Shall we Dance?



 「・・・あんたって、ホント不器用。それでよく英雄張っていられるよな」
 半ばうんざりとした表情で、クラウドは呟いた。
 「・・・すまん」
 「あんたさーあ、このままだったら絶対相手の足踏んじまうぜ。あんた、真面目にやる気あんの?」
 「・・・だから、すまんと言っているだろう」
 苦虫を噛み潰したような顔で、セフィロスはクラウドを見やる。
 セフィロスの広い部屋の中央で突っ立ちながら、クラウドは深々とため息をついた。
 セフィロスが一応必死になってクラウドの教えを請うていたもの・・・・それは、社交ダンスである。
 神羅カンパ二ーが主宰する、仮装パーティ否、仮面舞踏会。
  政界の重鎮や今をときめく(謎)芸能人たちが多数出席するこの会に、当然セフィロスも神羅の『顔』として呼ばれているわけだった。
 それが、今夜に迫っている。
 基本的に、セフィロス自身は人の大勢集まる所は好きでない。
 だから、毎年毎年仕事を口実に断っていたのだが、
 それに困り果てたプレジデントは、セフィロスに前後まる2週間の休暇を与えたのだ。
 おかげで、遠征で行けませんと言う理由は通らず、かといってさりげに純な彼にサボるほどの勇気もなく、セフィロスはしぶしぶ出席することになってしまったのだった。
 だが、出席するからにはぼーっと突っ立っているわけにも行かないし、いざ踊るとなっても逃げ出すわけにもいかない。
 そこでセフィロスは、自分よりははるかに社交に長けていると思われるクラウドに、意を決して教えを請うていたわけだった。
 「・・・じゃあ、も一回、始めから」
 既に回り切ってしまったレコード(古!)を戻せば、部屋中に軽快なワルツが流れる。
 クラウドは再びセフィロスの手を取ると、自分の肩に片方の手を乗せた。
 クラウドとセフィロスの身長差が10cm以上もあるため、クラウドにリードされているセフィロスは実に・・・・滑稽だ(作者談)。
 「・・・ホラ、肩の力抜いて。こうやって、男性に身を預ける感じで・・・・・・で、ターン」 
 クラウドに支えられるような体勢で、右へ、左へと足を運ばせる。
 時折クラウドや自分の足につまづきそうになれば、握られた手にぐっと力が入りセフィロスの体を持ち上げるようにして中心部を触れ合わせてきた。
 「・・・あ・・・っ・・・」
 「ワン、ツー、・・・・・・そう、俺に全てを預けて・・・・・・自分から動こうとするんじゃない、流されるようにするんだ」
 耳元で聶かれ、体の奥が熱くなる。
 クラウドの、「ダンス上手くなりたければまず女役」というわけのわからない持論に従って女性のポジションをとっているのだが、本当に『女役』になりかけている自分に羞恥を覚えた。
 そんな自分に気付いたのか、クラウドがクスリと笑う。
 「結構、慣れてきたじゃん」
 「・・・うるさい」
 プイッと横を向けば、肩甲骨の辺りにあったクラウドの手が踊るリズムに合わせて下に降りて来た。
 微妙な力加減で腰の辺りを憮でられれば、セフィロスの足腰から力が抜けていく。
 「・・・っ・・・・・・」
 音楽がやむと当時にピタリと足を止め、クラウドはセフィロスを抱き締めた。
 セフィロスの右手をホールドしていた手が離れ、両手で腰を抱き寄せる。
 「・・・・・・まだ・・・昼だぞ・・・・・・・んっ・・・」
 素直じゃない言葉を紡ぐ唇を塞いで、べッドまで待っていられないとクラウドはセフィロスの体を近くのソファに押し倒した。
 「だって、今夜あんたパーティじゃないか。今やらないでいつやるんだよ」
 有無を言わさず、羽織っていたシャツを脱がせる。
 クラウドの温かな指先が胸元を這い、セフィロスは不覚にも感じてしまう。
 ピクリと体が反応したのを感じて、クラウドは今だボトムに隠されたままのセフィロス自身に布越しに触れた。
 「・・・あ・・・っ・・・」
 「あんただって・・・・・・こっちのがやる気出てきただろ?」
 既に堅く膨張し出しているそこを確認して、手はセフィロスのボトムの中へ。
 ベルトを緩めてゆっくりと侵入すれば、下着の前部がセフィロス自身の溢れさせた蜜によって湿り気を帯びていた。
 丸い先端やその周辺部を憮でさすれば、より堅さを増したそれがセフィロスの下着をぐいぐいと押し上げてくる。
 「ホラ、窮屈だろ?脱がせてやるから、腰あげて」
 「ん・・・!・・・や、やだ・・・」
 ここまで来て抵抗の意を示すセフィロスに、クラウドは苦笑した。
 外気に晒されたからか、それとも快楽に支配されかけているからか、つんと立ち上がった朱い胸の飾りをきつく吸い上げれれば、セフィロスの体が脈打つように揺れる。
