終わらない夜。



叶わない恋だということはわかっている。
ただの庶民である自分からすれば、あまりにも遠い存在。
それがどうして知り合ってしまったのか、どうしてこんな関係になってしまったのか、
今ではもう、闇の中。

それは、ただの偶然だったように思う。
幼い頃から俗世間から離れて生活していた何も知らない自分が、
とある事情で上京しなければならなかったあの頃。
常識にも疎く、土地にも疎かった自分が間違って足を踏み入れてしまったのは、あまりに治安の悪い一帯。
口の聞き方すら知らなかった自分は、暴力的な男たちに囲まれ、
まさに絶対絶命の状態だった。
慌てて逃げようとして、けれど何人もの男たちからは逃れられるはずもなく、
ラッシュは殺されるかもしれない、とすら思う。
死を覚悟したその時、気紛れにもそんな窮地から救ってくれたのが、
彼だった。
心臓が止まったかのように衝撃を受けたのを覚えている。
夢のようだった。
こんな人間がいるのかと思うくらいに、美しく整った顔立ち。
それだけ見れば優男のような彼は、けれど屈強な男どもに負けず劣らずの喧嘩強さを披露し、
そうしているうちに巡回の警官が来て、その場はお開きになったが、
既に、驚きと感動で呆けたように座り込んだままのを少年を、
その男は連れて帰って行った。
気紛れに少年を救った、うつくしい男。
それが、まさかこれほどに世界的に有名な大スターだったなんて、
誰が思うだろう?
どんな気紛れかはわからなかったが、
とにかく、ラッシュは彼とのあまりの立場の違いに、戸惑いを隠せなかった。










キキッ、と音がして、待たせたな、と声をかけられた。
ドキリとする。目の前には、人目を引くような赤いポルシェ。助手席の窓が開けられ、
そこからあの彼の声がする。
世界的な大スターである彼が、そうそう簡単に目撃させるわけにもいかない。
だからラッシュは、滑り込むようにして助手席に乗り込む。
数秒もしないうちに、車は人気のない郊外へと走り出した。

「どこへ行くんだ?」

いつも夜に呼び出された時は、余り利用されることのない彼の家で交わるのが常で、
だというのに今日は反対方向に向かっている。
首を傾げたラッシュに、ダヴィッドは前を向いたまま、相変わらずの誰もが聞き惚れるようなうつくしい声音で告げた。

「俺は、明日は夜までフリーなんでね。」

ラッシュの問いに答えにはなっていないが、つまり、こういうことだろう。
普段、どんなに時間が割けてラッシュと逢う時間を作っても、
たいていは朝まで。
ラッシュの目が覚めるときには、既に彼はベッドを去ってしまっていて、
サイドテーブルにはそれなりの額の金と、彼が帰る為の運転手の手配をしてくれていた。
金をおいていくなど、まるで娼婦相手のようだと思う。
だから、前に一度だけ、返そうとしたことがある。俺はあんたが好きだから、あんたと付き合ったし身体も開いた。けど、断じて金が目的なのではないから、と。
けれど、ダヴィッドは頑なに金を置いていくのをやめなかった。お前の身体に金を払っているわけじゃない、いつも傍にいてやれない、寂しい思いをさせてしまう詫びだと告げる。
わかっていたのかもしれない。
自分が、本当は、病弱な母の医療費の為に沢山の金を必要としていたこと。
更に、まだ独り立ちできる年頃ではない妹の面倒をみなければならないこと。
だから、真摯にそう告げてくれたダヴィッドの好意に甘えて、それ以来金の話はやめた。
ダヴィッドもまた、何も言わなかった。変わらずに、暇ができるとラッシュを呼び付け、そうして、朝までの短い時間を共に過ごした。
それが、今日は、明日の夜までのほぼ一日、共にいられるという。
嬉しくないはずがなかった。
自然と頬に熱が上るのを抑えられず、ラッシュは窓を眺めた。

