Dear My Little God



不意に笑い声が聞こえてきて、エドワードは目を開けた。
ここは、執務室でもなければ仮眠室でもない。
誰にも邪魔されることのない、2人だけの空間。
そして、彼等にとっては唯一明確に互いの本心を表すことのできる場所だった。

「・・・何笑ってんだよ」

エドワードは少々ムッとした表情でロイを見上げる。
ロイは何も言わずに、少年の右肩の機械鎧の接続部分を指先で辿る。
ゆっくりと触れていく感触のくすぐったさに、エドワードは顔を顰めた。

「なんだよ」
「・・いや。―――皮肉なものだと思ってね」

不可解なロイの言葉に、エドワードは顔をしかめる。
なおも笑い続けるその男は、自分が組み敷いた存在に口付ける。

「ん・・・っ・・・」
「人体練成という禁忌を犯しながら、一番神を冒涜する行為を行いながら、君はまるで神のようだ」
「・・・なんだよ、それ」

あんたバカか、と呆れた目を向ける少年は、しかし頬を照れたように染めている。
ふい、と顔を背けるエドワードに、ロイはまた笑った。

「可愛いね」
「バカ」

羞恥に、右手でロイの胸を押し返すが、逆にロイに腕を囚われる。
掴まれた鋼の腕に唇を滑らされ、何も感じないはずのその感触に身をすくめて。
生身のものではない、無機質なそれを愛しげに眺めるロイに、エドワードは唇を噛んだ。

「俺は・・・、俺たちは・・・咎人だ」

神にのみ許された『人体練成』を行った。
神の領域に、身の程も知らずに足を踏み入れた。
そう告げるエドワードに、ロイは黙ってキスをする。重なった唇は、次第に深いものへと変わっていく。
互いの体液を共有しあうその行為にん、少年は酔いしれる。
ロイの与えてくれる感覚は常に甘く、心の片隅に小さな痛みをもたらした。
唇を離して、再度ロイは少年に笑いかけてくる。

「そう、咎人だ。だからこそ、皮肉なものだと思ってね」

神に近づき、地に落とされたはずの少年は、神のみが知りうるはずの世の理を背負わされて。
神にのみ許されたかのような錬成陣なしの練成は、いつ見ても美しいと思う。
普通の人間には、決して到達することのできぬ領域。
そこに、彼は立っている。咎人の烙印を背負いながら、神に一番近しい存在。
まったく皮肉なものだと、またロイは笑う。だが、当の少年は苦しげに横を向いた。

「俺は・・・神なんかじゃない・・・っ!」

泣きそうな程の声音。そうだ、この少年は異常なまでの罪の意識を背負っているのだ。
弟を失い、自らの手足を失って。
得たものは、あの血の海で蠢く、人とは似ても似つかないバケモノだけ。
ああ、可哀想に。
神に近づきすぎて、神の怒りに触れた哀れな少年。
その絶望の闇に沈んだ瞳は、確かにちっぽけな人間のそれでしかなかったのに。
たった1年。
たった1年が過ぎただけで、再び目の前に現れた彼は、
自分が見込んだ通り強い輝きを瞳に宿し、誰にも持ち得ない錬金術の才能を持ち合わせて。
そこには、もはや神から受けた絶望などは1つも映っていなかった。
本当に、強い少年だと思う。
たったそれだけでも、ロイにとっては何より尊く、そして大事に思う何より変えがたい存在なのだ。
そう、いるとも知れぬ神などより、よほど大切な存在。

「・・・―――神だよ。
 少なくとも、君は、私にとっての神だ」

首元で囁いてやれば、ぞくりと震えるその身体。
愛しくてたまらない。

「―――君は、私のどんな願いを叶えてくれるのかな」

甘くねだるように声をかけると、エドワードは身体のうずきに耐えるようにぎゅっと目を瞑った。
抵抗が弱まったのをいいことに、ロイはエドワードへの愛撫を再開する。
滑らかな肌に指先を這わせ、ひくりと反応を示す部分を執拗に舌で舐め上げて。
ちゅっと音を立てて胸上の突起を吸い上げると、抑え切れない声がエドワードの口元からこぼれた。

