欲望の果て  ※グレン吸血鬼設定



―――血だ。
血が欲しくて堪らない。

グレンは、自身の直下の部隊、『月鬼ノ組』の部下たちの訓練に付き合いながら、
至って冷静な顔の下、そんなことを考えていた。
喉が、ひりつくように痛い。
この飢え≠ヘ、いつも周期的にやってきた。自分の中の、人間的な部分と、吸血鬼の部分が鬩ぎ合い、
吸血鬼としての『血』への渇望が勝ってしまうその瞬間。
本気で飢えが一線を超えてしまうと、人間の理性や感情など、まったく意志を為さなくなるのを、グレンは知っている。
だから、自分が『人間である自身』にしがみ付くのであれば、薬による飢えのコントロールが不可欠だった。
だが、その薬の効果も、最近特に短くなっている気がする。
グレンは唇を噛み締め、彼らの喉元に無意識に視線が行ってしまう自分を戒めた。
半分人間のままの自分でも、ここまで辛いのだ。
吸血鬼たちがどれほど血に飢え、必死になって人間を囲い込むのか、今なら分かる気もする。

無言で背を向け、演習場を出る。
もう、ほとんど理性は限界。眩暈すらする。
早く血が飲みたくて、からからに渇いた喉を掌で抑える。
足早に地下に向かい、自分の管轄の研究所へ足を踏み入れた。
研究所の、自分の部下たちが声をかけるのもほとんど耳に入らない。
いや、その存在自体を無視していなければ、今にも首筋に噛み付いてしまいそうだ。

「ぐ、グレン中佐!?」
「・・・開けろ」
「え・・・は、はいっ・・・」

地下の奥の奥、捕えた吸血鬼たちを収容している場所。
グレンはそこに足を運ぶと、最後の理性を振り絞って扉の管理を任せている部下に指示を出した。
当分近寄るな、と言い含めて部下たちを散らせると、扉を閉めるのもそこそこに、奥へと踏み入れる。
呻き声と狂ったような悲鳴、ガチャガチャと鉄格子を揺らす音、金属のこすれる音。
だが、そうやって暴れたり、逃れようとしている吸血鬼たちならば、まだ研究材料として価値があるのだが。
もっと奥に行けば、度重なる拷問や鬼呪による実験のせいで、飢えと絶望に打ちひしがれ、ほとんど精気を失った吸血鬼達が居る。
グレンは腰にぶら下げている鍵を使い、その中の、適当な吸血鬼の檻を開放した。

「う・・・だ、誰だ・・・?」

壁の高い位置に両腕を拘束されたまま、ほとんど死体のように腐りかけた吸血鬼が、そこにいた。
腕も半分千切れかけていて、壊死の進んだ身体は腐臭すらする。
このまま肉体が腐り堕ちれば、きっと鬼になるのだろう。魂だけの鬼を拘束する呪術も、手首に絡みつく鎖には施されている。
いつ、飢えて死んでもいいように、用意周到な拘束具。

「人間・・・か?血を・・・分け、てくれ・・・」

目の前の存在がはっきりとわからないのは、その視界が遮られているからだ。
瞼を縫い付けられ、更に黒いサラシで完全に視界を奪われた吸血鬼は、それでも己の本能の飢えから
人間の気配を悟って震える腕を伸ばす。
グレンはそれを見て、思わず、ははっ、と欲望に満ちた笑いを零した。
本当は、こんな吸血鬼の血など吸いたくはない。
吸血鬼が、なぜ人間の血ばかり吸って吸血鬼同士の血を吸おうとしないのか不思議だったが、自分でその呪いを受け入れてみてわかった。
頭の中で、誰かが言うのだ。
“同胞の血を吸うな”と。
それは禁忌だと。いつか身を滅ぼす、鬼となり、ひどく苦しい永劫の時を彷徨うことになる、と
本能が叫ぶのだ。だからきっと、
同胞の血を好んで吸うのは、どこか、普通じゃない。
まともな吸血鬼じゃなかった。
それでもグレンは、
今はまだ、人間の血を呑むわけにはいかなかったのだ。
もう、流石に飢えに耐えきれなくなり、グレンはその吸血鬼の首を掴み、壁に押し付けるようにして持ち上げた。

