この鎖を解いて



最悪な朝だった。
飼い犬の食糧がなかったものだから、街に足を運んだところ、
ばったりと知り合いに会ってしまったのだ。
適当にあしらってさっさと家に戻ればよかったのだが、その知り合いというのが政界関係の御仁。
大佐という地位であることと、権力者の後ろ盾もある程度必要な私にとって、
やはりどうも無碍には扱えず、だらだらと付き合う羽目になってしまい、
帰ってきた頃にはもう夕方近くになってしまっていた。
たった3日間。その期間をエドワード以外の人間と過ごすなんて、馬鹿げてる。
苛つく心もそのままに、エドワードのいる地下室へと足を運ぶと、

・・・少し、驚いた。

地下室の扉が開いていたからだ。

首に鎖をつけられ、手足も片方ずつを失ったエドワードは、
それでも必死にドアの前に歩み、扉を開けたらしい。
鎖の先を見ると、なんだ、壊れてるじゃないか。
ちっ。古いことはわかっていたが、まさかそんなに簡単に壊れるとはね。
階段に凭れて眠るエドワードを踏まないようにして、
鎖の先を拾う。
やれやれ、今度はどこに括り付けようか。
そう考えて周囲を見渡すと、太い鉄の配管を見つけた。
さすがにコレが壊れることはないだろう。
鎖の先を引き、それに巻きつける。ちゃり、と金属の擦れる音が聞こえて、その瞬間、

「ぐうっ」

エドワードの首が引きつれ、喉が鳴った。

「おや、お目覚めかい」

鎖のせいで階段から引き摺られたエドワードは、床に転がったまま焦点の合わない視線を揺らした。
自分の目と合っても、あまりよくわかっていないようだ。
深く眠りについていたからか、それとも空腹でつらいのか。
約20時間何も口にしていなかったから、
きっと腹が減っているだろう。
それもこれもみんなあの御仁のせいだ。文句を言うなら奴に言ってくれ。
鎖を巻きつけ終わると、多少、エドワードの移動範囲が狭まった。
だが、これで扉にも手をかけることはできないだろう。
まぁ、移動できるだけマシ、というところか。
裸の少年は、自分の首に繋がれた鎖を見て、やっとなにがどうなっているのか思い出したようだった。

「第1回逃亡計画は、失敗かね」

周囲の壁や床に、描き掛けの錬成陣がうっすらと見えた。
なかなか頑張っているようじゃないか。片手、片足で。くくっと喉の奥で笑う。
だが、反面苛立ちを隠せない。
この少年は、今でもまだ、南部に思いを馳せ、逃げ出そうとしているのだ。
まぁ、タイムリミットは確かに3日だ。諦めが早くてはこの少年にしてはおもしろくない。
ならば、さて、今度はどうしようか?
ふと下を見ると、すらりとした片足が目についた。
白く、滑らかな右足。
この片足と、片腕と、壁を伝って扉にたどり着いたのかい?
やはり、最初から両足立てないようにすべきだったかな。

「さて、どうしてくれよう」

エドワードの右足首を掴み、組み敷いた。
怯えた瞳が、なんとも嗜虐心を疼かせた。たったあれくらい乱暴にされただけで、
もう怖くなってしまったのかい?
君には、まだまださせたいことが色々あるのに。
まだ頭の中で想像を膨らませて、こみ上げる笑いに任せて声をあげた。
ああ、楽しい。
後先考えずにただ今の欲を満たすことだけを考える。
なかなかに幸せな生き方だな。

「んむ―――、っ・・・」

したがって私は。
今芽生えた欲を満たすことだけを考えよう。
怯え、逃げ出そうとするエドワードの髪を強く引き、彼の半身を持ち上げた。
少年は痛みに怯え、抵抗どころか片手で自分から身を起こす。
近くの例の石柱にその背を押し付け、そして私はボトムのファスナーを開け、それを取り出す。
目の前で見せ付けた凶暴なそれに、エドワードは怖気づいたらしい。
青ざめた顔で、私を見上げてきた。
無論、だからといって許してやるほど私は甘くない。
軽く手で扱き、溢れた先走りの液体を少年の唇に押し付ける。

