Playing to kill time.



「テメェの性格の悪さにゃ、ほとほと呆れるぜ」
「ふぅん?」

目の前の、触れる程に近くにいる男は、心底嫌そうな顔でそう告げた。
彼がそう言うのはいつもの事だ。
事実、その男は、自分のことは誰よりも嫌いだと公言していたし、
実際に顔を合わせれば、怒り狂い、殴りかかってこなかったことのほうが珍しい。
だが、現在の自分と彼の状況を他の者が見れば、
その事実を疑ってしまうかもしれない。
なぜなら、今、自分たちがしているのは、

「いッ・・・痛いよ、シズちゃん」
「言え。今度は何を企んでやがる、ノミ蟲」

己の尻に、男の太いそれをギチギチに押し込まれたまま、
膝を胸につくほどまで抱え上げられ、背を折り曲げさせられて、めちゃくちゃ苦しい体勢なのに、
更にこの男は首まで締めそうな勢いで胸倉を掴んでくる。
ああ、本気でコレ、殺されちゃうかも。
シズちゃんならいいや・・・って思わなくもないけど、
でも駄目だ。
今は、一番楽しいコトの真っ最中なんだから。
セックスって意味じゃない。
俺が愛すべき人間―――そう、人間全てを巻き込んだ、
壮大なドラマの真っ最中。

「別に・・・、今回はシズちゃんに喧嘩売ってるつもりはないよ?見逃してよ」
「テメェがブクロをウロチョロしてる時点で気に食わねぇんだよ!」
「ひっど。シズちゃんのイケズ。」
「・・・殺されてぇのか?」

口元をひくつかせて、更なる抽挿。ア、あッ、も、駄目、イキそう。
繋がる箇所からはぐちゅぐちゅと激しい水音。
それもそのはず、今日は先程1度、男の精を呑みこんでいる。
大抵、池袋でこの男と会うと、なんでかこうなっちゃうんだよなぁ。
ま、なんでか、って言っても、
自分が誘ってるからこうしてホテルにいるんだけど。
池袋に来たら、こうしてシズちゃんと交わるのって、最近はいつもの事になってる。
なんで、って?
うーん、暇だからかな。
正直、池袋に来ても、大してすることないんだよね。
ちょっと人と話して、からかったら、
それから後はケイカカンサツ。
池袋って町が面白いのはさ、俺がちょーっと背中を押してやるだけで―――・・・、
泥沼の人間ドラマまで話しが進んじゃうってトコ。
だから、俺が池袋ですることといったら、
投げ入れた火種が燻ぶるまで待ってなきゃいけないんだよねぇ。
そう、暇なんだ。
だから、自然とシズちゃんをからかいに来ちゃう。
ほーんと、呆れるほどに馬鹿で単純なんだから。池袋最強≠フ平和島静雄君は。

「あ、んっ・・・う、ァッ、そこ、イイっ・・・」
「へっ・・・男にケツ掘られて悦んでるとか、おめでたい野郎だぜ、テメーはよぉ?」
「痛っ・・・ヒド・・・」

ビン、と指先で俺のモノを弾かれて、びくりと全身に激痛が走る。
痛ってぇ・・・。
シズちゃん、君の力はさぁ、バケモノなんだからさ。
さすがに手加減して欲しいんだけど。
散々擦られて勃起してそれなりに充血してる俺の性器をシズちゃんの力で弾くとか、
マジあり得ないよ。あー、まだジンジンする。
でも、こんなに痛いのに、俺のモノは全然萎えてない。
あーあ、悲しくなるよ。
なんでこんな変態になっちゃったかなぁ。
それもこれも、ぜーんぶシズちゃんのせいだ。

「っも・・・イカせてよ、シズちゃん・・・」
「はぁ?自分から誘っといて、自分だけ先にイきたいとか、意味わかんねーんですけど」
「っぐ・・・!」

途端、根元をキツく締め上げる指先。そうして、体内を擦る激しいグラインド。
男のひとつの容赦もない、強烈な刺激に、身体がガクガクと震える。
シズちゃんのセックスは、正直、テクニックも何もなくて、文字通り童貞あがりの、
まだまだガキのするようなセックスだ。
優しくて、上手な抱き方をしてくれる男なら結構知ってるし、
正直、こんな嫌いな男を相手にしなければならない程、性生活になんか困ってない。
じゃあなんで、って、自分でも思うんだけど、