沈黙。

二人の間には、カーラジオから流れる古めかしい流行歌だけ。
あなたが欲しい、独り占めにしたいのにと唄うそれが妙に己の心をかき乱していて、
どうにも心臓が高鳴る。
ちらりと見やると、愛する男は真っ直ぐに前を見据えていて、
その凛々しい顔立ちにまたしてもドキリとした。
『独り占めにしたいのに』
嫌なフレーズだと思った。その言葉は、ラッシュが何度胸に閉じ込めてきたかわからない想い。
まったく、馬鹿げたことだと自分でも思う。
彼が自分などを知ったのは単なる偶然で、ましてやこんな関係になるなど夢にも思わなかったのだ。
自分と彼とでは、あまりにも立場が違い過ぎる。
こちらはただの一般庶民で、彼はというと世界的に有名な大スター。
そんな彼が、時折自分を腕に抱き、愛してくれるだけで満足しこそすれ、
傍にいない時の彼の交友関係に嫉妬を覚えるなど、あってはならないはずだ。
けれど、そう諭す理性とは反して、情けない感情が在る。
自分は、彼が全てで、彼しか見えていないけれど、彼は違う。
自分は彼だけのものであっても、彼は自分だけのものではない。それがどうしても、心に闇を落とすのだ。
どうしてだろう。
あまりに自惚れた考えだというのは重々承知しているのだけれど。

「着いたぞ」

彼の短い声音にハッとした。
顔をあげると、既にダヴィッドは運転席から降りていて、助手席をわざわざ開けてくれていた。
慌てて、車を降りる。どんなに心は複雑でも、身体は彼の誘いに素直についていく。
なぜなら、失いたくないから。
彼が自分を可愛がるのは、単なる気まぐれであっても、
いつかは離れてしまうのかもしれなくても、
1日でも長く、自分の傍にいて欲しいからだ。
自分に彼を引き留めるほどの魅力があるとは思っていない。自信なんてない。こんな自分だから、いつだって不安で。
だから、彼を一度でも拒めば、離れていく気がしていた。
それが、怖かった。

手を取られて恥ずかしげに俯くラッシュを連れ、
ダヴィッドは人目につかない裏口からホテルに足を踏み入れた。
煌びやかなシャンデリアやいかにも高級そうな大理石に、輸入物のアンティークの数々。
一介の庶民でしかないラッシュが、足を踏み入れられるはずもない、超高級ホテル。
政府の要人や大企業の社長、大成功を果たしたエンターテイナーしか、こんなホテルは利用しないのではないかと思うほどに、
室内は高級感に溢れている。
思わず尻ごみするラッシュに構わず、ダヴィッドは彼を連れ、エレベーターに乗り込んだ。
目指すは、30階。
最上階のスィートルームを取ってあるんだ、と囁かれて、ラッシュの頬に赤みが兆す。
もう既に、ラッシュはどうしていいのかわからなかった。
ゆっくりと最上階へと近づくエレベーターの揺れに、ラッシュはふらりとダヴィッドの胸に倒れ込んだ。

「っ・・・あ、ダヴィ・・・っ」
「今夜は眠らせない。覚悟しろ・・・」

くるりと身体を反転させて、ラッシュの背をエレベーターに押し付ける。
幸い、30階まではまだまだ遠い。ダヴィッドは少年の顎を取り、ゆっくりと唇を重ねる。
ラッシュは、思わずダヴィッドの衣服の肘にしがみ付いた。
本当に、夢のようだ。
あれほど遠いはずの存在が、こんなに近くにいて、そうして愛を囁いてくれる。
あまりに幸せだと、途端に不安になる。
もしかしたら、これがすべて夢かもしれないと。
ふとした拍子に崩れ落ちてしまう儚い夢だったとしたら。

「・・・あ、やだ、こんなトコで・・・!」

性急にベルトに手をかけるダヴィッドに、ラッシュは慌てて拒むようにその手を抑えた。
おかしい。普段、これほど余裕のない様子で自分に迫ることはない。
いつだって余裕の表情で、少年をからかったり、甘い言葉で蕩けさせたりしていた。だというのに、
こんな、二人きりの室内でもない、他者の目がある場所で。
誰が乗りこんでくるともわからない小さな箱の中で、ダヴィッドは既に少年の前を緩め、彼自身をゆっくりとなぞっていく。
思わせぶりに弾くような動きすら見せるその掌に、ラッシュは声を抑えるだけで精一杯だった。
口元を、掌で抑えた。その間にも、抵抗の緩んだのをいいことに、ダヴィッドは首筋に音を立てて吸い付き、白磁のような肌に紅の色合いを残す。

