Cream on the Cake



「・・・竜崎・・・」

さも楽しげにキッチンに立っている竜崎に、月はため息をついた。
時は8月。ようやく己への絶対的な疑いが晴れ、手首に鎖付きではあるけれど
竜崎と共に捜査を続けることになって15日。
その間、彼が極秘に建設させていたらしい高層ビルに本部を移し、
与えられたのは居住区のワンフロア。
防犯のため、室内の者の許可なく他人の出入りを許さないようになっているそこは、
2人で入ってしまえばほとんど同棲状態で、
まったく、これで本当に「捜査のため」という理由が通るのだろうか。
月ははぁ、と再度ため息をついた。

「―――ハイ。これ、お願いします」
「・・・・・・」

生クリームの入ったボウルを手渡され、仕方なく月はそれをかき混ぜ始める。
対して経験もないのに、ケーキを作ろうと言い出したのは竜崎の方だ。
それに対し、料理に関してはそれなりの腕前である月は彼に引きずられるようにしてここにいるのだが、
相次ぐ犯罪者の死のせいで、とても楽しむ気にはなれない、というのが本音だった。
だが、竜崎の方はというと、
現在のキラが夜神月でない、というだけでやる気が失せるのか、
休憩時間でも捜査中でも菓子ばかり食べている。
本当に、呆れた男だ。

「・・・竜崎。いくら暇だからって、わざわざこんなことしなくても・・・」
「おや、月くんは楽しくないんですか?」
「楽しいとかそういう問題じゃないだろう。第一、今も父さんたちは捜査に当たってるんだぞ?」
「たまには休まないと、推理力も半減です」
「・・・・・・」

膨大な量のデータを前に、5日間一睡もしないような男が何を言っているのだろう。
けれど、どれほど探偵として優秀でも、根が幼稚ならしい竜崎は、
自分の中で決めた優先順位に逆らってまで捜査を続けることはできないらしい。
結局、彼のやりたいようにやらせるしかないのだった。
月は諦めたように竜崎から手渡された泡立て器を握ると、
彼の指示通りにかき混ぜてやった。

始め、彼の指示以外は手を出すまいと思っていた月は、
気付けば彼が手間取っているらしいスポンジケーキの焼き方に口を挟んだり、
生クリームのの隠し味に使うレモン絞ったりと
結局動作の遅い彼の代わりに動いてしまっていた。
まったく、いい迷惑である。

(・・・それにしても・・・)

漸く、スポンジの生地をオーブンにいれ、あとは待つだけ、という時になって、
月は己の手の中にあるボウルを眺めた。
氷水で冷やされたそれは、
今すぐにでもケーキを飾れそうな状態になっていた。
だが、その量は普通使う生クリームの量よりよほど多い。
なんだかんだとバタバタしていて最初気にも留めていなかった月は、
普通量の2、いや3倍ほどもあるそれに、改めて顔を顰めた。

「・・・ん。美味しいですね」

横から指を伸ばし、味見をした竜崎がニッ、と笑う。
本も見ずにほとんどフィーリングでキッチンに立っていた彼だ、
おそらくはこれも何も考えていないのだろう。
この数時間で疲れ果てた月は、けれどこれだけは、とばかりに竜崎を呼び止めた。

「・・・どうするんだ、この量」
「えっ?多いですか・・・?これ」

やっぱり、自覚していない。
竜崎ほどの頭ならば少し考えればわかることだろうに、
どうしてこういうところには気が回らないのか問い質したいくらいだ。
月は本日何度目かのため息をついた。

「考えても見ろ。今、おまえが焼いたケーキ、どう考えても1/3しか使わないだろう、これ」
「・・・たっぷり塗ればいいじゃないですか。それに、あまればそのまま舐めればいいですし」

少なかったほうが余程困りますよ、とさも尤もらしく告げる竜崎に、
うんざりと額に頬を当てる。
だが竜崎はそんな月を気にするどころか、
量が多いことで気兼ねなくつまみ食いができますね、と言わんばかりに
ボウルの中のそれを指ですくっては、指先を舐めている。
ちろちろと見え隠れする猫のような赤い舌に、
月の身体がどくりと疼いた。
月は黙って竜崎を見つめた。目を細める。クリームのついた指をねっとりと舐めながら、
しゃがみこんで焼けていくケーキを眺める竜崎。

