Re-SET vol.2



その日、クラウドは休みだった。
彼の悪友たちに誘われ、カーム辺りの海に行くらしく、
ここ最近特に忙しいこともなかったセフィロスは、もちろんそれを許可していた。
実は、彼自身クラウドに一緒にいかないかと誘われていた。
だが、元々ひと付き合いの苦手な彼が、
もともと2人の友人であるザックスと3人だけだというならともかく、
彼の仲間たちまで一緒だというのだから頭を縦に振るわけがない。
だがセフィロスは、むしろ好都合だと思っていた。

執務室の机には、彼が極秘に調べさせていた報告書がずらりと並んでいた。
先日まとめた、不審な死を遂げたものたちの詳細な書類である。
そこには、神羅が公式にまとめたものから、彼らの友人たちから仕入れた噂や情報まで彼らに関する情報が全て記載されていた。
その中から、セフィロスは彼らの共通点を見つけたのだ。

彼らは皆、ソルジャー候補生だった。
ソルジャー。彼らは名実ともに神羅の精鋭兵士で、1stから3rdにランクづけされている。
彼らは一般兵の中から募った希望者に適性試験を受けさせ、
それに受かったソルジャー候補生の中から既定の人数が選ばれていた。
だが、セフィロスはそこらへんの事情をよく知らない。
無論セフィロスもソルジャー1stである。
だが、不思議なことに、彼は候補生に名を連ねず、軍に入ったときからソルジャー1stだった。
であるから、候補生がどのようにしてソルジャーになれるのか、
一般兵がどんな試験を受け、候補生として名乗れるようになるのか、
部外者である彼には知る由もなく、
そもそも、ソルジャーに関する事柄は、神羅の中では機密事項として扱われていた。
そんな彼らが、この不審な死の被害者だった。
一般兵の中で、ソルジャーに憧れる者は多い。したがって、候補生も実際のソルジャーに比べれば数多くの人数がいる。
もちろん、戦場で死んだ候補生全てがその被害にあっているわけではない。
だが、もし彼らと関係があるのなら―――。
彼らは知っていて、それを隠しているのか。それとも、知らないうちに利用され、その被害にあっているのか。
ともかく、神羅が何かをしでかしているのは明白だった。
そうでなければ、偏った立場の者だけに被害が及ぶはずがないからだ。

そう結論付けたセフィロスは、
かねてから目をつけていたミッドガル零番街の閉鎖区域に足を踏み入れていた。

不審な死を遂げた彼らの周辺に話を聞けば、
死ぬ直前にこの近くで見かけた、などと何かしらこの閉鎖区域にかかわりを持っていた。
ならば、全ての元凶はこの場所ではないのか。
セフィロスは顔を顰めながら、誰の気配もしないその中を歩いた。

この閉鎖区域は、
少なくとも公式記録ではもともと犯罪者の収容所という暗い過去を持っていた。
だが、ここは地下である。
ミッドガルは、地面に這って生きるしかない者達の住まうスラム街と、
本来地上に降る光を遮るようにその上にプレートを敷き、その上で住まう裕福な住民達と、
貧富の差がはっきりとわかれている都市だ。
その上流社会のトップである神羅カンパニーが、下を顧みることはないうえ、
地下というあやふやな場所では、スラム街の反神羅を掲げる貧民たちの力を借りて脱走する者も当時少なくはなく、
結局そんな原始的な収容所は廃止されたわけだった。
今ではコンクリートで全て埋められ、誰も近づかない、入ることのできない場所となっている。
だが実際、セフィロスがこうして足を踏み入れられるあたり、
コンクリートで埋められたという公式記録は全くの嘘であることがわかる。
内部は、カツ、とセフィロスの靴の音だけが響いていた。
鉄錆びたニオイのするその場所は、
まだ人の気配はないにしろ、何か不穏な空気をセフィロスに感じさせる。
セフィロスは懐に万一のためのマテリアを用意しながら、
奥に進んでいった。
もし今日クラウドがいたら、自分がここに行くことを反対されたかもしれなかった。
隊をまとめる指揮官であるセフィロス自ら、危険な場所に赴くことはあまり許されたことではない。
しかも、これは公式命令でもなく、ただのセフィロスの意向だけなのである。
なにかあれば、下手に懲罰を受けてしまい兼ねない。
だからこそ、もともとクラウドはこの調査に乗り気ではなかったのだろう。
しかし。
しかし、とセフィロスは思った。
明らかに矛盾した事柄に対して、目を瞑ることは彼の性分からできなかった。
ましてや、目の前で死んだ部下がその被害にあっているのである。
真実を自分の目で見極めなくては、彼の気持ちがおさまらなかった。
だからこそ、今1人で来たのだ。
ひやりと湿った空気。
だが、息苦しくないあたり、まだ浄化装置は作動しているらしい。
ならば、いつ、誰が出入りしてもおかしくないはずだった。
なんの変哲もない独房が過ぎ、セフィロスは重いドアに手をかけた。

