Seeet Love vol.2



「・・・で、なんでこんなにデカイわけ?」

フラガはそう言うと、目の前にある生チョコレートケーキを眺めた。
大皿にはみ出しそうなほどの大きさのそれは、ちょっと市販では見た事がない。
確かに見た目も綺麗で美味しそうではあったのだが、フラガは少しだけ引いてしまった。

「仕方ないだろう。お前のチョコが多すぎてそれに合わせて生クリームも多くなってしまっただけだ。どうせ、生クリーム好きなんだからどうってことないだろう」
「まぁそうだけどさぁ」

ということは・・・とフラガがケーキにナイフを入れると、案の定普通の大きさのスポンジの上に塗られたクリームが厚い層になっている。
確かにケーキにうすく生クリームが塗られているだけだともの足りない気がするが、
これはまさにクリームケーキだ。フラガはそう思った。(謎)
まぁ、クルーゼの言うとおり、生クリームが嫌いではないからいいといえばいいのだが。

「・・・すっげー・・・厚っ」
「細かいことを気にしてるとハゲるぞ」
「んな年じゃねぇよ!」
「禿げるのに年は関係ないぞ。現に・・・」

なんだかいつになく不毛な言い合いをしている気がする。
フラガは気を取り直すと、小皿に切り分けられたケーキにフォークを刺し入れた。
口元に持っていくと、芳香とともに口の中に甘さが広がる。
スポンジの柔らかさも染み込んだシロップの味も、そしてクリームも申し分なく美味しくて、
フラガは嬉しそうに表情を緩めた。

「美味しい」
「不味いわけがないだろう」

私の愛がこもっているのだからな、と言われ、知らず息が上がってしまう。
鼓動が早まっているのに気付かれないようにしながら、フラガはケーキを頬張り続けた。
こうやって食べればチョコレートなど平気だ。要は味ではなく、塊というところがいけないのだ。
クルーゼはそんなフラガにくすりと笑うと、手の中のティーカップを口元に運んだ。
フラガのためにこういう菓子をつくるクルーゼだが、
それでは彼自身はどうかというと、嫌いというわけではないのだが、好んで甘いものを食べることはしない。
そのため、今彼の皿に乗っているケーキは付き合いといった程度の薄さでしかなく、
フラガはそれを見て、少しだけムッとする。
自分だけ大量に食べさせられているのは、・・・嫌ではなかったが、
どうも悪い気がしてしまう。
別に嫌いではないのだから、食べればいいのに、とフラガはクルーゼの皿に厚く切ったそれを乗せた。

「ったくさー大量にあんだからお前も一緒に食べろって!俺に腹壊させる気かぁ?!」
「・・・残せばいいだろうに」

呆れたように肩を竦めて、クルーゼは皿を持ってフラガの側に位置を変えた。
無意識に体を引くフラガに手を伸ばす。
クルーゼの腕は男の腰を抱き、フラガは鼓動を跳ね上げてしまっていた。
コトリ、とテーブルに皿が置かれる。空いた手でクルーゼは男の頬を撫でた。

「な、んだよ」
「そろそろお前から何かあってもいいものだが?」
「何かって・・・なんだよ」

フラガがごくりと唾を飲み込んだ。この迫られる時のクルーゼの妖しい目が一番怖い。

「今日はバレンタイン・・・男は期待に胸を膨らませる時だが?」
「お、おれだって男だよ!!」

どうやら『プレゼント』を期待しているらしいクルーゼに、フラガは羞恥と不満に顔を歪めた。
だが、クルーゼは相変わらずの余裕の笑み。近づくそれがどうもフラガは苦手だった。

「お前にはちゃんとケーキ作ってやっただろうが。今度はお前の番だぞ、ムウ・・・」

名前を呼ばれ、身体がひくりと震える。
無意識の反応にフラガ自身も驚いた。クルーゼの一段と低まった声音に感じているのか、身体の奥が熱い。
フラガは顔をゆがめた。

「っ・・・こんなトコで・・・!」

しかも、まだケーキも食べかけで、こんな状態のままで押し倒されるなんて。
抵抗しようとするが、狭いソファの上ではイマイチ身動きが取れないまま、クルーゼのいいようにされてしまう。
着ていたTシャツをいとも簡単に脱がされてしまったフラガは、クルーゼの目の前に曝される肌に眉を顰めた。

