Rest up



すこし、足元がフラついた気がした。
額に手を当てれば、ほのかに熱っぽいかもしれない。
風邪かな、とフラガはぼんやりと考えた。
だが、幸い頭痛がするわけでもなく、咳き込むこともないから、任務に支障はない。
それに、そう簡単に休んでいられないのが軍隊だ。
いや、それ以上に、健康が一番の売りであった自分が風邪で休むなど、情けなくていえるはずもない。
そんなことをしたら、たちまち同僚たちに知れ渡り、
冷やかしかもしくは煩わしい見舞いやら何やらでどうせゆっくりと休めないのだろう。
はっきりいって、そんなのはごめんだった。
フラガは微かにだるい体をしゃきっとさせるべくシャワーを浴びると、
それから出勤するべくおもむろに身支度を始めた。

幸い、今日は珍しくデスクワークだ。それに、運がいいのか悪いのか自分付きの補佐兵も休みである。
何より知り合いに今の自分の状態を知られたくなかっただけに、
それはそれで幸運だろう。
フラガは執務室に入ると、チカチカとメール着信のサインが出ているパソコンを立ち上げた。

「・・・・・・ん・・・なんだよ・・・会議じゃんか・・・・・・。」

指令文を見てため息1つ。
会議など、ただでさえこの手の仕事が嫌いなフラガが何より嫌がるものである。
折角1人でぼーっと仕事をしていられると思ったのに、どうもそれが出来ないらしい雲行きに、
フラガはだるそうに眉を顰めた。
フラガにとって、人と顔を合わせるということが今一番億劫なのだ。
具合の悪さを気取られたくないだけに、これでは無理に虚勢を張ってしまう。
それがより具合の悪さを助長してしまうことぐらいフラガだとてわかっていたから、仕方なく極力人と関わらないようにしようと心に決めた。

(・・・あー行きたくねぇ・・・・・・)

くだらないプライド。目の前のパソコンのボタン1つ押せば、簡単に会議の欠席連絡が送れるのだ。
ただ、それには明確な理由が必要だったし、いくら大尉だとて無断欠席など言語道断である。
集団行動の多い軍隊は、
切羽詰っている時以外は他人に感染ることを危惧して休養を取ることに文句は言わない。
だが、フラガは熱っぽい頭を無理矢理支えて、あと30分で始まる会議に行こうと椅子から立った。
億劫なことになおさら具合を悪くしているのだろう、先ほどより足元がおぼつかない。
しかし、そんなことでは基地の通路を行く人に不審がられてしまう。
フラガは外に出ると、そんな空気は微塵もなくさわやかな笑顔を知人に向けていた。
そして、それから数歩歩いた時。

「ん・・・・・・この感覚・・・」

ざわり、と背筋が悪寒を伝える。悪寒というか・・・言うなれば違和感みたいなものだが。
ここは地球軍の基地だ。したがって、この感覚が『在』る、ということ自体おかしい。
だが―――・・・、フラガは眉を顰めて3秒ほど考えた後、腕の時計を見て踵を返した。

(・・・あのヤロー・・・こんな時に何やってんだよ。。。)

自分が感じる『違和感』の原因。それを今のフラガは明確に知っている。
それをもたらす存在が基地内にいると知って、フラガはそちらの方向へと走っていった。
走ることは具合の悪いフラガには困難なことだろう。
だが、今の彼は意識が別の方向に行ってしまっている。
会議前の数刻―――『ヤツ』がこんな近くにいれば、気になって会議に集中することもできない。
フラガは彼を追い返そうと、彼のいる場所へと向っていった。

「オイっ!」

フラガが声を上げたのは、人気のない工場区の一角だった。
フラガの目の前にある通路には、横道が数えるほど。そこにフラガの追う男はいるはずだった。

「隠れてもムダだ、おとなしく出て来い!」

自分の身体の調子の悪さもあって、えらく不機嫌になっているようだ。
フラガは怒気の孕んだ声で『彼』にそう告げた。
影のほうで、・・・くっくっく、と笑い声が聞こえてきて、より一層フラガは眉間に皺を寄せた。