「・・・!・・・こ、れは」

ギイ、とあけた途端、
中から強烈な咆哮が聞こえてきて、セフィロスは一瞬後辞去った。
咆哮だけではない。動物の鳴き声や、叫び声。人間の呻き声のようなものまで聞こえてきて、
セフィロスは思わず耳を覆った。
暗い部屋、手に持ったハンドライトだけで辺りを見渡す。

・・・部屋には、沢山の檻が置いてあった。
ひとつひとつがセフィロスの腰ほどもある巨大な檻だ。
おそるおそる覗き込むと、多数の動物が合成されたような醜い生き物だったり、
原型を留めていず、苦痛にただ泣き叫ぶしかないような動物というような、
見るに堪えない凄惨な光景が目の前にあった。
そして、今頃気付いたかのように鼻につく強い血の匂い。
セフィロスはその光景に口元を覆った。
こんな場所で、神羅はなにをしていたのだろう。
明らかに自然のそれとは違う生き物たち。
役に立たず、捨て置かれた、といった彼らを作り出した者といったら、
セフィロスには覚えがあった。
脳裏に浮かぶ、酷薄な笑みをしたあの男。
眼鏡の奥から自分を見る視線は、まるで実験動物を見るように冷たく、会うたびに恐怖を覚える。
名を、宝条といった。
神羅カンパニー化学部門、現統括。
前統括を自ら殺し、その地位についたと噂される狂気の科学者―――。

「・・・やっぱり、来ちゃったんだ」

闇の中から声が聞こえ、セフィロスははっとそちらのほうを見た。

「誰だ!」

セフィロスは叫んだ。
回りの檻の中からは、相変わらず生き物たちが騒ぎ、男の声は聞こえない。
セフィロスは声のするほうを睨みつけながら、足を進めた。
声を投げた人物は、さきほどの声から察するに随分若い気がした。
だが、姿を見せないままのその声に、セフィロスは眉根を寄せる。
警戒しながら奥に進むと、いきなり天井の明かりが部屋中を照らした。
先ほどまでずっと暗いところに目が慣れていたため、思わず目を瞑ってしまう。
やっと視界が開けてくると、目の前に立つ男の姿が見えた。
小柄な体躯に、大きく跳ねた金の髪。
見慣れたその姿に、セフィロスは信じられない、といった風に目を見開く。

「・・・・・・クラウド・・・」

目の前に居た男は、今日はカームに行くと言っていたはずの男だった。
セフィロスの思考はひどく混乱していた。

「・・・どうして、こんな・・・クラウド」
「どうして、って?勿論、あんたが心配だからだよ」

クラウドは笑みを浮かべた。
いつもと変わらないその空気に、しかし今のセフィロスは同調できるはずもない。
セフィロスに近づいたクラウドは、彼の肩に手を置いた。
だが、青年ははっとしてその手を払いのける。
クラウドの表情がかすかに曇った。

「・・・セフィ」
「お前はカームに行ったのではなかったのか」
「・・・ああ。あれ、嘘。」

悪びれなくそう言うクラウドを睨みつける。
クラウドはしばしセフィロスを見ていたが、すぐに視線を反らして肩を竦めた。
立ち尽くす青年に構わず、クラウドは先ほど異形の生き物たちがいた部屋へ歩む。
クラウドが入ると、驚くことに耳を突くその声が収まった。
その中のひとつの檻に手を入れる。
先ほどまで暴れ続けていたはずのその生き物が、クラウドの手に擦り寄った。
まるで甘えているかのような仕草。
セフィロスは目を細める。

