Re-SET vol.1



「・・・まただ」

セフィロスは書類を捲り上げながら呟いた。
そこには、過去のとあるミッションで死んだ男のことが記載されていた。
ただの戦闘時に巻き込まれて死んだというものならもちろん何の問題もない。
実際、その報告書には戦況被害届のようなもので、
その任務について惜しくも命を落としてしまった者達の名前と概要が羅列されていた。
だが、セフィロスはそれを食い入るように見ていた。
片方の手でもう一枚の書類を取る。

「ほら、見てみろ。ここに書いてある戦闘開始時刻が17時24分。そしてこいつの死亡時刻が17時11分。どう考えても死亡理由として書かれている『戦闘開始時の敵陣よりの散弾』と明らかに矛盾している」
「あー・・・まぁそうだけど。
 でも、あれじゃん?当時、隊の中で違法薬物が流れてたっていうから、そのせいとか」

山積みの書類を前に唸るセフィロスのデスクに煎れてきたコーヒーを置きながら、
クラウドはセフィロスの手元を覗き込む。
彼は神羅の英雄の補佐を任されていた。雑務に始まり、彼のスケジュール管理や代理など秘書事務、そして文字通りセフィロスの副官までをこなしている。
1人でこなすには大変な仕事であるが、
今のところセフィロスが心から信頼している者がこの少年だけだというのだから致し方ない。
彼以外の人間が補佐の任についたことは過去にあったが、
彼以上に長続きした人間はいなかった。

「薬物、ね。だがこの男の遠征直前の薬物反応は白だったんだぞ。それに、そもそもあくまでそれは噂に過ぎないし、当時、私自身探りを入れてみたがなにも疑わしいところはなかった。むしろ後々上層部が何かを隠すためにそんな根も葉もない噂を流したとしか思えん」
「自分たちに不利な噂を、上層部が自ら流したってこと?」

神羅軍の内で麻薬が横行しているなどスキャンダルだ。
マスコミに知られれば神羅カンパニーは大変な不名誉を被ることになるだろう。

「だからといってマスコミに公表されるわけでもあるまい。神羅の力は絶大だ。・・・いや、それもあるだろうが、それ以上に知られてはならない事項を隠したかった、か・・・」
「んー・・・俺にはよくわからないよ」

また頭を悩ますセフィロスにクラウドはかすかにため息をついた。

セフィロスのこの調査は、実は誰に命を受けたわけでもなく、
彼自身が不審に思って調べているものだった。
であるから、セフィロスの腹心と言えるクラウドがそれにつき合わされないはずはなく、
彼の支持どおり書類集めに奔走していた。
その結果がデスクに積まれた山である。
セフィロスはその膨大な報告書やらの中から、そんな小さな矛盾を探し続けていた。
きっかけは、彼の直属の部下が不審な死を遂げたことから始まった。
セフィロスは勿論詳細な調査を上に求めた。
だが、実際目に見える調査など行われた形跡はなく、
数日後彼に渡されたのは死亡報告書。
別になんの疑いもない。戦闘時の流れ弾の被弾による死。
だが、その死を目の前で見てきたセフィロスには、到底信じられないものだった。
彼は、戦闘の直前、突然陣営で暴れだし、そのまま敵陣に飛び込み、死んでいった。
ただこの反応ならば、興奮剤の過剰服用であったり、違法麻薬によるものと判断されるかもしれない。
だが、死んだ直後、彼の身体から薬物反応などなかったのだ。
それでは、あの反応は何なのか。
だからこそ徹底した調査を彼は申し出たのだが、
結局それは聞き入れられず、ただ紙切れ一枚だけが彼の手元に残る。
そして今こうして調べれば調べるほどに、
そうした不審な死を遂げている者達の名前は増えていくのだった。
神羅上層部には何か裏がある。
そう思わざるを得なかった。
だが、それでは神羅は何を隠しているというのだろうか。

「・・・なぁなぁ。もうこんな時間だし、そんなわからないことほっといて寝ようぜ」
「まだだ。折角集めてきたこれをまとめてから―――・・・っ」

甘えるように首に腕を回してきたクラウドが、
そのままセフィロスの唇を自らのそれで塞いだ。
突然のその行為にセフィロスは眉根を寄せクラウドを引き剥がそうとするが、
がっちりと頭を掴まれ逃れることができない。