「っバカ・・・」
「フッ・・・どうせお前だって待っていたくせに」
「待ってるかよ変態!!」

一気に顔を赤らめるフラガに構わず、クルーゼはその反抗的な唇を奪った。
抵抗の言葉を舌で絡めとりながら、空いた手は組み敷いた男の肌を弄る。
思わせぶりに腹の辺りを撫で上げ、ひくりと震えたところでするりとズボンの中に手を射し入れる。
上がった息がもう既に荒くなり始めている。手に触れるフラガ自身が主張し始めているのを感じて、クルーゼは口元を歪めた。

「ほう・・・もうこんなになっているのか」
「う、るさっ・・・!」

他人の手に自分を弄ばれることが嫌なのだろう、フラガは無駄とわかっていながら身を捩じらせる。
だが、その動きがかえってクルーゼには都合がよかったのか、これ幸いとフラガのズボンを下着ごと取り去ってしまった。
一糸纏わぬ姿になったフラガの裸身。
羞恥に顔を背けている。
それに満足げな笑みを浮かべてから、クルーゼは少し考え込むように顎に指を当てた。

「さて・・・ケーキでも食うかな」
「・・・は・・・っ!?」

ぼそりと呟いたクルーゼの言葉が理解できず眉を寄せた。聞き返そうとして、再度唇を塞がれる。
今度は先ほどのような遊び半分の口付けではない。歯列を割り、深くフラガの舌を捕らえる。
きつく吸われる感覚に身体が震え、フラガは思わずソファを掴んでいた指に力を込めてしまっていた。

「っ・・・はっ・・・」

角度をかえながら、何度も何度も重ねられる。口内に含み切れない液体が、フラガの口の端から漏れてくる。
頭が霞むような深いキスに溺れて、フラガは知らず知らず全身の力が抜けてしまっていた。
恍惚となる。甘い―――・・・、柔らかな舌の感触。まるで・・・チョコレートのような・・・

「・・・っあ!?」

ぴくり、とフラガの身体が反応した。
胸元に不思議な感触が走る。クルーゼの指と・・・柔らかなそれ。

「・・・っつめた・・・何・・・?!」

キスの合間に言葉を紡ぐが、完全に解放されていないために胸を確認することすらできない。
ひんやりとした感触は、クルーゼの指が身体を這うに連れて広範囲にまで広がる。
そのどこかぬめったような感覚に陶然となりながら、まだ微かに残っていたフラガの理性が青褪めた。

「や・・・バカ、やめっ・・・!」

フラガの肌に塗られているのは、チョコレート色のクリームだ。
クルーゼは嬉々として指先で自分の皿に盛られたケーキのそれを掬い、フラガの肌に広げている。
既に立ち上がった胸元の突起を潰すようにしてクリームに塗れた手で愛撫され、フラガは違和感に身を竦ませた。

「んっ・・・くそ・・・やだって・・・!」
「一緒に食べろ・・・といったのはお前だろう」
「・・・―――っ!!」

・・・確かにフラガは一緒に食えといった。言ったが・・・どうしてこんな発想になるというのだろう。
予想もつかないことを強いられているフラガは胸元の感触に身を捩った。
クルーゼに抱かれるという事実だけで敏感になった肌は、本来なら気持ち悪いそんな感触にさえ反応を示し、どこか捉えどころのない快感がフラガを襲う。
けれど、そんな自分が嫌で、フラガはぎゅっと目を瞑る。
喉元をくすぐっていたクルーゼの頭が動いた。

「・・・ぁ・・・っ・・・」

思わず洩れてしまった声を、フラガは唇を噛むことで抑えた。
クルーゼがフラガの胸元に塗りたくられたそれを舐めとり始めた。もちろん、片手ではまだ腹の辺りにクリームを塗っている。
横を見ると、既に自分の分は使い果たしてしまったのか、まだ形が残っている円型のそれにまで手を伸ばしているのが目に入った。