「や、だぁっ・・・大佐っ・・・」

舌を使って、硬くしこったそれを刺激する。
身を竦ませながら、自分の髪に指を絡めて吸いつく頭を外そうとする少年に、
ロイは顔をあげた。

「・・・そうだな、君はココが好きだったな」

くすりと笑って、今度は反対側の突起を嬲り出す。
片方を指先で擦り合わせるように刺激を与えられ、もう片方はねっとりと舌で舐め上げられ、
もはやエドワードに抵抗するほどの余裕はなかった。
それでも、なおもキツく歯を立てたり、それを癒すように舐めたりを繰り返すと、
しまいにはエドワードはしゃっくりを上げて瞳に涙を溜めていた。
胸の辺りに硬く張り詰めたエドワードのそれを感じて、ロイはようやく胸元から頭を離した。

「・・・もう、こんなになってる。」
「っや、ああ・・・っ」

服越しから、ロイの手がエドワード自身を捕らえた。
自己主張を始めているそれを、形を確かめるように指先で辿ってやると、
その間接的な刺激がもどかしいのかエドワードは身をよじった。

「っ・・・やだ・・・あっ」
「どうしてほしい、エドワード?」

ロイは意地の悪い笑みを浮かべてエドワードに問いかけた。
反抗的で素直じゃない恋人。そのため、こういうときくらいは素直でいてほしいのだが、
こんな2人きりの場所であってもエドワードはそう簡単に身も心も預けてはくれない。
だが、だからこそ、啼かせて、懇願させてみたいのだよと内心で呟いて、
ロイは表面だけは余裕の笑みを見せて、少年を覗き込んだ。
エドワードは顔を真っ赤に染めたまま、涙目でこちらをキツく睨んでいる。

「・・・あんたってサイテー」
「何故だい」
「・・・っ、わかってる、くせに・・・!」

ロイの手の中のそれは、窮屈そうに少年のボトムの前を押し上げていた。
もどかしそうに揺れる腰も、直接触れてほしいと訴えている。
だが、ロイはそのまま耳元に唇を寄せ、エドワードの耳朶を甘噛みし続けた。

「・・・聞きたいんだよ。君が、どんなに私を欲しがってくれているか・・・をね」
「・・・・・・!!」

ロイの爪先が、内部で勃ち上がったそれの先端を引っかいた。
ますます疼きに耐えられなくなり、エドワードは悔しげに唇を噛む。
耳に吹き込まれる甘い吐息に、意識が霞がかったようにはっきりとしない。
エドワードはロイの背にしがみ付いて、おそるおそる口に出した。

「・・・・・・ぬ、ぬがせ・・・」
「聞こえない」
「・・・っ脱がせ・・・っああ!!」

腰に手をかけたロイは、エドワードの下肢に纏っていた衣服を全て剥ぎ取った。
外気に晒され、ひんやりとした空気が自身を包む。
だが、それを意識した次の瞬間。
ロイは身体をずらすと、少年の下肢に顔を埋めた。

「あっ・・・いやっ・・・やめ・・・!」

ぴちゃぴちゃと音を立てて、ロイは少年自身を舌で舐める。
巧みな愛撫は身を固くする少年をたちまちにとろけさせ、強い快感に溺れさせていった。
あめをしゃぶるように先端を舐め、喉の奥まで砲身を呑み込んで舌と唇で激しく扱いてやれば、
シーツについていたエドワードの指がきつく握り締められる。

「あっ・・・やだっ・・・ダメ・・・いっちゃ・・・!」
「構わないよ」

顔を上げて、ニッコリと笑いかけられ。それにすら煽られ、エドワードは鼓動が跳ね上がる。
また再開された、絡みつくような刺激に、
少年はぎゅっと目を瞑った。

「ああっ・・・も・・・!」

きゅっと強く先端を吸い上げられて、一瞬エドワードの視界が白く染まった。

「・・・っ!!」

どくり、と彼自身が脈打ち、次の瞬間ロイの口内にエドワードの精が放たれた。
喉の奥に叩きつけられるそれを、ロイはうっとりと飲み下す。
残滓までを吸い上げて、それから顔を上げて少年を見下ろすと、エドワードの顔はこれ以上ないほど羞恥に染まっていて、
ロイは思わずその幼さに笑ってしまった。