「っぐ・・・ぁ、お前・・・その力・・・っ・・・」

片腕だけの力で引き絞る。
吸血鬼といえど、相手は瀕死。グレンは目を細める。
視界を奪っているのは、自分の姿を見られるわけにはいかないからだ。
万一名前を知られて、叫ばれたり、それが帝鬼軍の人間の耳に入るわけにはいかない。
まだ自分は、目的のために一瀬中佐でなければならなかったから。
グレンは耐えきれず、その白い首筋に、吸血鬼である証の鋭い牙を突き立てた。

「っ!?・・・何故だ・・・何故、オレが血を吸われ・・・」

混乱する吸血鬼の言葉に、グレンは嗤う。
かつては、捕食する側だったろうに。
人間を好き放題漁っては血を吸っていた時代もあったろうに、今じゃこの有り様だ。
人間でもない、吸血鬼にだって成り損なっている自分に餌にされている。
ひと月に一度の血の味に、グレンは喉を鳴らして溢れ出る血潮を飲み干した。
弱弱しい抵抗が、完全に大人しくなる。
それでも、欲望は止まらない。血の味を舌に感じて、欲望は更に暴走する。
かれの身体中の血を一滴の残らず吸い尽くせば、
もうほとんど原型を留めていなかった吸血鬼の身体が、ざらりと砂のように崩壊していく。
掴んでいた手を離せば、もう跡形もない。
ここに生きていた証も。
存在自体が消えてしまったかのように、何もない。
あるのは、錆びた血の匂いと、死体がそこにあるような腐敗臭だけ。

「・・・・・・くそ、」

グレンは舌打ちをして、口の端に残った血を舐め取った。
欲望を満たすと、次に来るのは人間としての理性と後悔、そして更なる血への渇望。
こんな、死にかけの血では足りない。
もっと、もっと血が欲しい。吸血鬼の・・・いや、人間の血が。

その時、背後でガタリ、と音がした。
グレンははっとして、その真っ赤に血走ったままの瞳で背後を見遣る。
黒い軍服、帝鬼軍の紋章、それは明らかに人間だ。
見られた―――そう思うと同時に、人間のほうの理性が告げる。
殺せ、見た奴は殺せ。
床を蹴り、一瞬にして間合いを詰める。血を吸った直後の身体能力は、皮肉なことに、鬼呪の比ではない。
明らかに、吸血鬼のそれ。
いくら強化された人間でも、逃れられる者なんてそうはいない。
実際、彼の背後に立っていた彼も、グレンの掌に首を掴まれ、そうして勢いよく背後の壁に押し付けられた。
どん、と音が響き、石造りの壁が壊れ、円形にへこむ。
そうして、押し付けた人間を殺そうと手刀を引いたところで―――、
気付いた。
銀色の、絹糸のような滑らかな髪。
女のような、流れるような目鼻立ち。
その整った顔が、皮肉げに歪む。こんな状況でも、彼のうざったいカオは尚も健在だ。
その表情を目にして、グレンは鼻白む。

「っ・・・はは・・・グレン、馬鹿力すぎ。」
「・・・・・・深夜、」

グレンの理性が一気に戻った。
掌が震える。深夜の首を掴んでいた掌が痛い。焼ける様に。
なぜなら彼は、グレンにとって、一番手にかけたくない人間の一人だったから。
慌てて手を離し、そうして彼を殺そうとした腕を抑える。
グレンは瞳を閉じ、なんとか人間性を取り戻した。
元の、アメジストの様な透き通る瞳の色。茫洋でぶっきらぼうなくせに、部下思いの皆が慕う一瀬中佐の顔。

