Black Rule 02



Rule 02

It is not permitted for a god of death for them to have sexual relations with humans. Otherwise, it is not possible to return to the god of death world, and he dies with the death of the intersecting person.

『死神と人間との生殖行為は許されない。これを犯した場合、二度と死神界に戻れず、交わった者の死と共に寿命が尽きる。』






























「綺麗ですね・・・」

眼下のネオンサインを見下ろして、エルは呟いた。
東京でも有名な高層ホテル。その最上階のスィートルームに響く、かすかな水音。
シャワールームに消えた月を待つ間、窓際で街を見下ろしていたエルは、
そのまま手を伸ばし、宙を掴むような仕草をした。するりと、窓ガラスを越えて手のひらが外に出る。
―――人間ではない。
ついこの間まで人間としての生を生きていただけに、
それを自覚するとエルは少しだけ胸が痛む。誰にも認知されない、空気のような自分。
だから、月が他人と話している時は、辛かった。
彼が己の存在を認め、反応を返してくれなければ、自分は
本当に空気でしかない。
何の意味もなさない、ただ"在"るだけの存在だ。
だからこそ、エルはこうして二人きりでいる時間を多く望んだ。
2人でさえいれば、自分は、空気のようだと感じずに済んだから。

「―――エル」

振り向くと、バスタオル1枚だけの姿で、
月が己を抱き締めてきた。
―――温かい。
もう、人間ではなくなってしまった彼の身体の奥にまで感じる熱。
それは、器官が感じる物理的なものではなかったが、
エルは確かに感じていた。
愛されている―――。そう、感じられる瞬間。

「・・・温かいね」
「・・・・・・、そんなわけ、ないでしょう・・・」

月の言葉に、エルは脱力した。
死神は、"生きて"いるわけではない。だから、その皮膚の下に赤い血が流れているわけでもなければ、
痛みもない。
ましてや、体温などほとんどないも同じだった。
熱くも冷たくもない、青白いその肌。
けれど、

「そんなことはないよ。」

笑って、抱き締める。それは、初めての夜と変わらず、優しい。
人間でなくなってしまった自分の身体のあまりの変わり様に、伸ばされる手を一度は振り払ったエルだったが、
それを当然のように受け入れてくれたのが、彼だった。
夜神、月。
己をこんな風にした、張本人。
だというのに、彼に対して、憎しみよりも愛しさがこみ上げてくるのは何故だろう。
傍にいたい、と確かに思った。
たとえ、死神としての道を踏み外したとしても。

「・・・ん・・・」

確かめるように、重ねられる唇。
エルの胸の奥がどくりと鳴った。それは、警鐘。死神として遵守すべきルールを、
破るべきではないという理性の声。死神としての本能だ。
けれど、エルはそれをあえて無視して、
月の背に腕を回し、しがみつく。応えるように激しくなる、口内を探る舌。

そう、今更なのだ。
既に、彼は罪を犯してしまった。死神である者の禁忌。人間との深い交わり。
そうしてその瞬間、
"死神・エル"は厳密な意味での死神ではなくなった。
死神界からの永久追放。
限りなかったはずの命の、大幅な短縮。
月が死ねば、自分も死ぬことになる。それは、罪を犯す前からわかっていた。
けれど―――。
彼がいない世界で、長く生き続けることに何の意味があるのだろう?

唇を離され、視線が絡み合った。くすりと笑われる。奥まで澄んだ、漆黒の瞳。

そう、この色だ。
生前、何度も身体を繋げ合っては探した、彼の真実。

手を引かれ、開け放たれた寝室のキングベッドに導かれたエルは、
顔に熱が上るのを感じた。もちろん、実際に頬に紅みが兆したわけではない。
これは、気分の問題だ。
俗な目的のホテルではないから、そういった類の工夫のあるベッドではないが、
高級そうな天蓋のついた寝台に勢いをつけて沈められ、
エルはすぐに乗り上げてくる月を見上げた。
心臓なのか、それとも別の器官なのか、胸の奥が早鐘を打ち始めた。
けれど、これは先ほどの警告とは違う。
これは、次なる行為への少しの不安と、そして大きな期待故だ。
再び唇を重ねられ、目を閉じた。
羽織っていたシルクのローブが、滑らかな指先によって肩から滑り落とされる。
他人の手で肌を晒されるのは、たとえ上半身だけでも恥ずかしいものがある。
何度もされているのだから、
さすがに慣れてもいいのでは、と自分ですら思うのだが、
今もまた、エルはふい、と横に向いてしまった。

