友達以下



数時間放置していた生き物は、
それでは寂しかったとでもいうのか。
石柱を抱くようにして縮こまる少年の目の前に、乾き、かさついた精の汚れを見つけた。
あの時放置しておいた場所から、あの場所までは随分遠い。
きつく拘束された身体と痛む足を引き摺って、
どんな思いであそこまで這いずったのか。
そんなことを考えて、胸の内に昏い愉悦が湧き起こるのを感じた。
完全に外れ、落ち込んだ肩。
勃ち上がったそれを手ですら慰められないのは、さぞかし辛かったことだろう。
冷たい石柱は、それでも少しは君の慰めになったかい?
抱き締めた少年は、汚れた顔をあげ、自分を見つめていた。
濁った瞳。もう、まともな思考はできそうにない金の色が、私を見据える。

「犯して」

ああ、犯してあげるよ。
私に放置され、寂しかったんだろう?
さぁ、私が欲しいといいなさい。
私だけが生きがいだと、私がいなければ生きていけないと、
そう、その小さな口で言いなさい。
ゲームは、あと残り1日。
ずっと手放さず、犯し続けてやろうじゃないか。
そうすれば永遠に、君は私のものだ。
君も、それを望んでいるだろう?















「っ・・・は、ふうっ・・・」

室内に響く、くぐもった声音。
自ら性奴隷となることを望んだ少年は、愛しげに男のそれを舐めていた。
舌を使い、裏筋を舐め上げ、そして焦らすように亀頭をくすぐる。
その小さな口に大きさを増した自身が呑み込まれる。内部の生暖かい感触に、ぞくりと背筋が震えた。
もはや少年に、抵抗の意思はない。自然と口の端に笑みが零れる。
なにかアイスクリームでも食べているような扱いにひどくそそられた。
前髪を掴み、顔を上げさせる。
潤んだ金の瞳は、狂気すら滲む。軽く目を細める。
商売女のように色目を向けられ、不覚にも息を呑んだ。

「・・・手も、使え」

片足で体勢を保つのはつらいだろう。だがそんなの承知の上だ。
バランスの崩れそうになる体を必死に支えて。
私の足にしがみついていた左手を砲身に絡めた。倒れ込むように、喉の奥まで呑み込まれる。
苦しげに眉を寄せるエドワードは、だが恍惚としたように男のものを扱いていた。
ぴちゃぴちゃと、濡れた音が響いていた。
少年の唾液と、先走りの液が混じり合い、少年の口の端を汚す。
その卑猥な光景に、前触れもなく喉の奥で精を放つと、
汚れきった彼の顔にまた新たな筋が刻まれた。
飲み下すのを遮って、頬をぐっと掴んだ。零れる精液に微かに少年の顔が歪む。

「いい子だ」

軽く唇に触れてやった。
濡れた唇を、舌でなぞる。エドワードは顔を傾ける。
貪欲な少年は、自分から舌を出し、男のそれと絡めてきた。
瞳を閉じ、口の端が汚れるのも気にせず、くちゅくちゅと音すら立てて。
その恍惚としたような表情に、
自身のそそられるのを感じ、だがそれに素直に身を委ねられず、軽く目を細めた。

・・・だから、本当に、お前という奴は。
その時にだけ言うことを聞き、そして甘えればいいとまだ思っているのか。
素直に快楽を求め、命令に従えば優しくしてくがれる?
思い上がりもいいところだ。
そうやって君の策に嵌り、騙されたことなど星の数。
だがそんなことより、
今更、私が君に優しくできるはずなんかない。
はやく、はやく気付きたまえ。
君は私の、

「・・・さぁ」

絡められた舌にまともに取り合わず、
唇を離した。少年はまだ足りない、といった切ない表情を見せたが完全無視を決め込む。
調子に乗るな。ただ気まぐれに優しく抱き締めてやっただけで、
その立場をすっかり忘れたというのか?
突き飛ばすように彼の顔を引き離し、後ろを向かせる。
唇を噛んだエドワードは、よろよろと床を這い、その秘孔を晒した。

「っ、・・・ん」

つぷ、と指が簡単に入り込むのを、黙って見ていた。
エドワードの息があがる。冷えた空間に、少年の荒い吐息だけが響く。
エドワードは誘うようにこちらを見、懇願するかのように瞳を揺らした。卑猥な光景。少年が大人を誘う罪深き行為。
奥を拡げる少年の指の間から、真っ赤に熟れた肉が見え隠れた。

「ほら、自分でするんだ」
「・・・っ、あ!」

もどかしげに動く手を掴み、奥まで呑み込ませる。
無理矢理3本を押し入れた。だが、それでも少年のその部分はすぐに解け、濡れた水音を立てる。
少年が自ら堕ちていく様を見るのは、ひどく自分の中の劣情を煽った。
下肢の内部で蠢く指が、次第にその激しさを増していく。
身体の飢えに耐えられない少年は、羞恥と屈辱に頬を染め、
だがそれすら快楽の呼び水となっているかのように乱れた姿を晒していた。

