Hard×Hard



道を歩いていて、唐突に腕を掴まれた。
わっと思った時には大通りからそれた裏路地に引き込まれ、フラガは目の前の男に目を見開いた。
目の前には、今頃こんな場所にいるはずのない存在。
オーブの、何の変哲もない庶民街。




「っう・・・ふ・・・んっ・・・!」

自分を引き込んだ男は、有無を言わさず強引にフラガの唇を奪った。
高いビルとビルの間は細く、普通人が立ち寄るような場所ではないが、それでも少し視線を揺らせば人が見えるのだ。
フラガはこの上ない羞恥を覚えた。
だが、身動きは取れない。掴まれた腕は、背の壁に縫い止められ、身体は男の上半身で強く押し付けられ。
その上激しい動きで口内を嬲られれば、嫌が応にも身体が言うことを聞かない。
かろうじてもう片方の腕で肩を突っ張り、軽く離された唇で拒絶の言葉を吐くと、目の前の存在はにやりと口の端を歪めた。

「っや、めろ・・・っ!」
「・・・フン」

鼻で笑われ、ますます頭に血が上った。
全く、何を考えているのだろう、この男は。
相変わらずの高慢な態度に、フラガは大きくため息をついた。

「・・・んなに考えてンだよっ!」
「?何か不満か?」

フラガを強引に奪った彼の名は、ラウ・ル・クルーゼという。
フラガが怒りを抱えて睨みつけてくるのに対し、クルーゼは不思議そうな顔だ。

「・・・何か不満か?じゃねぇよ!!いきなり引っ張ってキスされて悦ぶバカがいるかっての!!」
「ああ、そういうことか」

さらりと頷いて、そのままより身体を密着させる。男であることを意識させられるその部分を触れ合わせられて、フラガは息を呑む。
伸ばされた手が背後に回され、フラガの顔が青ざめた。

「・・・・・・待て待て。ちょっと待て。いいから待てって!」

クルーゼの身体を手をかなり必死で押さえる。
フラガの服をとりあえずの所まで脱がせるつもりだったクルーゼは、軽く不機嫌な表情になった。

「チェスに待ったはなしだぞ」
「そりゃ将棋も同じだ。・・・ってちげーよ!あんたおかしいだろ!?」
「おかしいのはお前の方だ。折角望みどおりにキス以上のことをしてやろうとしたのに」
「オレがいつ望んだよ?!」

クルーゼの自分勝手すぎる解釈にフラガは呆れ返ったが、呆れているだけではしまいにはクルーゼに流されて終わりだ。
フラガは長いため息をつくとクルーゼの腕を掴んで歩き出した。
こんなところで何かされてはたまったものじゃない。

「ほう、積極的だな。ラブホにでも連れて行ってくれるのか」
「はぁっ?!・・・死ね!!」

羞恥にまかせて強烈な言葉を吐くフラガに、今度はやれやれとクルーゼがため息をつく。
まったく素直じゃないな、とぼやくクルーゼを放り、フラガは一応人目のつかない場所へと男を引っ張った。
廃倉庫の奥の影。大きな声さえ上げなければ、誰にも気付かれずに済むだろう。

「ったく・・・ホントなに考えてるんだよアンタ」

場所ぐらい考えろ、と叫ぶフラガに、クルーゼは生返事で応える。
そのまま、今度こそフラガの身体を壁に押し付けて、男は獲物を捕らえた獣のように瞳を光らせた。

「・・・オイ。だから俺、これから仕事・・・っう・・・!」

再度唇を塞がれ、手のひらで服の中を弄られる。私服のシャツの間から忍び込むそれにフラガはひくりと震えた。
ますますクルーゼのニヤついた笑みは深くなり、フラガはというとますます焦りを覚える。

「私をこんな所まで引っ張ってきて、オアズケとでも言うつもりか?これから仕事ならサッサとすませられるよう協力してくれるのが普通だろう」
「・・・っそもそもやろうとすんのが間違いなんだよ!!」

叫んでしまって、フラガは慌てて口を塞ぐ。
いくら人が来ない場所とはいえ、大声を上げればそれを聞きつけて人がやってくることがないとはいえない。
そんなフラガに、クルーゼはくっくっと笑った。

