アカデミー進級試験 Side-B 01



「・・・ふぅ・・・」

黙々と机に向かっていた少年は、
丁度キリのいい所まで終わったのか、持っていたペンを手放し、息をついた。
明日は、彼――レイ・ザ・バレルの通うザフト軍事アカデミーの試験日だ。
特に今回は進級がかかっている重要なもので、ここ2週間勉学に特に勤しんでいたのだが、
それが漸く、明日で終わる。
少しは気が休まるな、とレイは微かに口元を緩ませた。
とはいえ、常に学年ダントツトップで通っている少年にしてみれば、それほど血眼になって机に向かう必要などないのだが、
もちろん、油断は大敵だ。
昼、自分のノートを借りていったクラスメイトを思い出す。
そう、油断などしていられない。
自分はなんとしても、将来"彼"の支えとなり、その片腕とならなければならないのだから。
そのためには、まずアカデミーで良い成績を残し、ザフト軍のエースである証、ザフトレッドにならなければ。
もう1人、多少サボリ魔ではあるが、本気になると強い(であろう)少年を思い出し、
レイは再び机に向かった。
明日は、MS工学。
元々工学系の学校に通っていたから、理論は得意分野に入る。
念には念を。少年は講義テキストを読み返し始めた。

しばらくして、ばたり、と玄関の方から音がした。
やっと帰ってきたか、と密かにレイはため息をついた。確認などしなくても、誰だかわかる。
ギルバート・デュランダル。若くして国立理化学研究所の所長を務める、プラントでは有名な科学者である。

ひとつ屋根の下で生活しているギルバートは、一応自分の身元引受人なのだが、
実のところ、どちらが世話を焼いているんだかわからない。
なぜなら、ほとんどの家事は自分が担当しているからだ。
もちろん、遺伝子工学の権威として多忙を極めている彼よりは、学生の自分のほうが時間があるから、ということもあるが、
なにより彼にこの類の仕事をさせると、少年にしてみれば目も当てられない状況になるのである。
要するに、不器用なのだ。料理をさせればまともに食べられたものではないものが出来上がり、窓を拭かせれば何故か掃除をさせる前以上に汚れが目立って見えてしまう。
これを、綺麗好きで何事もマメな性格のレイが我慢できるはずもなく、
せめて半々で、と気遣うギルバートの言葉を一蹴し、かくして家事はレイの担当となっていた。
レイは自分の部屋を出ると、玄関へと足を運んだ。
そこには、緊張の糸がぶっつりと切れた大の大人が1人。

「・・・・・・ギル・・・」

レイはうんざりと、玄関先にぶっ倒れている青年を見やった。

今夜は、ギルバートは親交の深いプラント最高評議会の議員らに誘われて、ディナーを共にする予定があった。
勿論、それに対してレイがとやかく言うことではない。
議員選への出馬も求められている彼だ。シンパの議員たちとの付き合いは外せないだろう。
ギルバート自身、元々人付き合いが苦手であっただけに、
そういう類のお堅い席は御免被りたいのが彼の本音であったが、そこは仕方ない。
レイの心配事は、そういうことではなかった。

「・・・ギル、ほら、起きろ。」

レイはギルバートの頬をぺちぺちと叩いた。
幸せそうに目を閉じていた青年は、レイに促され、目を覚ました。
視界に少年を認めて、ギルバートは微かに笑う。
それから、そのぬくもりを追うように手を伸ばして、添えられた少年の手を取って。
なんと、青年はそのまままた嬉しそうに目を閉じてしまった。
レイは口の端をひくつかせた。
まったく、いつもいつも、このオトナコドモは。

「っギル!だから何度言ったらわかるんだ!!ここはベッドじゃないっ!!」
「・・・レイ、も、一緒に寝よ・・・」
「〜〜〜〜〜っ!!」

毎度のことながら、レイはがっくりと肩を落とした。
付き合いに出ると、いつもこうだ。
ギルバートの物凄い酒癖の悪さに、いつもいつもレイは手を焼いていた。
酒に弱いわけではないのだが、一定量を過ぎると、この青年は大変なことになるという事を、レイは長年の経験でよくわかっている。
その症状はさまざまだが、まず人様に見せられる状態ではないことは確かだ。
だから、レイはことあるごとにギルバートに忠告するのだが、
その時はわかっていると言っておいて"コレ"だ。
さすがに、変な噂は聞かないから外では耐えているのだろうが、
こうして家に帰ってくると途端に手がつけられない状態に陥ってしまうギルバートに、
レイは本日何度目かのため息をつく。
レイはその場でギルバートを起こすのを諦め、引き摺るようにしてベッドに運んでいった。
どさり、とギルバートの身体をベッドに下ろし、襟元を緩め、上着を脱がせる。
本当は着替えさせてやれば一番いいのだろうが、既に半分夢の中の住人なかれを再び起こすのは気が引ける。
とりあえず、風邪を引かない程度に布団をかけてやって、レイはふぅ、と肩を下ろした。