「少しは、落ち着いた?」
「・・・ああ。」
「はい、薬。持ってきた。そんな牙晒してちゃ、出るに出られないでしょ」

指摘されて、初めて気付く。
理性を取り戻した所で、己の吸血鬼としての容姿が元に戻るわけではない。
今だに血の味が残る口内に触れ、己の牙に触れる。
まったく、目立つ容姿だ。
グレンは深夜からカプセル状のそれを受け取ると、そのまま飲み下した。だがそれでも、
効果が表れるには時間が必要だ。己の中の葛藤に疲弊したのか、グレンはそのまま深夜に凭れかかるようにして壁に身を預ける。
深夜は無言で彼の身体を抱き締めた。
こういう時、深夜は何も声をかけることができない。
いつもの冗談めいた言葉を投げかけることもできたが、そんな空気ではなかった。
彼が苦しんでいる葛藤が、自分のように伝わってきて、痛い程。
吸血鬼が血を耐えるのは、相当、生半可な精神力では持たないのだとわかる。
と、グレンの唇が、自分の首筋に触れるのがわかり、深夜は焦ったように身を捩った。

「・・・僕の血が・・・吸いたいの?」
「吸いたい」

間髪入れず、そう告げられて、深夜はため息をつく。
こんな苦しげなグレンを見ていると、深夜はいつだって、飲ませてやりたいと、そう思うのに。
彼さえそれでいいのなら、自分の身くらい彼の為に差し出すことが出来た。
きっと、彼が自分の血を吸ってくれる瞬間は、ひどく気持ちいいだろう、とすら思える。
だが、それではだめだ。
その欲望に負けてしまっては、彼は本当に人間ではなくなる。
人間の血は、吸血鬼の肉体の刻を止めてしまう。
だがそれでは、駄目なのだ。
今は、まだ。
深夜は首を振って、彼の唇から逃れた。

「・・・だめ、だよ、グレン。まだ、人間でいなきゃ」
「・・・・・・」

それでも、グレンの視線は動かない。
薄暗いその場所で、白く浮かぶ柔らかな首筋に、喰い付きたくてたまらないと思う。
この男の、この細い首につぷりと牙を立てて、溢れる鮮血を飲み干したら、
どれほどの快楽が身体の内に広がるか、わかる。
それは明らかだった。
先程の吸血鬼の血とか比べようもないくらい、美味なはずだった。
よく、チームとして彼と組むことがあるが、
彼が怪我を負ったときの、あの血の匂いといったら。
他の誰よりも、芳しい香りを放っていると思う。
そんな時、いつだってグレンは、理性を試されているような気さえするのだ。
そして、今も。

「・・・グレン」
「わかってるよ」

1つ溜息をついて、視線を逸らす。
代わりにグレンは、その滑らかな首筋を指先で辿りながら、耳の裏側に口づけた。
耳の付け根を下から上まで丁寧に舐め、そうして唾液で濡らす。
食むようにして耳殻を口に含み、カタチに沿って舌を這わせる。深夜は堪えるように、ぎゅ、と身体を竦ませた。
身体が、疼く。
グレンが、血の渇きを紛らわせるために自分に求めるのは、性行為。
本当の吸血鬼ならば、血にしか欲望はない。血を吸うことを至上命題としているし、
逆に、それ以外は興味すらなかった。
だが、彼は、辛うじてまだ、人間としての意識が残っていたから、
血への渇望をどうにか、人間としての一番強い欲望で誤魔化すことができた。
グレンの長い舌が、耳の中に入り込む。
ぐちゅぐちゅと音がして、脳内まで犯される様な、そんな陶酔感。