「あ、あッ・・・シズちゃ、そこ・・・っ!」

気持ち良すぎて、勝手に腰が揺れる。
シズちゃんは意地悪だから・・・、というよりヘタクソだから、
俺のイイとこなんてちっとも当ててくれないんだよねぇ。ホント、ムカつくよ。
でも、悔しいけど、シズちゃんのアレは最高。
内壁を擦られる感触とか、深々と貫かれる、気が遠くなるような感覚とか!
あれはヤバイ。
今まで、いちいち覚えてられない程男とヤったり犯されたりもしてきたケド、
あそこまでデカイもん、見たことないよ、俺。
勿論、デカけりゃいいってモンじゃないけどさ、シズちゃんに貫かれると、
粘膜が裂けるか裂けないかのギリギリまで押し広げられるから、
限界を訴えて収縮しようとする狭い箇所が激しく引き連れるんだよね。
めちゃくちゃ痛いんだけど、サイコー。
そして、最奥を貫かれた時の、文字通り、満たされたあの感覚といったら!!
このときばかりは、あとのコトとかどうでもイイって気分になるね。
忘れちゃう。
静ちゃんが嫌いだってこともさぁ。
もう、ホント病み付き。
そんなわけで、まぁ、シズちゃんは、俺にとって・・・うーん、オナニー道具?そんな感じ。

「・・・っく、締めんな、クソ蟲!」
「・・・シズちゃんこそ・・・いい加減、焦らさないでよ!!」

いつも通り、乱暴に最奥を貫いて欲しいのに。もう、サイテー。
なに、余裕ぶっこいてんのさ。シズちゃんだって、ホントはイキそうなくせに。
だから、俺は意識して下肢を締め付けてやった。
シズちゃんは苦しげに息を詰めて、焦ったように腰を引いた。ハハッ。シズちゃんだって、
もう、そんなにしてんじゃん。

「っ・・・ったくさ・・・、シズちゃんに任せてたら、ぜんっぜん気持ちよくなれないんだけど!」
「けっ・・・テメーを気持ちよくしようなんざ、考えたくもねーな!」
「っヒド・・・。ホーント、シズちゃん嫌いだよ」
「ウゼェ!」

口では散々憎まれ口を叩いているくせに、
繋がったままの下肢は熱くなる一方。いい加減、意地の悪いシズちゃんのリードになんか任せていられず、
渾身の力で彼の胸を押し倒した。もし、この男が本気で俺を捩じ伏せるつもりなら、
多分彼の身体はビクともしないだろう。
でも、繋がった下肢を、更に擦り上げるようにして彼に乗り上げれば、
息を詰めて腰を掴んでくる掌。ホント、大きい手だよね。
指も長いし。

「ア、アっ、シズちゃ、すご・・・っ!」
「っち・・・」

忌々しげに吐き捨てて、俺の胸元に噛み付いてくる。ハハ。感じてるんでしょ?
余裕のない表情と、上気しきって熱をはいた頬。シズちゃんの長い舌が、俺の乳首に絡み、そうして
次には痺れるようなビリッとした痛み。
でも、それすら快楽に摩り替わってしまう。電流が迸ったように、全身が震えた。
繋がった下肢と歯を立てられる痛みは、激しい快楽を呼び覚ます。

「ア、ぁんっ・・・ちょ、深すぎ・・・っ!」
「そのほーが気持ちイイんだろ?臨也くんよぉ?!」

嘲るように歪む表情。体の中心を太串で貫かれるような圧迫感だけでも受け止めるのが精一杯なのに、
シズちゃんは嬉々として腰を激しく揺らす。ぐちゅぐちゅと卑猥な音が、結合部から漏れる。
ハハ、そんなに俺のナカ、気持ちいいの?
殺すだの死ねだの、散々言ってるクセにさぁ、なんだよ、その欲望に塗れたカオは?

まぁ、いいさ。
好きなだけ俺を貪って、気持ちヨクなって、昇りつめて、
そうして、我に返った時に自己嫌悪するといい。
平和島静雄は、大嫌いな人間、しかも同性を犯して、感じて、気持ちよくなって、イっちゃいました、ってさぁ。
ハハ。傑作。
これだから、シズちゃんをからかうのはやめられない。
でも、その代わり、俺にだってイイ思い、させてくれたっていいよね?