2人は、勿論公認であるはずもなかったが、恋人と呼べる関係にあった。
最初に踏み込んできたのはクラウドだった。
故郷にいた頃からセフィロスという存在に憧れていた彼の想いは強く、
もともと出会ったときからその若い割に理知的な瞳に心を奪われていたセフィロスは、
初めて感じた胸の熱くなる想いに戸惑いを覚えながらも、
彼の想いをわりとすんなりと受け入れていた。
だが、この少年とこんな関係になってからというもの、
幾度となく彼に翻弄され、前後不覚といえるような状態になってしまうこともしばしばである。
そのたびにセフィロスは自分が上司なのに、と頭を抱えてしまうのだが、
結局惚れた弱みというのか、
彼に流されてしまうことを嬉しいと思ってしまう自分もいた。
そして、今もまさにそんな状態だった。

「ん・・・ふ―――・・・うっ・・・」
「なぁセフィ・・・」

そそのかされるようにクラウドの声が耳に響く。
自分の名を呼ぶその声音は甘く、妖しく、セフィロスは思わず背筋を震わせた。
ばさり、と手にしていた書類が足元に落ちる。
セフィロスはクラウドの言葉に魔力を感じていた。
彼を拒絶できない。
抱きすくめられ、キスを続けられると気が遠くなる。
ここがどこであるかも頭から抜けていき、ただ受ける感覚だけに意識が集中してしまう。
クラウドのキスの溺れそうになるセフィロスは、
必死に押し留めようと眉を寄せ、クラウドの胸を押した。
けれどまともな力が入らないその腕は、クラウドの笑いを誘うだけ。

「セフィ」
「んっ・・・こ、んなっ、ところでっ・・・」
「じゃ、ベッドに行こう。」
「・・・っ」

唇を離し、にっと笑いかけてくるクラウドが恨めしい。
しかし、背にまわされていた片手を下肢に下ろされ、頬が染まる。
キスだけで服の上からでもわかるほどに反応を示しているそれをクラウドの手に捕らわれ、
セフィロスはあきらめたように身体の力を抜いた。

「・・・いい子だね、セフィ」
「・・・・・・明日、これはお前が整理しろ」
「アイ・サー。もちろん、俺がやっておくって」

片目を瞑って、足元の紙きれを拾い上げる。
乱雑に積まれた書類はそのままデスクの上に放り出され、
セフィロスとクラウドは寝室になだれ込んだ。
当然のことながら、補佐官の私室と指揮官のそれは二間続きとはいえ分かれている。
だがクラウドはここ最近、自分のベッドを使ったことはなかった。
勿論、その理由は言わずもがなである。

「・・・ん・・・、・・・あっ」

普段の黒のコートではない、薄い生地の室内着が、
肌を滑るクラウドの手に乱されていく。
背を白いシーツに押し付けられるセフィロスは、
恥ずかしそうに身を捩りながら、しかしクラウドの下から逃れることもできない。
少年の指が彼の肌をなぞり、彼の敏感な部位に触れるたびに、
セフィロスは無意識のうちに声を洩らした。
羞恥に唇を噛み締める。
その上を、クラウドの舌がゆっくりとなぞっていく。
そうしているうちに引き結んでいたはずの口元はすぐさま解け、甘いキスに溺れていく。
セフィロスが絡む舌に夢中になる頃には、
彼のシャツはほとんど脱がされ、クラウドの目の前に白い肌を晒していた。

「・・・キレイ。あんた・・・」
「あっ―――・・・、だ、あ、んっ!・・・」

クラウドの唇が、いきなりセフィロスの胸の突起に吸い付いた。
既にツンと立ち上がっていたそれを強く吸われ、歯で引っ張るように噛み付かれる。
かと思えば、押しつぶすように舌で刺激され、ねっとりとした体液が絡む。
いつになく長い胸への愛撫に、セフィロスの全身はひどく敏感になっていた。

「・・・っ、や、だめ、だっ・・・」
「そんなに好き?ココ」
「違―――・・・っあ!あっ・・・ん、・・・!」

左だけでなく、右側のそれをも吸われ、息が上がる。
左手で散々嬲られ、濡れそぼったそこを刺激しながら、クラウドは空いているほうの手で腹の辺りを探った。
途端、びくりと震える青年の身体。
白い陶器のようだった肌は、気付けば薄く桜色に染まっていた。