「・・・こんなとこで、ヤるの・・・?」
「薬が効くまで、付き合え」
「っ・・・仕方ないなぁ」

そう言われては、深夜も何も言えなくなる。
彼が人間としての理性を取り戻し、他の部下たちの前でいつもの姿を晒せるのであれば、
自分はどんなことだってするだろう。
もう、9年も前になるか。
彼について、彼の野心を叶えるために彼を支えると誓ったのは。
そして、その過程で、彼は自分の意志で、自ら吸血鬼になることを選んだ。
力を手に入れるために。
常に頭上に君臨する、巨大な組織に対抗するために。
彼が最善と選んだその道を、深夜はあの時否定しなかった。
だが、痛々しげに笑う彼を、無言で抱きしめたのを覚えている。
常に、人柱は自分自身。
彼の為に命を差し出す人間なんて腐るほどいるだろうに、
彼は自分自身以外に重荷を課すことはなかった。
そして、そんな彼の決意を聞くたびに、深夜は、
彼をそこまで追い込む闇から彼を救えないことに、絶望するのだ。

「グレン・・・いいよ。僕をぜんぶ、食べて?」

手を伸ばして、誘う。
そうやって身体を差し出すことで、彼が本気で欲望を抑え切れなくなり、
己の肌に牙を立てられてしまっては、元も子もないのだが。
それでも、深夜はグレンを信じていた。
グレンの理性を。
グレンの人間性を。
吸血鬼になってなお、人間味を失わなかった彼を。
愛していた。

「んんっ・・・っ、あ、」

唇を触れ合わせ、すぐに口内を開かされる。深夜もまた、負けじと舌を彼のそれに絡める。
先程よりは少し丸みを帯びているが、深夜は己の舌を使って、
グレンの上あごの両端にある、八重歯のような牙をなぞっていった。
興奮する。
彼がこの牙を己の肌に突き立てたいのだと思うと、不謹慎にも興奮する。
何度も角度を変えて、体液を共有する。
そうして、どちらからともなく、軍服の前を肌蹴させ、グレンの手のひらが深夜の胸元の肌をなぞった。
吸血鬼の姿の時の彼は、指の爪先も、気持ち尖っているように思う。
このまま指で引き裂かれれば、簡単に血が溢れるだろう。
今のグレンでは、深夜の血を目にして、堪えられる保証などどこにもなかった。
爪先で肌に触れられて、無意識に深夜は恐怖する。
だがグレンはひどく慎重に、己の指を這わせているようだった。そのもどかしいような触れ方にすら、
深夜はもどかしいと身を捩ってしまう。
もう、彼も既に限界。
深夜のほうがよっぽど、人間臭い欲望を持っている。
好きな人に触れられたい。抱き合いたい。キスしたい。繋がりたい。
深く深く、己の欲のままに身体を貫かれて、あの満たされたような幸福感を味わいたいと、
本気でそう思う。
だから、本当は。
こんなに焦らされるのは、苦手だった。
親指で、優しく胸元の突起を弄られ、片方は唇で挟むようにして刺激される。
深夜の下肢は、もう完全に勃起していた。
軍服ごしからでも、それがはっきりとわかる位。
グレンが顔を上げて、そこを見つめながら、軍服を纏ったままの足を拡げさせて、
そうしてくっきりと形のわかるくらいにテントを張っているそこを、掌でぐい、と持ち上げる。
必死に声を噛み締めると、グレンははは、と笑った。
その表情は、先程までの血に飢えたような切羽詰まった表情というよりは、
少し余裕のある、人間らしい欲望に満ちた顔で。
深夜も一緒に、笑った。少し、羞恥にはにかんで見えたかもしれないけれど。
それでも、深夜は嬉しかった。

「・・・もう、こんなにしてんのか?深夜」
「君の、せいだろ」

甘えるように、媚びるように、彼の頬に手を伸ばす。
艶やかな黒髪に指を差し入れれば、グレンは深夜の求めに応じるように、
さらに両足の肘を開かせ、そうして中心に顔を埋めた。
恥ずかしさに、無意識に両足の内股が震える。
それでも、更に足の付け根の部分に手を這わせ、背後に頭を押し付けるようにして、ぐい、と体勢を傾ける。
そのまま、グレンの歯が深夜の軍服の前のジッパーを開かせた。
解放された深夜の雄は、既にはちきれんばかりに天を向いている。
この薄暗い中でも、彼の先端からは、先走りが溢れていることがわかるほど、
濡れて光っているようだった。
砲身の筋に沿って舌を這わせれば、いい加減、深夜は取り繕うのもつらい。

