近づける。
ごくりと、喉を鳴らした。
もう少しで、唇まで触れそうな距離だった。男同士で、しかも男子トイレの個室で、
2人して入って。何をしているのだろう、と思った。けれどそれでも、深夜の思考回路は既に灼き切れそうで、
上手く頭が回らない。それよりも、間近に迫った男の、見たこともない表情に深夜は鼓動を早める。
どきどきした。
ここまで間近に迫ったことがないわけではない。
彼が鬼になって暴走した時、彼を羽交い絞めにして自分ごと拘束するよう促したこともある。
あの時の、意識を失ったグレンも、綺麗でカッコいいと思ったけれど。
今の興奮する感覚とは、また違くて。

「っま、待てよ、グレン・・・どうする、つもり、」
「オナニー中に俺の名前呼んでおいて、『関係ない』とかいう奴には、お仕置きしないとな?」

ニヤリと、グレンの口の端が持ち上がり、赤い舌が覗く。
またしても、ぞくりと下肢に走る感覚。深夜は顔を顰めた。取り繕っていても、耳まで真っ赤に染まっているのが分かった。
自分がグレンの名前を出したのは、たった一度だけだというのに。
聞かれていた―――その事実に愕然とする。
こんな醜い、浅ましくて穢れた自分を、知られた。それがひどく羞恥心を煽ってくる。

「・・・聞き耳立ててるなんて、性格悪すぎ・・・」
「なんとでも言えよ。・・・お前、教室ん時から欲情してただろうが。変な視線だと思ってたんだよ」
「・・・っ」

ばれていた。
目を見開いて固まる深夜に、けれどグレンは少し笑って、
深夜の下肢に掌を伸ばす。深夜は身を捩ったが、狭い空間で、グレンの腕に捕らえられたままでは
満足に抵抗できるはずもない。
グレンの掌が、思わせぶりに深夜の下肢をなぞった。息を詰める。
他人の手が自分の急所に触れている恐怖。けれどそれ以上に興奮する。
一度吐き出した後だというのに、深夜のそれは、他人の掌に弄ばれて、再び熱を集めている。
もどかしい、とすら思ってしまう。
先ほどまでグレンの掌に己のモノを包まれる想像をしていただけに、
深夜は自分の反応を隠しきれない。思わず腰が浮いてしまう身体を、グレンは嬉々として見つめていた。

「・・・何を想像してた?」
「っな、何もしてないよ・・・自意識、過剰じゃないの?」

最後の意地で、からかうように笑ってみるが、それ以上にグレンの掌から与えられる刺激が強すぎる。
服越しだというのに、脳がしびれるような感覚。
自分で慰めているときより、ひどく強いそれに、深夜は恐怖すら覚える。
目の前のグレンは、けれど絶対に逃がすつもりはない、と表情で告げていて、
その瞳の色合いは獰猛な獣のようだ。
深夜は顔を背けた。ぐっとグレンの指に力が篭り、真っすぐに見ることを強要される。

「・・・グレン、冗談は、いい加減に」
「俺をオカズにして、イっておいて、何が冗談だ?」
「―――っ、」

グレンの言葉には、ひとつの容赦もない。
深夜は悔し気に奥歯を噛み締めた。バレてるならどうしようもない。
彼の気配は怒りに満ちている、というわけではなかったが、
ここは謝っておくほうが無難だろう。
深夜は口を開いた。

「・・・悪かったよ、ごめん」
「はぁ?謝れとは言ってないだろ」
「・・・じゃあ、なんだよこれ。気持ち悪い視線でお前を見てた僕への仕置きなら、もう、」
「俺も、欲情してんだよ」
「!?」

グレンの掌が、今度は深夜の掌を掴んだ。
そのまま引き寄せるようにして、己の下肢に触れさせる。深夜は息を呑んだ。
グレンの下肢もまた、同じように膨張している。
だが、その大きさは悲しいことに自分の非ではなかった。パンパンに膨れ上がった下肢に触れて、深夜は今度こそ顔が沸騰するようだ。