「・・・笑ってんなよ!!」
「いや、すまん。お前がこれからどうやってあの嬌声を抑えるつもりか気になって」
「―――――っ!!」

フラガは殺意すら覚えてクルーゼに殴りかかる。
だが、すんでのところでフラガの手を掴み、そのまま両腕を壁に押さえつけた。
クルーゼの目の色に、フラガは怯えを隠せない。

「・・・お、おい・・・」
「優しくしてやるよ」
「・・・・・・」

再度押し付けられたそれは、すでに熱を持ち、存在を主張している。
こんな状態のクルーゼを止める術などないのだ。
フラガはやれやれとため息をついた。

「んっ・・・ふっ、う・・・」

クルーゼの再度の口付けに、フラガは目を閉じた。
舌を絡めて、強く吸われる。かと思いきや先のほうを甘噛みされ、びくりと刺激が下肢に向かって走る。
それだけで、自分のその部分が硬さを増していくことに、フラガは羞恥を覚えていた。
先ほどからずっと密着したままの身体。なんだかんだ文句を言いながらも結局は高められている自分の状態は、おそらくクルーゼにも伝わっているのだろう。
フラガは身体の力を抜いた。ずり下がる体を、あわててクルーゼは支える。

「・・・おっ、と」
「・・・・・・は、」
「ん?」

解放された唇で何か言おうとして、途端顔を真っ赤に染めてそっぽを向く。
クルーゼが覗き込むと、フラガはため息をついて瞳を閉じた。
もう既に身体に抵抗の意思はない。

「・・・激しく、すんなよ・・・声抑える自信、ないんだからさぁ・・・」
「任せておけ」

根拠もないのに自信満々にそう言うクルーゼに、またもやフラガはがくりと肩を落とす。
解放された腕を男の背に回して、そのまま彼の肩口に顔を埋めた。

「・・・っ、・・・あ」

抵抗しなくなったフラガに、クルーゼは嬉々として手を伸ばした。
先ほどまで自身を密着させていたそれを、布地の上から指先でなぞる。敏感なそこは、クルーゼの指の動きに対し、すぐに反応を示してきた。
耳元にかかる甘い吐息。
耳朶を噛んでやれば、フラガは自分にしがみ付いて力の入らない身体を必死に支えようとする。
久々のフラガの身体はそれでなくとも高まっていたクルーゼにまたもや火をつけた。

「・・・窮屈そうだな」
「・・・・・・!」

くくっと笑って、クルーゼはフラガの先端あたりを爪でひっかくように刺激する。
張り詰めたそこは、既に下着を先走りで濡らしていた。

「っ、やぁ・・・」
「何が・・・嫌だって?」

クルーゼは耳元に囁きながら、ボトムのジッパーを思わせぶりになぞれば、フラガの身体が竦む。
ぎゅっと背にしがみ付く指に力が込められるのに、フラガを抱く男はくすりと笑った。

「お前のココは、泣いていそうだな・・・」
「や、バカ・・・っ」

クルーゼを涙目で睨みつけても、ますますクルーゼを煽るばかりで。
その間も男の指は執拗にフラガのそれを刺激し、熱を増すそれはボトムの前を押し上げている。
・・・っ、と息を詰めて、フラガはクルーゼに訴えた。

「じ、焦らすな・・・!」

ふふ、と耳元で聞こえるクルーゼの笑い声すらフラガの身体を煽る。
全身の震えに唇を噛んで耐えていると、クルーゼは殊更ゆっくりとジッパーを下ろしていった。
羞恥にフラガが頬を染めるが、今更逃れられるわけもなければ、高められた体を放っておかれたくもなくて。
クルーゼ、と掠れた声で男の名を呼べば、頬に唇を落とされた。
そこをぺろりと舐められて、フラガはぎゅっと目をつぶる。
気付けばフラガ自身はクルーゼの手で引き出され、外気に晒されていた。

「ほう、もうこんなだ。・・・そんなに欲しかったのか?」

クルーゼの揶揄するような言葉に、フラガは唇を噛んだ。

「ち、違っ・・・」
「何が違うんだ?」

くすくすと笑いながらクルーゼは手の中のそれを扱き始めた。
既に熱を帯びていたそれは、クルーゼの執拗な手の動きにすぐにはちきれんばかりに膨張する。
先端を爪先で引っかくようになぞると、フラガの口から悲鳴のような声が上がった。

