Hotel



 車で遠出した時に限って、バケツをひっくり返したような土砂降りに遭うものだ。
 ちっとも動かない渋滞を見ながら、セフィロスは溜め息を吐いた。
 折角の休みの日。
 自室でゆっくり過ごしたかったセフィロスは、ドライブに連れて行けとしつこいクラウドとザックスに根負けして、仕方なく車を走らせていた。
 行き先は何てこともない展望台だったのだが、自分が人ごみが嫌いなことを2人が考えてくれたのだと感じ、それなりに美しい景色と街にはない透んだ空気を楽しむことが出来た。
 そして、タ方。
 帰ろうと車を出した途端、突然の雨。
 ただの豪雨くらいなら運転に関しては無茶ばかりする彼のこと。たとえ前が見えにくくなろうと気合と勘で車を進めただろう。
 しかし、今回はそうもいかなかった。
 雨でスリップしたのか大通りで車が事故ってしまったのだ。
 結局、後ろにいたセフィロスを含めた車が通行止めを食らい、大渋滞。しかも、雨である。
 「あーあ、なんでこーなるかねー」
 助手席のイスに手をかけて、ザックスははあぁーと溜め息をついた。
 後ろから聞こえる騒がしい彼の台詞に、セフィロスの顔が歪む。
 「そもそもお前達が駄々ばかりこねるからオレが車を出す羽目になったんだろうが。黙って静かにしていろ」
 ちっとも動かない(というか動けない)渋滞にキレかけているのか、いつになく冷たいセフィロスの声音。
 他人に責任を押しつけようとする彼の言葉に、ザックスはぷうっと頬を膨らませた。
 「あーあ、あんなにはしゃいでたセフィロスさんはどこ行ったんでしょーねぇ」
 「だっ、誰がはしゃいでなど・・・っ!」
 「ほらセフィ、前」
 ザックスのからかい混じりの言葉に思わず後ろを向いてしまったセフィロスに、至極冷静な声がかろうじて彼の意識を前に戻させた。
 憮然とした表情でハンドルを握り締めるセフィロスに、クラウドはくすりと笑う。
 ちなみに、セフィロスの隣、すなわち助手席には誰も座っていない。
 当然、どちらが前に座るか大変にモメたためである。
 「仕方ないだろ。文句は気象台にでも言うしかないさ」
 つまり、今日は一日中快晴の予定だったのだ。
 だからこそ2人がセフィロスを誘ったということは言うまでもない。
 「それよかさ、いい加減耐えられないんだけど俺」
 ザックスは今度は窓に手をつき、曇ったそれをごしごしとこすってはうらやましそうに外を見やった。
 渋滞に巻き込まれてからもうかれこれ2時間になる。
 それなのに、車は大した距離は進んでいない。
 窓に映る空きまくりの対抗車線が憎らしくもなるのは、ザックスだけではあるまい。
 「そうだな・・・。このまま頑張ってても疲れるだけ、って気もするし」
 セフィロスの後ろで、クラウドがおもむろに地域情報誌を取り出す。
 それをパラパラとめくりながら2人して勝手に話を進める様子に、セフィロスは眉を顰めた。
 「・・・何勝手にやってる(っていうかどうしてそんな暗い中で本見てられるんだ?)」
 「な、セフィロス、どっか近いトコで泊まって行こうぜ」
 セフィロスの顔を覗き込んで、ザックスは言った。
 クラウドは地図をながめて場所探し。
 「何言ってる、明日から仕事だぞ」
 「仕事ったって午後からじゃん。今粘っても朝出ても一緒!!」
 「・・・そこの角。右に曲がって」
 「〜〜〜っ!」
 クラウドの有無を言わさぬ指示と、運悪くも少し動いた渋滞のせいで、思わずセフィロスは右にハンドルを切ってしまった。
 気付けば、さっきまで引っかかっていた渋滞はもはや後ろだ。
 「あーやっぱスムーズはいいねぇ」
 「(・・・ハメられた)」
 「2つ目の信号を左に曲がれば、すぐ左に見えるから」
 事務的に道筋を告げるクラウドをルームミラー越しに睨めば、クラウドはそれに気付いて口の端を持ち上げる。
 微かな、だがどこか妖艶な笑みを返され、セフィロスはわけもなくドキリとしてしまった。
 「ほらほらー。見えてきた見えてきた♪」
 わくわくと楽しそうにザックスが見やるのは、なんの変哲もない普通のホテル。
 それを見ながら、セフィロスは(ラブホじゃなくてよかった・・・)とほっとしていたのだった。