「・・・ああ、可哀想に。みんな怯えてるよ。・・・あんたのせいだ」
「ここは・・・なんなんだ・・・」

セフィロスは震える声でクラウドに尋ねた。
もはや、クラウドがあの件に関わっていることは明白だった。
彼がここにいたのも、自分がこの件についての調査をすることを幾度となく止めたのも、
すべてそれが理由であればしごく当然のことだ。
正体がバレたくないのは、誰だって同じに決まっている。

「・・・過去の遺物さ」

その昔、ここが実際に収容所として使われていた頃、
ここは極秘の実験室として利用されていた。
無論、極秘なだけあって、まともな研究はしていなかった。それこそ、生命の冒涜といえるであろう、人体実験の数々。動物との掛け合わせ、遺伝子操作。

「確かにここは、昔見向きもされない犯罪者たちを使い、数多くの人間を実験と称して殺してきた。・・・でも、今は違う。だから、もういいだろ?帰ろう、セフィロス」

クラウドはセフィロスのほうを振り向くと、柔らかな笑みを浮かべた。
手を差し出してくる彼に、だがセフィロスは頷くことはなかった。
セフィロスにはその手がひどく血塗れているように思えた。
今、彼に流されるわけにはいかなかった。
自分は、真実を見出すためにここにきたのだ。

「・・・セフィロス」
「―――クラウド。・・・信じていたのに・・・」

セフィロスの言葉に、クラウドは手を下ろした。
口元に笑みが浮かぶ。先ほどの柔らかなものとは違う、ひどく冷たい、残酷な笑み。
それを見て、セフィロスは恐怖すら覚えた。
たかが15歳の少年。だがその表情は、到底少年のそれではない。

「・・・オレは、真実を見極めるために来たんだ。ここで遊んでいる暇はない」
「それは残念だな。でも、もうちょっと遊んでいってよ」
「断る!」

突然背後から襲い掛かる気配に、すんでのところでセフィロスは身を交わした。
襲い掛かってきたそれは、長い触手を持つモンスターだ。セフィロスは応戦しようと懐からマテリアを取り出す。
セフィロスの意志に呼応して緑色に輝いたそれは、
しかしその力を発動することはなかった。

「・・・な・・・」

予想だにしなかったことに、セフィロスの動きが一瞬遅れる。
その時、クラウドが動いた。

「・・・!痛っ・・・!」

腕を後ろ手に捻られ、苦痛に声を洩らした。
だが、普段の彼ならばクラウドの力など、簡単に撥ね退けられたろう。
であるのに、セフィロスは次第に身体の力が抜けていくような感覚を覚えていた。

「っな・・・」
「馬鹿だね、あんた。こんな場所であんたの魔法が使えるわけないだろ」
「・・・!」

その言葉が意味すること。
彼の背後に誰がいるかを悟って、セフィロスは青褪める。
神羅最強と謳われるセフィロスも、ただ1人だけその力を行使できない者がいた。

「・・・ほう、じょう・・・」
「父親を呼び捨てて良いなどと育てた覚えはないがね」

背後から『声』が聞こえ、文字通りセフィロスはびくりと震えた。
かの存在は、セフィロスにとって恐怖でしかなかった。
物心ついたときから、今に至るまで、彼という彼に優しくされたことは一度たりともない。
ただ、苦しいだけだった。
検査と称して身体に刺される太い針も、
乱暴に扱われ、血を流してなお強要される汚らわしい行為も、
そう―――・・・彼から与えられるもの全てが。
苦痛でしかなかった。父親に対する強烈なコンプレックスが、彼の昏い部分を形成しているといっても過言ではない。
白衣を纏ったその男は、強く睨みつけるセフィロスの視線に小さく哂うと、
セフィロスたちの元へ歩んだ。

「・・・あれ、宝条センセイ。今日は仕事だと伺っておりましたが」
「ああ、どうしても私の可愛い人形が見たくなったんでな。抜けてきてしまった」

ククッと肩を震わせ。
宝条は身動きの取れないセフィロスの前に来ると、その顎を取った。
セフィロスは相変わらずその碧の瞳で彼を刺し殺そうというほどの視線で彼を睨んでいた。
かすかに宝条が目を細める。