「んっ・・・んん、グレ・・・やめ、」
「なんで?お前、好きだろ、フェラ」

確かに好きだが、それは自分がするほうだからで、される側ではないのがほとんど。
フェラはいい。相手の感じている様子が手に取るようにわかるし、
自分も欲しいものが与えられた気さえする。
自分の努力次第で、相手にピンからキリまで気持ちよくさせてあげられることも、醍醐味の1つだ。
だが、グレンにされるのは、なぜか恥かしい。
軍服を脱がされないまま、砲身だけはみ出すようにした格好は、正直恥ずかしかった。
それでも、グレンの舌先で深夜の雄の亀頭を唇で含むようにして何度も舐めまわされてしまえば、
もう、限界はすぐそこ。
深夜は荒い息を吐きながら、首を振った。

「グレン・・・でちゃうよ、もう。。。」
「飲ませろよ」
「っはぁ?」
「血がオアズケなんだろ?なら、代わりにこれくらい、飲ませろ」
「・・・・・・っ」

なんという、言い草。
それは明らかに人間の、意地の悪い男の発言で、
深夜は呆れると同時に、ひどく興奮する。
彼の表情は、血に飢えたそれではない。それがとても嬉しいと思う。

「お預け、って、僕が君を我慢させてるみたいに言うなよ」
「はは」

グレンは笑って、ゆっくりと熱い舌を絡め、口内に受け入れた。
熱い内部の感触が、酷く気持ちよくて、すぐにでも出てしまいそうだ。
唇を噛み締め、我慢する。簡単に脱落してしまうのは、とても恥ずかしかったから。
頭を揺らし、口内で擦られたかと思えば、舌先で鈴口をなぞられ、尿道口を抉るように何度もそこを舐められる。
脳天に直接響くような、鋭い快感。深夜は息を呑む。
先走りが止まらないそこを、グレンは強く吸い上げた。その感触が、どうしようもなく気持ちよくて、
深夜はここがどこかも忘れて、嬌声を上げてしまう。

「っあ―――っ・・・や、あ、あっ・・・」

断続的に漏れる白濁を、グレンは嬉々としてそれを呑み込んだ。
舌先で味わうように、口の端に溢れたそれも指で口内に押し込み、そうして、残った精液も一滴残らず吸い込むようにキスを続ける。
瞼を閉じた彼の長い睫が、ひどく官能的だった。

「美味い」
「・・・っもう・・・満足した?」
「いや、まだだ」

手の甲で口の端を拭き、グレンは身を起こした。
深夜はぐったりと壁に凭れている。そんな彼を抱き起こし、そうして半ば無理矢理身体をひっくり返す。
彼の目的は分かっていた。もちろん、自分だって1度くらいじゃ終われない。
下肢が疼いて仕方がなかった。早く欲しいとすら思うが、
それを口に出すのは気が引けた。
だから深夜は、ひんやりした壁に手をついて、頬をぺたりと張り付け、
そうして、膝を立てて四つん這いになる。
獣のような恰好で繋がるのは、グレンの顔が見えないからあまり好きではないのだが、
それでも繋がった時の深い部分を抉られる感触は一番だと思っている。
ひどく暑かった。先程一度吐き出したせいで、汗が噴き出し、厚手の軍服が苦しい。
それでも、こんなところで全裸になるわけにもいかないし、
そもそもそんな余裕はなかった。
今もグレンは、背後から腕を伸ばし、深夜のベルトを緩め、ボトムをずり下げてくる。
太腿までずらしただけで、グレンは両手で双丘を掴み、その箇所を開かせた。
既にひくひくと開閉し、男を受け入れたがっているそこは、
今まで何度も何度も、グレンを受け入れてきた証。