 ホテルの中は結構混んでいた。
 といってもロビー内に人が沢山いたわけではないのだが、フロントで部屋取りしているセフィロスが結構長い。
 きらびやか、というほどでない落ち着いた雰囲気を満喫しながら、2人はセフィロスを待っていた。
 「おい」
 「あ、決まった?」
 2人が立ち上がる。
 「・・・ダブルが2部屋しか空いてないそうだ」
 ・・・・・・。
 ちょっと待て。
 結局ラブホに行ったのと同じ運命になるのかセフィロス?!(笑)
 「・・・なんでだ?」
 「誰かの策略、かもしれんぞ」
 「ふーん。まぁいいや」
 よくわからない会話をかわしつつ、3人はどうするか考えはじめた。
 フロントの女の子は(こんなステキな男3人がどういうペアで部屋に入るのか気になるわぁ)という顔で興味津々にこちらを見ている。
 「よしっ。クラウド!久々に2人部屋といきますか!」
 「却下。」
 「うもー!なんでだよ?!」
 騒がしいザックスをしっしっと手で払う。
 「お前と同部屋なぞ、うっとおしい。俺はセフィロスと入る」
 「へっ。セフィロスと同じになんかさせないぜ。信用できないったらありゃしない」
 「お前こそセフィと同部屋だったら何するかわかったもんじゃないだろ!」
 2人とも、モメてます。
 セフィロスは言葉を挟む余地もなく居心地が悪そうです。
 ・・・でも、結局銀髪の彼が受けなわけね。
 フロントの女の子はニヤリと笑いました。
 「あ、あの、お客様・・・」
 モメてる2人をよそに、セフィロスに話しかける。
 「団体様用の和室1部屋なら空いておりますが(どうせなら3人押し込んじゃえ!)」
 それを聞いて、今度はセフィロスも頭を悩ませた。
 このままではクラウドにしろザックスにしろ自分と同部屋になってしまう。
 ダブルベッド1つだけの部屋。
 考えるだけで悪寒が走る。
 クラウドとは確かにそういう仲だが、極力知られたくなかったし、ザックスが隣にいる所で気取られるような真似もしたくなかった。
 その意味では、夜下手に2人きりにならない方がいいのかもしれない。
 「・・・わかった。そちらの部屋を頼もう」
 「はい。ありがとうございます」
 女の子はにっこり(いや、にやり、か?)と笑うと、セフィロスにキーを渡し、よい一夜を、と告げた。(爆)
 「ほら、行くぞ」
 「「へっ?」」
 今だにモメていた2人が、さっさと歩き出したセフィロスを追いかけた。
 「結局、どーなったわけ?」
 「3人部屋だ」
 「ほー・・・(それはまた墓穴掘ったね)」
 「ふーん。(どーなるかわかんない、ってヤツー?)」
 2人はそれぞれよこしまなことを考えてニヤリと笑ったが、前でホテルマンと何か話していたセフィロスは全く気付かず、2人はしれっとして部屋に入った。
 「お。和室だ♪」
 「結構広いな」
 わくわくと2人が部屋の中を見て回る。
 その子供のような(実際子供なのだが)態度に内心溜め息をつきながら、セフィロスは上着をハンガーにかけた。
 「んーと、・・・大浴場は11時までです、だって。なんだ、もう無理じゃん」
 ザックスが壁に貼られた紙を見て言う。
 時計を見やればもうすぐ11時を過ぎる。
 セフィロスは顔をしかめた。
 「ってことはなんだ?今日はまさか風呂なしか・・・?!」
 「それこそまさか。今時部屋に風呂一つないホテルはな〜い!」
 下手な歌を歌うようにしながら部屋を見回し、ザックスは風呂場を見つけるとサッと身を滑らせた。
 「ってことでー、お先に♪」
 ガタガタと戸が閉められ、やっと喧騒が収まる。
 「・・・ったく、いちいちうるさい奴だ・・・」