「あ・・・、っ、ダメ・・・おねが・・・っ」

潤んだ金の瞳が懇願を乗せている。

「・・・仕方のないやつだ」

くくっと笑う。
エドワードの手首を掴み、乱暴に動かしてやる。
少年の小さな手なら、もしかしたら指どころか拳まで入ってしまうのではなかろうか。
少し興味が湧いた。一旦指を抜かせ、5本まとめて突き入れる。

「っひ、痛っ・・・ああ・・・っ!!
「ほう。よく入るものだな」

エドワードは苦痛に啼いたが、さしてひどいものではなかっただろう。
ぱっくりと開いたその部分が戦慄き、呑み込もうとさえしているのだから。
少年は泣いて抜いてくれ、と懇願していた。
無視した。痛いくせに、感じているのだろう?その身体が何よりの証拠。容赦なくその手を押し込んでやる。
指の付け根の部分はさすがにキツすぎたか?
皮膚が裂け、血が流れていた。エドワードは悲鳴をあげ、顔を歪めた。
だが、そのおかげで少年のその部分は少年の手首から先を全て呑み込んでいた。エドワードは抜こうと身を捩るが、一旦入ったものがそう簡単に抜けるものか。
ああ、エドワード。君は本当に淫乱だな?
手先を呑み込んだそこが、ぎゅっと収縮し、その手を離そうとしない。
不自由な格好で腕を動かすたびに、洩れる声音。

「そのままイけば、許してやろう」
「・・・っ、う・・・」

尻に突き入れた腕を押さえたまま、声をかけてやる。
苦痛なのかそれとも屈辱のためか、なかなか動こうとしない手を揺らしてやる。
エドワードは必死に苦痛に耐え、おずおずと足を開き、内部を弄んだ。
ぐちゃり、と卑猥な音が洩れた。いい眺めだ。知らず唇を濡らす。
泣き腫らした目をこちらに向けるエドワードと、視線を絡めた。ありったけの懇願に、だがまだまだ。許してやる気など起こらない。
それ以上に、私がこの光景を見ていたかった。
だが。
その時、エドワードと2人きり、そんな空間に無粋な機械音が鳴り、眉を顰めた。
エドワードははっと身を硬くした。突然鳴った音とは、電話のベル。
勝手に休みを取ったことは自覚していたから、
万一のために繋いでいたものだ。
下手に連絡が取れないまま、屋敷に来られるほうがはっきりいって困る。そもそもあの中尉に居留守なんて通用しない。やれやれ、面倒なことだ。

「・・・続けろ」

目を見開く少年に、そのまま行為を強要して。
壁にかかった受話器を取る。聞こえてきた声は、案の定あの有能な部下だった。
まったく、よりによって今かけて寄越さなくとも。
こんないい時に限って。困ったものだ。

「なにかあったのか」

そのつもりではないのだが、硬質な声音で応じる。
電話先の彼女は、しかしそれを気にかけることなく用件を告げた。

『アルフォンス君が大佐に繋いで欲しいとのことですが・・・お出になりますか?』

アル、アルフォンス。
その名を聞いて、自然と口の端が持ち上がる。
あれから3日。そういえば、すっかり彼へ連絡を入れるのを忘れていた。
エドワードが弟想いであるのと同じように、弟のほうも兄を一番に想っていた。そう、なんのことはない、強い絆を持った、たった2人の兄弟。
ふと視線をずらし、床に這いつくばったままその手を挿し入れ喘ぐ少年を見下ろした。
捕らわれたままのエドワードに、
皮肉げに笑みを向けて。

「ああ、繋いでくれ」

しばらくすると、あの鎧の見た目とは想像がつかない、若い声をした少年が電話口に出た。
極力、声音を柔らかいものにしようと努力した。エドワードの存在を言うつもりはなかった。

「・・・やぁ、アルフォンス君。元気だったかい?」

途端、エドワードは動きを止めた。
案の定だ。どうせ例え私がどんなに彼を独占しようと、彼が弟を忘れるはずがない。
電話に弟の存在を感じ、エドワードは自分が今受けている屈辱を思い出したようだった。
頭に血が上り、顔を真っ赤に染めている。
だがそんな反応を、私が許すはずがないだろう?

「・・・ア、・・・っあああ・・・!!」

腕を掴み、更に奥まで突き入れてやった。
紡ごうとした声音が喘ぎに変わった。
それでいい。お前は淫らな姿を私に晒していればそれでいいのだ。
口の端を持ち上げる。その間も、電話口ではいたって普段どおりの声音で、少年に応じた。

「すまないね、アルフォンス君。鋼のはまだ極秘任務から帰ってきていなくてね。もう3日経ったことだし、そろそろ連絡があるとは思うんだが・・・」

絶句する少年を見下ろす。
そうだよ、確か私が命令し、付き合えといったのはこの3日間だけ。
それが過ぎてからもここにいる気なら、それはもう君の意思だろう?エドワード。
くっくっと笑いがこみ上げる。エドワードはすさまじい眼光で私を貫いた。
まだそんな気力が残っていたのか?
まぁ、そうでなくてはおもしろくないがね。