「ぁ、あんっ・・・」

まるでヴァンパイアが獲物の血を吸い尽くすように、
己の素肌に彼の八重歯が喰い込むのを、ラッシュは恍惚とした表情で受け入れた。
ぐっと強く腰を抱かれて、先ほどまでぼんやりと考えていたくだらない感情が、どうでもよくなってくる。
彼に抱かれて感じる、彼と一体になり、彼の一部となり収束するような感覚は、
それだけで自分を見失うほどに心地いい。

「ダヴィッド・・・っ」

下肢の前を乱され、上半身もすべてのボタンを外された状態で、
悪戯な手が彼のウェストに絡みついた。既に興奮しているのか、ラッシュの肌はしっとりと濡れていて、
触れ合うと吸い付くような感触を覚えた。まるで、女のようだと思う。
けれど実際、同性だというのに彼に抱かれて悦んでいるのだから、どうしようもない。
元々、異性に興味がないわけではなかったし、同性が好きなわけでもなかった。
ただ、誘われて、驚きと共に高鳴る鼓動を止められないまま、ラッシュは頷いた。
初めてだった。
彼が最初の男で、恐らくは最後の・・・―――。

「おいで。」

チン、とエレベータの扉が開くまぬけな音がして、
ラッシュはダヴィッドに促されるままに室内に足を踏み入れた。
そこで、再び言葉を失う。ラッシュが見たこともない程に豪奢な室内。家具や調度品、高く煌びやかな天井、一間続きの寝室は、壁全体がガラス張りになっており、目も眩む程の美しい夜景が見下ろせる。
その美しさに、ラッシュは言葉も忘れて、窓際に張りついた。ごくりと息を呑む。
高層ビルから漏れ出た光やライトアップされた建造物。更には、ここに来るまで気づかなかったが、
ホテルの目の前には大きな川が広がっていた。
それが光を反射し、地上と同じような景観を描いているのが、
なんとも言えず美しい。

「すっげぇ・・・」
「お前に、見せてやりたかった。」

前に、見たがっていただろう?と耳元で囁かれて、
そういえば、何かの雑誌で夜景の特集が組まれていたのを思い出す。
生で見れたら、さぞかし綺麗だろうな、行ってみたいとぼそりと言っていたのを、彼は聞いていたのだろうか。

「ダヴィッド・・・」
「本当は、ゆっくり休みを取って、連れて行ってやりたいんだけどな」

すまない、我慢してくれ、と言われて、ラッシュは慌てて首を振った。
こうして自分を気にかけてくれるだけで、どれほど嬉しいか。
背後から抱き締めてくる腕に、しがみ付く。意志を込めて抱き締めると、先ほどの行為を再開するかのように、
ダヴィッドの掌は淫らに素肌に触れてきた。
冷たいガラスに肌を押し付けられて、ひんやりとした冷たさに肌が粟立つ。
けれど、目の前の美しい光景に見とれているうちに、
ラッシュはいつの間にかすべての衣服を剥がされ、生まれたままの姿になっていた。

「ラッシュ・・・」
「ん・・・」

→[イラスト]
肩口や背中に何度もキスを受けながら、恍惚とした表情でぺたりと窓に張り付いた。
ダヴィッドに抱かれ、熱を持つ身体を見せつけるような格好。もちろん最上階だから誰の目線もないのはわかっているが、
それでも足下で何度も車が行き来していると思うと興奮する。それに、もう一つ。