「ぐ、グレン・・・」
「いいだろ。どうせ、お前も俺に抱かれたかったんだろ」
「な、なんでそうなるんだよ?!」
「真昼と俺のこと、考えてただろーが」
「―――っ!!」

図星を突かれて、深夜は文字通り身体が震えた。
どう返そうかも頭に上らず、ただただ目の前の男を見つめる。
間近にあった男の唇が、焦点も合わせられない位に近づき、そうして重なった。
唇と、唇が。
重なり合う。
柔らかな感触だった。
グレンの唇は、薄い割りには柔らかく、しっとりと濡れていて、
ひどく動揺した。
思えば、他人とキスなんかしたことがなかった。
きっとこれがファーストキスなのだろう。男子トイレの個室で、なんて、
あまりいいシチュエーションとは思えないけれど。
グレンは唇を離すと、先ほどのように唇を歪ませて愉し気に笑った。
悔しいと思う。なんでそんな、余裕の笑みを浮かべているのか、
本当に彼には叶わないと思う。

「・・・どうだ?」
「っ・・・なに、が・・・?」
「これで真昼と間接キスだな」
「・・・ひどい男だね、グレン」
「そんな俺に、お前も惚れた」

ドヤ顔でそう告げるグレンの表情が、ひどく腹立たしかった。
けれど、もはや抗う術はない。グレンはそれを同意と受け取ったのか、
勝手に深夜のベルトを緩め、そうして内部に入り込んでくる。少しだけ身を捩ったが、
彼の侵入を拒むことはできなかった。
息を呑む。
他人の、それもグレンの掌が己の下着の隙間をぬって、下肢に触れている。
あっ、と、小さく声が漏れてしまった。
グレンの掌が、掬いあげるようにして、深夜の根元から先端へと握り締めてきた。
まるで、カタチを確かめるように。
掌にすっぽりと収まるそれを愉しむように、グレンはゆっくりと男の雄の部分を撫でていく。

「・・・や、やめ、グレン・・・」
「もう、ぐちゅぐちゅだな。一度イッたばかりだから、感度も良さそうだ」
「っな、んでそういう事・・・」

俯いた顔を上げさせて、再びキスをする。
今度はまったく容赦のない口づけだった。触れ合わせるだけでは終わらずに、
グレンは壁に片手を付いて、深く唇を貪る。舌で思わせぶりに唇の裏を舐め、そして歯列を確かめるように舐めて開かせる。
びくりと震える身体、何もかも初めての彼は、恐怖しか感じられない。
ぎゅ、とグレンの二の腕の衣服を掴んで、引っ張った。縋るようなそれに笑うグレンは、
そのまま怯える深夜の舌を絡め取る。
体液が混じり合い、互いの舌の上で水音が弾けた。感触は蕩けるように甘い。
鼻にかかったような深夜の吐息が、心地よく耳に響いた。
キスをしたまま、下肢をゆるゆると刺激する。先端を親指で割り裂いて、ちゅく、と音がするほど蜜が溢れるのを
指先で愉しむ。パンパンに腫れ上がり、反り返った深夜のそれを、グレンは衣服から解放してやった。

「っあ、・・・っ」
「気持ちよさそうだな」

軽く唇を離して、グレンはそう言った。
糸を引く唾液、それがぷつんと途切れて唇に張り付いてくる。
口の端はとっくに濡れて蕩けていて、そんな自分に深夜自身が驚いてしまう。
清々しい程の空色の瞳が、零れそうな程潤んでいる。
グレンはそれを見つめながら、今度は己の下肢を緩め、既に勃起している自身の雄を露出させた。
既に興奮していたそれを、グレンはもう二、三度軽く扱く。簡単に先走りを溢れさせるそれを、グレンは深夜の雄と重ね合わせた。