「・・・っ笑うな!!」
「ああ、すまない」

謝りながらも、零れる笑いは止まらない。ロイはすねて横を向くエドワードの頬に軽くキスを落とすと、
今度はエドワードの膝裏に手を添えて、彼の両足を立てさせた。
少年の全てが男の目の前に晒される格好。
エドワードは羞恥に身を捩ったが、両足をロイに囚われ動かそうにもびくともしない。

「ロ、イ・・・」

不安そうに視線を傾けると、優しげに笑みを返され、エドワードはうさん臭げに眉を寄せた。

「君のココは狭いから、じっくり慣らさないとね」
「・・・っ―――・・・あ、いやっ・・・!」

再度下肢に顔が埋められ、ひっとエドワードは怯えた。
双丘をもちあげるように撫でられ、そのまま奥に当たる濡れた感触。
舌でその部分を触れられていることを意識して、エドワードは身を竦ませた。
下肢からの濡れた卑猥な音が、少年の耳を侵していく。

「ああっ・・・やだぁ・・・っ!」
「こら、大人しくしなさい」

羞恥に身を捩る少年を、ロイは押さえつける。
ひくひくと蠢くそこを分け入るように侵入してきた舌は、
エドワードの内襞を解するように、内部を執拗にぬらしていった。

「っ・・・」
「可愛いよ、エド」

ちゅっ、と入り口にキスをして、ロイの頭がそこから離れる。
だが、安心したのもつかの間。次の瞬間、濡らされたそこに容赦なく指が挿し入れられ、エドワードは息を呑む。
痛み、というよりは生き物めいた異物が体内を奥までかき回していく感触に耐え切れず、
少年は途切れ途切れに声を漏らした。
ロイが内部で指を動かすたびに、内部はロイを離すまいと蠢いて。
そろそろ、少年を抱く男も限界だ。
下肢に存在する熱を強く意識して、ロイは口の端を持ち上げた。

「おいで、エドワード」

ずるり、と少年の内部を犯していた指を引き抜いた。
っ、と息を詰めたかれは、ロイの呼びかけに赤く染めた顔を上に向けて、おずおずと自分を抱く男に手を伸ばす。
首に両腕を巻きつければ、浮いた腰に手を差し入れられ、ぐっと身体を抱き締められる。
下肢の奥に宛がわれる熱く灼けた塊に、エドワードはごくりと喉を鳴らした。

「あ、あっ・・・ロイ・・・」
「エド・・・」

名を呼ぶ声音と共に、侵入してくる凶暴なそれは、
容赦なく少年の内部を押し開いてきた。

「・・・っう―――、ああ・・・っ・・・!」

幼い少年には受け止めきれぬほどの衝撃は、しかしかれの内部で強烈な快楽にすり替っていった。
前への鋭い刺激とは違う、重く、深い感覚。無意識にエドワードの腕に力が篭る。
身体の奥から熱が伝わり、その場所から溶け出してくるようだった。
不意に、ロイは身を引いた。

「あっ・・・は、ああっ!・・・っ」

満たされたような充足感から不意に喪失感へと変わり、思わず声をあげてしまう。
戸惑ったように自分を見つめてくる美しいきんいろの瞳に、ロイは思わず笑みを漏らした。
鋭く、きつい視線を宿すその瞳も、今は。
甘く潤んで、自分を誘うように揺れている。
少年の中性的な色香に囚われる。全く、どうかしている、とロイは苦笑した。
だが、そう自覚していても欲望は止まらない。
まだ幼いこの少年を、自分のものにしてしまいたくて、自分だけのものにしてしまいたくて、
理性さえ忘れかけさせられる。
やれやれ、人間ごときに心を振り回されるなんて。
・・・人間?いや、違うな。
そこまで考えて、再びロイは肩を震わせた。