「・・・ひっ・・・あ・・・」

クラウドの手がセフィロスのボトムにかかった。
驚いたようにセフィロスは身を捩る。だが、力の入らない身体はクラウドに捕らわれたままだ。

「嫌?セフィロス」
「あ・・・だめ・・・っ!・・・」

青年の言葉もロクに聞かず、クラウドの手は内部に侵入していた。
もうすでに固く張り詰めているそれを、下着の上から軽く擦る。もどかしさに身体が疼き、セフィロスは唇を震わせた。
顔を上げて、覗き込む。視線を絡ませれば、怯えたような碧の瞳が自分を見上げていて。
懇願しているようなその色に唇を笑みの形に歪ませて、
クラウドはセフィロスの唇に再び口付けた。
くぐもった声音が重ねられた口元から洩れる。
下肢を捕らえたクラウドの手は止まらない。

「ん―――・・・う・・・っ」

セフィロスは柳眉を顰めて与えられる感覚に耐えた。
直接触れられ、青年の息があがる。砲身を強く握り込まれ、意識が遠のくような気さえしてくる。
羞恥にいたたまれなくなったセフィロスは、
しがみつくようにクラウドの首に腕を回した。
少年の金の髪に指を絡め、自分の胸に引き寄せる。
真っ赤に染まっているであろう自分の顔を見られたくなかった。
クラウドは綺麗に浮かび上がった鎖骨に歯を立て、その部分を強く吸い上げた。

「あっ・・・あ・・・やぁ・・・っ」

首元や胸に花弁を落としながら、クラウドは下肢への刺激を続けていた。
先端から漏れる体液が下着に染みを作っていた。無意識のうちに腰が浮く。
セフィロスのそんな仕草に、
クラウドはこれ幸いと下肢に纏っていた衣服を全て脱がし、ベッドの下に放る。
身に纏うもの全てを取り去られ、ベッドに沈む青年の身体は、
その長い銀の髪に映える美しさを保っていた。
クラウドは目を細めた。
神が創りたもうた彫刻のように、目の前の青年は美しい。
小刻みに震える身体も、熱い吐息を洩らす唇も、全て奪ってしまいたい。

「セフィ・・・、」
「んっ」

甘く名を呼ばれ、とっさに目を瞑った。
ぞくり、と背筋から這い上がる感覚に、セフィロスは必死に耐える。
だが、クラウドの手に自身を包み込まれ、柔らかく扱かれるだけで、快感が立ち上る。
そして、今のセフィロスにそれから逃れる術はない。

「あ・・・」
「俺を見て。セフィロス」

要求され、おずおずと瞳をあけると、目の前には底の知れない青。
深い海の底を見ているような、そんな気分に捕らわれ、セフィロスはクラウドの瞳に魅入られたように彼と視線を絡ませる。
その時、先ほどの緩やかなそれとは違う、激しい刺激が彼を襲った。

「あっ・・・は、ああっ!!」

クラウドの指が、セフィロスの奥へと強く侵入していた。
クラウドを見ていられず、ぎゅっと目を閉じる。
視界がなくなるとその分意識が下肢のほうへと傾いた。
きつい内部に指がかなり強引に入ってくるのが自分でもわかる。
そして、そのくせ彼を呑み込もうとするように蠢く自身の内部の感覚まで。
セフィロスには、それがクラウドにはっきりとわかられていることが恥ずかしくて仕方なかった。
クラウドが片手でセフィロスの膝を立てさせた。
赤く熟れたその部分がクラウドの指を呑み込んでいる。それを目の前に晒され、身体が竦む。

「あ・・・い、やだっ・・・」
「こんなに感じてるのに?」
「や・・・ああ!」

クラウドは一旦指を引き抜くと、今度は中指と薬指を合わせて一気に彼の奥へと突き入れた。
衝撃に仰け反るセフィロスの身体を、クラウドは押さえつける。
指の付け根まで押し込み内部で曲げたり掻き回したりを繰り返していると、
内部は次第に濡れた音を洩らしていった。
せわしなく息をつく青年の唇からは、もはや止まらない喘ぎ声が漏れている。
クラウドの指がセフィロスの弱い部分に触れる度に、高い声音が部屋に響く。