 のけぞった拍子に腰の下に手を入れ、器用に下着ごと剥ぎ取った。
 全裸になって横たわるセフィロスのあられもない姿を、クラウドは目を細めて眺める。
 「あんたって、ホント綺麗だよな・・・・・・」
 上気した頬と、潤んだ碧の瞳。
 軽く浮き出た鎖骨から、ほどよくついた筋肉。
 日に焼けたこともないような真っ白な肌が自分の愛撫によって桜色に染まる様を。
 指で辿りながら、ゆっくりと堪能する。
 「み、見るな・・・・・・!」
 羞恥に耐え切れなくなって身を捩るが、クラウドはその隙にセフィロスの足を割り、自分の体をセフィロスの間に滑り込ませた。
 誰にも見せないセフィロスの欲望と羞恥の全てが、自分の前に晒されている。
 その事実が、よりクラウドの熱を煽った。
 「あーあ、もったいないなぁ。こんな綺麗なあんたを知らない奴と踊らせるなんて」
 「な、何言って・・・あっ・・・は・・・っ・・・!」
 開かせた足の奥にある、朱く染まった部位を軽くなぞる。
 それだけでひくひくとうごめき自分の指をくわえ込もうとする様子に苦笑すると、クラウドは望み通り指を挿し入れた。
 それほどの抵抗もなく2本、3本と受け入れたセフィロスの中で内壁を押し返すように強く刺激してやると、波立つように足が揺れる。
 「い・・・やだッ・・・っ・・・」
 「いや、じゃないだろ。・・・全く、いつまでたっても素直じゃないんだから・・・・・・」
 指は中を刺激したまま、クラウドはセフィロスの唇に自分のそれを重ねた。
 逃げようとする舌を捕らえ、その少しザラついた感触と囗内のツルツルした感触とを存分に味わう。
 含み切れない唾液がセフィロスのロの端を汚す頃、肛内はクラウドの指で十分にほぐされ、セフィロスの体の力が抜けていった。
 「セフィロス、そのままでいて・・・・・・」
 ロ元からこぼれた液体を舐め取り、耳元で声を低めて囁けば、胸に感じるセフィロスの鼓動が速まった。 
 桃色に染まる頬から、いつも以上の色香が立ち上ってくる。
 クラウドは誘うようなセフィロスの表情をしばし見つめて、片足を抱え上げるとあらわになったそこに高ぶった自身をあてがいゆっくりと中へ埋め込んでいった。
 「くあ・・・っふ・・・・んっ・・・」
 セフィロスの唇から、押し出されるように声が洩れる。
 侵入してくるそれは、少しの苦痛と激しい快楽を伴っていて。
 セフィロス自身は意識していなかったが、その足がクラウドを逃すまいと彼の背に絡みついた。
 「イイよ・・・あんた・・・もっと感じて・・・・・・」
 耳元にセフィロスの熱い吐息を感じながら、セフィロスの奥の、また奥へ。
 自身が全て入り切ってしまうと、セフィロスの中がきゅっと締め付け、その心地良さにクラウドは溺れた。
 「ああ・・・っ・・・はっ・・・」
 少しずつ、加えられる律動。
 だんだんと強く、激しくなるそれは、セフィロスのなけなしの理性を吹き飛ばす。
 体裁も羞恥もかなぐり捨てて、ただクラウドを感じるだけの存在へ。
 それを、セフィロスのどこかで喜びと共に実感していた。
 「セフィロス・・・・・・」
 ピンク色に染まった世界の中で自分の名を呼ばれ、セフィロスの胸が高鳴る。
 顔を上げれば、こちらも快楽に喘ぐような顔をしたクラウドが、自分を見つめて来ていた。
 夢中で自分を抱くその存在に手を伸ばし、その肩にしがみつく。
 数瞬後クスリと笑う気配がして、唇が重ねられた。
 「・・・ん、・・・っ・・・」
 軽くもなく、深くもない甘いキス。
 その気持ち良さに溺れながら、絶えず下肢が快楽を訴える。
 クラウドの手のひらに包まれた自身はセフィロスが感じるそのままに先走りの液を溢れさせ、クラウドの手と腹を濡らしていった。
 「・・・クラウド・・・もっ・・・」
 あまりの快楽に耐えきれずに、セフィロスがクラウドに懇願する。
 クラウドにとっては、幸福を感じる一瞬だ。
 いつもいつも頑固で、そう簡単には素直にならないセフィロスが、
 自分にすがりつき、快楽を訴える様は、
 それだけでイってしまいそうなほど魅力的だった。
 「セフィ・・・セフィロス・・・」
 セフィロスの限界を訴える言葉に、クラウドもまた限界を感じてセフィロスを突き上げる。
 名を呼ぶ度に自身を締め付けるそこが収縮し、クラウドは押し寄せてくる波に唇を噛み締めて耐えていた。
 「あっ・・・も・・・っあああっ!!」
 「・・・・・・っ・・・」
 親指の爪で先端を引っ掻くと、それに促されたかのようにセフィロスのそれから白濁した精が放たれる。
 その瞬間クラウドを受けいれていた箇所も強く収縮して、クラウドもまたセフィロスの最奥に想いのたけを解き放ったのだった。