 脱力したようにテーブルにつっぷすセフィロスに、クラウドはくすりと笑った。
 隣に座って、軽くセフィロスの肩を抱きしめる。
 「あんたが悪いだろ。俺と2人部屋だったらよかったのに」
 耳元で甘く囁かれ、みるみる顔が赤くなる。
 「だ、だってザックスがああ言うから・・・っ!」
 「ったくなー。アイツももうちっと気ィきかせりゃいいのに」
 腕を掴んで、自分の方に向かせる。
 「ちょっ・・・まて・・・」
 ただならぬ気配を感じて、セフィロスはクラウドを押しとどめた。
 けれど、クラウドの深い青の瞳に見つめられ、身動きがとれない。
 魅入られたように硬直したセフィロスを上向かせ、クラウドはゆっくりと唇を重ねた。
 「う・・・ふっ・・・、ん・・・。」
 苦しげに眉を寄せ、クラウドの胸に手を当てて押しのけようとするが、かえって背を抱きすくめられる。
 閉じた唇を舌で開かされ、歯の裏側を焦らすように舐められれば、セフィロスはもう落ちたも同然だ。
 いつの間にか貪欲にクラウドの舌を貪っていると、ガラリと背後で戸の開く音が鳴った。
 「はー気持ち良か・・・れっ?やっぱお前ら付き合ってたの?」
 ばっちりキスシーンを見られ、セフィロスはたまらない羞恥を感じた。
 けれど、当のクラウドは平然としてセフィロスから唇を離す。
 「上がったのか。じゃ、俺行ってくる」
 今度こそ石化したように動けないセフィロスに、1つウインク。
 クラウドがいなくなった所に今度はザックスが座り込んできて、セフィロスは恥ずかしさのあまりテーブルに沈んでしまった。
 「なぁなぁセフィロス。あんな奴のどこがいいんだよ。俺の方が100倍魅力的だと思わねえ?」
 顔を覗き込んでくるザックスの手が肩にかかりそうになり、セフィロスが反射的に身を引いた。
 口説かれているんだかからかわれているんだかいまいちよくわからない。
 「・・・少なくとも、お前のその騒々しさはオレの中で減点100だ」
 「うわ。苛めじゃん、それ」
 はは、と笑いながらも、ザックスは一向にセフィロスに迫るのをやめようとはしない。
 それどころか、恐しげに後じさるセフィロスを壁にまで追い詰め、顔の脇の壁に手をつける。
 ・・・結構危機じゃない?セフィ。
 案の定、セフィロスの背に何とも言えない悪寒が走った。
 「や、やめろっ!」
 「ふふ。可愛いな、お前」
 獣のような野生味に満ちたザックスの蒼い瞳を真近にして、思わず顔を逸らす。
 それでも近づく顔は止まらない。
 両手で頬を挟み込まれ、逃れる術はなくなった。
 もう少しで唇が触れ合わさる。
 ガタン。
 「おい」
 乱暴に戸が放たれ、微かに怒気を含んだ声がセフィロスに掛けられた。
 「早く風呂入れ」
 「あ、ああ」
 クイと指で風呂を指すクラウドに助けられ、セフィロスは動揺しつつもかろうじてザックスから逃げ出して風呂場へと消えていった。
 残されたザックスは折角のチャンスを逃され溜め息をついている。
 「相変わらずだな、お前も」
 飽きれた声でクラウドがザックスの向かいに座り込みながら言う。
 「なに言ってんだ。ただからかっただけじゃねーか」
 「あのなぁ。セフィロスはそういうジョークに慣れてないの」
 「わーってるって。だからこそ、じゃん」
 ザックスがにやりとクラウドに笑う。
 「どーせ、お前だってなんか企んでんだろ?意図的に俺らをあそこで2人きりにしたくせによ」
 その笑いにめいっぱいの悪意を感じて、クラウドは苦笑を洩らした。
 まんざらでもない、という顔だ。
 「傷付けるなよ」
 「心配すんなって。大切にしますよ」
 その言葉を皮切りに、2人はいそいそと準備を始めたのだった。





