Crasy Soul 01 〜 時の止まる場所



 最近、自分が何をやっているのかわからなくなる。
 気付けば、何にも興味を持てないまま、くだらない行動を繰り返す毎日。
 初めの頃は、少しは目標なんてものもあったはずなのに。
 今は、ただ味気のない、変わりばえのない日々を過ごすだけ。
 後戻りはできない。
 周囲の反対を押し切ってまで神羅に来たのだから。
 でも、もしかしたらそれこそが自分の目的だったのかもしれない。
 生きる意味も持てず、暇さえあれば街に出て。
 あとは欲望のままに夜のルールに身をまかせれば一日が過ぎて。
 たまには嫌気がさして、手首にナイフをあててみたりもする。
 こんな生活をしている自分が、もし愛なんていうわけのわからない感情にまで支配されたなら。
 多分、身がもたないだろう。
 だから、他人と本気で付き合うことはしないよ。
 俺はそこまでバカじゃない。




 「まぁたアンタ、ヤられたの?」
 組み敷く存在の胸に情事の跡を見つけて、クラウドは声を上げた。
 驚き、というよりは、からかうようなロ調。
 「・・・・・・嫌か?」
 淡々と紡がれるセフィロスの言葉は、クラウドにはわからない程度の怯えを含んでいる。
 クラウドははだけられた胸の朱い跡に舌を這わせた。
 「別に。そもそもあんたは俺のモンじゃないだろう?」
 「お前もな」
 上にのしかかる男の背に腕を回す。
 触れる肌が心地良くて、セフィロスは目を閉じた。
 「なんであんたって好きでもないヤツに足開くワケ?」
 太股に手をやり、ゆっくりと憮で上げれば、形のよい唇から甘い吐息が洩れ。
 男なら誰もが欲情しかねないその表情に、クラウドは目を細めた。
 「お前は、まだマシだよ。オレを犯すバ力共よりはな」
 「ほーお。淫乱な英雄様ですねェ」
 小バカにしたようなロ調と、皮肉気な笑み。
 けれど普通なら不機嫌になるようなものでも、クラウドに抱かれている時はそれすらも快楽で。
 セフィロスは自分よりも年下のくせに自分を抱くことに何の躊躇もない少年を見つめた。
 別に、好きなわけじゃない。
 多分、クラウドも。
 2人に共通していることといえば、SEXに意味を持てないことだけ。
 愛を深めるためのSEXなんかじゃなくて。
 ただ慣れてしまった体のために、クラウドは街に行き。
 セフィロスはわかっていながら他人に犯され。
 夜な夜な、色情薬でも打たれたように犯し、犯され続ける毎日。
 「全く・・・・・・俺はあんたの性欲処理の道具じゃないんだぞ」
 台詞とは裏腹に、自分の手でセフィロスが喘ぐ様を楽しむ。
 『体の相性が良かったから』
 その理由だけが、2人の関係をつないでいるのだった。
 「あんたってさー、1日何回ヤってんの?」
 「知らん。気付けばヤられてるからな」
 恥ずかし気もなくそう言う姿は、確かに英雄然としている気もする。
 人間離れした、それこそ性欲とかと無縁のおキレイな英雄様よりは、ずっと良いとクラウドは思った。
 まぁ、度の過ぎた淫乱ぶりには引けるものもあるのだが・・・。
 「・・・よくもつね、毎日」
 「お互い様だと思ったが?」
 そりゃそうだ、と首筋に顔を埋めて笑う。
 手のひらでセフィロスの雄をたどれば、全身がひくりと反応してきた。
 「・・・っ・・・」
 「気持ちいい?」
 瞳をのぞき込んで、潤んだ碧に唇を寄せる。
 少し恥じらうようにうなづくのを確認して、ゆっくりと手の中のそれを扱き始めた。
 2人は、毎日交わっているわけではない。
 本当に偶然、出会った時や休暇が合った時だけ、こんな関係を結ぶ。
 約束なんかはしない。
 そんなもの、友人か恋人がするものであって。
 わざわざそんな関係になる必要はなかった。
 友人かと問われれば、確かにそうなのかもしれないが、多分ハンパなSEXはそういう関係をも壊すのだろう。
 ただの、体だけの関係。
 それでも、友人でも恋人でもないからこそ、何でも気兼ねなく話すことができた。
 友情ほど、愛情ほど、煩わしいものはない。
 それを知った上での関係だからこそ、2人は離れられない存在なのだ。
 「あっ・・・ク、ラウド・・・・・・」
 「何?・・・今日はやけに余裕なさ気じゃん。嫌なことでもあった?」
 別にたいしたことではない。
 自分を犯したヤツが下手くそで死ぬ思いをしただけだ。
 けれど、そんなことがあると、つくづくクラウドとの関係がいいな、と思ってしまう。
 「フッ・・・お前といると疲れなくていいよ」
 「・・・俺は疲れるぜ?」
 「じゃあ切れるか?」
 「ま、機会があったらね」
 こんな会話が幾度もかわされ、結局は一度も切れていないのだから、2人は上手くいってるのだろう。
 愛なんかじゃない。
 愛なんかよりもっと即物的なカンケイ。
 何の煩わしいこともないなんて、最高じゃないか。
 そう思えるからこそ、続けていける関係。
 「ほら・・・入れるぞ。カ抜けよ」
 セフィロスの奥から指を抜き去ると、慣らされた身体が期待に打ち震える。
 そのまま、足を抱えて、体を傾けて。
 セフィロスにゆっくりと侵入すれば、内襞が誘うようにきゅっと締めつけてきた。
 「あ・・・っはぁっ・・・・・・!」
 毎日ヤっていても、痛みはあるのか、流麗な眉が顰められ。
 それでも、洩れる吐息は抱く者の情欲を激しく煽っていく。
 グラインドを始めてやれば、もはや抑えることのできない嬉声が部屋に響いた。
 セフィロスの快楽に溺れる様は、実に奇麗だ。
 この姿が、自分だけのものじゃないと思うと、少しは胸が痛んだ。
 それでも、これは自分が望んだこと。
 もし愛なんかでつながれたなら、自分は心穏やかではいられなくなるだろう。
 他人から羨望の眼差しで見られる彼。
 しかも、その魅力で人を惹きつけるのだから、独占できるとは思えない。
 たまに会って、こうやってつながって、他愛のない話でもして。
 そのくらいの関係のほうが、逆に彼の近くにいられるのだろう。
 セフィロスを好きかと問われれば、今だけは自信をもって肯定するだろうけど。


 だって仕方ないだろ、若い2人がよってたかって愛を告げたって。
 深みなんて全くない愛を紡いで、どうせいつか来る別れにむせび泣くだけさ。
 そして、ジ・エンド。
 そんなムナシイ関係を作るより、今この瞬間の快楽に身をまかせた方がカシコイ生き方じゃないか。
 だから、願わくばー。
 こんな何の変わりばえもない、くだらない行動を繰り返すつまらない日々が、永遠に続きますように。




 


***END***

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