「―――竜崎。ここ、ついてる」
「・・・・・・ぁ」

す、と頬に手を添えられ、竜崎は顔を上げた。
落ちてくる影。そうして、もう片方の頬に濡れた感触。
竜崎の頬についていた生クリームを舌で舐め取った月は、唇を離し、にやりと笑った。
甘くて、美味しい。これを"ケーキ"の上に乗せたら、どんな味がするだろう?
くだらない欲望が己の中に込み上げてくることに、
月は口の端を歪めた。対して竜崎は、男の腕に包まれて頬を染めている。

「・・・ラ、月く、ん・・・?」

戸惑いを乗せた瞳で見上げてくる彼に、安心させるように笑ってやる。
そうして、ゆっくりと彼の身を押し倒し、フローリングの床に背を押し付ける。
頬に落としたキスから、肌を辿って唇へと触れると、
漸く意図がわかったのか、竜崎はじたばたと暴れ始めた。
無論、今更逃げ場は、ない。

「・・・っちょ・・・、何やってんですか」
「ん?・・・いや、ね。どうせ暇なら、楽しいコトでもしようかな、ってね」
「た、楽しいことって・・・」

何をされるのか、と脅える彼に、再度キス。
そのまま、彼の上着をゆっくりと捲り上げ、脱がせる。露わになったそこへ、
月は指を滑らせた。びくりと震える身体。ここ最近、毎日といっていい程月の手で慣らされている彼の肉体は、
少し月が触れただけですぐに臨戦態勢に入ってしまう。
勃ちあがった胸元のそれを指先で撫でるように刺激してやりながら、
伸ばされる月の片手。
既に熱に浮かされ始めている竜崎は、気付かなかった。月の右手が、普段とは違う動きを見せ
彼の肌に触れてくる。
不意に訪れたひやりとした官職に、竜崎は驚いたように悲鳴をあげた。

「ひゃ・・・、冷た・・・、何?」

己の胸元にあるその感覚の原因を確かめようと実を起こしかけた竜崎を、
肩を強く押すことで押さえつけて。
月は笑って、彼の唇を指でなぞり上げた。紅のかわりに、白く彩られていく唇。

「・・・何か、わかった?」
「・・・・・・もったいないことをしますね、月くんは・・・」

呆れたような竜崎に、はは、と笑う。今度は大胆に手のひらで生クリームを掬うと、
竜崎の胸元の肌が隠れる程にべったりと塗り始めた。
当然、竜崎は嫌そうに唇を尖らせた。
余った生クリームは自分が食べようと思っていたのに、
こんなくだらない事で使用されるなど言語道断である。

「・・・月くんばかり、不公平じゃないですか」
「ああ、ごめんよ」

舌で掬ったそれを、口移しで竜崎に食べさせる。
滑らかなそれは溶けるように舌先で消え失せ、その度に月は彼の肌のクリームを掬った。
キスの甘さと、肌を襲うくすぐったさに、竜崎は身を捩った。
普段とはまた違った刺激に、興奮している自分を止められない。
月の左手が、竜崎の下肢のボトムにかけられた。
ベルトもしていないそれは、いとも簡単に素肌を晒してしまう。
期待か不安か、竜崎の全身が総毛立つ。
再びボウルに右手を突っ込んだ月は、たっぷり掬ったそれを直接、彼の雄に塗りたくり始めた。

「・・・っ・・・ひ・・・!!」

突然感じたその直接的な感触に、竜崎は身を竦ませた。
膝を立て、身を縮める。もちろん、月は気にしない。腹につくほど熱を帯び、勃ち上がったそれを、
生クリームの純白で染め上げる。先走りの液が、その上に筋を作る。
白く埋まった己自身を舐められるのでは、と
羞恥と期待に胸を高鳴らせた竜崎だったが、
しかし月は余すところがないようにしっかりとクリームを塗りつけると、
次に竜崎の腕を引っ張り、彼の身を起こさせた。
何をするつもりなのか、と脅える青年に、にっこりと笑ってやって。

