Christmas Lovers 後



 「ん・・・っ」

 背後から抱きすくめられ、フラガは喘ぐように背を仰け反らせた。
 フラガの手を包み込むようにしてシャワーヘッドを取り上げたクルーゼは、そのまま腕に抱く男の体についているシャボンを洗い流すようにして指を這わせていく。
 首元から鎖骨へ、鎖骨から胸元へと下りていく手のひらが不意に胸の淡い飾りに触れ、フラガはぴくりと体を竦ませた。

 「や・・・」

 微かに抵抗する口元に構わず、クルーゼは彼の背にくちづける。
 浮き出た骨のラインに沿って唇を滑らせると、それだけで甘い声が上がった。
 あわててしがみついてくるフラガの手が愛おしい。
 手に持っていたシャワーを壁に掛けると、クルーゼは濡れたフラガの体を反転させ、自分のほうに向けさせた。
 壁に背を預けさせ、彼の顔を覗き込む。
 恍惚とした表情が、自分を見て微かに笑みを浮かべる様が、たまらなくそそった。

 「・・・ムウ」

 名を呼び、微かに開いた唇を塞ぐ。
 フラガは抵抗もなくクルーゼを受け入れ、自分から舌を絡ませてきた。
 首に回される、フラガの腕。
 深い口付けを交わしながら、クルーゼは手をフラガの下肢に這わせた。
 先ほど達したばかりだというのに、彼自身はもう勃ち上がっている。
 それに手をかけて、クルーゼはフラガの足元に跪いた。
 バスタブの縁に片足を上げさせ、中心に顔を埋める。
 フラガの雄の先端にくちづけ、そのまま口内へと導くと、立ったままの全身が大きく戦慄いた。

 「ラウ・・・っ・・・!」

 咎めるように降ってくる声を半ば無視して、クルーゼは歯と唇で刺激を与えてやる。
 先端に歯を立てて甘噛みしてやれば、ほどなくして甘いような苦いような蜜がそこから零れてきた。
 フラガの指が、クルーゼの波打つ髪に差し入れられる。
 やめさせようとクルーゼの髪を力なく引くフラガの手は、けれどかえって愛撫を施す男の行為を煽らせる結果となった。
 根元に絡まる指先と生暖かな口内の感触に、フラガの口の端からはひっきりなしに声が漏れている。

 「あっ・・・はっ・・・っく・・・」

 ぎゅっ、と髪を握る指に力が込められる。
 片足で立ったまま快感に耐えるのはつらいのだろう、もう一方の手もまたしがみつくように壁に指を噛ませていた。
 湯気の充満するバスルームの中、苦しそうに喘ぐフラガの声が響く。
 それに笑みを浮かベて、さらなる刺激を与えてやれば、限界を訴えて口内のそれがさらに容量を増した。

 「離せっ・・・、ラウ・・・っ」

 仕上げとばかりにきつく先端を吸い上げれば、雷に打たれたように体をびくつかせ、クルーゼの口の中で自身を解放する。

 「っあああ・・・っ!!」

 脱力する体を支え、クルーゼは喉の奥に放たれた精のみならず残滓までを吸い上げ、飲み下した。
 あまりの恥ずかしさに、目の前の男の顔が見られない。
 しゃがみ込むフラガを、クルーゼは優しげに見つめていた。

 「・・・ほんとに飲むかよ・・・」
 「お前の・・・だからな」

 事も無げに返ってくるクルーゼの言葉が、よりフラガの羞恥心を煽る。
 目元まで真っ赤に染め横を向くフラガを抱き、クルーゼは彼の耳元で囁いた。

 「愛してる・・・」

 久々に聞いた気がするその言葉に、急に切なくなる。
 両腕をクルーゼの背に回し、フラガもまた彼の耳元に唇を寄せた。
 ぴったりと密着した胸から互いの鼓動が伝わってくるのが、何故かひどく心地良い。

 「・・・俺も。ラウ・・・・・・」

 きゅっとしがみつくと、クルーゼもまたきつく抱き返してきてくれる。
 太股にあたる彼のものが熱を放っていることを感じ、フラガはごくりと息を飲んだ。
 これから何が起こるのか・・・それを予測して、無意識に体が受け入れる準備をし始める。
 体を固くするフラガに、クルーゼは笑った。

 「・・・欲しいか?」
 「・・・っ!」

 低い声で囁かれ、体が震える。
 クルーゼの手が伸ばされ、シャワーのコックが閉められるのをぼんやりと見つめていた。
 水滴にまみれた手が膝の裏に差し込れられる。
 そのまま、クルーゼはフラガを抱えてべッドまで運んでいった。

 「なっ・・・!」

 驚く間もなくベッドの上に転がされ、ひんやりとした空気が全身に触れてくる。
 シーツの濡れた部分が、もう既に冷たくなっていた。
 寒い、というほどではないが、濡れたままの体をシーツの上で晒していることがひどく淫靡な行為のようで、フラガは精神的に刺激を受けていた。
 ゆっくりと覆い被さってくるクルーゼを、フラガは祈るような気持ちで見つめる。
 指と指が絡み合い、互いの想いを何よりもはっきりと伝えてくれる唇が重なり合えば、行き着く先はもう決まっていた。

 「ん・・・っ・・・・・・」

 クルーゼの膝が、躊躇なくフラガの脚を割らせる。
 それを感じて、大胆にも自分から膝を立ててくるフラガに、クルーゼは喉の奥で笑った。
 いつもこんなに素直でないだけに、彼から為される仕草がひどく嬉しい。
 きつく握り締めてくる手を握り返して、クルーゼは唇で囁いた。