「っ・・・ちょ、待っ・・・」
「触ってみろよ?」
「っえ・・・」

グレンが深夜の手首を掴み、そうして己の雄を握りこませた。
それは、焼けそうな程に熱を帯びている。深夜はごくりと唾を呑み込み、恐る恐る彼の雄のカタチを確かめる。
・・・大きいと思った。男であることを主張するそこは、堂々と反り返っていて、
グレンが腰を揺らして少し擦り合わせるだけで、ぞくぞくと背筋が震えてしまう。
男の掌が、2本の雄を包み込むようにして擦り合わせるような動きを見せた。
もう、既に深夜の下肢は限界。
立っている状態で、膝が震えた。腰が砕けそうになるのを必死に耐えていると、
グレンの片腕が腰を抱いてくる。引き寄せられる下肢、触れ合う面積が増え、グレンの熱を感じる。
互いの腹の間では、互いの雄が解放を求めてぐちゅぐちゅと音を立てている。

「っ・・・グレ、僕、もう・・・」
「ああ、いいぜ」

あっさりと許可が出た。耳元で吹き込まれるその声音は、甘く、深いそれで、身体を駆け抜けて下肢へと届く。
ぞくぞくと駆け上がる快感、吐き出したい、と脳髄が訴えた。
思考回路が焼き切れる。真っ白に塗りつぶされる意識、その感覚が怖くて無意識に片手で男にしがみ付く。

「っ・・・あ、も・・・だめ、イく…!」
「深夜」

彼のテノールで自分の名前を呼ばれると、もうダメだった。
深夜はぎゅ、と目を瞑り、その瞬間にびゅくびゅくと下肢の箍が外れた。
自身の腹と彼のシャツに、白濁が飛び散る。尚もグレンは、指先で深夜の雄を刺激し、
最後まで搾り取る。どろりとした精液でグレンの掌や衣服が汚れているのに、
彼は意に介していないようだ。
深夜はグレンの顔が見れずにいた。だというのに、グレンは嬉々として目の前の男の顔を覗き込んでくる。

「っあ・・・は、はぁっ・・・」
「溜まってたんだな。さっき自分で抜いたんじゃなかったのかよ?」
「っ・・・るさ・・・」

頬を染め、はぁはぁと息をつく深夜の姿は、
気だるげに形の整っている柳眉を寄せ、瞳は泣きそうに歪んでいて、
口の端は閉じることもできずに酸素を貪っている。
深夜の視線が、グレンと絡んだ。
その、男を誘うような甘い視線に、グレンもまた、張りつめたままの己の下半身を意識する。
このままでは、到底終われなかった。
仲間の、大切な仲間だと思っていた彼の、浅ましい欲望を目にしてしまった。
もう、後には戻れない。グレンは黙ったまま、思わせぶりに彼の尻に手を這わせる。尻の感触を確かめるように撫ぜて、
そうしてボトムをずり下ろそうとする。
その思わせぶりな掌の動きに、深夜は慌てた。壁に尻を付けて、脱がそうとする掌の邪魔をする。

「っ・・・ま、待ってよ、グレン」
「・・・駄目か?」
「ダメとかいいとか、そういう問題じゃ・・・」

言いながらも、グレンの掌はズルズルと深夜の領域を犯してくる。
ボトムの中へと侵入してくるそれに、深夜は震えた。
確かに、グレンの雄はまだ欲望を吐き出してはおらず、男ならばその先に進みたいのかもしれない。
けれど。
待て、冷静になれよ、と深夜は深呼吸した。
グレンが男ならば、自分だって男である。気持ちはともかく、
自分の身体が彼を受け入れられるとは思えなかった。第一、女の身体ではないのだから。
だというのに、グレンは次に進もうと乗り気になっていて。