 気付いたのは、ベッドの上だった。
 (あれ・・・オレ・・・・・・)
 確か、今夜のためにクラウドにダンスを教えられて、なんだかんだで流されて・・・
 あのまま、気を失っていたことに、セフィロスはため息をついた。
 (そうだ・・・時間・・・・)
 ベッドサイドの時計で今何時か確認しようとなぜか動きづらい身を起こすと、おそろしいものが目に入る。
 大きくカーテンの開いた窓に映る景色は、様々なネオンに彩られた、美しい夜景。
 ・・・夜景、である。
 「ま、まさか・・・・・・」
 バカみたいに焦って、時計をつかみ見てみると・・・・・・、PM7時が過ぎていた。
 (・・・パーティ・・・確か、6時からだったような・・・・・・)
 呆然と、時計の針を見つめたまま、セフィロスは硬直し続けていた。
 「あ、・・・起きたか?」
 ベッドルームに入ってきたクラウドを、セフィロスはものすごい形相で睨んだ。
 クラウドは何故か正装に身を包んでいるのだが、今のセフィロスにはそんなことを気にする心の余裕はない。
 「・・・・・・どうして起こさない」
 「え?」
 「どーしてオレを起こさないんだっ!!!!」
 セフィロスは怒りに震える声でクラウドに叫ぶ。
 だが、肝心のクラウドはしれっとした顔でぽりぽりと頭を掻いている。
 「だってさー、あんためっちゃ気持ちイイ顔して眠ってたし。起こすの悪いだろ」
 それを聞いて一瞬セフィロスの頬に朱みが兆したが、むしろ顔が赤いのは怒りのためだろう。
 もうショックで頭を抱えるセフィロスに内心ちょっと笑うと、クラウドはセフィロスの寝ていたベッドに腰掛けた。
 「いいじゃないか。別に、あんた行きたがってたわけじゃないだろ?」
 「いや、まぁ・・・・・・そうだが」
 そりゃそうだ。けど仕事だ。サボったらあとが怖い。
 「それに・・・どうせ舞踏会ならさ、知らない奴と踊るより、・・・俺と踊ってた方・・・イイだろ?」
 さりげなく妖しげな視線を送られ、セフィロスは返事に詰まってしまう。
 結局セフィロスは照れまくって顔が真っ赤になってしまっていた。
 「ほぉら。だから、さ。セフィロス・・・・・・」
 やわらかく微笑むクラウドの差し出す手を取って、起き上がれば。
 「・・・・・・な」
 セフィロスの体が、なんだか真っ白な上にロングなパーティドレスに包まれていた。
 セフィロスの微妙なラインをそっくりそのまま映すような、無駄のないシンプルなデザイン。
 「な、なんでこんな・・・・・・」
 驚愕に目を見開くセフィロスに、クラウドは一礼して、告げた。
 もう、2人の世界が来るのを待つばかり。



 「Shall we Dance?」





             


***END***

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