まったく、世話が焼ける。
けれど、長年彼を見てきた少年には、わかっていた。
彼がこれほど自分1人で生きることができなくなったのは、半年前の、あの時からだ。
あの―――、彼が一番大切にしていたあの人を失った、その時から。
見た目には何も変わらなかった。誰にでも魅力的な、人の心を掴む笑みを見せ、精力的な活動をしていた。
けれど、どこか―――。
ふと、表情が翳るその瞬間を、少年は見逃したことがない。
自分で苦手だといっていたアルコールの量が増えたのも、嫌がることが多かったセックスを自分から求めることが多くなったのも、
おそらくは"彼"のせい。
壊れたようなギルバートを前にする度、レイは彼の中のかの存在の大きさを思い知るのだった。
自分がどんなに傍にいても、埋まることのない、深く、大きな溝。
だが、少年はそれに嫉妬を覚えたことはない。
自分も、結局のところ似たようなものだからだ。
たとえギルバートが傍にいたとて、自分の中にある『彼』という溝が埋まることなどないのと同じように。

「・・・、レ、イ・・・」

しばしギルバートを眺め、それから部屋を出ようとした少年の腕を、
不意に彼の手が掴んできた。
弱々しい握り方だった。けれど、ギルバートの、自分の名を呼ぶ、その声音に少年は振り向く。
うっすらと開かれたオレンジ色の瞳は切なそうに潤み、少年は不覚にも息を呑む。
明日は試験。それも、かなり膨大な範囲を誇るMS工学。
普段から真面目に勉強しているとはいえ、油断のできない科目だ。
少なくとも、あと3時間は確認のために費やそうと思っていた。そのためには、さすがに彼の誘いには乗っていられない。

「・・・ギル。テスト期間は明日までだから、・・・明日な」
「・・・・・・嫌だ」
「・・・、どうしてそう、我侭を・・・―――っ!!」

途端、驚くほどに強い力が、少年の身体をベッドに引き倒した。
慌ててギルバートを潰してしまわないように受身を取ったが、間近に迫った彼の顔に、レイは諦めたようにため息をついた。

「・・・ギル」
「少しぐらい、平気だろう?
 ・・・・・・君が、・・・欲しいんだよ・・・」

そう呟くギルバートに、もはやレイにはそれを振り払うことなどできず。
まったくこの酔っ払いは、とうんざりと呟いて、
そうして、改めてギルバートを見下ろす。
白いシーツの上に広がる紺の髪、コントラストがよく映える白磁の肌。
うっすらと開かれ吐息を漏らす紅色の唇に、半端に脱がされ、乱れた衣服。
ギルバートのすべてが少年の欲を煽ってくる。それを自覚して、レイはもはや、自分を止めることなどできなかった。
15も年上の、しかも同性に欲情するなど、とても人に言えたものではないが、
今はたった2人だけの空間。
こんな関係を知る者など、当人達と、あとはその心に生き続けるかの存在だけだ。

「・・・ギル」
「レ、イ・・・、っ・・・」

彼の柔らかな唇に、レイは自分のそれを重ねた。
抵抗なく絡んでくる舌は、いつだって甘く、引き込まれるようだ。
深く彼の中を味わいながら、中途半端に絡まっていた衣服を剥いでいく。
シャツの合わせ目から手のひらを忍ばせ、滑らかな素肌を辿る。
指先が胸元の小さな飾りに触れ、ギルバートは思わず声を上げていた。

「・・・あ、っ・・・」

すかさず、浮いた背からシャツを剥ぎ取る。ベッドの下に無造作に放り投げて、
少年はその白い肌に唇を落としていく。
ほっそりとした首筋を舐め上げると、くすぐったそうに身を竦ませ、ギルバートは甘えるように少年の首に手を回してくる。
触れ合う胸が互いの鼓動を伝えてくる。かすかに汗ばんだ、しっとりとしたその身体を抱き締めて、
そのままレイは手を下肢へと忍ばせた。

「っ・・・あ、レイ・・・っ」

ボトムのベルトを外し、そっと内部に手を差し入れると、ギルバートの表情が羞恥に歪む。
けれど、自ら望んで抱かれた身体は、それ以上の抵抗を見せることなく、
少年の行為を受け入れていく。
見た目ではわからないくらいに華奢な腰。そこに片腕を回して、レイは彼のボトムを脱がせていく。
かすかに逃げようとする彼を抱えて、柔らかなその部分に強く吸い付いた。
脇腹から肋骨にかけてのそのラインは、ギルバートが感じる場所。
沢山の朱の花びらを刻まれて、青年は切なく啼いた。下肢の中心が、ひどく疼いている。