「・・・僕は、男だよ?!抜き合いっこ位ならともかく、その先は・・・」
「嫌?」
「嫌、っていうか・・・勘弁してよ、手で抜いてあげるから」
「・・・それじゃ、つまらないな」
「はぁ?!」

グレンのそのとんでもない言葉に、深夜の火照っていた顔が一気に蒼白になる。
そりゃ、自分が女の子だったら、確かに彼に惚れていたかもしれない。
実際、男としても、親友としても、最上級の親しみがある。
けれど、女性の代わりとして扱われるのは、・・・あまり、乗り気にはなれなかった。
今回は欲情してこんなことになってしまったが、普段は彼の傍にいられるだけで、
それで十分幸せだったはずで。

「抱かれたかったんだろ?」
「・・・いや、そんなことは・・・」
「本当に?」
「っあ・・・」

するり、と衣服を脱がされて、文字通り深夜は身を竦めてしまった。
立ったままだったため、膝のあたりまでボトムを落とされる。ひんやりとした外気に晒される範囲が広がり、
ぶるりと身体を震わせる。グレンは抱き留めるようにして、両手でなだらかな尻を撫で、
そうして問題の割れ目の部分を拡げるように指を食い込ませた。

「っ、ぐ、グレン、待っ・・・」
「とかいって、興奮してんだろ。ほら、前もまた反応してきてる」
「っう、や、めっ」

腰を揺らして、なおも己の砲身でぐいぐいと押し上げてやると、またしても深夜の下肢が反応を返すのを止められない。
再び羞恥に頬を染めた。恥ずかしい。グレンのからかうような笑いが耳に響いてくる。
グレンがこうして感情を自分に向けてくれるのは、嬉しい。
それでも一方で、嫌われたくないという気持ちはどこかにあった。
自分は真昼じゃないし、真昼の代わりにもなれない。第一、男だ。彼に求められて、
けれど本当に彼を悦ばせられるのだろうか?
幻滅されるのは真っ平だった。グレンのことは好きだが、決して、こういう関係を求めたわけじゃないのに。

「ね、ねぇ、やめよう、グレン」
「・・・んだよ、始めたのはそっちだろ?」
「・・・悪かったよ。もう、二度としない。だから・・・」
「うるせぇなぁ。・・・俺は、とっくにお前のことが好きなんだよ。だから抱かせろ」
「・・・は?」

耳を疑った。まったく理解できない単語が聞こえた気がした。
誰が、誰を好きだって?
「だから、俺はお前が好きだよ」
「な、んで・・・」

意味が。
意味が分からなかった。
何故グレンが、自分を?ましてや、ついこの間真昼を抱いたという彼がだ。
そんな、馬鹿な事、あるはずがなかった。

「そんな冗談、」
「まぁ、こういう関係を求めたわけじゃないけどな。
 ・・・あの、俺が暴走した時、お前は命懸けで俺を元に戻そうとしてくれただろう?
 ・・・結構、嬉しかったんだ」

少しだけ視線を逸らして、グレンがそう告げる。
正直なところ、その半分も深夜は聞こえていなかった。ただ、グレンが照れくさそうに告白めいたことを自分に言っているのだと理解して、
思わず声が漏れそうになってしまった。そんな深夜の身体を、グレンは強く抱き寄せる。
首筋に顔を埋められて、逆に深夜は天井を見上げたまま未だに信じられない状況に茫然とするしかなかった。
情欲を滲ませていたはずの身体が、あまりの驚きに萎えてしまうほど。

「・・・グレンが、僕を好き?」
「ああ。だから、抱かせろ」
「っ・・・そ、」

信じられない、と、そう思うそばから、グレンの掌が今度こそ引くつもりはない、とばかりに下肢を暴いてきた。
双丘の間に隠されて存在する、深夜の秘所に触れた。深夜はその感触に顔を顰める。
恥ずかしい。自分の排泄器官を、誰かにいいようにされる羞恥。
浅く、ゆっくりと指を差し入れられて、思わず深夜はぎゅ、と身体に力を込めてしまった。
やはり、怖い。グレンの雄を、ここで受け入れなければいけないと思うと、
一気に恐怖心が湧き上がる。

