たかが愛、されど愛。vol.2



その日、地球軍、第七艦隊所属のフラガ中尉は、
いつも煩い彼にしては珍しく黙々とデスクワークをこなしていた。

つい最近宇宙から戻ってきた彼は、任された任務の報告書を提出するべくしばらくの間机に噛り付いている羽目になっていたのだが、それももう今日まで。
久しぶりの休暇は、もうそこまで来ている。
さぞかしにやけた笑みを浮かべているだろう・・・と思いきや、
フラガはなぜか眉間に皺を寄せたまま誰と話をすることなく書類に向かっていて、
同じ部屋にいた彼の同僚たちは不思議なこともあるものだと顔を見合わせた。
つい先ほど、久々の休暇だからと内輪での飲み会に誘ったのだが、

「わりぃ、用事があって・・・さ」

とそれに乗ってくることもない。
機嫌が悪いのか、とも思うのだが声をかければそれなりの応対はしてくれるし、
纏った空気もそれほどぎすぎすしているわけでもない。
そもそも、この人当たりの良い性格を持つ彼が機嫌の悪い姿を、
同僚達はあまり見たことがなかった。

そうしているうちに、時間は過ぎ。

フラガは漸く仕事を終え、基地を後にした。
時刻は夕方500時。
昨日までの予定ならば、今頃はクルーゼが空港についている頃だ。
腕の時計を見て、フラガは大きくため息をついた。

昼前、フラガはクルーゼにメールを入れていた。
今回、実はフラガはどうしてもクルーゼに来てもらいたくなかった。
そのための苦肉の策が、あのメールである。
2人一緒の休暇ということで、とりあえず怪しまれないよう互いの家ではなく、他の場所で落ち合い適当なホテルなりで過ごすのが常だったのだが、
フラガはあのメールを送ると待ち合わせ場所に向かうのではなく家への帰路についていた。
あんな用件だけのメール、クルーゼに怪しまれるだろうとは思ったが、
下手に理由をつけてしまえばかえって墓穴を掘る、というのが今までの経験で、
結局ストレートな内容になってしまった。
だが、これでは予定していたフラガとの待ち合わせもキャンセルになり、クルーゼとしてもどうしようもないはずである。

フラガの家は、・・・家といっても一戸建てではなく、マンションだった。
しかも、今だに軍支給の部屋で、同マンションには数多く地球軍関係者が住んでいた。
こんな場所にクルーゼが来るということは、無防備に敵地に突っ込むようなものだ。さすがの彼もそこまで無謀ではないだろう。
ということは、間違ってもクルーゼに逢わないためには、家で大人しくしていればいいわけだ。
フラガが基地から車で帰宅すると、もう時間は7時を過ぎていた。
冷蔵庫に残っているもので軽く食事を済ませ、シャワーを浴びる。
クルーゼからの抗議のメールが来ていないことを確認し、ほっと胸を撫で下ろし。
フラガはまだ早い時間だというのにベッドに潜り込んだ。
締め切ったカーテン、真っ暗な部屋。
マンションの一室に、また静寂が訪れる。
カーテンの隙間からすら洩れない光に、誰もが留守だと思ったことだろう。
フラガは布団を頭から被ると、そのまま眠りの世界に入っていった。






続く。







すいません、詰まらないもので。今度こそ餅にするから許してくださいよ(オイ) )



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Update:2004/08/27/FRI by BLUE

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