崩壊前夜。〜出張版〜



西暦2008年9月―――。
世界が崩壊する、と噂の12月まで残り3か月を切ったその頃、
グレンと深夜は(ほぼ)同棲していると言っていい状態だった。
いや、正確には、彼ら2人だけではない。
元々ひとつ屋根の下で生活していた時雨や小百合だけではなく、仲間の五士や美十まで、
全員、同じマンションに住んでいた。
勿論、不毛すぎる馴れ合いのためなどではない。
抹殺命令が下った柊真昼を追うため、帝ノ鬼の諜報部から来る情報を待ち、
その都度出撃する必要があるからだ。
だが、残念ながら、この1ヶ月、情報はまるで降りてこない。
たまに『帝ノ鬼』による鬼呪の研究に駆り出されることもあるが、それだけだ。
はっきり言って、暇だった。
鬼呪の安定のため、不毛な馴れ合いが必要なのはわかっているから、
訓練は一応しているが、大体やっているのはゲームばかりだ。
皆で、頭を付き合わせて、朝飯を食べて、昼飯を食べて、夕飯を食べて。
そうしてTVを見て、ゲームをして、ひとしきり馬鹿騒ぎをした後、明日のために眠るのだ。
こうしていると、ただの夏休みの延長のようでもある。
いたって普通の高校1年生の、仲間同士のじゃれ合いのようなものだ。
だが、世界は動いている。
自分たちが関わらないところで、確実に、
破滅の足音は近づいているのだ。
タイムリミットは、あと3か月。
何をしても、しなくても、世界の崩壊は、12月25日にはやってくる。
グレンはふと、思う。
セカイが滅んでしまうなら、―――13歳以上のオトナが皆、死んでしまうなら、
きっと、自分たちも生き残れないかもしれない。
ならば今、この胸の内にある野心は、何の意味があるのだろう?
『帝ノ鬼』も、『帝ノ月』も、<<百夜教>>も、すべてなくなってしまうのなら―――

「グーレン♪どーしたの?そんな怖いカオして」

天井の明かりが翳り、目の前に現れたのは深夜だった。
最近、夜はいつも彼がいる。
五士と美十が帰り、時雨と小百合が帰ると、次に深夜がやってくる。
だが今日は、意外にも彼が来たのは遅く、もう12時も回ろうかという時間だったから、
もうとっくに風呂も入ってしまったし、あとは寝るだけだ。
別に無視して寝てしまっていてもよかったのだが、
なんとなく考え事をしていて、グレンは手元の柊の呪術書を開いたままソファでだらだらしていたのだ。

「別に。少し考え事をしてただけだ」
「そんなに眉間に皺寄せて?老けるよ〜?」

深夜のくだらない発言に更に顔を顰める。
こいつが最近、自分をからかうことを至上の喜びとしているのはわかっている。
隙あらばネタの粗探しをしているのだから、もう正直付き合ってられない。
というより面倒臭い。
深夜は手元の呪術書を取り上げると、当然のようにソファの背にだらしなく凭れかかっているグレンを跨ぐようにして
乗り上げてくる。
既に窮屈そうに下肢の布地を押し上げている彼のその部分をちらりと見やり、
グレンはやれやれと溜息をついてしまった。
どうせ、彼がここに来た目的なんてわかり切っている。
第一、ここ最近は毎日というほど身体を繋げていたから、何か特別な理由でもない限りは
この流れが普通になってしまっていた。

「まーた呪術研究?そんなの後でやればいいじゃん」
「後ってなんだよ。お前に付き合ってたら朝になるだろーが」
「そこ、僕のせいにする?グレンが朝まで寝かせてくれないからでしょー?」

はは、と楽しげに笑う男の背後に手を伸ばし、頭を引き寄せる。
グレンはそのまま、嬉々として自分を覗き込む深夜の唇に己のそれを重ねた。
慣れた感触。どちらからともなく舌が絡められ、体液を共有するようにして口内の感触を愉しむ。
何度も角度を変え、息を奪うようにして深く貪れば、腕の中の存在が快楽にぶるりと震える。