「綺麗だろう?」
「う、うん・・・・・・」

己自身を手に取られて、ゆるりと擦られる。ラッシュは疼く欲を抑えきれずに唇を噛んだ。
ふと意識を室内に戻せば、目の前のガラスに映し出されるのは己の姿。
今だスーツ姿の、一糸乱れぬダヴィッドの腕の中で、既に興奮を隠せずに上気したような表情で彼に身を預ける自分のそれに、
ラッシュは更に興奮の色を隠せない。
彼の掌の中で、ラッシュの雄が先走りに濡れた。くちゅくちゅと音を立てて、ダヴィッドの指先が体液の溢れる先端を弄り、時折冷たいガラスに押し付けてはひやりとした快楽を与えてくる。
傷ひとつなく磨かれた透明なガラスは、いつの間にか、
ラッシュの熱い吐息に曇り、じっとりとした汗に濡れ、そうして体液に穢されていた。
恥ずかしい。けれど、それ以上に感じている自分を止められない。

「あ、ああっ、んっ・・・」
「美しいな・・・。こうしていると、二人のお前が、絡み合っているようだ」
「んんっ・・・」

確かに、両手をガラスにつくと、まるで相手の手の平と己のそれを合わせているようだ。
熱い吐息を吐き出す自分の顔が妙に淫らで、目を奪われる。
別にナルシストなつもりはない。けれど、ラッシュは促されるようにして己の分身が映るガラス窓へくちづけた。
甘い吐息が重なる瞬間、ダヴィッドもまた興奮を抑え切れずに、ラッシュの双丘を割り開いた。片手をガラスにつけて支え、少年の片足を抱え上げる。
再び素裸の胸元が冷たい感触に鳥肌を立てたが、それを意識するよりも、狭い場所に宛がわれた男の雄に息を呑んだ。

「っ・・・まだ・・・濡らしてもないし、痛いって・・・」
「お前ので濡れてるから、大丈夫だろ」
「っヒド・・・。」

涙目で訴えてみても、ダヴィッドが引くことがないのはわかっている。
だからラッシュは諦めて、最大限下肢の力を抜くよう努力した。
じわりと馴染ませるようにダヴィッドのそれが侵入してくれば、やはりそれでもまだまだ狭い入口は裂けるような痛みを少年に訴えてくる。
焼け付くようなそれにラッシュは顔をしかめたが、それでも、愛する男のそれを受け入れる行為は、
ひどく充足感を覚える。
幸い、ダヴィッドは狭いそこに乱暴に突き入れることはしなかったから、
痛みと共に、彼自身の感触をじっくりと感じることができた。

「ぁ、ああっ、ダヴィッド・・・ォ・・・!」

熱い。思わず内部がぎゅっと収縮すると、かれの形までを感じる結果に繋がる。
幾度となく繰り返された行為でも、ラッシュのその部分はダヴィッドの雄を手放すまいとでもいうようにきつく締め付けてきて、
ダヴィッドは柔軟なそこにひどく満足げな吐息を漏らした。
別に、身体だけが目的で、彼を傍に置いているわけではない。性欲処理の道具ならば、他にいくらでもいる。風俗に行ってもいいし、遊び人の女も男も、自分のいる世界にはそれなりに見つかる。
けれど、自分が可愛がっている彼との身体の相性がいいほうが、より楽しめるというものだ。
少年もまた、押し付けたガラスに爪を立てて、与えられる快感に耐えている。
痛みよりも快楽が既に先行していることは、窓を汚すラッシュ自身からも明らかで、
ダヴィッドはくっくっと笑い、腰を引いては彼の奥を貫いた。
始めは、彼を労わるように小刻みに。彼が甘い声音を漏らす度に、ずるりと音がする程に自身を引き抜き、
そうして一気に彼の内壁を擦ってやる。
腰を引くと、ラッシュのそこが、追いすがるように朱い粘膜を見せるのが、妙にいやらしくて、
緩む口の端を抑えられない。
そんなダヴィッドの様子をガラス越しに目にしたラッシュは、
嫌そうに顔を歪めたが、彼だって同罪だ。