「な、に・・・っあ!」

ロイの身体の動きに合わせて揺れるエドワードは、再び奥を突き上げられ上半身を仰け反らせた。
男はそんな少年の顔を覗き込み、そして口付ける。
少年は甘く優しいくちづけに酔う。
柔らかに少年の前で息づく砲身を包み込まれ、エドワードは目を閉じた。
ぬめる指先が、より強い快感を少年に与えていく。

「あっ、あっ・・・ああっ・・・ロイ・・・っ」
「エド・・・っ・・・」

いささか余裕のないロイの声音。ぱたり、と汗が少年の胸にしたり落ちる。
次第に激しさを増す下肢を突き上げる勢いに、エドワードはひっきりなしに声を上げた。
2人の結合部からは粘着質な音が洩れ、それすら2人を追い上げる。

「あっ、ダメ、も・・・っ」

ロイがエドワードの足を抱えなおし、彼の胸に膝がつくまで押し上げた。
上から叩きつけるようにしてより深くまでを抉る。エドワードの嬌声が悲鳴に近く変化する。
ロイは耳元で聞こえる少年の発する音に酔いしれながら、エドワードの目尻に溜まる水滴に唇を寄せた。
きついその体勢のまま、必死にすがりつくエドワードの腕の力に、
ロイもまた煽られる。ぐっと抱き締める腕に力を込めて。

「エドワード・・・」
「あっ・・・や、ああっ・・・!」

もう、止まらない。少年が過ぎた快楽に泣き出しても、もはや優しくなんてできない。
より快感を求めるように激しく腰を動かして。
涙を流しながら、必死に自分の動きに合わせてくるエドワードに、
ロイはぞくりと背筋に震えが走った。
自分をこんなに悦ばせてくれるのは、かれしかいなかった。
そして、誰か1人にここまで執着してしまう愚かな感情も、そのかれの態度に一喜一憂してしまう馬鹿な心も。
全て、このちっぽけな、年端もいかない少年に、自分は完全に溺れている。
本当に、この子供が愛しくて、大切でたまらないのだ。
この禁忌を犯した罪人が。
―――この、神に一番近しい犯罪者が。

「っ・・・も、ダメ・・・ロイっ・・・!」

ロイもまた、エドワードから受ける快楽に失いそうになる理性を必死に保って。
抱き締める。唇を触れ合わせ、安心させるように舌を絡めて。
軽く舌を噛んでやると、少年の身が竦み、背に食い込む指に力が篭った。

「ロ、イっ・・・あああ―――っ!」

ぶるりと身体に震えが走った次の瞬間。
エドワードを包み込むロイの手に、熱い飛沫が放たれた。
白濁した精は、自分の愛撫に少年が感じてくれたという明確な証拠。ロイの口元に笑みが零れる。
達した衝撃で強く収縮した内部から受けた快楽をなんとかやり過ごしたロイは、
そのまま脱力した少年の腰を掴んだまま、自分もまた絶頂に導くべく腰を揺らした。
達したばかりの少年は、顔を歪める。敏感な肌が粟立つ。

「エド・・・エドワード・・・」
「ロイ・・・っ・・・」

激しい動きに、意識すら流されそうになりながら。
なおも身体を貪られるエドワードは、朦朧とした瞳のままひたすら自分を抱く男を見つめていたのだった。










意識が浮上してふっと顔を向けると、ロイが自分を見下ろしていた。

「大丈夫かい?」
「ん・・・・・・多分」

どうやら、あのままなし崩し的に眠ってしまっていたようだ。
身をゆっくりと起こすと、腰にわだかまる鈍痛に少年は顔を顰める。
ロイは、はは、と笑ってエドワードを自分の胸に抱き寄せた。

