繋がり。



ぱらり、とページを捲る音。
至って静かな室内に響くのは、そんな微かな音のみ。
広い部屋にたった2人で、でも会話すらすることのない彼らは、それでもこんな空気を心地いいと思っているのか、
2人はお互いの領域に干渉することすらなかった。
自分用にと宛がわれたデスクに座り手元の資料をひたすらに読む男と、
高級なつくりのソファーにどっかと座り、目の前のテーブルに足を上げてそのくせ手には年期の入った古本を読む少年と。
静かな空間。まるで、存在すら空気に溶け込んでしまいそうだ。
そんな沈黙を先に破ったのは、男のほうだった。

「・・・鋼の」
「・・・・・・ああ?」

本の文字だけに集中していた意識を途切れさせられて、少年は幾分機嫌の悪そうな表情を上官に向けた。
態度も、口調も全く敬意も払っていなければ、忠誠心すら見受けられない。
だが、事実この少年の上司は国軍大佐ロイ・マスタングであり、彼の言葉は絶対なのだ。
読みかけの書類をデスクに置くと、ロイは少年のほうへ歩み寄った。

「次の出発はいつだったかな」
「明日朝早く。今日は午後から雨だし、丁度いいだろ」
「そうか」

少年の旅は果てしない。国中のどこにあるとも知れぬ伝説の石を追っているのだ。国内にだってないかもしれない。
だが、そんな1%の可能性にかけて旅を続ける少年には、後悔する気持ちはない。
たとえ空振りでも、小さな何かを見つけ、そうしてまた1歩神の領域へと進んでいく。
そんな前向きな姿がいかにも真っ直ぐな少年らしく、そしてそれこそが彼の魅力だと思う。
ロイは少年の手に収まっていた1冊の本を取り上げると、開いていたページをぱたん、と閉めた。

「あーーー!!なにすんだよっ!!」

読みかけだったそれを取り上げられて、少年が声を荒げる。
取り替えそうと手を伸ばすのをひらりとかわして、ロイはその本をテーブルの上に放った。
テーブルには既に山積みの本。
錬金術師ならば知らぬ者はいない禁書や古書、入手不可能と思われた貴重な書物までが無造作に置かれている。
これらは全て、目の前の高い地位にある国家錬金術師が所持しているものであり、
初めて目にした時は少年も目を疑ったものだ。
こんな貴重な書を持っているのも驚きだが、何より過去にすべて焼き払われたと他の文献に記述のある書物までたかが佐官ごときが持っているなど、
バレれば処分ものではないだろうか。
だが、自分自身禁断の術を模索している身、
そんな貴重で禁忌の書物を少年が処分できるはずもなければ、むしろ喉から手がでるほどに読んでみたいという衝動が突き上げてくる。
生唾を飲み込む少年に思わず漏れそうになる笑い声を堪え、ロイは彼に自分の執務室でだけ読むことを許したのだった。
だから、少年は、暇さえあればここに来て、本を読む。
けれど、明日になれば当分それもお預け。
イーストシティを出た彼らは、また長い間戻ってくることはないのだろう。
読書を中断させられて不満そうな顔を向ける少年に、ロイはそのままソファに膝を乗り上げ、顔を近づけた。

「・・・―――!!」

不意打ちに少年の目が見開かれる。あわてて男の身体を押しのけようと胸に腕を突っぱねるが、
15歳近くもの年差と体格の違いに少年にはなす術もなく、そのまま片手だけで抵抗を押さえ込まれてしまう。
この普段ぼけっとしていて、錬金術以外には特に能がないのではないかと思われる上司は、
実は格闘技にも秀でているらしいことをつい最近知ったばかりだ。
過去、師匠の元でひどく鍛えられた経験を持つ少年は、しかし自分を押さえ込む男に勝てないことで悔しそうに顔を歪めた。
触れ合った唇はなかなか離れない。微かに熱を帯びた柔らかな感触が、少年の身体に伝わる。
それを意識して途端に頬を染める彼は、そのまま歯列を割って入り込んでくる悪戯な舌を防ぐことはできなかった。