自分も、おそらく彼もだろうが、今までの人生で、ここまで欲望や快楽に身を委ねたことなどなかった。
自分たちの置かれた環境は、決して生易しいものではなかったし、
快楽や欲望は堕落に繋がり、常により高みを目指すためには無駄な感情だとすら教えられてきた。
だから本当は、こんな乱れた関係になるとは、彼だって思わなかったはずだ。
軽く唇を離して、そうして視線を絡め合う。
頬は既に上気していて、完全にこの先を期待している彼の顔を見つめながら、グレンは目を細めた。
どうしてこれほどまで欲望を抑え切れなくなってしまったかといえば、

「・・・やっぱり、鬼のせいかな?」
「・・・・・・」

奇しくも、深夜も同じことを考えていたらしい。
彼もまた、欲望を露わにする己の身体を持て余しているのだろう、すでに熱い息を吐いている。
グレンが男の下肢を布越しから触れるだけで、鼻に掛かったような声音を漏らす。
確かに、鬼を受け入れたことで、己の中の欲望について向き合うことになったのは事実だ。
人間として誰もが持つ原初の欲望から、今までの自分の生きる糧となっていた強い野心まで。
その全てに翻弄され、暴走してしまったあの記憶は今となっては痛い思い出だ。
だが今は、鬼呪の研究が進んでいて、
自分の感情が、鬼に振り回されることはほとんどない。
確かにあの鬼呪の刀を持てば、欲望を刺激されるのを感じる。己の抑制が効かなくなる感覚を覚えるが、
それでもあの時に比べれば、はるかにマシだ。
だから今、刀も持っていないこの状況で、欲望が暴走することはないはずだった。
そしてそれは、彼もまた同じはずで。

「・・・お前が単純に、淫乱だっただけだろ」
「ひどーい。僕をこんな風にしたの、どこの誰だっけ」
「覚えがないな」
「はは」

そんなはずないでしょ、と深夜は笑う。その姿は、無邪気そうに見えて、妙な色気が漂っている。
グレンは目を細めた。深夜はスウェットの上下を着ていて、素肌を晒させるのは簡単だった。
トレーナーの裾から手を差し入れて、滑らかな肌を辿る。彼の小さな胸の飾りは既にツンと勃っていて、
摘むようにして刺激を与えてやれば、喉を仰け反らせて快楽に身を委ねてくる。
上半身の敏感な肌にもう少し大胆に触れたいと思い、彼のトレーナーを脱がせようとして、

「っい、いいから、はやくっ・・・」

しかし手首を掴んで止められ、そうして深夜は己の下肢に触れさせるようにしてグレンの手を導いてきた。
多少気分が削がれそうになるが、それでも深夜のそこはもう、
先ほどよりも質量を増し、布越しからもはっきりと見て取れるほどだ。
布地の上からグレンの掌がそこを包み込むようにして揉みしだくと、スウェットの前が濡れたように染みている。
明らかな先走りの溢れる様に、グレンは笑った。求められ、隙間から直接下肢に触れる。焦らすように、周囲を撫でる様にしながら、
下肢を脱がせていく。
深夜は恥ずかしげに身を捩りながらも、それでも下肢に絡まる邪魔な布地を自ら蹴り落として、
そうしてあからさまに勃ち上がっている己自身を自ら握り締めて、そうして見せ付けるように笑みを浮かべる。
その姿は、中性的なその顔立ちも相まって、ひどく妖艶だった。
熱っぽい彼の瞳は、普段より濃い紫色をしていて、そして挑発するように自分を見下ろしてくる。
自らを慰めるように砲身を擦る彼の淫らさにごくりと喉を鳴らして、

