Crasy Soul 03 〜 死が2人を分つまで
「お前、何のために生きてるんだ?」
そんなの、尋かれたってそう簡単に答えられるものじゃない。
それ以前に、別に、生きたいなんて思ってるワケじゃないから。
とりあえず、死んだっていい。未練もないし、執着してるものもない。
よく、残された者の気持ちを考えろ、とか言うけど、結局、2、3日心に留めてくれるくらいで、あとは時の流れと共に風化されてくだろうし。
昔は、自分も体を重ねたりして何とか生きてることを確かめてたりもしたけれど。
もう、飽きた。
無理に生きようとすることは、死んでると同じことで。
そんな状態で人と付き合うのは、疲れる。
とりあえず、テーブルにクスリを置いて、煙草をふかしたまま眺めてみる。
そう、俺は、
いつでも死ねるから、まだダラダラと生き続けてるんだよな。
カチャリ、と音がして、あり得るはずのない侵入者にクラウドは目を見開いた。
「・・・セフィロス」
仕事を終えてそのまま来たのだろう、黒い仕官服に銀の髪がよく映える。
けれど、見とれるほどの精神的な余裕は、今のクラウドにはなかった。
「なんで、あんた・・・どうやって入ったんだ?」
ドアの鍵はかけていたはずだ。
カーテンも閉めきって、誰もいないかのような家の外観は、現にこの5日間誰も寄せつけていない。
だが、驚きの表情を見せるクラウドに、セフィロスは怪訝そうな顔を向けた。
「忘れたのか?・・・オレは合い鍵を持ってる」
チャリ、と顔前に鍵を掲げて微かに口の端を歪めるセフィロスがカンにさわる。
舌打ちをして手の中のそれを取ろうとすると、寸での所でサッと避けられた。
「・・・返せよ」
「断わる。一度もらったものを返す気はない」
例えそれが一時の気の迷いで渡されたものであっても。
言外に含みを持つセフィロスの言葉に苛立ちを覚えながらも、クラウドはどうすることもできずにソファに深くもたれた。
「・・・・・・で、何か用?」
上目遣いで見上げる視線も気にせず、テーブルの上の小型のガラス瓶に手を伸ばす。
貼られたラべルに顔をしかめて、再度クラウドを見やった。
「ギフト・フラッシェ。・・・自殺するには高価すぎる毒だな」
「・・・・・・」
「こんなものが手に入るほど、お前は裏の世界に通じているのか?」
「なんだよ、あんたには関係ないだろ!」
取り返そうとする手を除け、手の中の小瓶を壁のかどに投げれば、ガラスが音を立てて割れ、絨毯に染みを作った。
「・・・人のモン、勝手に壊していいと思ってんの?」
睨み付けるクラウドの顎に手をかけて、掠めるように口付ける。
そのまま乗り出し気味の肩をソファに押し付け、セフィロスはクラウドの首に顔を埋めた。
鼻孔をくすぐるセフィロスの慣れた香が、クラウドの心をかき乱す。
「どういうつもりだ?」
努めて冷静に問いかけるクラウドの耳元で、かすかに笑う気配が感じられる。
数瞬後、ソファにあったセフィロスの手が、クラウドの雄を服の上から強くなぞり上げた。
「・・・っ・・・」
「そんなに死にたいなら、オレが殺してやる」
ジッパーを外して未だ熱を持たないそれを引き出し、指を絡めるようにして手のひらで包み込む。
上下に数回扱くだけでそれはすぐに勃ち上がり、先端から糸を引いた。
「・・・・・・だったら、こんなことしてないで早く殺せよ」
上がる息を抑えて、目の前の絹糸を掴むと、それに引かれるようにセフィロスが身を起こす。
いつになく妖しい魔性の瞳に見つめられ、クラウドは息を飲んだ。
わかっている。この瞳に見入られたら、反らすことなどできやしないのだ。
「フン・・・死ぬ前くらいオレにイイ思いさせろ」
躊躇なく膝の上に乗り上げ、自分の熱をクラウドに押しつける。
既に猛っているセフィロスのそれは、クラウドに触れただけで快感を呼び起こした。
「何?俺にあんたの玩具になれって?」
目の前にある腰を抱いて、自分のモノに擦り合わせるように揺らせば、抑えもしない甘い声がセフィロスの口元からこぼれる。
「嫌ならいい。勝手にヤらせてもらう」
「・・・珍しいんじゃない?あんたがそんなコト言うの」
つたない指が自分のシャツのボタンを外していくのを見ながら、クラウドもまたセフィロスのベルトを外しにかかる。
露わになった素肌を指でなぞりながら、徐々にその範囲を広げていった。
「お前がこんな所に隠れていたせいで、一週間も出来なかったんだ。・・・責任取れ」
「・・・はいはい」
半ばあきれながらセフィロスの最後の衣服を取り去ると、クラウドはソファから立ち上がった。
不満そうなセフィロスをよそに、ベッドルームのドアの前で振り返る。
「責任取ってやる。・・・来いよ」
差し出された手に顔をしかめつつ、セフィロスが歩み寄る。
手を伸ばした途端急に腕を引かれ、気付けばベッドの上に押し倒されていた。
「・・・ったく・・・あいかわらず強引なものだ」
「強引なのはあんただろ。呼びもしないのに迫って来やがって・・・・・・」
怒ったような口調とは裏腹に、驚くほど甘いキスがセフィロスに渡される。
舌で唇を舐め、セフィロスが焦れた所で唇を重ね、軽く開いた歯列をなぞりロ内へと侵入していく。