「んう―――・・・っ・・・」

息が苦しい。まだ若い、こんな行為に慣れていない少年は、苦しさに眉を寄せる。
不意打ちだということもあって受け入れる状態にはなかった彼は、必死で彼の胸元を叩いた。

「・・・っ・・・バカっ!何やってんだよっ!」

慌てて濡れた口元を拭う少年の顔は、羞恥にひどく赤い。
そんな彼をふふっと笑い、それからロイは少年と同じようにソファに腰を降ろした。
どうやらこのまま強引にことを進めるつもりではなかったようだ。ロイはテーブルの上の書物を手に取り表紙を捲った。
よく見ると知的な表情に、本を読む姿はよく似合う。
錬金術師である以上、焔の銘を持つ彼であろうが世の中の理を追い求める心は変わらない。
あまり普段見せる姿ではないだけに、たまに見せる彼のそういう所は好きだった。
だが、今はそんなことを考えている状況ではない。
先ほどまでずっと静かだった空間が一変したのである。ここまで近くにいられては、再び本に意識を戻すなどできるはずもない。
少年はムッとしてマイペースを保つ男を睨んだ。

「・・・仕事はいいのかよ」
「んー・・・まぁ、昼休みだからいいだろう」
「昼休みってなぁ・・・まだ12時前だっつの!!」

相変わらず時間にルーズな奴だとため息をつく。というより、単に早く休みたいだけか。
なにせ、まだ12時まで1時間近くあるのだ。
相手にしていられない、と少年もまたテーブルの本に手を伸ばし、先ほどの読みかけを掴んだ。

「何か・・・収穫はあったかね?」

古き時代の遺物。過去、錬金術師は多くの夢を抱き、練成を重ねてきた。
何もかもを生み出す魔法の石。不老長寿を可能にする奇跡の薬。人の身体を介して以外にヒトを生み出す方法。
だがそのほとんどは失敗に終わり、神にも似た力を得ようとする人間は必ず罰を受ける。
そんな永い永い錬金術師たちの歩みが書かれた書物は、確かに少年の向かう方向を指し示してはいたが、
けれど肝心の核心をついたことなど見つかるはずもなかった。
禁忌。信仰深い神の子らはそれらを忌み嫌う。
永い時の中で、いつしか科学者もまた命を生み出す行為は神の奇跡だと信じ込むようになり、
人体練成は禁断の術となっていった。
そんな長い歴史を、自分たちは覆そうとしている。
生半可な意志ではできなかった。

「・・・どうだろうな」
「まぁ・・・そうそうないだろうね」

君の、役に立つものなど。
ひとりごちて、ロイは手元の本をぱたりと閉じる。
もし、もっともっと本があったなら。
その中には、少年の目の前を開かせることのできる情報があるだろうか。
そしてもし、その本を自分がもっていたなら――・・・、彼を・・・ここに留めておけるだろうか。
何を馬鹿なと理性が告げる。口元に知らず笑みが漏れた。
根無し草の少年を、いつも自分の傍に置いておきたいと思っている。
ただ、ロイは強要しない。するはずもなかった。彼を国家錬金術師に推薦し、その特権をもって彼の望みを叶えてみないかと説いたのは自分自身だ。
あの時死んだようだった瞳の彼を、ここまで呼び寄せたのは自分だ。そして、少年はその微かな可能性に縋って、旅を続ける。
彼が彼らしくあるためには、自分の元に置いてはいけない。
何より、少年には少年らしくあって欲しかったから。
だからせめて、光に手を伸ばす少年を下から持ち上げてやることくらいは自分にもできるだろうか。
高い場所に在る眩しい光。少年ならば、必ず―――・・・