「っ・・・!」
「こんなに濡らして・・・。淫乱な身体だな・・・」

快感に朦朧とした頭に響く、クルーゼの低まった声音。
そもそも自分をこんなにした彼が、その自分を棚にあげてそんなことを言うクルーゼに、フラガは悔しそうに顔を背けた。
男に高められた身体は、もはや限界寸前だ。
先端から洩れてくる先走りの体液が、クルーゼの衣服に染みをつくる。
ふとそれが目に入って、フラガは恥ずかしそうに言葉を紡いだ。

「服・・・・・・」
「・・・ん?」
「だから、服!・・・脱げって・・・」
「・・・・・・ああ」

クルーゼはコートすら着たままの自分の姿を改めて見下ろした。
フラガに夢中で、忘れていた。
このままでは、上着までフラガに汚されてしまうかもしれない。
だが、と考えて、クルーゼは不意に笑い出した。

「・・・っなん、だよ・・・」
「別に構わないが?お前ので汚されようが、どうってことないさ」
「・・・嫌だ!!ぜってぇヤだって・・・っあ!」

一向に脱ごうとしないままフラガへの刺激を再開するクルーゼに翻弄され。
フラガは甘い声を上げる。
着衣のまま、その部分だけ肌蹴て密着した体勢が飢えた獣のようで、フラガは誰も見ていないというのに羞恥に顔を染めた。
腰にあたるクルーゼのそれも、自分と同じように硬く張り詰めて。
どきりとする。
耳元で囁かれ、なにがなんだかわからなくなる。

「・・・ムウ」
「っ・・・や、だ・・・」

煽られ続ける下肢の熱に惚けながら。
クルーゼの呼びかけに顔を向けると、温かな唇が降ってくる。
強引だが、乱暴というよりは丁寧に口内を探るクルーゼの舌に、フラガは瞳を閉じて彼の動きに応じた。

「ん・・・ふ、う・・・んっ・・・」

フラガの唇を塞いだまま、クルーゼの手は男のそれを激しく扱く。
先走りに滑る手のひらに、フラガはびくびくと身体を震わせる。
声が出せないのがかえってもどかしく、フラガは眉を寄せた。
両方に高められて、その瞬間緊張が走る。
掴んでいたクルーゼの背中をよりキツく掴んで、フラガはクルーゼを自分の胸に引き寄せた。

「っあ・・・クルー、・・・っう―――――・・・っ!!!」

瞬間、フラガの中で何かが弾けた。
痙攣する身体を、クルーゼは抱きしめる。
びくびくと全身を震わせるたびに上着を汚していくフラガの精に、けれどクルーゼは満足げに口の端を持ち上げた。

「し、信じらんねぇよ・・・アンタ・・・」

咎めるように見上げてくる視線にふふ、と笑って。
そのまま、力の抜けたフラガの身体を反転させる。
冷たいコンクリートの壁に頬をつけるような体勢にさせられて、フラガの眉が寄った。

「前だけでは・・・足りないだろう?」

背中に密着してくる男は、耳元で妖しく囁く。
途端、フラガの頭に血が上ったが、この状態ではどうにもできない。
フラガの抵抗を全身で奪ったままズボンをずり下げられて、フラガは思わず悲鳴を上げた。

「やめっ・・・何を・・・っ!」

どうにかして逃れようとするフラガの両腕を押さえつけて。

「往生際が悪いな・・・」

下肢の奥のその部分にクルーゼ自身を宛がわれる。
慣らされてもいないそこは、しかし先ほどのフラガの白濁に濡れていた。
クルーゼの濡れた指先が思わせぶりにそこをなぞれば、壁に押し付けた身体が竦む。
腰を掴む手にぐっと力を込められ、フラガは息を呑んだ。

「や、やめ・・・!」

ずぶずぶと容赦なく内部に入り込んでくる塊から受ける痛みに耐えようと、フラガの指先が壁を噛んだ。
痛み、というよりはその熱に灼かれるよう。
耳元で自分を抱く男の熱い吐息が聞こえてきて、それにすら煽られる。
互いの服もほとんど脱がないままで繋がれる行為に、フラガは奇妙な興奮を覚えた。
強引に奥までを探ってくるクルーゼのそれに、自分の中で押さえ込まれていた欲が目覚めるような。
だが、そんな獣じみた欲望を、フラガ自身そう簡単に認められるはずもなく。