「舐めろ」

何かを強要されるのが一番嫌いな少年だった。
だからもちろん、こんな状況でも、彼は思ったとおり頑なに首を振り、その侵入を拒んでいた。
まったく、いつまでそうしているつもりだい?
私が先に諦めるわけがないだろう。

「ぐっ・・・ふ、あう・・・っ!」

手を伸ばし、その顎を取る。
強く指先に力を込め、その口蓋を割らせた。
エドワードは顔を歪めた。
顎を掴まれ、上向かされ、微かに開いたそこに、容赦なく男の雄を突き入れられる。
自分から受け入れれば加減もできたろうに、強引に挿入された少年は喉にあたる亀頭に顔を顰め、
あろうことかむせたように咳を始めた。
体液が口の端から洩れていた。
だが、手放す気はなかった。少年の口内は熱く、なかなかに居心地がよかったから。
エドワードは顔を顰めたまま、苦しげにそれを含んだまま動こうとはしなかった。
どうしていいのかわからないのかい?まったく、子供だな。
頬を掴み、半ば強引に内部を捏ね繰り回す。
本当は、舌も使ってくれないと大して気持ちよくないのだが、まぁ仕方ない。
そうしていると、いい加減苦しさに耐え切れなくなったのか、エドワードの喉がひくりと動き、舌が男の雄を押し出そうと拙い動きを始めた。
だが、それは逆に快感を煽るだけに終わってしまった。くくっと笑う。エドワードは顔をしかめる。
少年の髪を掴み、頭ごと打ち付けるようにして性器を扱かせた。
歪んだ顔がどうにも穢らわしくて、絶望的で、下肢の熱が強く疼いた。
彼の奥に放ち、むせ返る少年の喉がそれを飲み込むのを見たいと思っていたのだが、
それはまたの機会にするとして。
少年の額を押し退け、顔面に射精。
どくどくと放たれる白濁を顔に塗りたくり、エドワードはいよいよ絶望感を増してきた。

「いい格好だな」

片足、片腕、精液に濡れた顔。
見上げる瞳に、いつもの強い眼光はなかった。
放心し、焦点の合わないまま、ふらりと視線を揺らす。
エドワードを見据えると、そのまま唇を重ね、その舌を絡ませた。
ぬちゃり、と唾液同士が絡み、卑猥な音を立てていた。

「っ、は・・・」
「足を開け」

開け、といってももうほとんど片足しかないのだけれど。
エドワードは身を竦ませ、しかし私の命を素直に聞くことはなかった。
まったく、手間のかかる奴だ。
右足を掴み、少年の身体をずり下げる。背中が擦れたのか、痛みに顔を顰めていた。
エドワードのそれは、あんな屈辱的な行為を強いられたにも関わらず、既に顔をもたげていた。
触れてすらいないのに。先走りの液を洩らすそれに、口の端を歪ませる。
やはり、強要されて、無理強いされるのが好きなんだ?
そうやって焦らすのも、君の趣味かい?

「・・・っ」

晒されたその部分をまじまじと見ていると、
羞恥に頬を染めたエドワードが、残った片足で胸を蹴ってきた。
力のない足。さして痛かったわけではない。けれど。
この期に及んで、抵抗とはね。
抵抗なら、私の居ない間にこの閉鎖された空間にすればいい。
私がいて、お前がここにいる以上、お前の自由はないんだ。
そこのところを、しっかりと分かっていて欲しいね。
どうせ、欲しくてたまらないくせに。
行儀の悪い足は、これか?

「悪い足だな」

足首を掴み、エドワードの顔の正面に持ってきた。
痛い、と組み敷いた少年が掠れた声で啼く。
だがそんな声音になど頓着せず、私はうっとりとその滑らかな肌を撫でてやった。
エドワードが恐怖の予感に背を震わせる。