「ふっ・・・美味しいものだな」
「ぃ・・・やめっ・・・やだ・・・!」

力の入らない手がクルーゼの髪を弱々しく引っ張った。なんとか除けようとしているのだろうがいまいち意味がない。クルーゼはそんなフラガに笑みを浮かべた。
舌に感じる味はひたすらに甘い。舐めとった場所を、クルーゼはもう一度指先で愛撫し続けた。
しつこいほどの刺激に腫れ上がったようなそれは、熟れた果実のようだ。
嫌がってはいても漏れ出す声はフラガが感じている様を示していて、クルーゼもまたその表情に煽られる。
クルーゼは一旦顔を上げると、今度は力なく投げ出されたフラガの下肢に目を落とした。
まともに触れてもいないのに彼自身の先端が濡れて光っている。
完全に上向いたこれに、クリームを塗ってやったらどのような反応を示すのだろう。
クルーゼは無意識に舌で唇を濡らした。

「・・・ひっ・・・!」

ひくひくと開閉する割れ目にそって、クルーゼの指が這った。
胸元と同じくたっぷりと塗られていくそれに、フラガは唇を噛み締める。
恥ずかしくてたまらなかった。空いていた手が必死に男の動きを止めようとして、クルーゼにその手を阻まれた。
砲身の筋に沿って、肌が見えなくなるほどに塗られていく。褐色のクリーム。その上に卑猥な蜜が零れる。
フラガは悔しさに顔を歪めながらも、高まる身体を止められなかった。

「くっ・・・これ、の、どこがっ・・・『一緒に食おう』、だ・・・」

ひたすらに舐められ、翻弄されるしかないフラガはクルーゼに向かって必死に言葉を紡いだ。
ただ、男の玩具と成り果てている自分が情けない。
クルーゼは顔を上げると、一瞬誰もがはっとするような笑みを浮かべた。

「そうだな・・・私ばっかり味わっているのもなんだな」

苦笑して、砲身に付着していたクリームを指先で掬った。結構な量のそれを全てフラガの口内に押し込む。フラガの眉が顰められた。

「ほら、おすそ分け」

フラガが嫌がるのも意に介さず3本の指を内部で動かす。
無理矢理に舐めさせられたクリームは、甘く・・・、そして卑猥な味がした。
苦しさに涙目になる。それでもクルーゼは許さない。
付着したそれが全て舐め取られ、溢れ出る唾液が指を濡らす頃になって、やっと指を引き抜く。
閉じることを忘れた唇からは濡れた糸が引いた。
フラガは虚ろな瞳のまま視線を合わせようとはしない。クルーゼはそんな彼の頬に軽く唇を落とす。
そして、次の瞬間。
下肢に、強烈な刺激が走った。

「ん・・・っ痛ぅ・・・!」

クルーゼが先ほどの指をいきなり3本突き入れてきた。確かに快楽に緩み始めていたものの、すぐにキツさを取り戻す。
思わず逃げようとした腰を押さえつけ、もう一段奥へと押し込んでいく。衝撃に先走りの液が零れた。
クルーゼは唇でそれを掬う。

「・・・っは・・・あっ・・・」

鋭い刺激と深い場所を抉る刺激。舐め取られ、自身を含まれるだけでフラガの足がびくつく。
そんな反応にクルーゼは笑い、より一層強い刺激を与えようと動きが激しくなる。
奥を蹂躙すればするほど貼り詰めてくるそれは、もはや限界に震え、達きたいと啼いているようだった。
淫猥な味が口の中に広がる。フラガの頭が左右に振られた。

「もっ・・・だめだっ・・・ラウ・・・っ・・・」

薄っすらと開けた瞳が涙を溜めてクルーゼに懇願する。男の髪を掴む指先にぎゅっと力が込められる。

「や・・・離せ・・・!」

必死に押しのける腕を捕らえた。クルーゼの舌の感触に煽られ、内部で蠢く指にも煽られ、フラガの身体に一瞬緊張が走る。
びくりと電流が走ったかのように痙攣した体は、次の瞬間砲身から精を溢れさせていた。

「あっ・・・はっ・・・あぁ・・・」

羞恥に顔を背けながら、フラガは荒い息を吐いた。
クルーゼは砲身に残ったクリームと一緒に彼の精を飲み下す。頭をあげ、口元を拭うクルーゼの顔は直視できるはずもなく、フラガはなす術もなかった。