 一方。
 クラウドに助けられた(形になった)セフィロスは、風呂場でこれでもかというほど動揺していた。
 ザックスに迫られた。
 まぁそれはまだいい。(ほんとか?!)
 しかし、それをクラウドに見られてしまった!
 セフィロスは頭を抱えた。
 このままでは、恥ずかしくて顔も合わせられない。
 かといって、そのままでいたらクラウドにあらぬ誤解をされるかもしれない。
 いや、今ザックスが何かねじ曲がったことをクラウドに言っていたら・・・!!
 セフィロスの純さは誰もが認めるところである。
 しかし、こんな些細なことでセフィロスがめちゃくちゃ悩んでいたとは、全く2人のあずかり知らぬことであった。
 けれど、いつかはバスルームから出なければ話は進まない。
 何度も出ようか出まいか逡巡していたセフィロスは、不意に背中を押されるのを感じた。
 仕方なく戸を開けると、何やら部屋の雰囲気がガラリと変わっていた。
 上の蛍光灯は消され、窓際にあるライトのみが部屋の中を映し出す。
 床には広い部屋の畳が見えないほど布団が敷き詰められている。
 な、なんだこれは?!
 和室ではこうやって布団を敷き詰めるものなのか?!(違)
 あまりの驚きに、セフィロスは声を失ったまま布団の上を数歩歩いた。
 本当は、ここで気付くベきだった。
 彼の目の前には、ザックスもクラウドもいなかったことを。
 「っ!」
 突然背後から抱きすくめられ、セフィロスは体を強張らせた。
 首筋を唇で嬲られ、その手際にクラウドだと納得する。
 「っ・・・クラウド・・・!」
 「ほら、じっとして」
 咎めるように背後の人物の名を呼ぶが、いまいち効果がない。
 仕方なく彼の腕でおとなしくしていると、足元で何やら気配を感じた。
 下を見れば、黒髪の男が自分に向かって正座をし、頭を下げている。
 「ま、まさか・・・・・・」
 震えるセフィロスの声音に、クラウドはにやりと笑った。
 「今宵一晩、貴方の恋人役を務めますザックスでございます。どうぞお見知りおきを」
 そう言い、顔を上げてにっこりと笑うザックス。
 案の定、セフィロスは絶句してしまった。
 はあ?!なんなんだコレは!
 オレはどうなるんだ?!
 セフィロスは疑問形にしていたが、賢い読者様には当然わかっていることだろう。  先ほどよりも数倍怖くなって逃げ出そうとするセフィロスを押さえ込んで、クラウドはザックスにうなづく。
 それを相図に、2人はセフィロスの浴衣を脱がし始めた。
 「あ・・・っ」
 クラウドの温かな手がはだけさせたセフィロスの肌を憮で上げる。
 ザックスは立ち膝でセフィロスの腰に手を回し、帯を解いて前を露わにした。
 セフィロスはザックスに見られることにこの上ない羞恥を感じたが、背後からクラウドに抱き締められ、耳まで犯されていては逃れる力も出てこない。
 「や・・・っ!」
 「セフィロス・・・」
 ザックスがセフィロスの勃ち上がりかけている器管に手を伸ばす。
 口に含むと、途端ひときわ大きさを増し、ザックスはくすっと笑った。
 「かあいいなー。練れてないっつーかなんつーか」
 根元を指先でぐるぐると愛撫しながら、砲身の筋目に沿って舌でなぞっていく。
 強い刺激に必死に耐えていたセフィロスは、上半身をまさぐっていたクラウドの指が胸の突起を摘まみ上げるとひくりと背をのけぞらせた。
 「クラウドっ・・・も・・・立ってられな・・・」
 「力抜いてていいぜ。俺支えてるから」
 自分の肩にセフィロスの頭を預けさせ、彼の頬に軽い口付けを落とす。
 今だ肩に掛かっていた浴衣をパサリと布団の上に落とすと、セフィロスの真っ白な全身が薄暗い部屋の中でひときわ美しく見えた。
 「く、うっ・・・ん・・・」
 クラウドが、セフィロスの秘部に指を這わせた。
ゆっくり忍び込んでくるその感触に、思わずセフィロスは腰を前に突き出すような格好になる。
 嬉々としてセフィロスの前への愛撫を続けていたザックスは、これ幸いと先端を強く吸い上げた。
 「んはっ・・・!」
 後ろに深く挿れられた指がもたらす痺れるような刺激と、自身への強烈な刺激に、セフィロスは我慢し切れず精を放出した。
 それは全て、ザックスの喉の奥へと飲み込まれる。
 達した衝撃で目の前がスパークし、セフィロスは脱力したように布団に座り込んだ。
 背後からはクラウドが、前からはザックスが抱き締めてくる。
 「へへ。お前の、おいしいな」
 口の端を汚す白い液を手でぬぐって、セフィロスの耳元で囁く。
 途端、全身を真っ赤にしてうつむくセフィロス。
 「も、やだ・・・・・・。」
 弱々しく首を振るが、当然2人が許すはずもない。
 「まだまだ夜は長いよ、セフィ」
 「そーそー。それに、1人で楽しんじゃあな」
 そういうと、ザックスは座り込むセフィロスの足を開かせた。
 微かな抵抗もないに等しく、すぐにザックスの目の前に下肢を晒してしまう。
 舐めるように全身を見つめるザックスの視線が恥ずかしくて瞳を閉じると、不意に体が持ち上げられた。
 クラウドが自分の体をセフィロスの下に入れ、セフィロスを足の上に乗せる。
 クラウドの上に座り込むようになったセフィロスは、自分の下肢にあたるクラウドの熱を感じて頬を赤らめた。
 一呼吸おいて、グッと体内に入り込んでくる。
 そして、ザックスが噛み付くようにキスをしてきて・・・・・・。
 体の中でうごめく熱く重い感覚と、鋭い直接的なザックスの指先に、セフィロスは意識を遠くへ放り投げたのだった。