「相変わらず美しくて何よりだ。だが・・・」
「・・・くっ・・・ああ・・・!!」

宝条が指の力を込める。
途端、セフィロスの左目が熱を持ち、激しく痛み始めた。
瞳が、焼けるような。
だが、それだけでは止まらなかった。彼を襲うそれは、次第に全身に広がり、耐え難い苦痛に変わる。
セフィロスが恐れる1つの理由がこれだった。
理屈などわからない。だが事実、自分の身体の全てが彼の手の内にあった。
彼の意志に反抗すればするほど、自由が利かなくなる感覚。
そう、彼の男に抵抗するということは、セフィロスにとって不可能に近いものだった。
あまりの苦痛に意識が飛びかける。
からだが焼ける。
自分の全てを消滅させてしまいそうなほどの業火を、セフィロスは見た気がした。

「その反抗的な目は気に食わん」

宝条が手を離すと、一気に苦痛が去り、セフィロスは荒い息を吐いた。
もはや力の抜けかけた体は、自身で支えることができない。
セフィロスはクラウドの支えで漸く立っているだけだった。

「はっ・・・あ、っ・・・」
「さて、どうするかな」

クラウドが壁に備え付けられていた旧式の枷にセフィロスの両腕をはめ込む。
腕を頭の上で縛り付けられ、捕らわれの身となったセフィロスを、
宝条を顎に手を当てて見上げた。
その瞳には、ひどく残酷な色が浮かんでいる。

「許された領域以上に足を踏み入れた罪は重いぞ。どう償ってもらおうか」

クックッと哂う宝条の隣に、クラウドが立った。

「ねぇ、宝条センセイ。俺にやらせてよ」

要するにセフィロスの口を封じればいいんでしょ、とクラウドは口の端を歪ませる。
宝条は再び笑った。だがそれは、セフィロスに見せた蔑む表情ではない。
ひどく楽しそうな笑みだった。張り付けられたままのセフィロスの顔が恐怖に歪む。
宝条は胸元の白衣のポケットからアンプルを取り出すと、
クラウドの手のひらにそれを落とした。

「1日時間をやろう。たっぷり可愛がるといい」
「アイ・サー。」

苦しくもセフィロスの命を受けたときと同じ言葉を宝条に返し、
クラウドはセフィロスに近づいた。
愛していた少年は見たこともなかった酷薄な表情で自分を見上げ、
セフィロスは唇を噛む。
これからどんなことが自分の身に待ち受けているのか、それを思うと、
今すぐにでも死んでしまいたい気分だった。

「よかったね、セフィ。1日くれるって。あんたの父上は本当に寛大だ」
「んっ・・・!!」

クラウドに強引に口付けられ、セフィロスは眉根を寄せた。
彼の視界の端には、腕を組んだ宝条が写っている。
宝条は彼の父親ではあったが、セフィロスはクラウドとの関係を勿論知らせてなどいなかった。
だというのに、今、彼の目の前でクラウドに犯される。そう思うだけで、居た堪れない気分になる。
セフィロスは抵抗の限りを尽くそうと、歯列を割ろうとするクラウドの舌の侵入を許さなかった。
それに気付いて、クラウドが気配で笑う。
歯肉を舌で幾度も舐めあげる。クラウドのキスに慣れたからだは、
どんなに堪えようとも彼の与える感覚に反応を示してしまう。
絶対に堪えてみせると誓った彼の心は、もはや弱音を吐き始め、とうとう彼に侵入を許してしまっていた。

「ん・・・ふ、う―――・・・っ・・・!」

くちゅくちゅと舌を絡め取られ、セフィロスは眉根を寄せた。
だが、それ以上に恐ろしい出来事が彼を待ち受けていた。
クラウドがセフィロスのボトムのベルトに手をかけ、一気にそれを引き下ろしたのだ。
いきなり素肌になった下肢をひんやりとした空気が包み込み、
セフィロスは悲鳴をあげた。
それを、クラウドと宝条に見られている。セフィロスはきつく唇を噛み締める。
血すら滲むくらいの強さで唇を噛んでいると、クラウドの舌が彼の唇をなぞってきた。
甘い、甘いキス。
現状では考えられないはずの快楽に、セフィロスは浮かされる。
自分に溺れるセフィロスに、クラウドは笑みを浮かべた。
毎晩毎晩抱いてきたのだ。
クラウドにとってセフィロスを堕とすことは簡単なことだった。
唐突に、宝条は口を開いた。