「っは、初めてだから、優しくしてよね・・・」
「わかってる」

不安を滲ませる深夜に、グレンもまた、至って真面目に頷いた。
本格的にそこを解すべく、深夜の体制を入れ替えさせる。
こんな場所で、初めての経験を迎えるなんて。
けれど、そんな女々しいことを言う気になれず、深夜は黙って頬を染めたまま、大人しく壁に手を付ける。
男に尻を突き出す恰好は、ひどく恥ずかしかった。
壁につけた腕に、顔を埋めて。
時折服を噛み締めて、その感触に耐える。

「・・・そんなに緊張すんなよ」
「っいや、無理だろ・・・」

グレンは己のボトムのポケットを探った。取り出したのは、小さめの瓶のようなものだ。
深夜は片目でそれを見やり、あり得ない、と首を振る。
第一、なんでそんなものを準備しているのだろう、この男は??
「・・・待って、なんでそんなの持ってるんだよ」
「あ〜これか?五士の忘れモノだ」
「はぁ?」

思いがけない人物の名前に、深夜は状況も忘れて呆れた声音を出してしまった。
第一、グレンが五士の忘れ物を持っている流れがまったく想像つかずに、顔を歪めてしまう。

「なんでそれをグレンが?」
「次、実技授業で更衣室行ったろ。そこで五士がやらかしたんだよ。男子更衣室に入る前にコケて鞄ぶちまけて隠し持ってたゴムとコレが美十に見つかったわけだ。んで、俺がこれだけ拾った」
「・・・はぁ、それはすごい想像つくかも・・・ってか五士、そこまで女の子と色々したいんだ・・・」
「呆れた奴だよな。まぁでも、今は都合がいい」

ほら、話は終わりだ、とグレンは深夜を屈ませた。
確かに、今この状況で、ローションもなにもないまま突っ込まれてしまっては、
自分の腰がどうなるか、想像したくもなかった。
だから、ここは五士に感謝すべきかもしれない。グレンの掌が深夜の尻を掴んで、きゅ、とキャップを口で開ける。

「っひゃ、冷た・・・」
「我慢しろ」

とろり、と尻の間に垂らされたローションの感触が気持ち悪かった。
股の間に掌で塗りたくられ、グレンのぬめるそれは深夜の砲身までを濡らしていく。
何度もそこを撫でられていると、今度は冷たかった感触が、じわじわと熱を持ってきて、
深夜は下肢が疼いているのを自覚していた。
膝が震える。
グレンの指先は、特に重点的に尻の間を何度も撫でていて、
自分でも己の後ろがひくひくと痙攣しているのを意識した。っグレン、とつい名を呼んでしまう。
もどかしい。はやく、そう口から漏れそうになって、慌てて唇を噛み締めるが、

「んっ・・・!」

その時、グレンの指先が入り込んできた。
先ほどよりよほど侵入しやすくなった彼の指が、一気に根元まで挿入されて、深夜はその感触に喉を鳴らしてしまう。
気持ち悪かった。けれどそれでいて、内部に入り込んだグレンが、じわじわと周囲の壁を推し拡げるようにしてナカを拡げていく。
グレンの雄を受け入れるために、中を緩めているのだった。
努めて力を抜こうとして、けれど反射的に、グレンの指がどこか感じる部分に当たる度、
ぎゅ、と締め付けてしまう。それを笑われて、深夜は更に激しい羞恥を感じて、身体に力を込めてしまう。
悔しい。
どんな拷問よりも、これはきつかった。
居た堪れなくなる。これでは、いっそ痛みがあっても、無理矢理犯されたほうがよかったかもしれない、などと
バカげたことを考えたくなる。苦痛のほうが、慣れているだけに耐えるのも楽なのだ。
けれど。