俺は、さっきからシズちゃんと俺の腹の間で放置されたままの、俺自身を見下ろした。
あーあ、泣いちゃってるよ。張り詰めて、震えて、早くイかせて欲しいって啼いてる。
慰めてやろうと手を伸ばした。けれど、一瞬の差で、俺のソレは別の人間の手のひらに掴まれた。
シズちゃんの手のひら、ホント、大きくて。
先端から包み込まれるように握られて、背筋がぞくぞくと震えた。やッ・・・きもちい。・・・と思ったのは一瞬だけで、
しかし次の瞬間には、激しい締め付け・・・どころか、まるで握りつぶすかのような力で
おざなりに扱かれ始めた。ちょ・・・、さすがにそれは、さぁ。でも、

「痛・・・握り潰さないでよ、シズちゃん・・・」
「うるせー・・・」

苦痛を訴えてみると、少しだけ力は緩んだが、やっぱりそれでもまだキツい。
痛みというより、刺激が強すぎて灼けるカンジというか、なんというか。
まぁ、シズちゃんに手加減てのは土台無理な話だしね。
諦めて目を閉じ、必死に快楽だけを追った。少し意識して声を上げてやるだけで、
下肢から広がる甘い疼きは止まらなくなる。
あー、もう、マジでイキそー。

「ね・・・もう、イっていい?シズちゃん」
「っち・・・、いちいち聞くな!ウゼェ!!!」

そう怒鳴る男の顔も、さすがに余裕がない。
ハァハァと何度も息を付く彼の肩に手をついて、ラストスパート。
もう、ここまできたら、あまり理性とか関係なくなる。だってさぁ、どっちも男だし?
欲望に勝てる男って、そういないよねぇ。少なくとも俺の周りにはいないなぁ。
シズちゃんだってさ、あんだけ殺すだとか嫌いだとか言ってるクセに、
ちょっと快楽をチラつかせてやると簡単に堕ちてくるし。
頭が朦朧としてきた。もう、ここまで来てしまえば、
相手が好きだとか嫌いだとか関係なくて、崩れ落ちそうな身体を支えようとシズちゃんの首にしがみつく。
シズちゃんは多分嫌そうに顔を歪めたけど、振り払う余裕もないようだった。
俺の腰を激しく揺らして、好き勝手に最奥を貫く。
そう、俺達のセックスは、互いを思いやるものなんかじゃない。
ただ単に、相手を自慰行為の道具にしてるって感じ。まったく、笑っちゃうよね。
だから俺も、自分の快楽の為だけに、ひたすら腰を揺らした。
あ、あ、も、駄目。
イク、イっちゃう。唇を噛み締めて衝動をやり過ごすのも限界だ。
男の肩口に爪を立てて、身体を強張らせれば、
もうその瞬間は目の前だ。

「あ、はあっ・・・、も、ぁ、・・・っっ!」
「・・・っく、ちくしょっ・・・」

ひときわ強い締め付けを彼に与えたところで、フィニッシュ。
シズちゃんの親指が、俺自身の先端を爪で引っかいたもんだから、もう、刺激は脳髄を貫いたようだった。
ビクビクと震える身体を男の身体に預けて、俺は内部に放たれたシズちゃんのモノを思う。
は、はは。
俺なんかに遊ばれて、こうして欲望を晒け出させられて、
馬鹿なシズちゃん。
悔しそうなカオしてるけど、しょうがないよねぇ。
シズちゃんは一生、死ぬまで、俺に縛られて、俺に振り回されていればいいよ。
そうしている限りは、俺も君のすべてを受け入れてあげる。

そう、熱に浮かされた頭で考えていると、不意に携帯の音が鳴り響いた。
あ、そうそう、これを待ってたんだよ。
とある仕事人からのTEL。ああ、言っとくけど、人を殺させたわけじゃないよ?
別に俺は、誰かに恨み辛みがあるわけじゃない。
あ、あるとしたらシズちゃん位で。
俺はただ、楽しみたいだけだよ。人間たちが、俺の目の前で踊ってくれればそれでいい。
そうして、それを舞台の外で見ていられれば最高。
壇上にあがるのは趣味じゃないんでね。

「お♪きたきた」
「っテメェ・・・・・・」

シズちゃんの怒りの声なんて気にしない。下肢に燻ぶる余韻なんてものも大した意味はない。
ベッドサイドに置いていた連絡用の携帯に手を伸ばし、そうしてカチャリと画面を開く。名前を確認して、ニヤリと受信ボタンを押そうとして、