「おまえにも舐めさせてあげるよ。」
「・・・?」

頭の上にクエスチョンマークを浮かべる竜崎の目の前で、
月は今度は己自身に生クリームを塗り始めた。
何を、と顔を顰める竜崎の手を引き、月自身の雄を握らせる。当然、竜崎の頬が朱に染まった。
まさか―――、と焦る彼に、けれど月はそれを気にも留めていない。
背を下にして横たわる己に沿わせるように、
竜崎を四つん這いの格好にさせる。彼の目の前に突きつけられる、白い物体。
無論、生クリームを塗りたくられた、月の雄そのものだ。

「・・・ちょっ・・・」
「ほら、舐めたかったんだろう?」

嫌だ、と顔を上げようとする竜崎の頭を、月の手が押さえつける。
顔にぐっと近づけさせるその力に、しかし竜崎は抵抗できなかった。
先端に塗られた生クリームが、竜崎の頬を濡らす。
まさか、こんなモノを使って舐めさせられるとはつゆとも思わなかった竜崎は、
けれど意地を張って顔を背けている間に、
襲い来る下肢からの刺激に耐えられず声をあげていた。

「んっ・・・ぁ、はぁんっ・・・!」

がくり、と竜崎の片肘が折れる。急激に訪れた刺激に力の抜けた彼は、
そのまま腰を高くあげた獣のような格好のまま、
月の身体にもたれかかった。勿論、目の前にはそそり立つ月のモノだ。はぁはぁと息をつく竜崎の舌に触れる、甘いような―――、味。そして、漂うバニラエッセンスの香り。
己の本能を揺さぶるような誘惑に、竜崎は、負けた。
恐る恐る、舌を突き出し、根元についている白を、舐め取る。
舌先に感じる味は、確かに甘かった。本物の、ショートケーキのように。

「いい子だ・・・、竜崎」
「んっ・・・は・・・、まったく・・・」

一度誘惑にハマってしまえば、抜け出すことができない竜崎の性格をよくわかっている月は、
くすりと笑って髪を撫でてやり、そうして自分もまた彼のための愛撫に集中した。
根元を両手でくすぐるようにして、先端から舐め上げる。
月の愛撫には弱い竜崎は、漸く月の雄への奉仕を始めたにも関わらず、
下肢を襲う快楽に溺れ、月を悦ばせることが出来ずにいた。
それでも、目の端に涙を溜めて、必死に愛撫を続けようとする竜崎が微笑ましくて、
ついつい月は彼の雄を苛めてしまう。
その度、顔を上げては甘い声を洩らす彼のそれは、
月の欲望を強く揺さぶった。
もっと欲しい―――、そんな不純な欲が、後戻りできないほどに膨れ上がってくる。

「竜崎・・・」
「あ・・・、んっ・・・く、・・・」

月の指が、再び白いクリームに塗れた。
ほとんど舐め取られ、本来の色を現した竜崎の雄の裏筋に指先で触れた月は、
そのまま彼の後ろに向かって指を滑らせていく。
竜崎の身体が、ひくりと震え、快楽の予感に身を竦ませた。
抗議するように向けられる顔。けれど、月はあえて無表情で、顎をしゃくる。

「続けて。」
「・・・・・・っ・・・」

有無を言わさぬ瞳に気圧される。
仕方なく、再び月の雄を舐め始めた竜崎に構わず、
月は竜崎のその部分にたっぷりと生クリームを塗りつけていた。
きゅ、と異物から内部を守ろうと蠢く秘孔に、突き立てられる月の指先。

「っは・・・!」

痛みはなかったが、それでも何をされたかははっきりとわかる。
ずず、と音がするくらい大胆に奥へと入り込んでくる月に、
けれど竜崎は耐えるしかない。無意識に引けた腰が、月の手のひらによって引き寄せられる。
次第に動きを大きくしていく指先が発生させる嫌な音は、
竜崎の羞恥をひどく高めた。
己の下肢から少しでも意識を逸らそうと、目の前の雄を夢中で愛撫する。
口内に含み切れないほど大きさを増した男のそれは、
もはやクリームの味などなにもなく、ただ先端から先走りの液を零していた。
熱かった。どくどくと脈打つそれが、はっきりと感じられる。