「っ、や、め・・・」
「・・・こっちの足も、左足と同じように必要なさそうだ。」
「ひ・・・!」

手の中で、みし、と細い骨が音を立てた。
まだ折れていないよ。そんな絶望的な瞳で私を見ないでくれ。
そうだな。ただ折るだけなんてつまらない。さて、どうしようか。
しばし考えて、開いている右手でボトムのポケットを弄った。
たしか、そう、持っていたはずだ。
見つけて、片手でそれを身につける。錬成陣のかかれた手袋。まったく、これがなければ、今では誰も私を錬金術師とは分かってくれなさそうだ。
それを見た途端、エドワードは青褪め、懇願するように残った左手で私の上着を掴んだ。
ああ、もう、今更遅いよ。
乱暴に振り払い、指を鳴らす。
音もなく、エドワードの目の前で右足の膝から下が、燃えた。
少年の絶叫が、次の瞬間部屋を満たした。

「ロイっ、燃え・・・!や、消し、やめ・・・!」

もう、言葉にならない訴えを、少年は目の前でしてきた。
そう必死にならなくとも。誰も殺す気なんてない。見た目ほどにはひどく焼けてないはずだよ。
ただ、少年の目には燃え盛る炎が強烈に焼きついただろう。
涙を零し、消してくれ、と訴えていた。
仕方なく火を消してやると、無残な火傷の痕が右足に残っていた。
これで、当分は歩けまい。
皮膚組織が完全に剥がれ落ち、再生するまではまともに立つこともできないだろう。
いや、回復したからといってそう簡単に歩けるようになるかな?
まぁ、もがなかっただけでも幸せだと思いなさい。
さすがに両足機械鎧なんて、気分がよくないだろう?

「あ・・・ああ・・・っ」

ガタガタと全身を震わせ、見上げる瞳は赤く腫れ上がっていた。
火傷のひどい部分が石の床に擦れ、さぞかし痛いことだろう。
だが、これも自業自得というものだ。
素直に足を開き、私の言うなりになればよかったのに。

「後ろを向くんだ」
「・・・っ」

のろのろと、痛む足を引き摺って。
後ろを向いた。片手だけで上げた腰を支えるのは、なかなかつらい体勢のようだ。

「さぁ、どうしてほしい?」

双丘の奥が目の前にさらされ、肉襞が見てわかるほどにひくついた。
エドワードは唇を噛み、だがもう私に逆らうことはなかった。
顔を横に向け、その頬を支えにし、
片方だけの手を、自分の後ろに伸ばす。
私の目の前で、少年はその穴を指先で押し広げた。
そういえば、先ほどから少年はひどく高められていたのだったっけ。
焔の効果は、なかなかに絶大だったようだ。

「入れ、て・・・ください・・・」

ナニを、と言わなかったから、減点20かな。
少年のあどけなさにどうも笑いがこみ上げてきて、なにか遊びたい気分になった。
生憎と、オトナの玩具、とかいう代物は手元にはなかった。
ちっ、つまらんな。
次回はそれで苛めてやろうと思いつつ、持ってきたトレーの皿に目をやる。
そうだ、こんなバカなものを持ってきていたんだった。
皿の上のそれを手に取る。
別に、なんてことはない。ただの魚肉ソーセージだ。
ただ、形がヨかったから彼の鼻先にでも突きつけてやろうかと思ったまでなのだが。
くすりと笑って、エドワードが拡げたその穴へ押し付けた。
太さは私ほどではないが、長さはかなりあった。さて、お味はどうかな?

「ひ、あっ・・・何・・・っ?!」

冷たいそれに、驚いたようだ。
だが、どうせすぐに熱くなるさ。構わず奥に押し込む。
エドワードはああ、と声を上げながら、手のひらで下肢を探った。
私の手を感じ、その手の中のそれに気付く。それなりに太く、感触も生身に近いから、案外気持ちよかったか?
ひっきりなしに声を漏らすエドワードに、耳元で囁いた。

「イイのか?こんなものが?」
「あ・・・、や、だっ・・・!」
「嘘をつくな」

こんなに、よがってるくせに。
本当に嫌だというのなら、必死にその手で引き抜こうとでもしたまえよ。
だというのに、私の手ごとそれを掴んで、それどころか自分で動かそうとさえしているんだぞ?
無意識かは知らないが、まったく淫乱な奴だな、お前は。
長いそれを奥まで突っ込み、そのまま手を離した。
エドワードは戸惑ったように私を見た。
口元だけで笑みを浮かべる。