「・・・欲しそうだな?」
「んんっ・・・そう、だよ・・・早く、」

もう、取り繕う余裕もない。
グレンが再び顔を寄せ、唾液でその部分を濡らす。羞恥心が込み上げるが、唇を噛み締めて耐える。
グレンの左手が、深夜の雄を袋ごとやわやわと包み込みながら、
もう片方の指先が内部へと侵入してくる。ぐちゅぐちゅと音を立てられて、内部を掻き回される。すぐにそこは
拡がり、簡単に指を3本受け入れるまでになる。
内部の赤さがひどくいやらしくて、グレンは目を細めた。
早く、繋がりたいと思う。
グレンはジッパーを下ろし、性急に己の雄を取り出す。こちらももう既に芯を持っていて、
軽く扱くだけで、溢れる先走り。
それを砲身に絡めて潤滑油代わりに使い、ゆっくりと内部に侵入した。

「っ・・・く、ああ、グレンっ―――・・・!」

熱い。
思わず耐えるように、深夜はコンクリートの壁に爪を立てた。
グレンの両手が自分の腰を支え、思わず逃げようとしてしまう己を戒める。じわじわと内部が絡み付く感触。
きつく締め付けてくるその襞に、グレンは眉を顰めるが、それでも途中で止めることはしない。
熱い息を吐いて、一気に最奥まで繋がってしまう。

「っは、全部、入ったぞ?」
「んっ・・・すごい、苦し・・・」
「本当に?」

実際、深夜はひどく苦しかった。
まともに息もつけない程の圧迫感。浅い息を吐き出して、下肢を襲う引き裂かれるような熱塊の熱さに溺れる。
それでも、これが自分の欲しかったものだと思うと、ぞくりとした快感が這い上がる。
グレンの手のひらが、尻の隙間から背筋を辿り、中途半端に着たままの軍服をめくりあげ、
そうして、そこを何度も擦るように掌を這わせる。
もう、彼にどこを触れられても、深夜は感じてしまう。
先程食まれたほうとは反対側と耳を、甘噛みされる。耳元で彼の興奮した様子を感じるだけで、
こちらも一気に高まってしまう。

「・・・動くぞ」
「んんっ・・・いい、よ?っあ、すご、奥っ。。。」

ずっ、と腰を抉るように押し付けられ、思わず声が漏れた。
更に緩く腰を引かれ、小刻みに前立腺を刺激される。深夜の雄は、完全に力を取り戻している。
奥を何度も抉られたかと思えば、今度は抜けるほどまで腰を引かれ、
思わず喪失感にぎゅ、と力を込めてしまう。
そこを、今度こそ激しく擦られる。悲鳴が漏れる。痛みと、快楽の瀬戸際。
快楽に溺れきった自分を、グレンは笑っているのがわかった。恥ずかしいとは思うが、
もう、どうしようもない。
声を抑えるにも不可能だった。これほど気持ちいい事は、他にはないだろう。
グレンが自分の身体を求めてくれる、これほど嬉しいことも。
意識して、中にぎゅ、と力を込める。離したくない、とばかりに追いすがるそこの感触に、
グレンもまた、もう、限界寸前。
深夜を気遣うのも忘れて、己自身を解放すべく、腰を使う。
激しいその動きに、男の限界を感じて深夜は仰け反った。内部に出される熱い飛沫は、
深夜には欲しくて仕方のないモノで。

「んっ・・・出すぞ、深夜」
「うんっ・・・欲し、あ、ああっ―――!」

ラストスパートをかけるように強く抉られ、その次の瞬間、内部がどろりと濡れた感触で満たされた。
それを、深夜は恍惚とした表情で受け入れる。熱い飛沫が叩きつけられるその感触にすら感じてしまい、
深夜もまた、2度目の精を吐き出した。
グレンが、服越しに、両腕で深夜の身体を抱き締めてくる。
深夜は目を閉じて、彼の腕の中の感触を追う。