「相変わらず、可愛いね」
「っ・・・」

ピンッと指で弾いてやると、エルの胸元に鎮座しているそれが濃い紅色に染まった。
そうして、天を向くように。
勃ちあがったそれに、月は歯を立て、きつく噛んでやった。

「あっ・・・」
「感じる?」

血も通わない肌から受ける刺激など、始めはほとんど感じられなくて、
そんな身体に戸惑いと落胆を覚えたエルだったが、
抱かれれば抱かれる程、敏感だったかつての己の感覚が戻ってくるようだ。
月の強めに加減してくる愛撫と、精神的な刺激も相まって、
エルは背を仰け反らせた。
指先が、痺れたように震えている。

「すごい・・・。今日はもう、こんなだ」

唇で突起を挟むようにして、ねっとりと舌で先端や周囲を濡らしていく。
左手でもう片方のそれを摘み上げながら、
右手をそっと下肢に滑らせると、
熱を持ったように質量を増し、先端からは蜜を零しているエルの雄。
死神に体温などという概念はないというが、
そんなことはない、と月は思う。
現に手のひらに触れるエル自身は、確かに人間に比べれば温度は低い気もしたが、
しっかりと熱を持ち、その欲望を顕わにしているではないか。

「・・・ラ、月くんが、焦らすからでしょう・・・」

恥ずかしそうな表情で、顔を背けてしまうエル。
本当に、"死神"らしくない。それとも、これは元・人間であるが故の反応なのだろうか?
あれほど慣れていた筈のエル―――否、竜崎の身体。
けれど、それは自分が失わせてしまった。
つい数秒前まで熱を持っていた身体が急速に冷え切っていくのを、
月は己の腕で感じた。そう、これは、己の罪。
己の野望のために、愛する者すら手をかけた―――、
人間として有るまじき行い。
きっと、恨まれている。
殺せるものなら、きっとすぐにでも殺されていただろう。
ただ、エルが本気でそれをしないのはきっと、死神にとって憑いている者を殺すのはタブーだからだ。

「・・・っね・・・、もっと、強く・・・っ」
「大胆だな」

恥ずかしそうにしている割に、強請ってくる様子が可笑しくて、
月は声を上げて笑った。怒ったように睨み付けて、それでももっと強くして欲しい、と
無意識に揺れてしまうらしい腰。
だから月は、エルの望む通り絡めた指に力を込めると、
締め付けるようにして挟み上げ、そうして敏感な亀頭の部分を強めに擦ってやった。
びくり、と電流が走ったように身を震わせるのは、
彼が感じている確かな証拠。
月はエルの胸元から顔を上げると、
身体を下にずらし、両腕でエルの脚を抱え上げた。
緊張からか、エルの指先がシーツを掴み、微かに震えている。

「やっ・・・、月君、そこは・・・っっ」

逃げるように腰が浮く。だが、月がそれを許すはずもなく、
捕らえられた状態の格好が更にエルの羞恥と熱を煽った。己の脚の間から見上げてくる月の視線は、
ひどく熱っぽくて、直視できそうにない。