「は、あっ・・・ね、グレン・・・欲しいよ」
「・・・ち、」

男の、張りつめた筋肉に覆われた尻を抱えて、下肢の奥に隠された部分を外気に晒す。
そこは既にひくついていて、突き立てるように触れると早く欲しい、とばかりにぎゅ、と指を締め付けるように収縮を繰り返す。
感触を確かめるように内部に侵入すると、深夜は鼻にかかったような甘い声音を響かせる。
もどかしい感触に無意識に腰を揺らしながらも、
深夜はグレンの来ていた柄モノのシャツのボタンを外し、その肌を晒していた。
両手で彼の胸に手を付き、ソファの背に寄り掛かっていたグレンを押し倒すようにして乗り上げる。
彼は、今日は妙に性急だった。別に時間が押しているわけでもないのに、自らグレンの雄を解放させ、掌に包み込む。
こちらもまた、深夜の乱れ切った姿に欲望を刺激されないはずもなく、
取り繕えない程度には熱を持っていて。
彼の掌で二、三度扱かれるだけで、先走りが深夜の指先を濡らす。
ぞくぞくとした快楽が背筋を走る。唇を噛み締めて、下肢を襲う射精感に耐える。
内部の熱い感触を思い出して、こちらも理性を保てなくなりそうだ。
深夜の掌がグレンの雄を支え、そうして己の後孔に宛がった。
体重を掛けて、深夜はグレンの鉄串のようなそれを受け入れていく。

「っう・・・―――く、はぁっ・・・」
「―――相変わらず、狭いな」
「っ・・・うるさ、いっ」

グレンは嗤うが、正直な話、狭いというより、キツすぎた。
いくら毎日身体を繋げているからといって、慣らさないままで男のモノを受け入れられるほど
深夜の身体は未だ拓かれてはいなかった。その分、
眩暈がするほどの内部の熱にグレンすら翻弄されそうになるのだが。
自ら受け入れたとはいえ、苦痛の色を隠せないでいる深夜の前を慰めるように掌で刺激を与え、
快楽に摩り替える。甘い嬌声は次第に大きさを増し、それに合わせて
彼の腰の動きも激しくなる。小刻みな動きから、いつの間にか大胆な動きに変わる。
繋がっている箇所が、ぐぷぐぷと水の弾けるような音を立て始める。その耳を犯すような
卑猥な音にまで翻弄され、そろそろ深夜も、己の身体を支えていられなくなる。
倒れ込みそうになるくらい、背を折り曲げて喘ぐ深夜の背を、グレンは引き寄せるように抱き締めた。
上半身の衣服を未だに身に着けたままの男の背に腕を回し、そうして傍にある唇を貪ろうとして―――
その時、胸に重い衝撃が走った。

「・・・っ冷て・・・なんだ・・・?」
「っあ・・・やば、」

素裸の胸元に、いきなり冷たい感触が触れ、グレンは顔を顰めた。
しかも、それは異常に固い。
男と自分の胸の間にあるそれを確認しようとして、
その物体が自分の胸から滑り落ちる。
勢いで、そのままソファの下、つまり絨毯の上にゴトリと音を立てて落ちたそれは・・・

「―――・・・」

・・・スマホだった。
しかも、その画面に映っているのは―――・・・

「・・・お前・・・」
「ちょ、ヒトのケータイ見るなよ〜」

録画中だった!
しかも、撮影時間は既に30分を裕に超えている。
明らかに、今の落下の衝撃でセットされたわけではないことは明白で―――
グレンは正直、呆れ果てて言葉も出なかった。
何をくだらないことを考えているんだ、と心底呆れた表情で深夜を見遣ると、

「いや、まぁほら、思い出を残したい?っていうの?」

下肢を繋げたまま、翻弄されまくっていた熱も忘れて肩を竦める深夜を無言で睨み付ける。
本当にこいつは馬鹿だ。
一気に熱の冷めた頭の中で、彼の腑に落ちない行動の意味をいまさら理解する。
わざわざ邪魔なスウェットを着たままだとか、胸ポケットにそういえば何か入れたままだったとか、
その時に大して疑問に思わなかったこと自体情けない。
性急に自分の上に乗り上げてきた時も、ずっと録画していたに違いない、
まったく、本当にくだらない。
第一、こんな情事の証拠なんか残して、誰かに押収されたらとんだ恥晒しだ。
ましてや、ほぼ深夜視点の映像だから、映っているのはおそらく自分だけなのだ。弱みでも握って、
自分を強請って愉しむつもりだったのだろうか。まったくもって、馬鹿げた話だった。