「相変わらずだな、フラガ」

低音だがよく響く声がフラガの耳を打った。
両手を上げて、男はフラガの前に姿を現す。こちらも相変わらずの、白い軍服。
はぁ〜、と、フラガは深くため息をついた。

「ったく・・・なんなんだよお前はー」
「なにがだ?」
「あーもう。なにがだ、じゃねーっての!」

敵軍の男が侵入してきているのだ、早く報告か捕らえるかすればいいものを、
フラガはただ男―クルーゼに文句を言うだけで、一向にその気配はない。
クルーゼはくくっと喉の奥で笑った。そんなフラガが、クルーゼは好きだったりするのである。
だが、クルーゼは今回はフラガに逢いに侵入を果たしたわけではなかった。
敵軍の基地に侵入したのも、きちんとした目的があったのだ。

「生憎だが、今日はお前に付き合ってられないんだよ、ムウ。見逃してはくれまいか?」
「見逃す?!俺が?お前を?!」

無理に決まってんだろ、とフラガはクルーゼに不平を洩らす。
こんな、ざわざわと胸がなるような感覚。だまって会議も続けていられない。
いや、それよりクルーゼが侵入者として内部の人間に追われる羽目にでもなったらどうすればいいだろうか。
絶対自分に捕らえよと命がくる。こんな頭の痛いときに。最悪だ。

「・・・間の悪い時にくるなってんだよ」

フラガはクルーゼの額に腰に下げていた銃口を当てた。
安全装置はしたままだったし、そもそもこんなところで銃声を鳴らすわけにもいかなかったから、
決して本気でクルーゼを撃つ気でもなかったのだが。
フラガの忍耐もそろそろ限界に達している。このまま去れ、とフラガは顎をしゃくった。

「ふ・・・久々に、やるか?」
「・・・帰れったら!」

ぎりっ、と唇を噛み締めてフラガはクルーゼに殴りかかる。それをひらりと交わして、クルーゼはにやりと笑った。
そもそも、こんなところで何をしているんだとも思うが、たまに素手で戦ってみるのも懐かしいと思える。
まぁ、フラガに出会ったらこちらとしても上手く仕事がこなせるはずもないのだ。
ひとつぎゃふんと言わせてやろうと第2撃(無論本気ではないが)を見舞おうとして、クルーゼはハッと目を見開いた。
目の前で構えの姿勢を取っていたフラガの身体が―――、不意にぐらりと揺れた。

「ム・・・―――ウ!!」

力が抜けた、という感じで前に倒れ込むフラガに、クルーゼは咄嗟に手を伸ばす。
幸いあまり遠い距離ではなかったから、彼の身体を腕の中に収める。
ガチャン、とフラガの手から銃のこぼれる音がして、クルーゼは眉を寄せた。

「・・・ムウ?」

―――熱い。
フラガが触れている手や胸に伝わるそれに、一層眉を顰めて。
気を失ったらしい彼の額に手をやると、体温の低いクルーゼの手に伝わる焼けるような熱さ。
クルーゼは深いため息をついた。

「・・・風邪なら休めばいいものを・・・。」

呆れた男だ、と呟いて仕方なくクルーゼは彼を抱え上げた。
侵入した理由はいろいろあって、時間厳守だったり急がなければまずいことにもなるのだが。
だからといって彼に、フラガを放っていくことなどできなかった。
クルーゼは、フラガのことを一番に優先する。
それが今回も発揮され、やれやれとクルーゼは彼を載せて足を運んだのだった。








