BLIND



 「なぁ・・・・・・なあ!」
 体を大きく揺さぶられて、セフィロスはハッと顔を上げた。
 気付けば、目の前によく知る黒髪のソルジャーが自分を覗き込んでいる。
 「ザックス・・・?」
 ふと、自分がどこにいるのか気になった。
 見回して、すぐに自室だとわかる。
 「ということは・・・お前、勝手にオレの部屋にあがりこんで来たな」
 「あーあ。心配して来てやってんのになんたる言われ様。しかも、部屋の呼び鈴くらい鳴らしたぜ。お前が気付かなかっただけだろ」
 ザックスは肩をすくめて大仰に溜息を吐くと、セフィロスが背を預けていたソファに膝で乗り上げ、彼の頬に触れた。
 ザックスの突然の行動に、セフィロスの顔がかすかに朱に染まる。
 「ザック・・・」
 「やっぱ・・・青い顔してんな。ちゃんとメシ食ってんのか?」
 咎めるような視線を無視して、ザックスが朱に染まった、それでも青白いセフィロスの頬を指先でだどっていく。
 血の気を失っているばかりでなく、頬骨が浮き出そうなほどに痩せた彼に、ザックスは眉を顰めた。
 「・・・余計な心配は、無用だ」
 「んなコト言われてもね。俺が入って来てもボーッと煙草吸って宙見てるようじゃ、どのみちアブナイだろ」
 そのままじゃ死んじまうぜ、と声をかけ、台所へと消える。
 何やらごそごそと用意を始めたザックスに構わず、セフィロスは疲れたように溜め息を吐いた。

 (・・・死んだって、いい)
 どこかフラつく体で立ち上がり、指先に挟んだブランドものの煙草を見やる。
 自らの支えを失ったような今の彼にとって、世界中の何もかもが色褐せて見えた。
 いや、それ以前に、自分自身さえも今では価値を見い出せなくなっていた。
 この2週間、よく生きてこれたものだと心の中で苦笑する。
 ただ機械のように定時に仕事に出、終わればすぐに自室に帰り、こうして今いない少年の面影を追う。
 煙草に火を付ければ、その煙に隠れて彼の幻が見える気がした。
 こんな生活をしていて、食など進むはずもなく、
 気付けばいままでにないほど痩せ細り、ソルジャーとしての体力だけが今の自分を動かしているようだった。
 ふっと、意識が薄れた。
 揺れる視界。
 深い闇に呑まれる感覚。
 「・・・っと!おい、大丈夫か?」
 倒れかけた体を、ザックスが寸での所で受け止めた。
 心配そうに見やる彼の腕から逃れようとして、セフィロスは力の入らないままザックスに身を預ける。
 1つ溜め息を付いて、ザックスはセフィロスの手をとった。
 冷たい。
 ただでさえセフィロスは低血圧で、冷たくても普通なのだが、今はそれにしても冷え切っていた。
 それに、押さえていても、手のひらが小刻みに震えている。
 「・・・ひどいな。病気か?」
 いつになく真面目なザックスの声に、セフィロスがしぶしぶと答える。
 「病気じゃない。ただの疲労だ」
 「疲労?」
 ザックスはいぶかしげに眉を寄せた。
 確かにここ最近は緊急時で忙しくはあったが、自分たちはずっとデスクワークが続いていた。
 この、自室にまで書類を持ち込み作業をしていた、いわば仕事の鬼とも言えるセフィロスが、そのくらいの疲労で倒れるはずがない。
 それに、少なくとも今日は無理失理少々早い夕飯に誘ったのだから、量は食べていないにしろそれが原因であるはずもない。
 しかし、確かにセフィロスは憔悴し切っている。明らかに血の気がない。
 「・・・まぁ、いいや。とりあえず、しっかり休んでろ」
 ザックスは、腕に寄りかかるセフィロスをよいせ、と持ち上げた。
 「な、や、やめろっ、ザックス!」
 お姫様ダッコで寝室に連れて行こうとするザックスに、さすがのセフィロスも驚いてジタバタと暴れる。
 しかし、力の入らない弱々しい抵抗などザックスにとってはないにも等しく、楽々とセフィロスをべッドに運んで行った。
 「ほら、きちんと布団かけろよ・・・・・・どうした?」
 ザックスはセフィロスを寝かしつけようとしたが、セフィロスはすぐに身を起こすと首を振った。