 プルプルプル・・・
 プルプルプル・・・
 ガチャ
 お客様、おはようございます。本日の天気は、くもり、のち、晴れ、気温は・・・・・・


 バンッ


 セフィロスは、ホテルの目覚ましコールで目を覚ました。
 折角だがとてもうるさい機械的な音声を止めて、のろのろと身を起こす。
 (何が・・・どうなったんだっけ・・・)
 昨夜(というか今日)は、いつになく酷かった。
 クラウドのみならずザックスの相手までさせられて、腰がガタガタだ。
 いつもなら一度失神させられたら終わるはずが、何度起こされしかも寝かされたか。
 その2人は、今は敷き詰められた布団の上で、すっきりした顔で眠りについている。
 セフィロスはため息をついて起き上がろうとしたが、結局足腰が立たず尻もちをついてしまった。
 「く・・・!」
 これもみんなクラウドとザックスのせいだ。
 起きたら絶対文句言ってやる。
 セフィロスはそう決心すると、もう一度疲れを癒そうと毛布をかぶった。
 が。
 プルプルプルプル。
 またもやホテルの内線が鳴った。
 「〜〜〜っ!!」
 どうしてオレがこんな苦労をしなくちゃならないんだっ!!
 「・・・はい」
 セフィロスはこれ以上ないほど不機嫌な声で受話器を取った。
 「お客様、おはようございます。今日の朝食はいかがなさいましょう?ルームサービスでしたらあと30分ほどで伺いに参りますが」
 昨日のフロントの女の子であろう。
 セフィロスの気嫌などものともせず、いたって明るい口調で告げる。
 それとも、ただ単におもしろがっているだけか。
 ルームサービスなど、とったが最後、大変なことになってしまうのだし。
 「いや、いい。それより寝かせてくれ・・・」
 「(・・・ちっ)わかりました。それではおやすみなさいませ」
 そういうと、電話は切れた。
 はじめの方に舌打ちがあった気がしたのは気のせいだろうか。
 しかし、セフィロスは自分の中の眠気に身を任せることにした。
 どうせ今は起きることもできない。
 今度こそセフィロスは毛布をしっかり被ると、深い眠りについた。




 この日、結局3人が仕事に遅れたのは、言うまでもない。



***END***

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