「・・・・・・」
「はは・・・冗談だって〜。怒るなよ〜」

深夜の言葉を無視して、腕を伸ばし、彼のケータイを手に取る。
そのまま、無言で身を起こし、ぐい、と体勢を変えて強引に彼の身体を押し倒す。
繋がったまま内部を抉るように体勢を入れ替えられ、深夜は悲鳴のような嬌声を上げる。
太腿の裏を押し上げ、そのまま深夜の胸に膝がつくほどまで身体を折り曲げる。
結合部が深夜の目の前に晒されてしまい、冷めかけた熱が一気にぶり返すのを、深夜は自覚した。
と、繋がった部分からずるりと男の楔を抜かれて、下肢が切なそうに収縮を繰り返す。
深夜は既に涙目で、氷のような冷たい視線で見下ろす男を見上げた。

「・・・っ・・・グレ・・・」
「なんだよ、今度はお前の番だろ。―――ほら、しっかり啼けよ」
「っあ、や、あああっ・・・―――!!」

グレンの左手に、先程のケータイが握られている。しかも、明らかにそのレンズは
深夜の結合部を映していて、一気に羞恥心がこみ上げる。
グレンの雄が、今度こそ己の下肢を貫いていく。赤黒く怒張したそれを、こちらも充血し、ピンク色に染まった肉襞がじわじわと受け入れていく様子を撮影されてしまい、深夜は唇を噛み締めた。
男は剣呑な表情のまま最奥まで己を突き入れてしまうと、
今度はぐちゅぐちゅと音を立てながら、腰を引いては彼の弱い部分を擦るように犯していく。
そのたびに声が漏れてしまう。ケータイのカメラは、結合部と、足を大きく開き、
固く張りつめたまま先走りに濡れる彼の雄と、そしてその淫らに歪んだ泣き濡れた表情すべてを捕えていた。
その様子はひどく卑猥で、グレンは思わずごくりと唾を呑み込んでしまう。
直接見ているその姿はいつものことだが、
またカメラ越しの彼の姿は何か背徳的な気がした。
無修正のエロ動画を見ているような、そんな気分にさせられる。
ズームアップして直接的なその部分を写し、それからひくひくと開閉を繰り返す鈴口、
自分に懇願するような濡れた目線と、はぁはぁと暑い息を繰り返す彼の、時折見える舌の濡れた朱さが
ひどく欲望を煽る。先程萎える前に興奮していた以上に、自分が興奮しているのを自覚する。
そのまま無言でただただ彼の中を貪っていると、
深夜はいつもとは違う、少し弱気な顔で、

「悪かったって・・・だから、もう、やめ・・・っ」

そんなことを、言ってくる。
だが、もう、今更謝られても、遅かった。

「なんだよ・・・思い出に残すんだろ?折角だから、このままイけよ」
「っや・・・変態かよ・・・っ、」
「お前がだろ?」

彼の目の端から、後から後から流れ出す濡れたそれに、グレンはにやりと目を細める。
カメラを構えたまま、それでもグレンは、繋がった箇所から感じる快楽に唇を噛み締めた。
ぎゅ、と快楽と羞恥に目をきつく瞑る彼の瞳に口づけて、
そうしてラストスパートをかける。
何度も最奥を貫いてやれば、視界の先で深夜がびくびくと痙攣し、そうしてついに己の胸や顔に
白濁した精を解き放っていた。
ひどく卑猥な光景。
白い肌に、べっとりと精を放たれて、彼はもう放心状態。
軽く口づけながら、自分もまた、彼の奥に欲望を余すことなく吐き出す。
愛おしげに舌を絡めてやれば、気だるげに、しかし自分に合わせるように体液を交し合う。
未だ繋がったままの下肢がまた熱をぶり返していることに、
グレンは自嘲するように笑みを浮かべたのだった。










「・・・ったく、本当にくだらないな。」
「んもぅ、わかってるって。ただの冗談だろ?」

グレンの自室の、ベッドの上。
ぐったりと力を失った身体を男の腕に抱えられながら、
深夜は唇を尖らせた。
男の手には、例のスマートフォン。しかも先程まで1時間以上録画していたそれを
いやに綿密にチェックしている彼に、深夜は居たたまれない気分になる。
熱が去ってみれば、俗にいう賢者タイムと言うヤツである。
自分がどれだけ馬鹿みたいなことを考えグレンに迫ったのか思い出すだけで、穴があったら入りたいくらいだ。
だがそれを認めるのは、少し悔しい。