 そのまま、ザックスに背を向けてべッドの端に腰かける。
 「・・・寝たく、ない」
 「はあ?なんで。」
 ザックスが回りこんで来てセフィロスの隣に腰かける。
 セフィロスはなんだか気恥ずかしくなって、ふいと横を向いた。
 「・・・・・・嫌な夢、見るから」
 そう言ったセフィロスの姿は、今まで見たことがないほど弱々しい。
 ザックスは何も言えないまま、自分の胸にセフィロスの体を預けさせた。
 そして、彼の疲労の理由が眠っていない所にあることに合点が行く。
 人間は、眠らずにはいられらない。
 普通だったら、1週間も眠らずにいれば精神に異常をきたしたり、とにかくひどいことになるのだ。
 いかに身体的能力が高いソルジャーであっても、それは体力を削る事に他ならない。
 ひどく痛ましい顔で腕の中の存在を見やるザックスに、セフィロスは小さく笑った。
 もはや、抗う気力などない。
 始めから、ザックスの相手が出来るほど体力が残っていなかった。
 「・・・ザックス。・・・クラウドは、どうしているだろうな」
 かすれた声で、セフィロスが呟く。
 ここで不意打ちのように彼の名が出され、ザックスは眉を顰めた。
 「・・・あぁ」
 2週間ほど前、クラウドの所属部隊がとある地方のテロリスト鎮圧にかり出された。
 だが、予想以上に抵抗が激しく、神羅側も多大な被害を被ったのだ。
 すぐに増援部隊が駆けつけたが、それでも消息不明者が何名か出た。
 その中に、クラウドの名前があった。

 戦場で死ぬような男ではない。必ず生きている。
 そうは思っていたが、考えれば考えるほど不安は募るもので。
 だから、自分は出来るだけ考えないように、話題にしないようにしていた。
 それは、彼の恋人であるこのセフィロスも同じ気持ちのはず。
 わかっていたから、クラウドのことを持ち出すつもりはなかったのだが。
 下手に適当なことも言えず、ザックスは押し黙った。
 「・・・オレは、あいつがいないことが信じられない。死んでるかもしれない、なんて考えたこともなかった」
 「セフィロス・・・」
 静かに語るセフィロスの肩を抱く。
 痩せた細い肩が哀しかった。
 「それなのに、オレは、夢であいつの血塗れになった姿ばかり見るんだ・・・・・・その度に、ああ、あいつは死んだのか、と思ったら、・・・自分がどうして生きてるのかわからなくなった」
 「・・・何言ってる。クラウドは死んでない」
 「でも、死んでるかもしれない」
 顔を上げて、自分に言い聞かせるように呟く。
 そのまま、セフィロスはザックスの腕から離れて横を向いた。
 「・・・もう、2週間経つんだ。冷静に考えれば、死んでいてもおかしくない。ましてや、あいつは普通の人間なんだぞ。それを、オレは・・・・・・」
 「・・・バカ野郎!!」
 ザックスは淡々と語るセフィロスを一喝すると、無理矢理自分の方に向かせた。
 強く肩を掴まれ、痛みにセフィロスの顔が歪む。
 「それがあいつを想ってる奴の言葉かよ」
 いつになく剣呑なザックスの声に身を捩るが、ザックスの腕はびくともしない。
 「・・・それがあいつに対する言葉かよ。何が冷静に、だ。ふざけるのも大概にしろ」
 そこまで言うと、ザックスはセフィロスから手を離し、うつむいた。
 唇を噛み締め、何かに耐えるように目を閉じるザックスに何も言えず、セフィロスもまた黙する。
 「・・・クラウドは生きてる。予知夢だかなんだか知らないが、お前の中で勝手に殺すな」
 「どうして、そう言い切れる?」
 死んだという確証はない。だが、生きているという確証もない。
 そんな中で、ザックスが「生きてる」と言い切れることが不思議だった。
 死んでいると始めから思っていれば、後々に来るかもしれない悲しみが少なくてすむというのに。
 ザックスは顔を上げると、セフィロスを真っ直ぐに見据えた。
 強い光がセフィロスを貫く。
 「俺が、信じてるからだ」
 たとえ、それが希望混じりの憶測だとしても。
 自分の為ではなく、クラウドの為に。
 死の間際にいるであろう、クラウドを励ます為に。