「っ・・・」
「すっごい、濡れてる・・・」

触れてくる舌先。裏筋から舐め上げるようにして割れ目をなぞり、
そうして先端から包み込むようにして口に含む。エルは目を閉じ、唇を噛み締めた。
生温かな口内から生まれる、逃れようのない熱。
砲身を軽く締め付けるようにされながら何度もくびれの部分までをなぞられれば、
否応なしに甘い声が溢れてきてしまう。
何度聞いても、自分のその声は大嫌いだったが、
どう頑張ってみてもそれを抑え続けることはできなかった。
途切れ途切れの切なげな声音に、
月は喉の奥で笑った。
エル自身は嫌でたまらないのかもしれないが、
自分にはずっと聞いていたいほどの甘美な誘惑の音色だ。

「ぁ・・・っ、あ、ライ・・・、っ・・・」
「音をあげるには、少しハヤいんじゃないのか?エル」

こういう場面での我慢強さに欠けるのは、
かつての彼と一緒。はち切れんばかりに腫れ上がった雄は
月の口内で更に大きさを増していて、
男の口に含まれたままでイかされるのをひどく羞恥に感じたエルは
当然手で月を払いのけようと肩に手を突っ張った。
まともに力の入らないエルのそれが、弱々しくも明らかな抵抗を込めて己に触れてくる。

「っ・・・や、離しっ・・・!」
「嫌だね。このままでイけよ。今更、恥ずかしいってこともないだろ?」
「・・・っひど・・・、い、ですね・・・」

怒り半分、呆れ半分の表情も、そのうちに歪む。
喉の奥までしっかりと呑み込んでやり、根元には指を強く絡ませると、
もう耐えられない、とエルの首が振られた。
先ほどのシャワーで髪についた水滴が、まるで汗のように淫らに飛び散る。
愛撫は続けたまま、上目遣いにそれに釘付けになっていると、
不意に、エルの全身がぶるりと震えた。
押さえつけるようにして腰を抱えていた腕に、伝わってくる衝動。
解放を促すように、
月は口内のそれを強く吸ってやった。
当然、この死神がその刺激に耐え得るはずもなく、

「―――っ・・・!!」

血が出るほど噛み締めた唇の隙間から、洩れる声音。
そうして、次の瞬間には、喉の奥に叩き付けられるように放たれる精。
それは、男の欲を今だ口内に収めている者にとってはおそらく息苦しさすら伴うはずのものだったが、
月は嫌そうに顔を歪めるどころか、恍惚とした表情でそれを受け止めた。
舌に感じる味を楽しみながら、ゆっくりと動く喉。
嚥下されている―――。
目元を赤く染めながら、月の動く喉を見つめる。
顔をあげた男の視線が見ていられない。逃れようと首を振るエルを、
月の手が顎を捕らえた。

「―――エル。」
「っ―――・・・」

重ねられた唇から、含みきれない体液が溢れてくる。
それは、二人の唾液と、月の口内に残ったエルの精が混ざり合ったもので、
嫌な味にエルは顔を顰める。
けれど、次々に流し込まれる体液は、到底長く含みきれるはずもなく、
苦しさにエルは月に訴えかけたが、
月はそれを許すことはなかった。
結局、ごくりと、エルもまた体液を飲み下す羽目になっていた。
耳元で囁く声音が、ふっと笑う。
エルはもはや、熱と快楽に浮かされている。

「・・・ね、翼、出してみてよ。」
「っえ・・・」

身体の体勢を変えられて、エルは少し不安げに首を捻って月を見上げた。
背後から横抱きにされ、片手で前を嬲られる。先ほど解放したばかりのそれは、
さすがに力は失っていたが、エルに快楽を伝えるには十分だった。
すぐに力を取り戻す雄。無意識に、吐息が洩れる。

「どう、し・・・」
「好きなんだ。君の・・・」

うっとりと、肩甲骨の辺りを舌でなぞるようにされれば、
ぞくりと背筋を這う感覚とくすぐったさで、その部分が緊張する。
普段、無意識に広げられるはずの翼は、こういうときには自分自身すらどうやっていたのかわからなくなって、
助けを求めるようにエルは月に視線を傾ける。
月はくすり、と笑った。
ぐっ、と握り込められれば、またもや解放を求めて高揚してしまう素直な身体。