「・・・大佐?」

少年の呼ぶ声に反応した。こちらに向けた頬を、ロイはゆったりと撫でる。
途端、抵抗を見せるがもう遅い。
今度こそ深く吐息を奪う男に、少年は眉を寄せた。
当然のように手から本が奪われ、ソファの背にもたれていた身体が傾く。
狭いソファの上でロイに組み敷かれる形になった少年は、けれどさしたる抵抗もできぬまま彼のキスを受け入れる形になってしまっていた。
今度こそ、行為の続きを予感させる甘い口付け。
舌を捕らえられ、甘噛みされれば背筋が震える。
ザラついた舌同士が触れ合う感覚は少年の抵抗する術を失わせ、そのまま角度を変えて何度も与えられるキスに溺れていく。
霞みかけた頭の中で、ここが上司の執務室であることを思い出した。
東方司令部の実質的な司令官。マスタング大佐の部屋には当然のように人が来る。
だというのに、そんな場所でキスのみならずそれ以上に深い行為を行おうとするロイに、少年は再度顔を顰めた。
人が来る心配のある場所で、服を剥かれるなどごめんだ。万一本当に誰か来たらどうしろというのだろう。
だが、そんな少年の心にも関わらず彼の留め具を外そうとする手に、少年は必死でその手を抑えた。

「っ・・・、大佐!ここ、どこだと思って・・・っ・・・!」
「私の部屋だが?」

事も無げにそう返され、留め具を外される。
襟元から滑り込むロイの手は、少しだけ冷たい。
肌を滑る指先が快感を呼び起こす前にと、少年は必死に言葉を紡いだ。

「このっバカ・・・!誰か来たらどうすんだよっ・・・」
「誰も私達の邪魔をする愚か者はいないさ。それとも・・・見られたいのか?」
「・・・アホかっ!!」

あまりにバカなことを返され、少年は呆れたような声をあげる。
その間に上着の前は完全に肌蹴させられ、首筋に埋められた頭が胸元へと移動する様に、敏感な肌はひくりと反応を示した。

「・・・っあぁ、やだって・・・」

胸元に埋まる男の髪に手を伸ばす。柔らかな黒髪を指先に絡めて引っ張るが、既に力の入らない手はロイの頭を引き剥がすことさえできない。
それどころか、両の指先を捕らえられ、絡めてソファへと押し付けられれば、それ以外には抵抗できないままロイの目の前に曝される胸元がひどく恥ずかしかった。
少年の小振りなそれが、既に立ち上がり色づいている。
ゆっくりとした仕草でそれを舌で突付くロイは、もう息が上がり始めている少年に笑みを浮かべた。

「嫌?本当に・・・?」

立ち上がったそれに歯を立てる。少年はそこを甘噛みされるのが好きだ。少々キツく刺激してやるだけで、全身が戦慄くように震える。
痺れるようなそれに耐えようと少年の手に力が篭るのに、ロイは同じように握り返してやった。
少年の足の間に、自分の膝を割り込ませる。思いがけず触れてしまった敏感な部分はもう自己主張を見せていて、早熟な少年の身体を意識する。
嫌そうに唇を噛んで耐えようとする姿に、男は彼の頬に唇を寄せた。

「っ・・・」
「こんなに感じているのに・・・まだ嫌なのかい?」

吹き込まれる声音が思考を麻痺させていく。
耳元で鳴るロイの声はいつもより少しだけ低くて、少年の抵抗を失わせるのには十分だった。
身体の奥まで染み込んでいくそれに、溺れていく。
溺れてはいけないとわかっていながら、抗えない。全身から力が抜けていく。
上気した顔で目を閉じる少年の瞳に一度だけ唇を落として、ロイは少年のベルトに手を宛がった。
無意識に少年の手が抑えに回るが、力の抜けたそれは形だけのものに過ぎない。
手早くベルトを引き抜き、下着ごとボトムを器用に取り去ってやれば、勃ち上がりかけたそれが男の目の前に曝された。
言ったら絶対殴られるので言わないが、身長と同じくまだ幼さの残るそれを手のひらに包み込む。
閉じようとする足を片手で阻み、ロイは震える彼に口付けた。