フラガの部屋までの道中、幸い誰とも出会わなかった。
それもそのはず、基地にいる者は下っ端でなければ大体が会議に出席しているのである。
そもそもこの階の人間は、フラガのような上級尉官か、その補佐である兵たちぐらいしかいないのだから、
監視カメラはあっても、通路に人が見当たらないのは当然のことだろう。
クルーゼはフラガをソファに横たえると(当然、執務室にベッドはない。)、
とりあえず襟元を緩め(会議前だというのでフラガは珍しくきちんと締めていた)、
それからアメニティスペースで白のタオルをみつけると、クルーゼは冷水でタオルを濡らしフラガの額に乗せた。
本当は薬を飲ませてやりたいところだが、そもそもこの男の執務室に薬などを常備しているかも謎である。

「ったく・・・これほどひどいなら休めばいいものを・・・」

熱があるときは、とにかくはやく熱を下げるのが先である。
したがって、人間汗をかくという機能が備わっているのだからそれを助けてやればいいだけだ。
だが、毛布もないこんな場所では治るものも治らない。
全く、家で静かに寝ていればいいだろうに、とクルーゼはまたもやため息をついた。

「ん・・・・・・」

クルーゼの気配にやっと気付いたのか―――・・・、フラガの青い瞳が開かれた。
覗き込めば、熱に浮かされる瞳が揺れる。それに行為の最中のフラガを思い出されられて、クルーゼは目を細めた。

「―――大丈夫か?」
「クルー、ゼ・・・?俺・・・」

いつも高慢な男の、自分に向ける心配そうな表情にわけもなくどきりとしてしまう。
だが、元々熱で顔が赤かったため、幸いクルーゼにそれは伝わることはなく、
フラガは内心ほっとため息をついた。

「薬は?」
「飲んだ」

だるそうに腕で目を押さえる。それにしても、早く効いて欲しいのに。

「全く、無茶をする。ひどい熱じゃないか」
「ん〜・・・別にひどくなかったから、さ・・・」

とはいえ、自分のつまらない意地のせいで休まず、そのままこうなってしまったことに、フラガは視線を彷徨わせた。

「あー・・・・・・会議ー・・・」
「無理だな。あきらめろ」
「まーたなんか言われるなー・・・めんどくさー」

だるそうに告げるフラガに、クルーゼは眉を寄せる。
フラガの状態は思った以上に悪いようだ。朦朧とした瞳がそれを告げていたし、
すぐ熱くなって役に立たなくなってしまうタオルはよほど彼の熱が高いことを示している。
かといって着替えさせて布団に潜らせるわけにもいかず、さて、どうしたものかとクルーゼは頭を悩ませる。
そんなクルーゼに、フラガは言った。

「あーあんた。なんか用事あったんだろ・・・?行っていいぜ」
「・・・それでも地球軍か、お前」

熱で頭がおかしくなったのか、敵軍の男にスパイ活動を進めるフラガに、クルーゼは苦笑する。
それからぼんやりと上向くフラガの顔を覗き込むと、そのまま唇を重ねた。

「んっ―――・・・う・・・」

いきなり感じたクルーゼの薄い唇の感触に、今度はフラガが眉を寄せた。
容赦なく歯列を割る舌は、紛れもなく毎回フラガの熱を煽るモノ。
抵抗しようにも熱のせいか思うように身体は動かせず、口内では簡単に舌を捕らわれ、吸われたり甘噛みされたりする始末で、
フラガは嫌そうに首をゆらゆらと振った。

「っつー・・・。何、すんだよ・・・」

移るだろ、とクルーゼに言ってみるものの、大丈夫だ、と当然のように返されてフラガは戸惑う。
身体を動かすことさえ億劫なだけに、与えられる快楽を受け止めることも困難に思えた。

「っ・・・クルーゼ・・・な、に考えて・・・」

頭に乗せられたタオルを取り上げられ、テーブルに置いたボウルの氷水がからりと澄んだ音を立てる。
絞り直して冷たさを取り戻したそれをフラガの上にのせてやると、クルーゼは囁いた。