中央に鎮座する舌には触れず、内側の柔らかな感触だけを味わっていると、待ち焦がれたセフィロスは自分から舌を絡み合わせた。
「・・・っ・・・ふっ・・・」
舌の先を甘噛みされ、そこから体の中心へと電流が走る。
びくりと体を震わせるセフィロスに、クラウドはかすかに笑った。
太股にあたる彼の中心を手のひらで軽く扱くと、それはもう限界とばかりに張りつめ、幾筋も透明な液が溢れ出す。
「天下の英雄様がこんなに淫乱だって知ったらさ、皆どうなるだろうな?」
「バラしてみろ。次の日にはお前はあの世行きだが」
「・・・だから、別に死んでもいいんだって」
苦笑して、手の中のそれをやんわりと刺激しながら、快楽にのけぞった白い喉に噛みつくようにキスをする。
真珠色の肌に付いた鮮やかな朱をうっとりと見やって、指でなぞっていった。
「でも、あんたに殺されるのって、何かイイかもね」
喉から鎖骨、胸にある突起にかけて、ゆっくりと唇を滑らせる。
「・・・どうして、そう思う?」
セフィロスの腕が、自分の胸に顔を埋づめるクラウドの頭を抱きしめた。
「だってさ。結局、俺ってあんたに振り回された人生送って来たわけだからね。その人生あんたの手で終わらせられんのもいいかな、って」
「・・・酔狂だな。くだらん」
「そうかな。むしろあんたの方がそう思ってる気がするけど」
赤く凝り固まった胸の飾りを、指と舌で押し潰すように愛撫し歯を立てる。
「・・・っ・・・!」
同時に親指で先端の割れ目を引っ掻くと、それに促されるようにセフィロスのそれから精が解放され、クラウドの手と腹を濡らしていった。
「・・・早いな・・・」
「当然だ。文句あるか」
「・・・・・・ってーか、その前に、態度でかすぎ」
はぁ、とため息をついて、セフィロスの体を持ち上げ体勢を入れかえる。
自分に体を預けて荒く息を吐くセフィロスの熱い吐息を耳元で感じながら、クラウドは軽く浮いた背骨をなぞり、指先を降ろしていった。
「・・・や・・・っ」
その感触に身を捩るセフィロスを押し留め、目指す場所へと到達すると、セフィロスがひくりと体を竦ませる。
「ほら、力抜けよ」
セフィロスが先ほど放った精液を指先に絡め取り、熱くうごめくそこに塗り込めていく。
散々抱かれていい加減慣れたそこは、ただでさえすぐに指を受け入れる。
その上十分に濡らされたそこは、2本、3本と簡単に呑み込んでいった。
「ほんっと、あんたって淫乱・・・」
「・・・お前がそうしたくせに」
「違うね。資質だよ、資質」
「うるさ・・・っあ!」
内部のコリッとした感触に指先があたり、セフィロスがひときわ大きな声を上げる。
そこを集中的に刺激してやると、セフィロスは沸き起こる快楽に流されまいとぎゅっと目をつぶった。
「もう、いいだろ」
中で動かしていた指を一気に引き抜き、セフィロスの身を起こさせる。
「・・・な、にを・・・・・」
「なにを、じゃなくて、はやく乗っかれよ」
急かすように尻をなでて、不安定な腰を手で支えてやる。
セフィロスは羞恥に顔を赤く染めたが、クラウドの上に乗った状態で今更拒否することもできず、意を決して腰を上げた。
「ん・・・・・・っ!」
クラウドの猛ったそれを手で支え、ゆっくりと腰を落としていけば、濡れたそこが卑猥な音を立てる。
臓腑を押し上げるような圧迫感に、声も出せない。
「や・・・クラ・・・っ・・・」
「ほら、まだ入るぞ」
いきなり下から突き上げられ、セフィロスは体をのけぞらせた。
根元までしっかりとくわえ込んで、苦しさと快楽に身を震わせる。
「あっ・・・!深すぎ・・・っ・・・」
「いいから、腰揺らせよ」
ともすれば倒れ込みそうになるセフィロスを支え、促すように腰を掴む。
快感に顔を歪ませながらも、ゆっくりと揺れる腰が、クラウドにも快楽を与えていく。
膝をバネの様に使ってだんだんと激しさを増すセフィロスの動きに目を細めて、こちらも張りつめ涙をこぼすセフィロス自身を指で扱いてやった。
「く・・・っ、だめ・・・だっ・・・」
「イイんだろ?はっきり言えよ」
セフィロスに合わせて下から突いて、同時に前も強く刺激する。
散々乱れて、もう何がなんだかわからなくなったセフィロスは、クラウドにすがりついた。
「や・・・クラ・・・死ぬな・・・っ!」
切実な想いだった。
唐突な台詞に、無言でセフィロスを抱きしめる。
「お前・・・は、オレが、殺、すんだっ・・・勝手に・・・死ぬなんて、許さ、ない・・・!」
「セフィロス・・・」
泣きじゃくって言うセフィロスの背を、なだめるように撫でてやる。
「・・・大丈夫。待ってるさ。あんたが俺を殺すのを・・・さ」
耳元で囁いて、セフィロスの最奥を貫く。
激しい快楽に身を震わせてセフィロスは欲を解き放ち、それによって締まったそこに促されるように、クラウドもセフィロスの中に自身の欲望を吐き出したのだった。
頭に残るのは、セフィロスのあの言葉。
腕の中で気を失っているセフィロスを見やり、ふっと笑う。
『お前はオレが殺す』
多分、今まで人に言われた言葉で、こんなに嬉しいものはなかった。
特に、今の自分にとっては。
・・・そうだな。
自分の生きる理由を他人に預けてみるのも、悪くない。