 必ず、生きて帰るという希望を絶やさぬ為に。
 それが、離れた場所にいる自分が出来るただ1つのことだから。
 「なぁ、セフィロス。あいつを信じて待っててやることが、俺達のすベき事じゃないか?」
 うつむくセフィロスを悟すように、ザックスが手を取る。
 例え、誰もがあきらめてしまっても。
 一番彼に近い自分たちが彼を信じないで、誰が信じるというのだろう。
 「・・・・・・」
 「なんだよ。お前は、クラウドのことを信じてやれないのか?」
 ザックスが覗きこめば、微かに朱を帯びた頬。
 セフィロスはザックスを両手で押しやると、照れたようにそっぽを向いた。
 「・・・そんなわけ、ない」
 「よーしっ。解決だなっ!あとはお前の眠れない原因を俺が解消してやるよ」
 ポン、と手を叩くと、ザックスにいつもの騒がしさが戻ってくる。
 ずいっと寄って来るザックスに、セフィロスは思わず身を引いた。
 ザックスの不敵な顔が、妙に怖い。
 「・・・なんだ」
 疲れた表情を無理に隠して、ザックスを睨む。
 だが、ザックスはへへ、とだけ笑うと、セフィロスの体を有無を言わさず組み敷いた。
 「な、ザ、ザックス!やめ・・・っ」
 「寝かせてやるって言ってんの。おとなしくしなさい」
 そう言われても、ベッドの上で男にのしかかられて、セフィロスがおとなしくできるはずもない。
 「な、どうやって・・・っ!」
 腕を押さえ付ける手から逃れようと身を捩るが、体力が格段に下がっている今のセフィロスに、ザックス以上の力はない。
 それでも抵抗を続ける彼に、ザックスはくすりと笑った。
 下肢を辿って、セフィロスの中心部分に触れる。
 「・・・っ!」
 「お前、溜まってっからンな夢見るんだぜ?」
 そのまま、布地の上からぐるりとなぞる。
 それだけで、セフィロスのそこは体力が落ちているというのに自己主張を始めていた。
 「なっ、ち、違う!」
 「違わねーって。だから俺が抜いてやるってば」
 「はぁ?!死ね!」
 その後セフィロスはしばらくザックスの腕の中で暴れていたが、やがて疲れ果ててくったりとベッドに沈んでいった。
 「ほらな。今のお前じゃ俺には勝てないの。」
 ちっちっと人差し指を振って、本格的にセフィロスに乗り上げるザックス。
 着ていたガウンの帯が解かれる感覚に、セフィロスは青ざめた。
 「おい・・・本気でするのか・・・?」
 これでも、クラウド以外に体を開いたことはないのだ。
 そのため、クラウドに対する罪悪感・・・というより、他人に体を開かされることに恐怖を覚えてしまう。
 セフィロスのその心を敏感に察したザックスは、軽く笑って安心させるようにポンポンと頭を叩いた。
 「んー、大丈夫だって」
 そして、先ほど解いた帯でセフィロスの視界を塞いでしまう。
 いきなり真っ暗になった目の前に、セフィロスは驚いた。
 「な、何を・・・」
 「俺の顔。見てない方、お前乱れやすいだろ」
 ザックスの発言に、みるみる赤面していくセフィロス。
 それでも、抵抗せずにきゅっとシーツを噛む指が可愛らしくて、ザックスは笑った。
 「やっとその気になった?セフィ」
 朱をはいた頬にキスを施し、低く囁く。
 そして、手はセフィロスの衣服をゆっくりと脱がしていく。
 目に意識がいかなくなった分、その他の感覚がより鋭敏になり、セフィロスは体を震わせた。
 「・・・ん・・・。」
 柔らかい感触。ザックスの唇がセフィロスのそれに重なる。
 そして、奔放に下肢を動き回る手。
 緩められたスボンの隙間から内部に入り込むそれに、セフィロスは顔をしかめた。
 「ザックス・・・っ!」
 かろうじて咎めるように彼の名を呼ぶが、悪戯な手は止まらない。
 その上、離れた唇が顎を伝い、首筋を伝って浮き出た鎖骨にたどり着く。
 そこに歯を立て、きつく吸い上げれば、白い肌の上に紅色の花びらが咲いた。
 「・・・痕付く・・・っ」
 「気にすんなよ。クラウドが帰ってくる頃には消えてるって」
 ザックスのその言葉に、セフィロスはハッとなった。
 ・・・クラウド・・・