「やだっ・・・も、や・・・っ」
「じゃあ、どこならいいんだ?・・・ここか?」
「っあ!」

心持ち引いたクルーゼの身体が、次の瞬間フラガの奥を突き上げた。
悔しいが、知り尽くされた弱い部分を擦られて、甘い声が漏れてしまう。
途端羞恥に唇を噛み締めるフラガにクルーゼは唇を落とし、そのまま腰を抱え直した。
下肢を襲う熱は、途絶えることなくフラガを苛む。
内部で燻る欲に火をつけられ、そのまま自分の理性の部分をどろどろに溶かしてしまうような感覚に、フラガは眩暈を覚えて瞳を閉じた。
その瞬間、クルーゼの動きはより激しくなる。

「っ、う・・・んあっ・・・あっ・・・」

次第に滑るその部分が、クルーゼの律動に合わせて淫らな水音を響かせる。
コンクリートに囲まれた場所で響くその音はダイレクトにフラガの耳を打ち、なおさらフラガの羞恥を煽った。
だが、その羞恥心を認識する間もなく、快楽を与えられ。
どうしようもない熱さに溺れ、どうでもよくなる。
抵抗を失いなすがままになったフラガを、クルーゼは笑みを浮かべてその身体をかき抱いた。

「イイぞ・・・ムウ・・・」
「っああ、ん・・・」

いつの間にか、フラガは自分から快楽を得ようと腰を動かしていた。
無意識のその動きが、さらにクルーゼの熱をも煽る。
フラガから与えられる快楽に唇を噛んで幾度もやり過ごしながら、クルーゼはフラガの身体を貪った。
あっ、あっと途切れ途切れに洩れる声音にすら感じてしまう。
クルーゼはフラガの耳を舐め、唇で遊ぶようにそこを噛んだ。
びくりと竦む身体は、クルーゼを受け入れるその場所すらきゅっと収縮させる。
それに耐え切れず一旦身を引くと、フラガの口元から切ない声が零れた。

「っ・・・あんた・・・」
「どうした」

瞳を閉じ、上気したままのフラガの言葉に、クルーゼは尋ね返した。
だが、下肢の動きを止める余裕はない。どんどん欲望を煽るフラガの前では、クルーゼも理性など吹っ飛んでしまう。
下肢を貫くかのように幾度も突き上げてやると、もはや抑えの利かない声音がクルーゼの耳を打つ。

「・・・おかしい、よ・・・」

上の空でそういうフラガに、クルーゼは苦笑した。
フラガの身体を、より一層強く抱き締めて。
自分の上に落とすようにフラガの腰を動かせば、より繋がりは深くなる。
抱き締めた拍子に顎を逸らしたフラガに、クルーゼは囁いた。

「お前を前にして、おかしくならないはずがなかろう・・・・・ムウ」
「っああ!あっ、んっ・・・」

先ほどよりも激しく奥を突き上げられ、フラガの身体がガクガクと揺れる。
だが、クルーゼは律動を止めようとはしない。それどころか、両手で腰を掴むとよりその動きは激しさを増す。
ただ流されるような快楽に溺れて、フラガはクルーゼに身を預けた。
もう、抵抗する気力すらない。ただクルーゼに翻弄され、快楽を貪るだけの存在。

「・・・っ・・・ラウっ・・・!」

震える唇で名を呼ぶフラガに口付けて。
そのまま、吐息を奪うように深く深くを蹂躙すると、フラガの身体に緊張が走った。
壁につけられたフラガの指が硬く握り締められ。クルーゼは内部の収縮に眉を寄せる。
次の瞬間、強烈な快楽の波が2人を襲った。
目の前が真っ白に染まる。目の奥で弾ける閃光に一瞬現実から切り離されたような感覚を覚える。
吐き出された欲はコンクリートの壁を汚し、そしてクルーゼはフラガの内部に精を放った。
中で出さないようになどという余裕は失っていた。クルーゼは息を吐いた。
荒い息のまま腕の中の存在を見やれば、こちらも放心し、自分の腕に身を預けている。
散々抵抗していたくせに、こうして欲を放ったフラガがおかしかった。
いや、おかしいのは自分だ。
ただフラガを見かけただけで、下肢を疼かせた自分のほうが、よほど可笑しいのだろう。
でも、それも全てはフラガのせい。
くっくっ、と笑い、クルーゼはフラガの汗に濡れた髪を掻きあげた。
ぼんやりと瞳を開けるフラガを覗き込む。
うつくしい青の瞳に囚われる。