「っ痛・・・!」
「・・・行かせねーよ」

ドスの聞いた声音と共に、伸ばした右手首に激痛が走った。
あまりの痛みに、苦痛を訴える声が無意識に漏れた。そうして、ガシャンと携帯が床に落ちる。
正直、手首は今にも折れそうだ。
携帯は鳴り響いたまま。ちょっと、待ってよシズちゃん。冗談じゃない。

「ははっ・・・シズちゃん、何のつもり?」
「俺はテメェの悪巧みに付き合ってやるつもりはねーんだよ」
「はぁ?俺の仕事に口挟まないでくれるかなぁ。ていうか、関係ないし?」

反論して、彼の腕を振り払おうとするが、まぁ、彼の力が簡単に振りほどけるはずもない。
そうしているうちに、携帯は訴えをやめてしまってた。
あーあ、どうしてくれるんだよ、シズちゃん。君に俺の楽しみを奪う権利なんてないだろうに。
俺は、男の顔を睨みつけた。ねぇ、ちょっと、本気なの?
今までだって、こんなことは何度もあった。
でも、大抵はその度に怒り狂って、暴力沙汰になったり喧嘩になったりするから、まぁうまく逃げおおせてきたわけだけど、
今回は何、それ?
行かせない、とかって。引きとめるとか、シズちゃんに限って有り得ねーし。
ちょっとさぁ。いい加減、腕離してくれるかな?

「この後に及んで、関係ねぇとは言わせねーよ。散々俺をハメやがって・・・」
「今回シズちゃんは関係ないって言ってるだろ!」
「うるせぇな。俺は平和に暮らしてーだけだ。だがな、てめぇが池袋に居座ってンじゃ、ゆっくり眠れねーんだよ」
「それはそれは」

それは即ち、それほど俺を気にしてくれてるってことだよねぇ?
楽しい。楽しいよシズちゃん。君の生活を引っ掻き回すことは、俺にとっての至上の悦びだ。
もう、諦めなって。もともと、君の存在自体が非日常なんだ。君の周りに起こることが、日常的なわけないじゃない。
わざわざ俺がからかいに来なくとも、君が窮地に陥ってくれたらもっと楽しいんだけどねぇ。
その時は、嬉々として君にトドメを刺しにいくから、待っててよね?

「そんなに俺のことが気になるの?
 やだなぁシズちゃん。俺とばっか寝て、絆されたりしちゃってんの?」
「するか!キメェ!
 ・・・テメェは、絶対に俺が再起不能なまでに潰す。今度喧嘩売ったら、覚えて居やがれ」
「ハハっ。今じゃないんだ。シズちゃんて、大概甘いよねー」

結局、音の鳴らなくなった携帯に、二度目の連絡は入ってこなかった。
あーあ、楽しみがひとつ、シズちゃんのせいで消えちゃったよ。責任、とってくれるよね?
口許だけ持ち上げて、裸足でシズちゃんの雄を蹴りあげれば、それだけで簡単に熱を取り戻していく。
っ、と息を詰めた彼の首に、再び腕を絡ませ、ベッドにごろんと仰向けに寝そべる。
間近に迫った男の瞳には、明らかな欲望。
ああ、わかってるよ。
まだ、足りないんだろう?


「しょうがないなぁ。シズちゃんの気が済むまで付き合ったげるよ。その代わり、シズちゃんも一度くらい俺の為に何かしてよね」
「知るか・・・!」

罵詈雑言を浴びせようとする唇に、舌を這わせて、そうしてキス。
案の定、シズちゃんは、俺を引き離そうと腕を上げたけれど、そう簡単に、俺だって彼の自由にさせるつもりなんてないよ。
両膝で彼の腰を挟み、より一層、彼にしがみ付く腕の力を強くする。あはは。どうせなら、楽しまなくちゃ。
もっともっと、快楽を。死にたくなる位どうしようもない欲望ってやつを教えてあげる。
この俺がね。

「っう―――、テメェ・・・」
「おいでよ?」

充血し、柔軟に開閉を繰り返す下肢の奥を曝け、ニヤリと悪魔の笑み。
先程自分が内部に吐き出した白濁が溢れるのを目にして、興奮を隠せないでいる彼に、
俺は再び両手で、彼の雄を慰めてやったのだった。





end.






なんか、私のシズイザ観て、
殴り合いするか、セックスするかの二択のようなイメージw
しかもセックスしてるときも、散々罵詈雑言の嵐とか、口喧嘩ばかりの気がする。
それでもそれなりにキモチイイんだから、身体って怖いなw

まぁフィクションですけどw






Update:2010/06/03/WED by BLUE

PAGE TOP