「い・・・、あ、はっ・・・」
「美味しいよ、竜崎」

両の手のひらで双丘を割られ、耐え難いほどの羞恥を感じた。
だが、更に月は、その裂け目にねっとりと舌を這わせてきた。生き物のようなそれに、
全身を戦慄かせる竜崎。
もはや、腕で身体を支えることさえ出来ず、
竜崎はぐったりと月の上に倒れ込んだ。
月の腕の力だけで、腰を高く掲げた格好。それはこの上なく淫らだったが、
竜崎にはもはやなすすべもなかった。
月のいいようにされること以外、彼に出来ることはない。
いよいよ快楽は限界で、
竜崎の雄の先端を濡らす体液が月の肌を打った。
指を絡めれば、あとは解放を待つだけ、といった風に張り詰めた竜崎の雄。

「このまま、イきたい?それとも、一緒にいく?」
「・・・・・・・・・・」

白々しく訊いて来る月に、
竜崎は睨むことしかできなかった。当然、その目元は赤い。
だから、月は、はは、と笑うと、
己のしたいようにすることにした。竜崎の身を起こさせ、再び背を床に押し付ける。

「・・・やっぱり、一番これがいいよな」

身体が柔らかいから助かるよ、と顔を近づけて笑われ、
ぷい、と竜崎は顔を背けた。
月の舌が、竜崎の耳の裏を舐め上げる。ぞくりと背筋を這う快楽は、
竜崎にはどうにもできない、甘い予感となる。
月は両腕で彼の脚を抱えると、ぐい、と力を込めて胸元につく程にまで開かせた。
ぬらぬらと濡れて光る淫らなそこが、目の前に晒される。
竜崎は瞳を閉じた。
こんな現実を己の目で直視するのは、辛い。

「っ、いいから、はやくっ・・・・・・」
「・・・じゃあ・・・、いくよ」

前置きが長い月に、思わず、本音が洩れる。
月はくすりと笑った。当然、ますます羞恥を煽られる竜崎。
もう、焦らされるのは御免だと、竜崎は腕を伸ばし、月の首にしがみ付いた。
月の雄が、彼の奥に滑り込む。狭い内部を押し開いていくような熱に、
竜崎は無言で堪えた。裂けるような痛みは、どうあっても避けられるものではない。

「・・・っ・・・う、・・・」
「力、抜いて・・・」

無意識に、力を込めてしまっていたらしい。
宥めるように、月の手がするりと竜崎の雄に絡みついた。
軽く、揺すってやれば、甘い声をあげて一瞬、内部の締め付けが緩む。
収縮を繰り返す襞に任せるようにして己の楔を奥に滑り込ませていく月は、
絡みつく彼の熱に、満足げな吐息を洩らした。
心の底から、満たされるような充足感。
けれどそれは、竜崎も同じだ。

「・・・っあ・・・、月、く・・・」

ぐっ、と根元まで押し込まrしまうと、竜崎は安堵したように息をついた。
痛みは過ぎ去り、あとは彼の全てを呑み込んでいる、といった深い快楽が全身の隅々まで行き渡っていく。
指先が震えるほどのそれを噛み締めていると、
月はくすりと笑って、竜崎の額にキスを落とした。
甘くて、優しい―――。思考がどんどん薄れていくのを、竜崎は自覚した。

「竜崎・・・」
「あ、ああっ・・・いっ・・・」

思わず洩れる、本音。
腰をしっかりと手で掴ませ、揺さぶられる。
フローリングの床は、キッチンマットを敷いていたためそれほど堅くはなく、
竜崎を快楽の渦に飲み込ませるには十分な環境だった。
すぐ横では、ぷすぷすと音を立てているオーブンの中のスポンジケーキ。
けれど、誰も気付かない。
焦げた匂いも、頭の片隅でぼんやりと不思議に思うだけだ。
今の二人には、互いを感じる快楽がすべてだった。
ぐい、と月の腕が竜崎の両腕を力を込めて引いた。
身を起こさせられた竜崎は、切なそうに眉を寄せた顔を一層歪めた。
唇が震える。膝を床につき、月を跨いだ格好は、
己が乱れていることを嫌が応にも自覚させられてしまう。
重力が、結合を深くする。