「やっ・・・やめっ・・・!」

じたばたと逃れようとする足を両手で抱え込んで、ロイは丁寧に舐め上げる。
直接的な刺激に耐え切れない少年の体が戦慄き、彼自身は熱を持ち硬さを増していく。
自分の行為に感じていることを如実に表すそれを感じて、自然と笑みが零れる。
より深くまでくわえ込んで、喉の奥で先端を刺激してやれば、少年は嫌々をするように首を横に振った。
金の髪が光を反射させる。昼間の明るい光の下での淫らな行為。少年の肌が白く透けている。

「っ・・・やだっ・・・も・・・っ!」
「もう・・・限界かね?」
「んあっ・・・や・・・!!」

素手の片方は自分の髪を掴み、鋼の指先はソファをきつく噛んで。
小さな身体で衝動を抑えるのはつらいのだろう、ひどく苦しげな、それでいて熱に浮かされたような表情を少年は見せる。
触覚のない機械鎧の手に自分の手のひらを重ねて、ロイは解放を促すように強く扱いてやった。

「っあ・・・あああっ!!」

一瞬、頭の中が真っ白に染まった。
何も考えられなくなる。全てが遠のくような感覚さえ覚える。
達するということを身をもって知らされたのはいつだったろう。溜まった精を放った後は、必ずひどい脱力感に襲われた。
意識が朦朧とする。このまま意識を落とすことができたらどんなに楽だろう。
けれど、顔を上げたロイが不敵な顔で口元を拭うのを見た時、羞恥からかさぁっと背筋が冷えたような気がした。

「っバ、カ・・・んなもん飲むなよ・・・」
「そういわれてもね。この執務室を君ので汚すわけにもいかないだろう?」
「っ・・・てめーが!!!」

そこまで叫んで、あまりのバカらしさに反抗する気も失せる。そもそも、誰のせいでこんなになったというのだろう。
もう嫌だ、とため息をついて横を向く。ロイはキスを落としてくる。
なんだよ・・・と顔を向ければまたもや唇を塞がれ、もう少年は抗う気にもならずに舌を絡ませた。
自分の精の苦味がロイから伝わり、眉を寄せる。
唇を離すと銀糸が引いた。

「もう・・・いいだろ・・・」
「まだダメだ」

やはり最後までやる気の国軍大佐は、気の乗らない態度を取る少年などお構いなしに彼の口内に自分の指を差し入れた。
少年は顔を顰めたが、この行為が何を示すかはとうに承知の上だ。
入れられた3本の指を唾液で濡らしていく。ロイが自ら指で口内を嬲る苦しさに、少年は掠れた声を洩らした。
不意に指を抜かれ、次にあてがわれるのは自分の奥。
異物が自分の内側に入ってくる感覚はそう簡単に慣れられるものではなく、
少年はできるだけ意識しないように視線を彷徨わせた。

「い・・・いたっ・・・」
「力を抜いて」

そう言われても、簡単に緊張に固まったそこを緩めることなどできない。
苦しそうに耐えているとロイの手が自分の前を嬲り出した。
先ほど放ったばかりだというのに、快感をすぐに思い出して猛ってくるそれは、若さ故か。
直接的な感覚に惑わされたままロイの指を内部に受け入れた少年は、その熱い内部で自分を抱く男のそれをくわえ込み、決して離そうとはしなかった。