「風邪の時は、汗をかいた方がいいんだぞ」
「そりゃ、そうだけど・・・ってあんた!まさか・・・っう―――・・・」

もう一度抵抗を紡ぐ唇を塞いで、クルーゼはフラガの襟元に手をかける。
タオルを絞ったせいでひんやりとしたクルーゼの手が熱っぽいフラガの肌を辿るたびに、
フラガは不覚にも気持ちいいと感じてしまう。
思わず漏れた声をクルーゼに聞かれて、フラガの顔はより赤みを増した。

「なに、病人に欲情してんだよっ・・・」
「汗をかかせてやろうと言っているだけじゃないか。お前はおとなしく寝ていればいい」
「おとなしくしてられるかっての!!」

思わず叫んで、っつー・・・と頭を抱えるフラガを抱き込んで、クルーゼは有無を言わさず服を脱がせていく。
フラガは確かに嫌がったが、クルーゼに抵抗する気力も体力もないに等しく、
力の入らない腕がふらふらと抗うように宙を切っただけだった。
そんなフラガの腕を、クルーゼが掴んだ。

「っあ・・・」

冷たい指先に自分のそれを絡め取られ、フラガは息を呑んだ。
熱さが一瞬癒されるような。そんなひんやりとした刺激が指先から伝わる。
クルーゼが身を倒し、フラガの額に乗せられたタオルの自分の額を当てた。

「ムウ。・・・・・・大人しくしていなさい」

あまり聞くことのないクルーゼの諭すような声音に、フラガはどきりとする。
なにか言ってやろうと口を開いたが、朦朧とした頭はまともな言葉を紡げず、結局フラガはクルーゼの行為を受け入れる形となってしまった。
クルーゼの膝が、フラガの下肢に割り込む。押し上げられるように衣服に包まれた彼自身を刺激され、フラガは全身を震わせる。
熱をもち、敏感になっているフラガの身体に、クルーゼは冷静な顔に明らかな欲情の色を滲ませた。
もちろん、確信犯でのことだ。

「熱があるときは敏感だというが・・・どうやら本当のようだな」

くっくっと笑い、むき出しになった肌を手のひらで滑らせる。
腹部のあたりを撫でられ、フラガは筋肉をひきつらせた。

「っひ・・・」
「ほら・・・力を抜け」

余計に具合が悪くなるぞ、と無意識に緊張していた身体をなぞられる。
フラガは唇を噛んで、精一杯クルーゼに反抗を示すようにプイ、と顔を仰け反らせた。
けれど、本当に抵抗はしない。それどころか、クルーゼの動きにフラガの腰が揺れ始める。
自覚はないのだろうが、そんなフラガの肢体に、クルーゼは自分もまた熱くなるのを止められなかった。

「熱いか?」
「ん・・・あつ、い・・・」

彼に全裸を晒させて、クルーゼは組み敷く男を見下ろす。
上気した肌は一段と美しかったが、熱にしきりに喘ぐフラガの苦しげな姿に、クルーゼは少々複雑な心境になった。
だが、もう今更である。自分もそうだが、それ以上にフラガの下肢もまた熱く自己を主張している。
やはり、クルーゼとフラガはなかなか逢えない存在だ。
なんだかんだ言って、出会えば交じあわずにいられないのかもしれない。
フラガがそんなこと認めるはずもなかったが。
クルーゼはまた冷気を失ったタオルを絞り直してやった。
額だけでなく、フラガの瞳の上まで乗せてやる。すると、フラガはあー・・・と言いながら片手でタオルの上から瞳を押さえた。