「っは、ああ、グレ、・・・んん―――っ、」

耳の裏にキスをされながら、力強い腕に、再び身体を返され、
今度はグレンが壁に背を付き、自分は彼の肩に頭を預ける格好になる。
だが、己の秘部は未だにグレンのそれが収まったままで、
体勢を入れ替えた際に抉られてしまい、自然と声が漏れてしまった。
グレンの両手が、自分の胸の前で指を組む。離さない、とばかりに背後から抱きしめられて、
深夜は身体の力を抜いた。と、
ふと軽く腰を揺らされて、思わず声が出てしまいそうになる。

「っ〜〜〜!!」
「はは。まだ、イけそうじゃないか?」
「・・・この、変態」

グレンの手のひらが、己の前に再び触れ、感触を愉しむように触れていた。
と思えば、するりと背後に回り、今だ結合したままのその部分の輪郭をたどるように触れる。
まったく、本当に絶倫だと思う。
今なお、自分の内部の彼は、硬さが萎えていないのだから。
このままでは、3ラウンド目に突入するのは火を見るより明らかだった。

「まったく・・・君って、本当に」
「なんだ?」
「欲望の塊だよね」

グレンは否定できずに、ただ笑う。
本当に、自分は欲望ばかりだ。5歳の頃から抱いている野心は勿論だが、
16歳の時に鬼を受けいれてからというもの、自分は己の欲望に向き合ってばかり。
野心は更に渇望するようになり、手段を選ばなくなった。
大切な者達が増え、その彼らを守るために力への欲望が膨らんだ。
そして吸血鬼の血を受け入れてからというもの、更に、血への欲望にまで葛藤するばかりの日々。
だがそれも、きっと、もうすぐだ。
もう少し。
もう1年も待たずに、おそらく決戦の時が来るだろう。
幼い時からの悲願を叶え、吸血鬼たちから人間を解放し、世界を改変できる日が、やってくる。
そんな未来を夢想し、グレンは自分の馬鹿な考えに思わず笑ってしまった。

すべてが終わったら、この男の血を、一分の遠慮もなく吸ってやろう。
これほど悩ましげなニオイのする血を持った、この罪深い男。
そうして、完全に吸血鬼になったら、
今度は、自分の血をこの彼に呑ませてやるのだ。
2人してお互いの血を吸い合えば、酷く背徳的な、けれど中毒じみた快楽に溺れられるに違いない。
そんな未来が来れば、幸せだと思った。
だがそれも、人間世界に君臨する、彼らを倒せればの話。

「俺が、いつか本当に吸血鬼になったら」
「うん」
「・・・お前も、道連れだ。未来永劫、俺の傍にいてくれ」
「いいよ。当たり前じゃん」

深夜は疲れたように笑う。
そんな、当然のように自分の傍にいてくれる彼に、グレンは心から感謝する。
腕の力を強めて、グレンは彼の首筋に口づけた。
牙を立てる代わりに、美味そうな血潮の流れるその部分を強く吸い上げる。それは、
彼が自分のモノだとはっきりと見せ付ける、所有の証。

「馬鹿グレン。アトつけるなって」
「うるさい」

唇を尖らせて文句をいう腕の中の深夜に、
グレンは黙らせるように再び腰を揺らしたのだった。





end.




・一般吸血鬼の血は飲んでも支配力はない
・吸血鬼の貴族の血には支配力がある
・特に自分を吸血鬼にした主の血には拘束力が増す
・人間の血を飲むと完全に吸血鬼と化す
・同胞の血を吸えば吸うほど、血への衝動が増す。故に鬼化しやすく、また強い鬼になる



ってところでしょうか、設定は・・・。
まぁ多少、私の妄想補完があるかもしれませんが、すいません。
グレン様、マジで本編で吸血鬼だったとしても俺はいいよ!VIVA!吸血鬼グレン♪





Update:2015/07/21/TUE by BLUE

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