光の射す処。vol.1



「んんっ―――・・・」

下肢に異物を押し込まれ、エドワードは思わず身を竦ませた。
何度やっても慣れないまま、同じような反応を示す彼に、かの少年を抱く男は苦笑する。
内部は昨夜の行為のせいでしっとりと濡れていて、主の意思など関係なしに男の指を受け入れていた。

「・・・った、いさ・・・っロイ・・・!」

思わず少年の口の端から漏れた己の名に、ロイは口元に笑みを浮かべる。
いつも軍の階級名で呼ばれることが多いだけに、こうしている時だけ時折聞かせてくれる自分の名は心地よかった。
少年は、眉を寄せ、自分を強引に抱く男の顔を睨みつける。
昨夜も行為で遅くまで眠らせてもらえなかった彼にとって、
またもや体力を消耗させるような行為を強いる上官はひどく意地悪に思えた。
上官―――。そう、彼は少年の上官であり、後見人であり、そして今では誰もが暗黙の了解をしている恋人関係にあった。
もちろん、少年は認めていないし、機会さえあればこんな関係を切りたいと―――、
こんな上官などおさらばしたいといつでも思っている。
けれど、一度深めてしまった関係はそう簡単に浅くなるはずもなく、
それにこの上司は自分を離してくれるはずもないだろう。
結局、少年は泣き寝入りのように彼に抱かれ、
そして不本意ながらもひどく甘い声を上げさせられる羽目になっていたのだった。
指が2本、3本と増やされた。中を掻き回されると、弛緩し切った内壁が卑猥に収縮をしてしまう。
濡れた音が室内に響き渡り、少年はそれを聞くまいと白いシーツに額を当てたままぎゅっと目を瞑っていた。

「・・・エド。力を抜くんだ」

男の声が背後から聞こえ、次の瞬間散々内部を弄んでいたそれが襞をくすぐるように抜け出て行く。
喪失感に声が洩れ出す前に、その場所に宛がわれる男の雄。
指とは比べ物にならないほど熱く、質感のあるそれに、エドは息を呑んだ。
何度こんな行為を続けようと、慣れるわけがない。
自分も持っている男としてのそれ―――それを自分の奥に押し込まれるのだ。初めての時は冗談かと思った。
あんな質量のあるものが、どうやって自分の中に入っていくのか。無理だ。不可能としか言いようがない。
だというのに、現実には男の執拗な愛撫によって男を受け入れられるまでに広がったそこは、
もはや待ち焦がれているように収縮を繰り返している。
エドワードはそれを自覚して、シーツを握っていた指先にさらに力を込めた。

「っ・・・う―――・・・」

額が、よりシーツに擦りつけられる。
男に腰を高く抱え上げられ、身体を押される。前屈した体がつらい、とエドワードは眉を顰めた。
けれど、行為は止まることなどない。ロイのものは、確実に内部を滑り、奥へと目指して侵入を続けている。
不意に前に手をかけられ、少年の身体がぶるりと震えた。

「っや・・・ぁ・・・!!」

その瞬間、ロイは腰を強く打ち付ける。
エドワードの熱い内部に自身の全てを受け入れさせて、男は満足気な吐息を洩らした。
手を伸ばして、震える彼の頭に触れる。金の髪は、彼の汗でしっとりと濡れて。

「・・・動くよ」
「っ・・・」

彼の髪を撫でて、それからロイは腰を動かす。
一度収めたそれを、ゆっくりと引き抜けば、エドワードの口元から微かな声が上がった。
前は少年の細い腰に自らのそれを打ち付けるのは酷な行為ではないかとも思ったものだが、
今はそんなことを考えている余裕はない。
少年の内部が自身に強く絡みつく様に、ロイはひどく感じたように唇を噛み締めた。
キツイそこに、次第にスピードをつけて、抉るように熱を感じて。
こちらも快感に身を竦ませたままの少年を認める。
シーツを掴む指先を、上から包み込むようにして重ねてやると、エドワードはびくりと肩を揺らした。