「まったく、可愛いね」
「うるさいよ」

行為が終わったあとの気まずさに、突き放すようなエドワードの物言いがますますロイの笑いを誘う。
だが、逃れようにもそんな気力もなく、仕方なく少年は男の腕の中に収まっていた。
男は、幸せそうに微笑んでいた。それを認めて、エドワードはうつむく。
行為の前の男の言葉を思い出していた。
あのまま、快楽に流されて抜け落ちていた感情。
理性に戻ってみれば、常に胸を焼かれるような痛みが、エドワードには存在する。
それは、どんなに努力しても消える痛みではなかった。
これこそが、過去の罪の証。
神に近づきすぎて、地に落とされた自分の。
最大の禁忌を犯した証。
それなのに、ロイは自分を神のようだと言っていた。嫌だった。神なんかであるものか。
ただの犯罪者が。真理を背負わされたことすらいまだに信じられないのに。

「なぁ、大佐。さっきの話だけど」
「ん?ああ」
「・・・オレは、オレの望みすら叶えられない。それなのに、あんたの願いなんて叶えられるわけないだろ」

うつむいたまま、呟く。
ロイの願い。彼の望みは、大総統になることだ。
だが、そんなものを自分が叶えられるはずもない。それ以前に、彼は彼の運命を神になど祈らないだろう。
何人か信頼するに足るものたちはいたが、常に孤独なこの男。
傍にいて、初めてその瞳の孤独がわかった。
だが、自分には何もできない。
たかが15歳の自分が、一回り以上年の離れた男に何ができるだろう?
しかし、ロイはエドワードのその言葉に、ふふ、と笑った。

「叶えてくれただろう?」
「え・・・」

耳元で甘く囁かれ、エドワードの鼓動が跳ね上がる。

「私は、君が、欲しかったんだよ。・・・・・・叶えてくれたろう?」
「・・・っ」

バカじゃねぇ、と毒づけば、はは、と笑われ。
抱き締める腕の力は、ますます強くなった。ロイの胸のぬくもりを感じて、今更ながらに頬を染める。
ロイはゆっくりと少年の金髪を梳くと、エドワードを自分のほうに向かせ、微笑んだ。

「・・・エド」
「・・・・・・なんだよ」

胡散臭げにロイを見やれば。
すっと唇を重ねられ、かすかに眉を寄せる。触れるだけのキスは、やわらかく、そして優しい。
思わずうっとりとそれに溺れていると、ロイは唇を離して言った。

「だから、もう1つ・・・お願いがあるんだ」

瞳を見つめられ、目が離せない。
漆黒の瞳は、どこまでも深く、自分には到底分かりえないことばかりだけど。
映る自分の姿を認めて、エドワードはくすぐったそうに身を捩った。
ロイは、自分だけを見ていた。息が知らずあがる。

「何・・・」
「帰ってきてくれ。」

ロイはエドワードの身体を胸に引き寄せ、首筋に顔を埋めた。
少年の太陽の香りのする髪の毛がさらさらと流れる。ロイはうっとりと瞳を閉じた。

「また、君が無事に私の元に帰ってきますように。―――いつも、願ってるよ」
「・・・・・・・・・・バカ」

オレが、無事じゃないわけないだろ、と呟いて。
恥ずかしげに、もごもごと告げるエドワードに、ロイは笑った。

「ああ、そうだな。君は・・・私にとっての神だから」

そう、叶わぬ願いはないのだ。
エドワードがいる限り、自分の願いは全て叶えられる。そんな気がした。
何故だろう。理由なんかわからない。けれど。

「・・・あんたさ・・・も、神とか言うなよ」

エドワードは恥ずかしげに顔を染めたままそう言った。
幸せそうに笑うロイが、どうしても慣れない。
たった2人きりだけの時に見せるロイの優しげなその表情が、
エドワードはどうにもニガテだった。




「そりゃ、全知全能の神とは思ってないけどね。
 ・・・そうだな、君は、私に幸せを運んでくれる幸福の神様、ってところかな。」

ふふ、とまたもやロイは笑う。
もう返す言葉もなくしたエドワードは、それきりロイの胸に身体を預けたまま目を閉じた。










そう、お願いだから。
神様、どうか、いつまでも傍にいさせてください。
この、いつだって幸せをくれる少年の傍に。



ロイはエドワードを抱きながら、心の中で呟いた。





end.




Update:2004/05/22/SUT by BLUE

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