「っ・・・バカ・・・」

ただ、一言そう言う以外には。
クルーゼはフラガの頭を撫でた。
金の髪は汗に濡れ、しっとりと男の指に絡みつく。
荒い息を奪うように唇を塞げば、脱力した体が従順に舌を絡ませてきた。
一気にクルーゼの中の熱が跳ね上がる。
全てを奪ってしまいたい。そんな気持ちに駆られる。

「・・・ムウ・・・力を抜け・・・」
「え・・・」

上り詰めさせられてだるい身体をクルーゼに引っくり返され、フラガはうつ伏せの体勢を取らされた。
ソファにあったクッションに顔を埋められるような格好。
散々慣らされたそこは抵抗なくクルーゼを迎え入れ、内部からは卑猥な音が漏れる。
体勢の苦しさにフラガの指がソファを噛んで。
熱く重いクルーゼの灼けた楔に貫かれながら、それでもフラガは深い快楽を味わっていたのだった。










「あーあーあーあー!もうっ!たく!取れねぇっての!」

フラガはぶつぶつと不平を言いながらソファを濡れ布巾で拭いていた。
無論、汚れた原因というのは先ほど自分の身体に纏わりつかされた褐色のクリームと、行為の後の残滓である。
一度ソファの上で犯された後、そのままベッドに運ばれまたヤられてしまった。
放って置いた汚れはそのまま乾燥してしまい、そうでなくても汚れやすい布張りのそれは元通り綺麗になりそうにない。
家具をそんな風にした張本人のクルーゼはというと、
もはや形も為さなくなったケーキやら夕食時に食べ終わってそのままだった皿やらを洗うために台所に立っている。
リビングから聞こえてくる不満そうなフラガの声に、クルーゼは口元を綻ばせた。
羞恥に顔を染めながらぶつぶつ言っているフラガの顔が目に浮かぶようだ。

「ったく、折角のケーキも台無しになっちまうし!!まだ食いかけだったんだぜ?!それを・・・全く・・・」

はあぁ〜と大きなため息。もうフラガはあきらめたらしい。唇を尖らせて台所にやってくる男から布巾を受け取り、クルーゼは洗ってやる。
ったく、と睨んでくるフラガにクルーゼは苦笑して、ほら、と絞ったそれを手渡した。

「そんなにケーキが食べたかったのか?なら・・・」
「いやっ、いい!!もう嫌だ!!やめてくれ!」

また作ってやろう、と言いそうになるクルーゼに、フラガは必死の形相で断った。
もう、当分あんなものは食えないだろう。というか、外で出されたら嫌な顔をせずに食べられるだろうか。
多分、絶対にこのことを思い出す。フラガははぁ・・・とため息をついた。
先ほどから何度目のため息だろう。
いつになってもクルーゼのペースに巻き込まれる自分が、フラガはなんとも情けないと思っていた。

「そう怒るな。今日はバレンタインだからサービスだサービス」
「・・・テメェがそれを言うなよ・・・」

フラガは額に手を置いて呆れたように肩を落とす。
人から勝手に奪っておいてなにがサービスだ。呆れてものも言えなかった。
クルーゼは何食わぬ顔で濡れた皿を拭いている。確信犯な男には何を言っても意味がない。

「いや?私のほうがお前にサービスをしてやったからな」
「はぁ?!どこがだよ!!」
「いつもよりヨがってたじゃないか。イイ思いさせてやったろう」
「・・・・・・」

一瞬、殺意まで覚えた。いつか絶対この家から追い出してやる。隠れたところで拳を握り締める。
だが、その次の瞬間。
クルーゼに腰を捕らえられ、そのまま唇を重ねられた。
時が止まったような感覚に捕らわれ、フラガはそのまま口付けに溺れてしまう。
フラガは心の片隅で、まったくこいつは・・・と呆れ半分の声を洩らした。
本当に本当に、身勝手な奴。
だが、そんなクルーゼを好きになってしまったのは自分だ。つくづく物好きなだよな・・・とフラガは自分のことをいつでもそう思う。

「・・・ムウ。まだ夜は長いぞ・・・?」

まだ12時前。夜は始まったばかりだ。
耳元で囁かれるクルーゼの声音に、フラガはやれやれと苦笑したのだった。






END









・・・他サイトさんのロイだったりクラウドだったり赤屍さんだったりが入ってますね・・・
気付いた方、見逃して。お願い。(爆死)


Update:2004/02/17/TUE by BLUE

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