「そんなにいいなら、自分でしたまえよ」

ほら、と半ば強引にそれを握らせて。
私はただエドワードの痴態を見据えた。男を誘う、淫乱な少年のその姿を。
少年はいやだ、と啼きながらも、拒絶することなく、恐る恐るその自分に刺さったものを動かし始めた。

「あっ、あ、あんっ・・・!」

なんだ、その気持ちよさそうな表情は。
ぐちゃぐちゃと音を発するその部分は真っ赤に熟れ、少年の快感そのままに開閉を続ける。
エドワードはもはやその快楽の虜になったのか、
羞恥も外聞もなにもなく、自身の奥を強く強く突き上げた。
びくり、と少年の身体が震える。
ひときわ大きな声音が部屋に響く。
背を仰け反らせたエドワードは、その次の瞬間床に白濁した精を放っていった。

「あっ・・・は・・・」
「淫乱だな?」

放心し、うつぶせようとする少年の腰を持ち上げた。
穴からはみ出すそれにはご退場願うとして。
今度は私の番だ。
容赦なく奥を貫く。
エドワードはさすがに圧迫感に息を止め、身を震わせた。
射精したばかりの身体は、敏感になり、収縮も激しかった。受ける快感に、知らず息があがった。
少年は苦しげに息をついた。だが無論、許してなどやらない。
そんな、血の通わない、バカげたもので。
私より先にイくなど、間違ってると思わんかね。

「あ、大佐っ、や、あんっ・・・!」
「イイだろう?」

耳元で囁く。こくこくと頷くエドワードの耳元にキス。
上から叩きつけるように腰を打ちつけ、そのまま自身を高めるためだけに少年を扱う。
結局一度も触れないままの少年の雄は、
だというのに乱暴な後ろへの刺激だけで本日2度目の精を簡単に解放していた。
べたついた精の上に、少年は身を投げた。
下肢は他の男の精に汚れ、また顔も塗りたくられた精が乾き、ごわついた体を示していた。

「褒美だよ」

放心し、脱力したエドワードの目の前に、深皿を置いた。
本当はスプーンも持ってきていたのだが、そういえば犬だったことを忘れていた。
そんな人間じみた道具なんて使わなくていい。
皿に盛ったものは、米と、シチューを和えたようなもの。
空腹を満たすには丁度いいだろう。
少年はのろのろと顔をあげ、皿に口をつけた。










椅子をもってきて、餌を食べる犬を見つめていた。
顔を近づけ、舌でそれを舐めた。
もちろん、人間の鼻と口のつくりではまともに食べられないだろう。
しかし、空腹は動物を野生に戻す。
がつがつとそれを食べ続ける少年に、くすりと笑った。
少年の首には、ぴっちりとした革製の首輪が食い込んでいた。
きつめに締めていたから、たった1日で赤く傷がついていた。なかなか扇情的だ。
たったこれだけで、少年を畜生なみの立場へと落とした。
繋がる鎖を少々強めに引っ張ってやるだけで、簡単にその命を奪うことができる。
そうして、エドワードは苦痛に怯えて、私の命に従うのだ。
だが、そうでもしなければ。
きっと、少年はまた、遠くへ行ってしまうだろうし。
どんなに躾の行き届いた犬でさえ、檻をあけてしまえば出て行ってしまうものだから。
きっともう、私は、
どんなことがあろうと、この鎖を解いてやれないだろうな。
そう、もし解いてやれるときがあるとしたら、この少年が死ぬときだ。
私より先に彼が死んだなら、解いてやろう。
そこまで考えて、自然と笑いがこみ上げてきた。
少年は、いつ死ぬだろうな?
そう、15歳ちかく離れたこの少年は。
がちゃん、と音がして、はっと顔を上げた。
少年が、目の前の深皿を零し、床に残りの食物をぶちまけていた。
だが、瞳は狂気の色を宿し、
飢えた少年は床に零れたそれを食べ続ける。
そう、人間は簡単には死なない。
本能で、生き続けるのだ。つらくても、苦しくても、痛くても、悲しくても。
所詮、人間だってただの動物なのだから。





出された固形物をすべて平らげた少年は、
それでもまだ足りないと、床に零れた液体を飽くことなく舐め続けていた。





to be continued.





Update:2004/09/17/FRI by BLUE

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