「・・・けど、グレンもさぁ、カメラ構えながら、めっちゃ興奮してたじゃんか。
 お前だって、結局こういうのが好・・・痛って!」

ゴン、と音がして、深夜は頭を抱えてしまう。グレンが思い切り殴ったせいで、
きっと骨が凹んだ。賭けてもいい。

「それ以上言ったら、殺すぞ」
「・・・はは・・・。君って本当に、」

素直じゃないなぁ、と言いそうになるのを、肩を竦めて呑み込む。
これ以上彼の機嫌を損ねてしまっては、さすがに今の自分の命は危ういだろう。
深夜は彼をからかう代わりに、彼の胸に顔を埋めた。
心地よい怠さと、彼の熱を感じる。
このまま眠ってしまいたい気持ちに駆られるが、さすがにまだ、全員にはバレていなかったから、
一応夜が明けぬうちに戻らなければならないだろう。
だが、それももう、面倒くさい。
目の前で、グレンの指が動き、あの淫らな動画は簡単に削除されてしまった。
少しだけ勿体ない気もするが、
確かに、万一これを押収されてしまったら、大変な不名誉を被ることになるだろう。
やはり、思い出は互いの記憶の中にだけ残るからこそ、価値があるのだ。

「そろそろ戻れよ。もうすぐ朝になるだろ」
「ん〜・・・もう少し」

理性が、もう戻らなければ、と警鐘を慣らしている。
それでなくても、グレンの朝は早いのだ。それに合わせるように、すぐに従者2人も顔を出す。
見つかれば、大変な修羅場になるであろうことは明白だった。
だからグレンも早く追い出そうとしているのだが、
それでも。
今はまだ、欲望のほうが勝っていた。
少しでも長く、この気だるい空気に浸っていたいのだと、
深夜の全身が訴えている。

本当に、どうしてこれほどまで欲望を抑え切れなくなってしまったのだろう、と思う。
彼も、自分も。
まったく理性的じゃない、そしてそれは、いずれ必ず、身を滅ぼすだろう。
感情に振り回され、出さなくてもいい犠牲を出し、そうしてきっといつか、後悔する。

「・・・後悔なんて、しないよ」

腕の中の男を、見下ろす。
また、自分と同じことを考えていたのだろうか。
目を細めて、少しだけ彼を抱きしめる腕に力を込める。
確かに、あと数か月で世界が崩壊するなら。
13歳以上の皆が死に絶え、自分たちもそれに巻き込まれるなら。
野心のため、と言い聞かせ、今まで押さえつけてきた欲望に、なんの意味があるのだろうか。
未来は、既に見えない。
何の確証も、保証もできない世界になるだろう。
“現在”(いま)、目の前にあるものが、自分の全てかもしれない。
ならば、わざわざ今、自分の素直な感情に目を背ける必要もないのかもしれないとは思う。
だが、それならば、“現在”の自分の、素直な感情とは何なのだろう?

「どうせ世界は終わるんだ。そしたら僕たちだって死ぬかもしれない。
 そう思ったらさ、やっぱり残りの人生、楽しまないともったいないじゃない?」
「―――それで、俺とセックス三昧か?」
「そうそう、死ぬ前に、四十八手くらい制覇しときたいなぁって」

―――こいつは馬鹿だ。
本当に馬鹿みたいに、恥ずかしげもなく純粋な感情を真っ直ぐにぶつけてくる男に、溜息をつく。
タイムリミットは、残り3か月。
ゆっくりと、だが確実に終わりに近づいていく世界に想いを馳せるのをやめ、
グレンは己の意志で傍にいることを許した存在に
再び唇を重ねたのだった。





end.




2015/06/14 終わりのセラフオンリーにて無料本として配布しました。
皆に配れるよう健全ストーリーにするはずだったのに、どこで間違った、俺・・・
いや、きっと最初から間違っていたんです。
ハメ撮りをテーマに書こう!と思った時点で!!!!!






Update:2015/06/14/SUN by BLUE

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