「・・・っ・・・ァ、・・・」
「綺麗だ、竜崎」

汗に彩られ、窓から差し込む光を反射する。
それを纏う漆黒の髪も艶やかで、月は時も忘れて見蕩れた。
下肢を襲う激しい快楽に己の身体を支えきれず、
ぐらりと傾く彼の腰を支えてやる。
そうして、両腕で落とすように。甘い衝撃は竜崎の意識を情欲一色にするのに十分だった。
気がつけば、無意識のうちに膝を使い腰を揺らしている彼に、
月は笑う。完全に理性を失ったその表情は、
普段の淡白な表情と違い、ひどく月の心を掴んでくる。
男の胸に手を置き、必死に己の身体を支える竜崎の額から零れる汗が、
月の素肌を濡らした。もう、限界は目の前だ。

「っ・・・、ぁ、もっ・・・、あ、・・・!」
「いいよ、イって」

月の手が伸ばされ、白い喉を顕わにして喘ぐ竜崎の頬に触れる。
上身を傾けた竜崎は、繋がる箇所から溢れるように襲い掛かる快楽に耐えることはできなかった。
互いが互いを絶頂に押し上げる瞬間。
ぎゅ、と締まりをきつくする竜崎のそこに、月が眉を寄せる。
それでも、月は彼を解放に導くべく、彼の腰を強く貫いてやった。
耳元で、悲鳴ともつかない嬌声が漏れた。

「アッ・・・あ、ああっ―――!!」
「・・・っく・・・」

どくり、と心臓が高鳴った。
ぴったりと密着した肌が、べっとりとした白濁に汚れた。
竜崎は、その濡れた感触に嫌そうな顔をしたが、すぐに動けるような状態ではなかった。
散々焦らされて、そうして解放されたのだ。快楽の余韻は、そう簡単に抜けなさそうだった。
けれど―――、

「っ・・・あ、・・・」
「ごめん、竜崎。でも・・・」

繋がる部分に収まったままの月の雄は、
今だ熱を持ったままで、ぐいぐいと竜崎の内壁を押し上げていた。
まだ達していないそれを感じて、竜崎は諦めたように瞳を閉じる。
本当は、達したばかりで刺激よりも安息がほしかった。
けれど、月のものは、それを許してくれそうになかった。

「んっ・・・ぁ、ああっ・・・」
「力、抜いて・・・」

ぐっ、と尻の肉を両の手に掴まれて、入り口をますます拡げさせられる。
誰が見ているわけでもなかったが、竜崎にはそれは羞恥でしかない。
より深められた結合に、しかし若い竜崎の身体は
達したばかりのその状態にも関わらず、次の欲を蓄え始め、既に熱を持っていた。
過ぎた快楽に、竜崎は恐怖を感じて月の首にしがみついた。
己の身体が、己のものでないかのように、苦しい。
けれど―――、

「今度は、一緒にいこうか」
「・・・っ・・・、無理―――・・・」

一気に高められる熱。噴水のように押し上げられる感覚に、
竜崎はついていけなかった。勝手に身体が欲望を顕わにする。苦しいのに、辛いのに、
それでいて渇望するしかない快感。
だが、もうそれも終わりに近づいているようだった。
ぐちゃぐちゃと容赦のない水音が、竜崎の脳を狂わせ、乱れさせていく。

「竜崎・・・っ!」
「っあ・・・、んっ・・・く、ぅあ!!」

脈打つ雄を押し込まれている箇所に、
どろり、と熱が広がるのを感じた。奥に、呆れるほど放たれる奔流。
だが、それも月のだと思うからこそ、受け入れられるモノ。
続けて二度も生かされた竜崎の、体力をひどく削がれたような表情に、
月はキスを落とした。そうして、重ねられる唇。
互いに互いの熱を感じられるその格好のまま、快楽の余韻を味わっていた二人は、
鼻につくような焦げ臭い匂いを感じられずにいた。
すこし意識を向ければ、オーブンのドアの隙間から洩れる、
視界を曇らせる煙に気付いたかもしれない。
けれど。

「夜神く・・・ん・・・」
「よかったよ・・・、竜崎・・・」

瞳を閉じて、そうして抱き合う二人に、
互いのほかに意識を向ける余裕は残されていなかった。
床に転がされた、すでに中身が空っぽな銀色のボウルが
虚しく窓から差す光を反射し、光っていた。

結局、台無しになった竜崎のケーキの代わりに、
月が1人で彼のためのケーキを作らされる羽目になったのは、
もう数時間先のお話。





end.





Update:2006/07/09/SUN by BLUE

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