09:昔の・・・



「コイビト?」

ギルの部屋に飾っていた写真の中に、女性を見つけた。
茶髪でクセ毛を短く整えた、可愛らしい女性。
会った事はないし、この家に来たこともないから、
かなり昔のことなのだろうか?

「そうだよ。本当に、本当に、昔の話。」
「好き?」

今でも、好きなの?
嫉妬しているわけじゃない。ただ、聞きたかった。
写真を見るあなたの瞳が、一気に優しくなったから。

「それがね。よく、わからないんだ」
「わからない?」

自分の気持ちが、自分でわからないなんて、
あるのだろうか。

「昔はね。・・・とても愛してた。彼女以外、何も見えていなかった。
 でも、今もそうかと言われると、・・・難しいね。」
「・・・・・・」

好き、なんだね。今も。
あなたの心は、すぐ顔に出るから。
ずっとあなたを見ていた俺が言うのだから、間違いない。
俺は、あなたのそんな瞳、見たことないよ。
少し苦しげで、そして優しい瞳。
・・・もしかして、泣いてる?

「・・・レイ?」
「あなたは、本当に素直でない・・・」

ギルは不可解な顔をした。
頭に疑問符が浮かんでいるのが、手に取るよう。
まったく、どうしようもない、自分の心すら表現できない、
可哀想な子供のみたいだ。
でも、ね。
もう、あなたは俺の腕の中にいるから。
離さない。死ぬまで。どうせ先は短いんだ。だから。

「俺は、あなたが好きだ」
「私も、君が大好きだよ」

昔のことなんか、どうでもいい。
俺があなたのすべてじゃなくても、俺は平気だよ、ギル。









[レイギル好きに10のお題] by 吟遊ウルフ 様
Update:2005/09/25/WED by BLUE

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