「んー・・・気持ちい。」

冷たいそれに視界を隠され、フラガが呟く。
クルーゼは改めて下肢を見下ろすと、既に上向いていたそれを口に含んだ。

「っあ・・・ああっ・・・」

手を乗せたまま、フラガは首をふらりと揺らす。
いやいやをするような態度を見せながらも、ソファの横に投げ出された片腕は抵抗を示さず、
クルーゼはフラガの先端を舌でくすぐる。
感じている証の蜜がそこから染み出てくるのを感じながら、クルーゼの手は彼の砲身を扱き始めた。
極力意識を向けないようにしているのか、フラガは顔を背けたまま動こうとしない。
クルーゼの口内に砲身の全てが呑み込まれると、彼の眉がタオルの下で微かに歪んだ。

「・・・っ・・・やめ、あつい・・・」

クルーゼの口内の生温かさに耐えられなくなったのか、フラガが呟く。
けれど、クルーゼはそれを半ば無視したまま、舌で裏筋を舐めながら彼の下肢の奥に指先で触れた。

「あっ・・・そこは・・・っつ・・・」
「痛い思いはしたくないだろう?」

言い聞かせるように言って、クルーゼは指を押し込む。
濡れていないそこは、フラガに苦痛を呼び起こす。
下ろした舌で入り口を濡らしながら内部の指を奥に侵入させていけば、
思わずといった声がフラガの口元から漏れてきて、クルーゼは表情を歪ませた。
簡単に2本が入るそこは、クルーゼを求めて飲み込むような動きを見せている。
熱でとっくにぬるくなったタオルでぎゅっと顔を抑える辺り、羞恥に顔を歪めているのだろう。
そんなフラガの態度にクルーゼは笑い声を上げた。

「ぬるいだろう。替えてやる」
「いい・・・っ!」

恥ずかしそうに顔を背けるフラガに、それでも無理矢理引き剥がし、ぼちゃりとボウルに落とす。
もうこちらも氷は溶けきっている。だがしないよりはマシか、ともう一度絞り、
不貞腐れたようなフラガの額に乗せてやる。
クルーゼはそのままフラガに唇を寄せると、タオルを押さえる手とは反対の手でフラガの足を押し開き、
自身のそれを宛がった。
フラガが眉を寄せる。何かいいたげな唇を、乱暴に塞ぐ。

「んんっ―――・・・っ・・・!」

グッとクルーゼのそれが侵入して来たとき、思わずフラガは身体を固くしていた。
途端に狭くなったそこに眉を寄せて、クルーゼはフラガの舌を絡め取る。
甘噛みするとふっと力が抜け、瞬間奥へと自身をフラガの中に押し込んでいった。

「っう・・・」

半ば、強引な挿入。けれど、フラガは必死に力を抜こうと息を吐く。
ようやくクルーゼの全てが収まると、クルーゼは唇を解放してやった。
荒い吐息。ただでさえ具合の悪い彼を、無理に喘がせたことに少々の後ろめたさを感じる。
けれど、目元を真っ赤に染め、こちらを睨んでくるその瞳は、
クルーゼにとって全て奪ってしまいたくなるほどに激しい欲を煽った。
そう、悪いのはお前。
体調も考えず出勤し、あまつさえその状態で私の相手をしようとした―――・・・

「バカ・・・あついよ・・・」

下からか細い声が聞こえてきて、クルーゼは苦笑した。

「大丈夫だ。直に治る」
「っ・・・勝手なことを・・・っあ・・・!」

不意に下肢を擦られ、フラガは視線を彷徨わせた。
押し込まれたそれが強引に引き抜かれ、狭まったそこを擦る。
肉襞が引き裂かれるような感覚が下肢を襲い、しかしその次の瞬間には痛みではなく快楽がフラガを襲う。
繰り返される抽挿に、次第にフラガの中からも、クルーゼの先端からも液体が染み出してきていた。
滑りのよくなった内部は行為の激しさを助長し、フラガの喘ぐ声が次第に大きくなる。
そんな声をフラガは嫌だと思ったが、口元を押さえようとしてクルーゼにがしりと捕まえられた。