『いえ、こちらこそ、兄さんを頼みます。それより、もし兄さんから連絡があったら、伝えて欲しいことがあって・・・』

きっと心配しているから、と付け足す少年に、やれやれと肩を竦めて。
まったく、兄も弟も微笑ましいことじゃないか。
妬けてしまうよ、エドワード?
見下ろすと、少年は強烈な視線をこちらに向けた後、
呻き声をあげながらも必死に下肢に埋めていた手を抜き去った。
反抗の眼差し。エドワードはその腕をこちらに伸ばす。
そして、叫んだ。

「・・・っ」
「っ、アル・・・!オレは、っ・・・う―――・・・!」

疲労困憊、苦痛も激しいだろうに、
・・・やれやれ、君にはいつもいつも驚かされるよ。
空いていた片腕で、体液に汚れたその手を捻り上げる。元々脱臼や骨折で痛んでいた腕は、軽く捻るだけで少年の言葉を封じるには十分だ。そのまま乱暴に床に押し付ける。どさり、と音がして、エドワードはまたもや苦痛に呻いた。
馬鹿なことを考えるな。
弟の存在を感じて、ここから逃れられるとでも思ったか?
そんなもがれた手足で、そんな痛んだ身体で、お前に何ができるというんだ。
フン、と鼻で哂う。転がった手の甲を踏みつけた。
少年の顔に恐怖が広がる。そうだ、また痛い思いをしたいなら与えてやるぞ?

「・・・大佐?」
「ああ、すまない、旧い友人が来ていてね。今ちょっとごたごたしているんだよ」

友人?笑わせる。

『あっ・・・すみません、お忙しいところ』
「いや、こちらこそすまないね」

そもそも、私とこの少年の関係を言葉で表すとしたら何になるんだか。
上司と部下?それは肩書きであって、もともと個人関係を示す言葉ではないしな。
ならば、恋仲?
肌を重ねてきた回数を数えれば、確かに恋人といってもいいかもしれない―――けれど。
絶対反対されるだろうな。まぁ、私も別にそのつもりはない。
愛しては、いるんだがね。
こんな年差の少年に振り回されているなんて、なかなか認めたくないものだし。
ああまったく。
国家錬金術師という同業者。
元々共通点なんて、錬金術を使うことくらいしかなかった。
だから、会話なんて弾むわけでもなし、そもそもまだ年端もいかない子供なのだから、
友達だなんて思えるはずもなく。
さて、では何だろうな。
可哀想に、いくつになっても対等に扱ってもらえないのだから、
一生友達になんてなれないだろうね。
だからといって、ガキが恋人なんてゴメンでね。
だから、私の君への執着心は、友人としてでもなく、恋人としてでもなく存在するのだろう。
ただ、傍に置いておきたいだけ。縛りつけ、こうして鎖をつけてでも傍に。
ああ、それでは友達以下どころか、
人間以下だ。
だが、君はそのほうが似合っている気がするんだがね、エドワード?

がちゃり、と電話を切った。
エドワードは死刑宣告を受けたような顔をした。もう、外に出られる機会はないのだと。
絶望した目が私を見つめた。
そう、タイムリミットはあと数時間。さぁなにをしよう?

「なにをして欲しい?」

足を外して、鎖を掴んだ。
首が引きつれ、エドワードは呻き声を上げた。
見上げる金の瞳が何かを訴えていた。なんだ、まだ懲りないのか?
冷ややかな目で見下ろしてやると、確かに少年は怯えたように身を震わせた。けれど。

「なぁ・・・アル・・・なんて、言ってたんだよ・・・」

掠れた声。そんなに気になるのかい?
もはや外に出ることも許されない状況下にあって、
君には何の関係もないだろうに。
もう、今の君には弟のことを考えなければならない重荷なんかないんだよ?
彼の肉体を失わせたのは確かに君かもしれない―――が。
ここで、そんな罪を背負う必要はない。
ただ私のために足を開き、声を上げて、私の命にだけ従っていればいいんだ。
考えてもみたまえ。これほどラクな人生など、他にないだろう?
そう思うのに、どうして君は、
そんなつらい運命を甘んじて受け入れる。
まったく、私には理解できないよ。

「知りたいなら、まず私を満足させて見たまえよ?」
「っ・・・」
「さぁ、続きはどこからだったかな」

唇を噛む。そんなエドワードをおもしろがるように上から見下ろす。
少年は再び床に這うと、震える腕を下肢に伸ばした。
先ほど拡げた場所は、まだ弛緩したまま。
エドワードは悦楽の声を上げて、その手を突き入れる。
ぐちゅぐちゅと鳴り響く水音に唇を歪ませ、少年の頭を撫でてやる。
とめどなく溢れる涙は、
だが私の欲をより激しく煽るものでしかなかった。





to be continued.





Update:2004/09/30/THU by BLUE

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