「ふっ・・・キツいな・・・。そんなに欲しいのかい?」
「ほっ、欲しいわけねぇーーー!!!」

朱に染まる顔がより一層真っ赤になっていく様を、ロイは楽しそうにみやる。
その間にも収縮を繰り返すそこを、一度強く内側を擦るように拡げると、少年の身体が戦慄いた。
震えが止まらない。ロイは少年の頭を数度かるくぽんぽんっと叩く。
そんな態度から子ども扱いされていると感じたが、29のこの男に子供と見るなというほうがおかしいか。
初めて出会ったのは11だった幼き日。そして、今もまだ15歳足らずの子供だ。
どんなに背伸びしてみたって、男の大きさには叶わない。見識の差、知識の差、人生経験の差。
若くして大佐の地位に上り詰めたこの男は、日常がどうあれそれだけの能力がある。
そんな彼に、どうして追いつくことなどできるだろう。
おそらく、いつまでたっても、この男にとっては自分は子供でしかないのだ。
抱えられた足に、息を呑む。宛がわれた熱に、唇を噛んで。
もうここまで来たらヤケクソだ、と少年はロイの首に腕を回す。
どんなに解しても無くならない痛みに耐えようとぎゅっと力を込めると、その瞬間下肢を襲う強烈な衝撃。
思わず背を丸めて固く縮こまろうとした少年を、ロイはあやすように髪を梳いた。
歪んで外れかけていた紐を取り、結わえていた髪を降ろして手で弄ぶ。
痛みに目をぎゅっと瞑る少年に軽く口付けてやりながら、ロイは中途半端に収まっていた自身を内部へと押し込んだ。
少年の狭い中は、ひどく熱く、心地いい。
ひくひくと蠕動する内部の感触に眉を寄せて、それから一度収めたそれを一気に引き抜いた。

「っああ・・・!」
「エド・・・」

律動を加える度に背を仰け反らせる少年を、ロイは抱き締めた。
顔を覗き込めば、いつも大人ぶった表情を見せる少年が、今は淫らで、ひどく弱々しい顔をしていた。
薄っすらと開けた瞳が、自分に縋る。それを受け止めようとさらに少年の背中の男の腕に力が篭る。
いつも呼ぶ銘ではなく、彼自身の名を舌に乗せ、何度も何度も彼の奥を貫いた。
まだ幼い少年にとって、交わるたびに度を上げていく快楽が恐ろしい。
歯止めが利かなくなりそうな感覚に、少年は唇を噛み締めた。
だが、自分の熱を煽り続ける律動は止まることを知らず、狭い内部の内壁を擦る感触が意識を朦朧とさせている。
いつしか男の動きにあわせるように腰を動かす少年を、ロイは笑みを浮かべて見つめていた。

「っ・・ぁ・・・あっ・・・」

少年から受ける快楽に、ロイもまた上気した顔を上向ける。
その仕草が少年をますます煽る結果となり、2人は行為は一気に温度を増す。
腹に当たる彼自身がはちきれんばかりに大きくなっているのを感じて、ロイは指先で先端を弄び始めた。
触るな、と悲鳴のような声が少年の口の端から漏れるが、ロイにとっては懇願だとしか思えない。
震えて、少しの刺激で今にも達してしまいそうなほどのそれの砲身を握り、強い刺激を与える。
前と後を両方同時に快楽を渡され、少年の指が軍服に包まれたロイの背をきつく抉った。

「大佐っ・・・も、俺・・・」

意識が遠ざかる感覚。上り詰めたいという衝動が、彼の意識を頂点へと向かわせる。
彼を促すように背を抱き締めて、ロイは彼の最奥を貫いた。

「っあああ!!」
「・・・・・・っ」

少年が自分の胸元に精を吐き出したのに一瞬遅れて、ロイもまた少年の内部に精を放った。
断続的に注がれるそれにすら快感を覚え、少年の身体がびくびくと痙攣する。
達した余韻が収まらない少年に、ロイは宥めるように唇を掠めた。
それから、舌を絡ませ、唇を寄せる。互いの全てを奪うような、激しいキスだった。
太陽が眩しい。ロイは顔を上げると、窓からの光に目を細めた。

―――そういえば、昼だったな。

今の今まで失念していたことに気付き、やれやれと肩をすくめる。
自分の側には、今だ余韻を引き摺ったまま放心したように荒い息を吐く少年。
さて、どうしたものかと思いつつ、ロイは手元の少年を抱き締める。
どうせ、明日にはいなくなる存在なのだ。
今くらいは、この手に抱いていても罰は当たらないだろう?
そう、少年に心で問いかけて。
腕の中の小さな存在を抱き締めたまま、ロイもまた余韻に浸るように瞳を閉じた。





end.




Update:2004/02/27/SAT by BLUE

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