「力、抜いて」

十分に扱いてやって、先ほどの硬さと熱を取り戻した楔を置き去りに、
月の両手が彼の胸板を掴む。親指でマッサージをするように円を描くように背筋を押してやれば、

「あっ・・・、は、んっ・・・!」

身を竦ませるエル。一瞬途切れる緊張。痺れるような刺激。
ばさり、と音がして、蝙蝠のような黒い色の翼が広げられた。
美しい。いつだって、月はそう思う。
翼は、いつの時代でも人間の夢だ。故に、劇画などでもよく翼を持つ人間が描かれる。
だが、例外なくそれは滑稽で、
人間が持つものではないのだと主張しているかのよう。
けれど、エルの翼は違った。
小柄な体躯に、その髪の色と同じ濡れたような漆黒の翼がよく似合う。

「っあ・・・、月、くん・・・!」
「逃げるな・・・」

嫌だ、と折角広げた翼を折り畳もうとするエルに、
月はがしりと翼の根元を手で押さえた。ぐっ、と引っ張るくらいに力を込めれば、
やはりそうされると痛むのか、エルの顔が歪む。
けれど、離す気などない月は、
そのまま黒き翼の、付け根の部分に舌を這わせ始めた。
不思議な場所だと思う。
普段は、どうやって仕舞われているのだろう?肉を裂いた部分が、かすかに体液を滲ませている。

「・・・ッア、・・・」
「感じるんだ?」

翼を支える柔軟な骨格の部分を指先で撫でるようにしながら、
付け根にしっかりと舌先を滑り込ませる。びくびくと震えるのは、身体だけではなかった。
身を竦ませるように、折り畳まれる翼。月が手で遮っているから、
尚更思うように羽根を扱えず戸惑うエル。
可愛い、と思う。
このままの状態で、下肢を貫いてやったらどんな風に啼いてくれるだろう?

「い・・・、あ、離しっ・・・、」
「駄目。翼、隠したらお仕置きだよ、エル」
「・・・っ」

言い方は優しいが、月の言葉ひとつひとつにエルは己への拘束力をひしひしと感じる。
結局、自分が彼より優位に立てるはずがないのだ。
生前でもそうだった。
そして、今、死神として、月の命すら己の手に握っている状態でも―――、
本気で、彼の命を利用して彼を脅すなどできやしない。
できるはずがなかった。
己が憑いた人間を殺してはならない、などという、
そんなつまらないルールに拘束されているからではない。
今、彼と共に居られることが、自分にとって奇跡のようなものなのだ。
どうして、自らの手でそれを失うことができよう?

「やっ・・・、夜神、く―――・・・」

狭い場所に、ぐっ、と押し込まれる熱の塊。
裂くような勢いで侵入してくる月の雄に、エルは顔を顰めたが、
しかし抵抗できるはずもない。
それどころか、己の内部は既に歓喜の様相を見せていた。どう繕ったって、隠せない事実。
半端に収めたまま、エルの身体を四つん這いにさせ、
そうして、片腕で翼を抱え直し、もう片方は震えているエルの中心へと伸びる。
もちろん、竜崎は腕で己の身体を支えることなどできず、
枕に顔を埋めてしまった。
あわてて横を向く。その頬に、唇が落とされる。

「んっ・・・、あ、・・・」
「すっごい、もの欲しそうな身体をしているね、エル」
「・・・っい・・・」

羞恥に頭に血が上るよう。だが、気付けばほとんど身動きできない状態で
ベッドに押し付けられている。
もっと強請るように、腰を動かすのが精一杯だった。
当然、耐え切れない、とエルは声を上げた。
逃げ出そうとすると、かえって月は喜んだ。
彼のすべての動きが、月には淫らに見えて仕方がないのだ。