 視界の闇の中に、彼の姿が浮かんだ。
・・・オレは、またお前に抱かれることが出来るんだろうか・・・・・・
 ザックスの愛撫を受けているのだとわかっていながらも、セフィロスはクラウドを思い出していた。
 いつもいつも、強引に事を進めてきた彼。
 それでも、今ならはっきり言うことができる。
 抵抗していても、心の中では彼を求めていたということ。
 素直にはなれなかったけれど、やはり彼を愛していたということ。
 下肢に与えられる愛撫が心地よくて、セフィロスは笑みを浮かべた。
 「おやおや。何を考えているのかな?このお姫サンは」
 ザックスがセフィロスの顔を覗き込む。
 久々に見た気がする彼の笑顔に、ザックスもまた微笑んだ。
 抵抗も何も無くなったセフィロスから、衣服を全て取り去る。
 外気に晒されて、彼のそこはより勃ち上がっていた。
 「セフィロス・・・・・・」
 セフィロス自身を手の中で弄びながら、軽く開いた唇を塞ぐ。
舌を入れると、すぐさま反応を返してくる。
 久々に感じる熱い舌が口内を這い回る感触が気持ちよくて、セフィロスはザックスの愛撫に身を任せていた。
 もはや、自分を抱いているのが誰か、など考えもしていない。
 それとも、本当にクラウドに抱かれていると思っているのかもしれない。
 それでもいい、とザックスはセフィロスを掻き抱きながら思った。
 もともと、そのつもりで目隠しなどさせたのだから。
 しかし、ザックスは複雑な気分だった。
 (・・・・・・バカな奴だな、お前は)
 セフィロスに愛撫を施しながら、ふと天を仰ぐ。
 こんなに、彼を愛している者がここにいるというのに。
それ故に苦しんでいるというのに。
なぜ、セフィロスの呼ぶ声が聞こえない?
 (ホント、最低な奴だよ、クラウド)
 こんなに、セフィロスを悲しませるなんて。
 ザックスは、もう一度セフィロスに口付けると、足を開かせた。
 期待に震える足。
 その奥に見える、彼の秘所。
 指先に粘液を絡ませ、そこを拡げれば、上から降ってくる甘い声。
 奥を貫く度に戦慄くセフィロスの身体。
 その全てを手にしながら、彼は心の中で叫んでいた。
 今腕の中にいる、セフィロスの為に。







 目が覚めたのは、明るい日差しが自分の顔を叩いてからだった。
 「ん・・・・・・」
 不思議だ。
 オレの部屋の窓は、西向きのはず・・・
 朝の日差しが顔に当たる・・・なんてこと、ないのに・・・・・・
 「よお。やっと起きたか。遅いな」
 予想外の声が聞こえて、セフィロスはがばっとベッドから身を起こした。
 しかし、すぐに眩暈がして再度ベッドに沈む。
 「ザ、ザックス?!・・・・・なんでお前・・・」
 「あれ?忘れたの。つれないな〜」
 おどけた顔で肩を竦めるザックスに、セフィロスがう〜と頭を抱える。
 ・・・そうだ。・・・オレは、・・・・・・(爆死)
 昨夜のことを思い出し、セフィロスは布団を被ってしまった。
 恥ずかしくて、ザックスの顔が見られない。
 「なーに照れてンだよ。今さらどうってコトねーだろ」
 ザックスは気にした風もなくべッドの端に座ると、セフィロスを覗き込んだ。
 「それよかさ、・・・よく眠れたろ?」
 しぶしぶとセフィロスがうなづく。
 たしかにいままで見ていた悪夢がさっばりと抜けていた。
 しかも、きちんと眠れたせいか昨日よりは確実に具合がいい。
 これが、ザックスの言う通りヌいたからだと認める気にはならなかったが、結果としてこうなったのだから、ザックスには感謝すベきだった。
 「・・・ああ」
 「そーだろ?またなんかあったら俺に言いなってー」
 妙にカルい事ばかり言うザックスを無視して、時計を見た。
 セフィロスは目を疑った。
 「・・・ご、ごじ?!!」
 なんてことだ。
 今日の勤務時間がとっくに過ぎてしまっている。
 自分のふがいなさを責めながら、仕方なくセフィロスは今度こそきちんと布団を被った。
 「えー?もう寝るの??」
 「うるさい。今日はもう終わりだ」
 「・・・あっそー。今日重大発表があったのにさー。」