「っは・・・ぁ」
「エド。こちらを向いて」

首筋からうなじ、そして頬までを唇で辿り、ロイはエドワードの気を引く。
なんだよっ・・・、と顔を快楽と苦痛に歪めた少年が後ろを向くと、ロイはすかさず彼の唇を塞いだ。
しっとりと濡れたそれは、互いの体液を絡め取り、含み切れないそれはエドワードの口の端から流れ出す。
濡れた感触にエドワードは嫌そうに眉を寄せたが、ロイはそんなことなど構わず、彼の身体を反転させた。

「んっ・・・う・・・!」

繋げた場所を支点に、ロイはエドワードの身体をぐるりと回す。
足を抱え上げて、腰を掴んで。
けれど、繋げた箇所は一向に深まりを見せたまま抜け出る気配もなにもなく、
エドワードは内部をそれにぐるりと擦られる感覚に息を呑む。
シーツを掴んでいた両手をロイに捕らえられ、上半身もロイを目の前にするように仰向けにさせられて、
見上げた先に自分を覗き込んでくるロイの姿を認め、エドワードはぷい、と顔を横に逸らしてしまった。
おやおや、とロイは笑う。
エドワードが羞恥で思わずしてしまったことなど、とうにお見通しのように。
そんな仕草も可愛い、とロイは彼の頭の横に手をつける。
首筋から耳の裏に舌を這わせれば、特にそこが弱い少年は途端にいやいやと首を振る。
それを手で押さえつけて、ロイは彼の耳たぶを甘噛みする行為を続けた。
耳孔に舌を差し入れれば、や・・・っ、と震えた声が漏れる。
ざわざわと背筋に寒気が走るような感覚が、エドワードは苦手だった。

「・・・いいかい?」

耳元で、そっと囁いて。
ロイは片手で少年の雄を握りながら、彼の反応を確かめる。
内部に押し込まれたままの熱、暖かな手のひらに包まれる自身、そして囁かれる声音。
全ての感覚を全身で捉えた少年は、あつい・・・とだけ彼に応えた。
与えられる熱。その全てを受け入れさせられて、少年は思考すら途絶えがちだ。
視点の会わない琥珀色の瞳にロイは唇を寄せて、彼は下肢への行為を再開させた。

「っ・・・っはぁ、あっ・・・」

うすく開かれた唇から、甘い声が漏れ出すのが聞こえた。
それだけで、ロイの身体は熱さを増していく。
少年はロイの期待通りの反応を常にベッドの上で彼に見せ、彼は常にエドワードを悦ばせた。
カーテンの隙間からは淡い光が漏れ、シーツの上で揺れる少年の身体を照らしていた。

「綺麗だ、エド」

少年の顔を覗き込み、ロイは呟く。
とうの昔に解けた髪が、シーツの上で波を作る。
ロイから受ける快楽に身を委ねた少年は、力の失った身体を投げ出し、時折反射的な感覚に身を震わせる。
甘い吐息にめまいがしそうなほど感じてしまったロイは、
少年の上に再び身を傾けると、その吐息ごと唇で封じてしまった。
緩やかに下肢を動かしてやれば、もどかしさにエドワード自身から腰を打ち付けてくる。
一旦素直になってしまえば、どこまでも甘えに走るエドワードの幼さに苦笑して、ロイは貫く動きを早めた。
腹に当たる熱の先端は先走りで濡れ、彼が動くたびに刺激を加えられる。
喉を仰け反らせて喘ぐ彼の唇を貪る行為は、ひどく甘く、ひどく永遠のように思えた。
エドワードの眉が一層顰められ、身体が一瞬強張りを見せた。

「もう・・・限界なのかい?」
「っ―――・・・」

恥ずかしげに、こく、こくと。
首を縦に振る様が、ひどく子供らしく、少年らしいと思う。
年齢の割りに大人びた彼は、普段そんな弱々しい態度を他人に見せることがない。
それをロイは知っていたから、
頬を朱く染め、自分にすがるような瞳を向けて懇願する少年のそんな姿が、本当に可愛いと思えた。

「・・・っロイ・・・っ!」

エドワードが首を振る。もう限界だと、身体で訴えるそれを見て、
ロイもまた繋げた下肢から伝わる熱い刺激に息をつく。
もうすぐ達きそうなほどまで高められたエドワードのそれを手で包み込むと、ロイは下肢のリズムに合わせるように砲身を扱き上げた。