「いいよ・・・エル・・・」
「あっ・・・、そっ・・・、ばか・・・!」

舌で背中をなぞりなから、次第に激しく抽挿を繰り返されれば、
その衝撃に、抑えるそばから洩れてしまう甘い声音。
ぐちゅぐちゅと卑猥な音が死神の耳に届くたぴに、彼自身のそれも熱を噌す。
指先で付け根あたりと羽根を愛撫しなから、
月は背を伸ばしてエルの頬に□付けた。もはや、死神だとは思えない程に人間臭い彼の姿。
こういう時、エルの死神としての能力はほとんど皆無に近い。
逃げ出そうとすれば、本来の彼ならば、ベッドや床をすり抜けてでも逃げられるし、
そもそも己の意思ひとつで月すら触れられなくすることもできるはずだ。
だのに、それをしないのは、
熱に浮かされ、朦朧とした頭ではそういう力をうまく扱えないからなのか、
それとも―――。
もちろん、月はその理由を後者のほうだと思っている。

「・・・ね、もうイっても・・・いい?」
「っ・・・、そんな、コト・・・」

聞かないでくださいよ・・・、と口の中でもぐもぐと呟くエルに、
彼の顎を取り、唇にキス。
それから、今度こそしっかりと両腕で腰を抱えると、
先ほどの比ではないくらいに、ガツガツと彼の内部を貪り始めた。
もはや気力もなく、ただ月に揺らされるままにシーツに皺をつくるエルの身体。
ぎしぎしと音を立てるスプリングも、2人の熱を高める要素の1つだった。
エルは身を竦ませ、必死に快楽の波に耐えていた。
けれど、もう既に、限界はすぐそこだ。

「っあ・・・、んっ、あ、ああっ・・・」
「エル・・・好きだよ・・・」

己の動きに合わせるように腰を揺らすエルは、もう理性などとっくに失っている。
そんな彼の耳に甘い言葉を吹き込んで、月は彼の背をしっかりと抱き締めた。
ぴったりと張り付く背中。前に回した腕にしがみ付くエルの両手。

「・・・んっ・・・あ、わ、私も・・・っ・・・」

生前では考えられなかった言葉も今では、
そう無理して言わせなくとも返ってくる。それが嬉しくて。
心に何かを隠すこともなく、企みも持たず、
ただ純粋に彼が欲しいと、そう、思える瞬間。
本当に貴重で、大切なもの。
無理だとはわかっている。けれど月は、
これが永遠に続くならいいのにと、半ば本気で思っている。

「エル・・・っ」

息があがる。そう、今は欲しいものはすべて、腕の中。
エルの乱れた吐息に、こちらもかなり限界まで追い詰められていたことに気付く。
そして、気付いた瞬間、抑えられないほどの欲望が溢れ出す。
丁度目の前の、白く滑らかな首筋に歯を立てるように口付けて、
力を失ったようにだらりと投げ出された翼に触れて、
そうして、ひときわ強く、月はエルに腰を打ちつけた。熱い内部が、ぐっと収縮する瞬間。

「あっ・・・ライ・・・っ、あ、ああ―――っ・・・!!」
「くっ・・・エル・・・!」

どくどくと、吐き出される精を、月は手の中に受け止めた。
そうして、内部には月の、熱くねっとりとした白濁。雄を押し込めた場所を緩めれば、
溢れてくる欲望の証。
こんな身体でも、月がイッてくれたことに内心安堵しているエルは、
月が出て行く時も名残惜しげに、
目を閉じてそれを感じていた。ああ、満たされていたものが、またお預けになってしまう。

「よかったよ、エル」
「・・・月君」

濡れた髪を指先で梳いてやり、腕の中に収める。
まだ、足りない。飢えた身体は、何度潤してもまた渇いては切望する。

「・・・んっ・・・」
「・・・まだまだ、夜は長いよな」

そう、まだ夜は始まったばかり。
触れるだけのキスが、すぐに深いものに変わる。絡み合う舌は、まだ互いが足りないと互いを求めている証拠。
熱い吐息を吐いて。月は、今度は彼の腰を抱え上げ、己に向き合わせる。
再び抱き合った二人は、再び背筋を這い登る素直な欲望に、
互いの身を任せたのだった。





end.





Update:2006/08/09/WED by BLUE

PAGE TOP