「声が聞こえないな。もっと啼かせろ」
「・・・だってよ。強情張るのも大概にしろよ?どうせあんたは逃げられないんだ」

残酷な言葉が耳を打ち、セフィロスは熱に浮かされたまま首を振る。
クラウドの指がセフィロスの口内を無理矢理こじ開け、彼の指の隙間からくぐもった声が洩れた。
だがそれでもまだセフィロスは嬌声をあげることはなく、
クラウドはちっと舌打つ。
下肢への愛撫もおざなりに、クラウドはそのまま自身の楔を彼の奥に宛がった。
指で慣らされてもいない箇所に、クラウドの熱が宛がわれ、セフィロスは息を呑む。
狭い内部を無理矢理引き裂くように押し込まれるそれに、
セフィロスは体内から押し出されるように高い声をあげていた。

「・・っあ・・・あ―――ああっ・・・!!」
「イイ声だぜ、セフィ・・・」
「あっ、は・・・っ・・・う・・・」

まともに濡れていないその部分を、クラウドは強引に擦りあげる。
そのたびに、セフィロスは抑えきれない嬌声をあげ、しかしどうすることもできない。
クラウドは青年の片足を持ち上げると、セフィロスの身体をより一層壁に押し付けるようにして肌を密着させた。結合の度合が深くなり、セフィロスは下肢から立ち上る疼きに堪えられない。

「あ、はっ・・・あんっ・・・あっ・・・」

ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が、セフィロスの耳を打つ。
そのたびに、熱い塊に身体の内部を強く擦られる。セフィロスは眩暈がするほど感じていた。
不本意な状況下で、だというのに快楽に溺れる自分が嫌でたまらなかった。
だが、それでも彼にはなす術もない。

「あんた、いつもより感じてる?すごく、イイぜ・・・」
「あ!・・・は、あっ・・・」
「もしかして、こんなのが趣味なんだ?」
「ち、違・・・!!」

クラウドの意地の悪い言葉に、セフィロスは真っ赤に顔を染める。
自分を抱く男越しに、彼の一番嫌いな男が満足げに自分を見やっていた。
彼の望む姿を見せたくない。そう思うのに、身体が勝手に暴走を起こす。
もっと欲しいと。
意識すら眩む快楽を求めて、セフィロスの身体は貪欲にクラウドを締め付ける。

「ああっ・・・や、めろ・・・!」
「・・・・・・馬鹿言ってんなよ英雄様」

蔑みの言葉を吐かれ、セフィロスは苦しげに顔を逸らす。
全身がクラウドから受ける感覚に反応を示していた。
けれど、彼の心は素直に溺れることはできなかった。強くなる胸の内に、セフィロスの瞳から涙が零れる。
けれど、止まらない動きはセフィロスの内部を蹂躙し、
そのたびに彼は嬌声を洩らす。
もう、狂ってしまいたかった。
こんな羞恥と屈辱に耐え続けるくらいなら、狂い、おかしくなってしまえばいいのに。
だが、それすらできない残酷な現実が、ここにはあった。

「そろそろ、イかせてくれる?セフィ・・・」
「ん―――・・・っ!あ、ああっ!!」

先ほどより一段と強く穿たれ、セフィロスはもはや声を抑えることなどできなかった。
突き上げられ、そのたびに声が洩れた。
視界の片隅で、男の笑みを捕らえた。

―――嫌だ。

だが、そんな拒絶も、無意味に等しく。
やがて、激しい快楽の波にセフィロスもまた流される頃、
下肢の奥に熱い精が放たれ。
その衝撃に、セフィロスは意識を手放した。

「セフィロス」

もはや、何も聞こえていないセフィロスに、クラウドは耳元で囁いた。
甘く、ひどく甘く。
先ほどの彼とはまったく違う声音で、クラウドはセフィロスに声をかける。
壁に張り付けられたまま意識を失い続ける彼に、
そうしてクラウドは口付けた。





「馬鹿だね、セフィロス。あのまま知らないふりをしていれば、ずっと幸せでいられたのに」





...to be continued.





Update:2003/09/03/FRI by BLUE

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