「っあ、はっ、ああっ・・・!」

快楽の波が、小柄な少年の全身を貫く。
エドワードは嫌だ、と達きそうになるのを必死に耐えていたが、
鎖骨の辺りをくすぐる唇や、シーツに縫い止められたキツイ戒めにも感じてしまうのか、彼の逃げ場はもはやなく。
強く全身が痙攣した瞬間、エドワードはついに抑えていた欲をロイの手の中に吐き出した。
収縮する内部。ロイがその感触に眉を寄せる。
こちらも既に高まりきっていたそれは、エドワードの痴態に簡単に登りつめ、ロイは声を出すまいと唇を噛んだ。

「っ・・・」

彼の内部に想いの丈を解き放って、それから彼の傍に身を寄せる。
放心し、視線を彷徨わせたままのエドワードに、ロイは軽く彼の頬に唇を寄せた。
宥めるように。少年の瞳がゆっくりと閉じられる。
ロイはその様に軽く笑みを浮かべ、それからベッドの上から身を起こした。

「・・・・・・まだ、大丈夫だな」

時計を見やれば、朝食の予定にはまだ45分ある。
ベッドから降り立った彼は、そのままの格好で部屋に備え付けてあるシャワー室に向かい、
昨夜と今朝の汗を流すために冷たいシャワーを浴びた。
次第に寝ぼけた頭と身体が目を覚ましていく感覚を覚える。
火照った体に冷たいそれは気持ちよく、ロイは素肌にローブを羽織ると未だベッドに寝そべったままの少年を見やった。

「起きないのかい?」
「んー・・・まだ眠い・・・」

そもそも起きる気力が湧かないのは、先ほどのロイとの行為で身体がだるさを訴えているからなのだが。
ロイは子供だな、と笑い、部屋の窓際へとゆっくりと歩む。
カーテンを開ければ眩しい日差しが部屋一杯に差し込んできて、エドワードは思わず丸くなって布団の中に隠れてしまった。

「ほら、みてごらん。こんなに天気がいいだろう」

最近の雨降りから、一気に快晴だな、とロイは笑う。
エドは眩しさから逃げようと闇にすがりつくが、どうにも太陽の明るさはそれを超えるようだ。
あぁ、もう苛めだぜ・・・とか呟きながら身を起こすエドワードに、ロイは言った。

「ほら、早く着替えて。君がそのままだったら、朝食に間に合わないからね」
「んー・・・わーったよ・・・」

寝ぼけたまま、目を擦って。
エドワードがやっとのことで身を起こすと、ふっとロイに抱き締められた。
抵抗する気にもならない彼は、そのまま前を向かされ、唇を奪われても大人しくしたままだ。
軽く重ねられたそれは、先ほどの濃い行為の余韻を残すものではなく、ただのおはようの挨拶なのか。
唇を離すとロイは彼を腕から解放した。

「・・・シャワー、浴びたほうがいいね。一人で出来るかい?」

出来るか、と聞いたのは、無論シャワーのことではない。
彼が中に出してしまったそれの後始末、ということだ。
エドワードはロイの言葉をぽかんとして聞いていたが、次第に彼の言わんとしていることが分かったのか顔を真っ赤にして、
だ、大丈夫だよっと彼を睨んだ。

「ふうん。この間は大変そうにしていた気がするけど?」

からかうような口調に、一層エドワードは頬を朱に染める。
もう、相手にしていられないと思ったのか、彼は手元のシーツを手にしたままシャワー室にかけ込んでしまった。
そんな彼も、ロイは可愛いと思う。
シャワー室でばたばたとしている彼に、ロイはすりガラスの向こうから声を掛けた。

「私は下で待っているよ」
「あぁ、わかったって」

もう、ロイを相手にしているのも嫌らしい。嫌われたかな、と彼は苦笑を浮かべた。


窓の外は快晴。雲ひとつ見えない青に、ロイは目を細める。
シャワー室から出てきた少年に気持ちのよい風を送ってやろうと窓を開けて、
ロイは静かに部屋を出た。





to be continude.




Update:2004/01/20/TUE by BLUE

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