「もっと、声出せ」
「い、やだ・・・!!」
「耐えるほうがつらいぞ・・・?」

半ばからかいのようなクルーゼの口調に、フラガの顔がますます顰められる。
だからといって、クルーゼであってもそう素直に声を上げられるはずもなく、フラガは極力耐えようと唇を噛んだ。
その上をクルーゼが舌でなぞる。そのまま甘い―――深い口付けを受ける。

「あ・・・ふぅっ・・・」

唇を離し、舌だけで絡み合えば、くぐもった声が時折フラガの口元から洩れ聞こえてくる。
下肢はもう限界に近づき、フラガの前はもはやはちきれんばかりに震えていた。

「ムウ・・・」

砲身を捕らえ、クルーゼは手で扱いた。それに合わせて、フラガの腰が揺れる。
もう何をしているのかわかっていないのかもしれない。
自分から快楽を求めるようにクルーゼのそれに腰を押し付けてくるフラガに、クルーゼは笑った。
フラガの熱が移ったように、全身が熱い。

「ああ・・・お前の中も・・熱いな・・・」

耳元で囁けば、瞬間身を竦ませ、そこもまたきゅっと狭まる様を。
クルーゼは肌で感じる。
手の中の白い肢体を全て手にしながら、クルーゼは彼の解放を促した。

「んっ・・・もう、もたない・・・っ・・・!」
「私も、だな・・・」

一層下肢の奥の奥を押し開いて。
足を引き、これ以上ないほど身体を寄せ合う。
その瞬間、フラガのそれから情欲がほどばしった。
断続的なそれをクルーゼの手に預けて、フラガは瞳を閉じる。
そして、そんな彼を抱き締めながら、クルーゼもまた快楽に身を委ねていったのであった。










「・・・ったーく!!こんなんで治るわけねーだろ!!」

フラガは赤面しながら、クルーゼに声を荒げた。
クルーゼはというと、執務室に備え付けていたシャワー室からバスタオルを拝借し、フラガの身体の汗を拭いている。
この行為はフラガが目覚める前からしていたのだが、
フラガが目覚めた一番に「あつい」と訴え、それからねちねちと文句を言われていたのだった。

「・・・まぁ、いいじゃないか。悪化したわけでもあるまい」
「時間が経って薬が効いただけだろ!!」

確かに、先ほどよりは威勢がいいフラガに、クルーゼは言う。
まぁ、なんにせよいつもの調子のフラガというのは安心するもので、散々嫌味を言われながらもクルーゼは嬉しそうにフラガの世話をしていた。

「ったく・・・書類も終わってねーし、会議すっぽかすしさぁ・・・。てめーが来ると決まって最悪だぜ!」
「だが、他のヤツの前で倒れるよりはよかったんじゃないのか?」
「あーーもう。他のヤツの前でなんて倒れるかよ!!」

全く、そういうところがフラガだよな、とクルーゼは苦笑した。
この分じゃ、自分がいなければいつまでも経っても治らなかったろう。
クルーゼはフラガの額に手を当てた。

「・・・熱は下がったな―――・・・」

満足気に言うクルーゼに、もはやフラガは何もいえない。
それに、そもそも任務でクルーゼは来ていたはずだ。なのに、それをすっぽかして自分の傍にいてくれたことを、
フラガは感謝すべきだった。

「・・・・・・ありがと」
「・・・ん?」

小さく呟いたそれを、クルーゼは聞こえなかった。
けれど、フラガはもう2度と口にする気はない。身支度を整えると、自分の執務机の前に座り、朝と同じようにモニタを立ち上げる。
そんな彼を、クルーゼは笑みを浮かべてじっと見つめた。

「手伝っていく?今ならオトク情報が満載だぜ」
「・・・お前というやつは」

机の上に山になっている書類を手渡されて。
クルーゼはフラガの隣に寄ると、彼の額に口付けた。






END












Update:2004/01/16/FRI by BLUE

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