「っぐ、グレン・・・も、」
「はは、もうちょっと我慢しろよ、このままじゃまだ全然きついぜ」

懇願するように蒼の瞳を潤ませる彼に、宥めるように前を刺激してやりながら、
グレンは更に2本、指を追加した。
1本からいきなり3本もの指を受け入れさせられ、深夜は息を詰める。けれど、ローションで既にとろとろのそこは、
簡単に侵入者を受け入れた。
今度は奥ではなく、入口のもどかしい部分を中心に、ぐるりと回されては襞を拡げさせられる。
もはや、深夜は下肢への感覚に惑わされて、熱い吐息と鼻にかかった甘い声音を漏らすばかり。上手く唾液を呑み込めずに、
口の端に筋すら作っている。だが深夜はそれどころではなくて。
指で翻弄されているナカが、ひどく熱かった。そのままじゅぷじゅぷと抜き差しを繰り返され、
頭の中までかき混ぜられているようだ。そうして、時折身体がびくびくと反応する箇所が、奥にあって、
深夜は動揺する。グレンの指先がそこを撫でる度に、身体がおかしくなりそうだ。

「あっ・・・ちょ、そこ、やめ・・・」
「なんだよ、思ったより感じやすいんだな・・・もう、いいだろ」
「っあ、!」

グレンの指が一気に抜かれ、思わず声が漏れてしまった。
自分の後ろが作り替えられていくような感覚、緩んだそこから、とろりと透明な液体が垂れてくる。
内股にまで垂れたそれを指先で掬って、グレンは砲身を撫でてやった。
前を握り締めたまま、今度こそ深夜の下肢に、グレンのそれが宛がわれる。
深夜は息を詰めた。
ついに、この。この瞬間が来るのだと思うと、
思わず力を込めてしまう一方で、彼の感触を味わいたいという気持ちが擡げてきていた。
意識を集中する。ぬるぬると焦らすように割れ目を砲身で撫でているグレンのそれは、極限まで膨張していて、
まるで熱く灼けた太い鉄串のようだった。
貫かれる―――文字通りの感覚に、深夜は溺れた。

「っ・・・グレ、ン・・・」
「・・・―――力、抜けよ」

甘く、深く響く声が、耳を犯した。
その瞬間、圧迫感に下肢が震える。じわりと馴染むように、それは思いのほかゆっくりと侵入を果たしていった。
散々慣らしていたせいで、痛みはない。けれどそれでも、初めての感覚に、深夜の締め付けはきつくなる。

「っあ、あ、あ、グレ、中、熱・・・っ」
「お前のほうが、ヤバいぜ・・・すっげ、絡みついてくる」

グレンもまた、初めての男の感触に、思わず自分を持っていかれそうになり、慌てて唇を噛み締めて耐えていた。
そうして、乾いた唇を舐めて、そうして中途半端に埋めていたそこをに、ぐっと体重をかけていく。
堅い楔が、柔軟で熱く蠢く内部に呑み込まれていく様子を喉を鳴らして見つめながら、
グレンは既に赤く腫れ上がった入口を拡げ、そうして最後の最後まで腰を押し付けた。
ぺたり、と互いの汗とローションで濡れた下肢が吸いつく様。
根元まで呑み込ませてしまって、けれど更にグレンは腰を押し付けるように動かすと、
深夜の口元から、ひゃあ、と甘い声音が漏れてきた。
彼の感じる場所は、先ほどで大体探りを入れているからある程度は把握している。
少し腰を引くと、捲りあがるように深夜の内部が甘く絡みついてくる。
その媚肉の感触を味わいながら、グレンは角度をつけて次第に腰の動きを強めていく。