 神妙な顔をして1枚の紙をピラピラさせるザックス。
 結局、自分の中でそれを無視することは出来ず。
 セフィロスは身を起こすと、プリントを読んだ。
 テロリスト鎮圧に関しての報告書だった。
 そして、最後の最後に、クラウド・ストライフ、生還、の文字。
 「よかったな」
 気付けば、ザックスが肩を抱いてくれていた。
 満面の笑みを浮かべる彼に、セフィロスもまた知らず笑みが浮かぶ。
 「だからな、信じてやらなきゃ駄目なんだ。あいつが帰る場所を見失なわないようにさ」
 満足気にうなづくザックス。
 それを見ながら、セフィロスは思った。
 多分、自分1人でいたら、昨日までのように絶望の淵に沈んでいただろう。
 彼を、信じることなど出来なかった。
 ザックスが、自分に信じる意味を教えてくれた。
 だからこそ、クラウドが帰って来てくれたのだと、セフィロスには思えた。
 「・・・・・(ありがとう)」
 「ん?なんか言ったか?」
 「いや。」
 穏やかに笑うセフィロスに、ザックスはまぁいいか、と頭を掻いた。
 クラウドが帰ってくる。そして自分がいる。セフィロスがいる。
 それが、多分あるべき姿だから。
 報告書を見つめながら、2人は久々に喜びを噛み締めていたのだった。






後日談(おまけ)
それから2週間後。
丸2週間消息不明になっていたクラウドは、ピンピンしてザックスたちの前に姿を現した。
「いやー、やっぱ帰って来たかー。ったく悪運だけは強いよなーお前」
ザックスはバシバシとクラウドの背を叩く。
クラウドは、へっ、そー簡単に死ねるかよ、とザックスと大笑いしている。
セフィロスは・・・なんだか気恥ずかしいので、無言。(笑)
3人(正確には2人、だが)して酒を汲みかわして気分のよくなったらしいザックスは、クラウドのいない間の話を嫌というほどしまくっていた。
「全くよぉ。ホントお前が帰って来るまで大変だったんだぜぇ」
ザックスがしんみりと言う。
「何がだよ。」
当然の問いを返すクラウドに、先ほどまで無言だったセフィロスがびくりと肩を震わせた。
隣にいるザックスを睨む。
「ザック・・・」
「それがさー、」
ザックスがクラウドの方を向いてにやにやと笑いながらセフィロスの方を親指で示す。
「お前が消息不明になった途端、コイツショックで食い物喉通らないわ、悪夢にうなされて眠れないわで死にかけてよー。仕方ねーから俺が一肌脱いで寝かせてやっ・・・・・・」
そこまで言って、ザックスはハッと口元を押さえた。
セフィロスは石化中。
クラウドは、というと。
「・・・お前・・・・・・」
低く押し殺したような声が、ザックスの目の前で聞こえた。
そして、ふるふると震える拳。
ザックスはゴクリと息を飲んだ。
無意識的に体が引く。
ガタンッ!
「てめえ!人のモンに手ェ出すなってあれほど言ったろうがー!!!」
「ぎゃー!!す、す、すいませんー!!」
クラウドは壁に立てかけてあった釘バット(笑)を手に取ると、逃げ出すザックスを追い回した。
相変わらずな2人に、セフィロスは脱力する。
・・・どうでもいいが、オレの部屋で暴れるのはやめてくれ・・・
深いため息をついていると、クラウドが後ろから肩を叩いて来た。
「とりあえず、・・・心配かけたな」
クラウドの低く落とした声に、セフィロスの鼓動が跳ね上がる。
「・・・クラウド・・・」
「ま、あんたを置いて俺が死ぬってことはないからさ、安心しろよ」
耳元で囁き、上から両腕で抱き締めてくる暖かさに、セフィロスは瞳を閉じた。
やはり、クラウドといて、自分は一番幸せなのだ。
「クラウド」
「ん?」
セフィロスが、小さく彼を呼んだ。
口元に当てられる、クラウドの耳。
みるみる笑みが刻まれるクラウドの表情を見れば、何を言われたかも想像がつくというものだ。
その夜、セフィロスの望み通り、クラウドは彼を蹂躙しさったのだった。





***END***

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