「バ、カ・・・・・・」

先ほどから何度も言われた言葉を聞きながら。
止められないままに笑い続けるクルーゼは、フラガをもう一度反転させて正面から抱き締めた。
足腰の立たないフラガを抱えて、地面に腰を下ろす。

「・・・仕事はいいのか?」
「・・・・・・この期に及んで、何言ってんだよ、あんた・・・」

汗と精液で汚れた服を身に纏ったフラガは、とてもじゃないが外で歩ける状態ではなかった。
涙目でクルーゼを睨みつけると、クルーゼは未だに笑いながらすまない、と素直に謝る。
不貞腐れてそっぽを向くと、そんなフラガの顎を掴みクルーゼが自分のほうに向かせた。

「っ・・・う、んんっ・・・」
「すまないな、ムウ。だが・・・これも、全てお前のせいだよ」
「え・・・」

朦朧としたまま見上げるフラガに、クルーゼは口元を抑えて。
じっと見つめる。自分が唯一求める存在の、その顔を、瞳に焼き付けるように。

「お前が、この間の逢瀬をすっぽかすからいけないんだ」

優しい声音が紡ぐ責めるような言葉に、フラガは眉を寄せた。
確かに、先日約束していた逢瀬は、フラガの都合で果たせなかった。だが、その理由もきちんと告げたのだから、自分に非があったわけではない。

「だ、だから、あれは仕方なかったんだよ!!」

軍の同僚たちの付き合いが入ってしまっただけのこと。
日ごろから友人達との付き合いはいいフラガだ、そもそもバレてはいけない逢瀬よりは、友人付き合いのほうに比重を置くだろう。

「まぁ、私のわがままだがな。こう・・・もう少し、お前には私を欲してもらいたいものだ」

ただでさえ逢えない自分達の逢瀬より、友人を優先したフラガに不満を覚えたのだと。
そんな感情がバカげているとは重々承知しているが、だからといって今更止める術などないのだ。
フラガに逢えるというだけで、身体が熱くなる原因を作ったのが、そもそも彼なのだから。
責任を取れ、とでも言うのだろうか。
クルーゼはまたもやバカげた考えに吹き出した。
フラガは呆れたように自分を見上げてくる。ああ、バカで結構。それだけ私はお前が好きだということだ。

「もう1つ、言いたいことがあるんだが」
「・・・・・・なんだよ」

顔を真っ赤にしたままのフラガは、クルーゼの胸の中で大人しくしている。
仕事に遅れるならいざ知らず、すっぽかすような男ではない。クルーゼは喉を鳴らした。

「この嘘つき。今日の仕事は休みだろう」
「・・・・・・てめぇ、俺の勤務表を・・・!」
「当たり前だ。さすがの私もお前に迷惑をかけるつもりはないんだよ」
「・・・・・・!!」

自分の出任せがバレていたことを知って、フラガは恥ずかしさにクルーゼの胸に顔を埋めた。
所詮、クルーゼから嘘で逃れられるはずもないのだ。
だというのに、往生際の悪い自分の態度といったらどうだろう?

「っ・・・」
「どうやら認めたようだな?それじゃ・・・」
「なっ・・・何・・・」

クルーゼが自分の身体を抱えなおすのに、フラガは恐怖を覚えた。
嬉々として自分の上に跨らせるクルーゼの瞳は、いつになく鋭い光を放って。

「やめ・・・」
「お仕置きだよ、フラガ。さぁ、私に嘘をついたことを後悔してもらおうか」

にやりと笑って、幾度目か分からないキスをする。
フラガは抵抗しようとするが、力の入らない体をもてあますだけ。
久しぶりに火のついた2人の身体は、
まだまだ冷めそうになかった。





END












Update:2004/04/29/THU by BLUE

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