「・・・イイか?」
「んっ・・・ぁ、イイ・・・からっ・・・」

イイから、早く、と吐息だけで訴える少年に、苦笑した。
まぁいい。今夜は、たっぷりと時間はあるのだ。
ここで一度イって、ベッドに直行でもいい。
それとも、既に、いい湯加減になっているバスルームへ行って、照れまくる彼の身体を、普段以上に念入りに洗ってやるのもいい。
性急に事を進めず、この美しい夜景を見ながら、酒を飲み交わすのもいい。
軽く酔いが回って、自ら積極的に求めてくる少年の姿も、また淫らで欲望をそそられるだろう。
そうだ、折角のふたりきりの時間は、有効に使わねば。
そこまで考えて、ふとダヴィッドは我に返り、途端、込みあげる笑いを止められなかった。

「ああっ、ダヴィ・・・、ダヴィッド・・・!!」
「ああ・・・わかっている」

何故。
何故、こんな少年を、自分は傍に置いているのだろう。
確かに少年は、それなりに整った顔立ちをしているが、それでも芸能界には顔が綺麗な者などいくらでもいる。
顔だけでなく、身体や手足まで美しさを売りにしている者だって沢山いるのだから、
口説こうと思えば落ちる者も何人かはいるだろう。
顔ではない。姿形でもない。
ましてや、ただの田舎町出身の一般市民。
自分のファンですらない。
少なくともこの国では誰一人知らぬ者はいない、と言われる自分の名すら、出会った当時は知らずにいた、無知すぎた少年。
そんな少年のどこがいいのだ、と、以前誰かに聞かれたこともある。
だが、ダヴィッドは思う。

「・・・だから、お前が大好きなんだ。」

耳元で吹き込んでみる。けれどもう、自分の声など聞こえていないだろう。
そう、そんな少年だから、いいのだ。
世間も、ファンも皆も、芸能界での知り合いも、どうせ、見ているのは自分の上辺だけ。
煌びやかな衣装を纏い、誰もを魅了する歌声を聞かせ、常に音楽界の先陣を切り、華々しい活躍を見せる成功者としての自分。
だが、誰も、その表の姿に目を眩まされ、自分が影でどれほど苦悩の日々を送ってきたか知る者はほんのわずかだ。
自分を持て囃す人間など、どうせ、目当ては自分の表側だけ。
そんなものだ。別に、構わない。
けれど、この少年だけは、違う。世界的に名を馳せる、自分の存在を知らなかった。
知らぬままに付き合い、そうしていつの間にかそういう関係になった。
それでいい。
表も裏もない、この自分を好きだと言ってくれた少年。こんな貴重な存在を、
自分はそう簡単には手放せないだろう。

「あ、ああんっ・・・!!!」
「ラッシュ、・・・っ」

ひときわ深く、彼の最奥を抉るように貫いてやれば、ラッシュは消え入るような嬌声あげ、果てた。
冷たいガラスに飛び散る白濁が、少年の快楽の証。自然と笑みが零れる。
愛しくてたまらない腕の中の存在の背に口づけて、こちらもラストスパートの為に彼の腰をガツガツと貪る。
一度達して敏感になった内部は、再び少年を苛ませ、
そうしてダヴィッドのそれを絞り取るような動きすら見せる。
今度は、ダヴィッドは彼の誘いに任せ、自身を解放した。
内部に精を放つ瞬間、ラッシュの身体を強く抱きしめてやれば、
ラッシュは脱力した身体を必死に支え、ダヴィッドを離すまいと彼の腕に強くしがみつく。
そうだ、絶対に放すまい。
たとえ、いつか彼が自分に飽きたり、他に好きな者ができたと言い出したとしても。
監禁してしまってもいい。病弱だそうな母親の医療費を理由に彼を脅してでも構わない。それが一番、家族思いの彼には堪えるだろう。
そんな手段を選ばない自分の心の闇を自覚して、ダヴィッドはひっそりとため息をつく。
願わくば、ラッシュには、そんな自分の悪魔性を引き出して欲しくないものだと、
ダヴィッドは腕の中の存在を再び強く抱きしめたのだった。





end.

















feat.樹様。
イラストも樹様から頂きました。ありがとうございます!


ていうか加藤○樹くん。結構好きです。
ダヴィシュの必要性が全くないストーリーなんですけどコレどうなの。しかも鬼畜だし。



Update:2009/04 by BLUE

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