 「・・・いつもこうならいいんだがな・・・」
 「っ・・・いいから、早く入れろよ・・・っ!」

 先ほどまで散々前を弄んでいただけに、フラガ自身も焦れているようだ。
 目の前に晒された彼の後孔は、まだ何もしていないというのにひくひくとうごめき、クルーゼを待ち焦がれていた。
 自身をあてがえば、数瞬後の痛みと快楽に耐えるかのように、青の瞳が閉じられる。
 綺麗に顰められる眉に半ば見とれながら、クルーゼはフラガの中に侵入した。

 「―・・・っああ・・・!」

 押し出されるように洩れる声。
 それを耳元で心地良く感じながら、より自身を深く挿入させていく。
 慣らしてはいなかったがゆっくりと腰を進めたせいか、フラガの中はさほど抵抗感なくクルーゼを受け入れた。

 「・・・熱い・・・な」

 根元まで深く受け入れてしまえば、今度は自分を離さぬようきつく銜え込む熱い中。
 力を抜こうと努力してはいるのだろうが、それでもまだ強張るフラガの頬になだめるようにキスを落とし、クルーゼは緩く腰を引いた。

 「んあっ・・・はっ、・・・っ、・・・」

 洩れる吐息が一段と荒くなるのが嫌で、フラガは唇を噛む。
 その上から舌でなぞられ、体が竦んだ。
 少し掠れた甘やかな声が、耳元で響く。

 「もっと声、出せ」
 「・・・っなん、で・・・っ!」

 内壁が擦られ、痛みと共に快感が襲う。

 「・・・なんで、も何もないだろう」
 「うあっ・・・っ・・・!」

 深く突き上げられ、背筋を電流が走る。
 耐えているわりに、さして効果は上がっていないようだった。
 立てた両足が自分の腰を強く狭み込む。
 そんなフラガに苦笑し、クルーゼは突き上げるペースを速めた。
 腹にあたる先端のぬめりが、組み敷いた男の感じている様を示していて。
 自分の限界もまたすぐ近くに感じながら、クルーゼはフラガを絶頂に導くベく最奥を貫いた。

 「っあああ―・・・っ!!」
 「ムウ・・・っ・・・」

 大きくのけぞった体が、その反動で深くシーツに沈み込む。
 達した衝撃でびくびくと痙攣する体を抱き締めてやれば、やっと安心したような笑顔を見せた。
 自分が愛したその存在にくちづけ、
 クルーゼはいつまでも彼を見つめていたのだった。







 気付けば、目の前にクルーゼの顔があった。

 「・・・大丈夫か?」

 優しげな声になんとか頷き、身を起こす。
 すると、先ほどの情事を示す熱い液が体の奥から零れてきて、フラガはその感触に息を詰めた。

 「・・・っ・・・」

 その様子に気付いて、クルーゼはふふっと笑う。
 肩を抱き寄せ、もう一度腕の中に抱き込めば、あきらめたように体を預けてきた。
 時折痛みに顔をしかめるフラガが、大きくため息をつく。

 「・・・やりすぎだ」
 「そうか?まだ1度だけだろう」
 「1度だけってなぁ・・・・・・。俺は3回もイかされたんだぞ?!」
 「まだ3回、だろう?少なくともあと2回はイけるな」
 「・・・っ」

 どんなに言い張っても、口で勝てないことくらいわかっている。
 あきらめたフラガは、下手に墓穴を掘らないよう口を噤んだ。
 いい加減、これ以上されたら明日ベッドから出られなくなってしまう。
 深くため息をつくと、フラガはふと窓を見やった。
 先ほどまで点灯していたはずの光のオブジェが、今はもう輝きを失っていた。
 折角最上階で綺麗に見れる部屋を選んだのに、これでは意味がないではないか。

 「ちぇ・・・折角ココ選んだのに」

 窓を見ながらつまらなそうに呟くフラガに、クルーゼはバカだな、と笑った。
 自分が行為を強いたせいで時間内に見れなくなってしまったことは棚に上げて。
 フラガを胸に引き寄せて、クルーゼは言った。

 「いいじゃないか。あんな人工物」
 「・・・そう言うけどなぁ。1年に一度のイベントだぜ?しかも毎年見れるかすら知んねーのによー。あーあ、もったいない」
 「あんなものより、お前のほうがよっぽど綺麗だ。私にとってはな」
 「なっ・・・」

 みるみる顔が真っ赤に染まる。
 そんなフラガもたまらなく可愛い。
 恥ずかしそうにそっぽを向くフラガの顔を自分の方に向け、クルーゼは掠めるように唇を奪った。
 乾き始めている金の頭を撫でてやる。
 何も言い返せず腕の中に収まる彼を抱き、クルーゼもまた瞳を閉じた。


 こんな穏やかな夜は、本当に久しぶりだ。
 自分の傍にフラガがいてこそこんな穏やかな気持ちになれることを、クルーゼは改めて実感していた。
 いつもこうだったらどんなに幸せだろう、と思うけれど。
 でも、これが毎日続けば、これが日常になり、嬉しいと思うこともなくなるのかもしれない。
 厳しい現実の中のひとときの夢だからこそ、大切にしたいと思うし、こんなに幸せだと感じられる。
 そんな気がした。
 ・・・2人だけの、大切な想いと共に。

 「おやすみ、ムウ・・・」

 腕の中で丸まる彼に、囁いてやる。
 もう半分眠りかけていたフラガが、小さく口元を緩める。
 2人は、そのまま暖かな想いと共に眠りの世界へと旅立ったのだった。









・・・メリークリスマスv(byれっちょ)





Update:2003/12/25/WED by BLUE

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