クラウドの受難、セフィロスの受難。その4
「・・・私、みんなが帰って来なくても平気だから。クラウドさえいてくれれば・・・・・・」
そう言って微笑むティファを、クラウドは無言で抱き寄せた。
肩に触れる温かな感触に、クラウドも目を閉じる。
と、
「スリプル!」
どこからか聞き覚えのある声がして、隣のティファがドサリと倒れ込む。そして、
「見〜た〜ぞ〜・・・」
低く唸る声に、クラウドは文字通り飛び上がった。
「セ、セ、セフィロス?!」
見れば、目の前に仁王立ちしたセフィロスの姿。
切れ長の碧い目が、剣呑に細められている。
「・・・クラウド・・・貴様という奴は・・・・・・私という存在がありながら・・・・・・」
「ち、違う!!それは誤解だあっ!!」
これ以上ないほどあわてて首を振るクラウド。
「五月蝿い!!私は見ていたぞ。初めっから!ずうっと!!ど一見たってこのままキスどころかー線まで越えそうな雰囲気だっただろーがっ!!」
怒りに顔を赤くして、しかもこぶしはふるふると震えている。
これは、ヤバい。
クラウドは必死にセフィロスをなだめ始めた。
「だ、大丈夫だって。心配するな。明日は絶対あんたの所に行く。で、あんたを連れ出して、ついでにメテオも壊せば一件落着!待っているのは俺とあんたとのHAPPY−LIFEっ!新婚さんいらっしゃい!!」
そう言って、最終手段とばかりに、腕を引いて、唇を重ねる。
何度か舌を絡み合わせていると、安心したのかセフィロスの気配は消えていった。
「・・・・・・た、助かった・・・・・・」
まだ心拍数の上がった胸に手を置いて、ほうっと一息。
そして、スリプルがかかったままのティファを、さっきと同じ体勢に戻しておいた。
そうしているうちに、短くも長い時は過ぎ。
地平線が、ゆっくりと明るさを取り戻してきていた。
「・・・もう、夜明けだ。・・・おはよう、ティファ」
何事もなかったように声をかけたが、ティファは少し身じろぎしただけで。
そして、言った。
「・・・・・・。もう少しこのままでいさせて・・・・・・。2度と来ないこの日のために・・・・・・うふふふ(空笑い。)・・・・・・」
クラウドは、またもや心拍数を跳ね上がらせる羽目になったのだった。