「あっ・・・だ、そこっ・・・!」
「・・・達きたい?」
「あ・・・!」

奥を指で嬲りながら、クラウドはボトムの前を寛げ彼のそれをセフィロス自身に押し付けた。
ぬちゃり、と音を立ててそれが絡む。
セフィロスの張り詰めたそれはクラウド自身に擦られ、より一層質量を増していった。
もう、セフィロスは達する寸前だ。衝動に耐えようとして力を込める腕が震えている。クラウドは笑みを浮かべる。ますます抱き合う力が強くなる。

「あ―――・・・。もっ・・・クラ・・・っ」
「セフィロス・・・・・・」

クラウドが爪先で下肢の奥を強く擦り、その衝撃でセフィロスは頂点に達した。
びくびくと痙攣する身体を止められない。
セフィロスはクラウドにしがみついたまま、達した余韻に浸っていた。
べっとりとした精が2人の素肌の胸元を汚した。
だが、クラウドは構わず青年の両足を抱えあげる。
力の抜けた身体に、もはや抵抗はない。怯えたようなまなざしに、クラウドはただ笑みを向ける。
熱い塊を宛がわれ、セフィロスは恐怖に震えた。
まだ、先ほどの余韻も覚めやらないうちに。
達したばかりの彼の内部は、強く収縮を繰り返している。

「・・・あ・・・、だ、やぁ・・・!」
「いいよな?今度は俺の番だろ」
「あ、うっ・・・あ―――・・・!!!」

クラウドの言葉が終わるか終わらないかのうちに、彼の楔はセフィロスの内部へと押し込まれていた。
強く絡みつく内部の感触に、クラウドは熱い吐息を洩らす。
セフィロスはというと、浅い息で何度も胸を上下させていた。
いやいやと頭を振る度に、長い銀糸がシーツの波間に揺れる。その光景の美しさに、しばしクラウドは見とれていた。
腰を抱え上げ、強く自身を打ち付ければ、
激しく擦られるその部分がいやらしい水音を立てる。
汗と精液にべとついた肌を摺り寄せながら、2人は今にも流されそうな快楽に溺れていた。
気が付けば、先ほど何を考えていたのか、何で頭を悩ませていたのか、
それすら忘れ、ただ目の前の感覚に浮かされている。
セフィ、と名を呼ばれ朦朧とした意識のまま顔を上げると、
重ねられる熱い唇。
どちらからともなく舌を絡め、体液を共有しあう2人は、
それからも幾度となく足を絡め、身体を繋ぎ愛を確かめ合ったのだった。

ほとんど崩れ去ったセフィロスの理性が、
またもや、たかだか15歳の少年に流されてしまったことを理解する。
けれど、かの少年から与えられる感覚はひどく背徳的で、それでいてあまりに幸福で、
それ以外の何もかもがどうでもよくなってしまうくらいに気持ちいい。
クラウドに身も心も溺れ切ってしまっているセフィロスには、
もはやそれを降り払うことなど到底できなかった。
そう、理性で考えれば確かに馬鹿げたことかもしれないけれど。
セフィロスは幸せなのだ。
それは、今まで感じたこともない暖かな感覚。
いつまでもこうしていたい、とセフィロスは確かに思った。

そう、いつまでも。

こうして、彼の傍にいたい、と。















幾度目かの行為の後、憔悴しきって意識を失ったセフィロスをそのままに、
クラウドはベッドを降り、執務室に足を踏み入れた。
収集のつかなくなったデスク上の書類をもとあったとおりに並べ替えながら、
昨晩セフィロスが作りかけていた紙を見やる。
不審な死を遂げながら、その事実を闇に葬られたものたちのリスト。
そして、彼が独自のルートで調べ上げた彼らの詳細。
まとめあげられたそれを見ながら、クラウドは眉を寄せた。

「・・・どうすっかな」

神羅の裏の部分の存在を明確に指摘するそれに、クラウドはぽりぽりと頭を掻いた。
セフィロスが真実にたどり着くまで、あともう少し。
しばらく何か考えていたクラウドは、
それから肩を竦め、彼の上司に言われた通りデスクの上を整理し始めたのだった。





...to be continued.





Update:2003/09/01/WED by BLUE

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