「あっ、あ、グレン、そこ、だっ・・・」
「深夜、いいぜ、もっと感じろ」

深夜の萎えることのない前の感触を愉しみながら、グレンは何度も腰を押し付けた。
前立腺から奥にかけてを抉る様に、反り返った砲身で何度も貫く。その度に深夜の視界がスパークするようにちかちかとしていて
理性を手繰り寄せようとしては失敗する。全身が性感帯になったかのように、触れ合う箇所が敏感になり、とても熱い。
グレンの手の中の砲身も、腰を支える男の掌の熱も、密着する肌も。
初めてなのに、ここまで気持ちいいなんて、そう自覚してしまう自分も恥ずかしかったが、
指先や唇までが痺れるような快感で、思うように動けない。
グレンに、グレンの動きに翻弄される。
ぎゅ、と壁に爪を立てて、快感に耐えた。ガクガクと膝が揺れる。グレンの腰がぶつかる度に、
身体が壊れてしまいそうだ。
もう、目いっぱいに口を開かされてしまった下肢の感触はほとんどなくて、
内部の、グレンに満たされた充足感と、最奥を貫かれる感覚だけがひどくリアルに感じられた。
三度めの絶頂はすぐ目の前で、もう、無理、と深夜は首を振った。
背が抱き締められて、耳元に吐息がかかる。名を呼ばれ、そのまま耳を食まれて、
ぞくぞくと駆け上がる快感の奔流。

「深夜・・・ナカでイってもいいか?」
「んっ・・・え、それ、まっ・・・」

確か、中に出されてしまうと、腹を壊したり、いろいろ弊害があるのではなかったか。
そう一瞬だけ考えるが、既に思考回路が途切れ途切れの状態で、深夜は何も考えれずに、
素直にグレンの言葉に従ってしまう。
グレンはふっと笑って、己の欲望を満たすために、少し乱暴な程に腰を揺すった。
自らの動きに合わせて、深夜の尻を引き寄せて、そうして最奥を何度も犯した。深夜はもはや、声音を漏らすしかない。
よすぎておかしくなってしまいそうだ。
ただそれでも、グレンに抱き締められていることに安堵する。

「あっ、グレンっ・・・僕、もうっ・・・」
「ああ、俺もだ・・・。深夜、受け止めてくれ」
「うんっ・・・きて・・・っ、あ、んああ―――っ!!!!!」

腰を揺らしていたグレンの動きが、うめき声と共に一瞬止まる。その瞬間、深夜の中に熱い飛沫がどくどくと注がれた。
その感触にすら、深夜は感じてぎゅ、と内部を締め付ける。それと共に、己の前もまた、快楽を欲して精を吐き出していく。

「あっ、あっ、、グレンっ・・・」
「っは・・・すげ、中、搾り取る気かよ・・・」

深夜が射精してしまったことで、きつい締め付けにグレンが眉を寄せる。
全て吐き出してしまって、腰を引くと、ローションと精液とが混じった体液が深夜の後孔とグレンの砲身を繋いだ。
男の呼吸に合わせて、とろとろと溢れだしてくるそこを見て、グレンは目を細めてしまう。
あまりに卑猥で、まだまだ興奮が収まりそうになかった。
だが、さすがに彼は3度目で、くたりと力を失い、今にも倒れ込みそうだ。
力の抜けた身体を抱きとめてやる。彼にここまで強いてしまったのはやはり自分なので、
ここは責任を取らねばならないだろう。

「ったく・・・世話の焼ける奴だな」
「グレンの、せいだろ・・・」

仕方なく便座に腰を下ろして、そのまま彼を座らせてやった。
現状はかなりひどいが、まぁどうにかなるだろう。ここにはティッシュも水もあるのだから。
このまま、意識を失いそうなくらい脱力している彼に、はは、と笑ってやる。
そのまましばらく付き合ってやるか、と肩を竦めて、
グレンは後処理のためにいそいそと準備を始めたのだった。





end.





Update:2016/03/29/TUE by BLUE

小説リスト

PAGE TOP