「あぁ・・・レイ・・・、はや、くっ・・・!」
「・・・ギル。・・・可愛いよ」
「あっ、・・・」

くすり、と笑われて一気に血が上った。
腰を上げさせられ、双丘を撫でられるっようにして脱がされていく衣服。
けれど、少年はそれを足先から外させる前に、外気に晒されたギルバートのそれを、なんと歯で捕らえていた。
突然の刺激に、ギルバートは声をあげた。

「な、に・・・アッ・・・!」

中途に絡まったままのボトムのせいで、足が自由に動かせない。
そんな状態で、レイはギルバート自身を口で愛し始めた。
舌を使い、砲身を執拗に舐めてやる。かと思えば、口内に深く彼自身を含み、強く吸い上げるようにして熱を与える。
亀頭に歯を立てられ、ギルバートはその痺れるような刺激にびくりと身体を震わせた。
痛いくらいのそれが、瞬間快感の波に変わっていく。

「っレイ・・・、やめっ・・・!あ、あっ・・・」
「アルコールが入ってるのに、すごいな、ギル。もう、イけそうじゃないか?」

下肢からのからかうような声音にすら、ギルバートは煽られてしまっていた。
拘束されているような足下のボトムが邪魔で、彼の足は何度も蹴るような動作を見せている。
くすりと笑って、少年はそれに手を貸してやった。
ボトムもまた、下着ごとベッドの下に放って、レイはそのまま、彼の爪先まで全てを晒させる。
そうして、少々強引に彼の膝を割る。
突然のそれに、ギルバートは驚き、そして激しい羞恥を覚えた。
自分の全てが、彼の目の前に晒されたような感覚。
それは、散々こんな行為を続けてきた彼らにとって慣れたはずのことではあるのだが、
それでもギルバートは自分の中の羞恥を拭えない。
シーツの上に落ちていた手で、ギルバートはきつくそれを噛んだ。
少年は、開かせたその中央に顔を埋め、そこにそそり立つ彼の雄を丁寧に舐めている。

「・・・ひっ・・・あ、あっ・・・!」

次第に激しくなる少年の動きに、ギルバートは耐え切れず、声を上げた。
自身のそれも、限界に近づいている。極限まで張り詰めたそれを強く吸われる度に、
目も眩むような快感が頭を白く染め上げていく。

「レ、レイ・・・っ」

ギルバートは震える声で彼の名を呼んだ。
すぐそこまで迫っている絶頂に耐えかねて、下肢から少年を引き剥がそうと手を伸ばす。
さらりとした金糸が指先に絡まる。力を入れて引こうとして、けれど力が入らない。
ギルバートの表情が泣きそうに歪んだ。逃れようにも、少年の腕にがっちりと押さえつけられていればどうしようもない。
羞恥に居た堪れなくなった彼が身を捩るのを、小さく笑って、
レイはさらに愛撫の手を強めた。

「・・・っ・・・、レイっ・・・、もう、・・・私はっ・・・!」
「ああ、構わない」

ギルバートの必死の懇願に、少年は半分だけ応じてやった。
青年の身体に疼く狂おしい程の熱を解放するように、手でそれを激しく扱く。
他人に促される、恐怖にも似た感覚に、ギルバートはその瞬間身体を強張らせた。
ぎゅ、と内股に力が込められる。
喉の奥に叩きつけられる彼の精を、レイはうっとりと飲み干した。

「あっ・・・ああ、あっ・・・!」
「ギル・・・」

舌に触れる彼のそれは、どこか甘い味がする。
顔を上げると、レイは組み敷いた青年の顔を覗き込んだ。
顔を綺麗な朱に染めて、恥ずかし気に視線を逸らすギルバートが、年上のくせに可愛くて、
少年はそのまま唇を寄せ、舌を絡ませる。
ギルバートは眉を顰めた。おそらく、彼の舌に残る自分の精の味が嫌だったのだろう。
それでも、大人しく自分の動きを追い、そうして気だるげに吐息を漏らすその姿に、
レイは彼を抱き締め、そうして触れ合う肌の感触を追った。

「・・・レ、イ」
「甘いな。ギルの・・・、は」
「っ・・・」

一気に頭に血が上るようなことを耳元で囁かれ、頬が染まった。
少年にしては低く落とされた、しかし身体の奥を疼かせるような声音に、
ギルバートは照れたようにふいと横を向いてしまう。

「・・・そんなわけ、ないだろう・・・」
「ギル。」

レイはそんなギルバートを改めて見下ろすと、手を再び下肢へと伸ばした。
けれど、今度は彼の雄ではなく、その奥へ。
するりと指先で双丘の割れ目の辺りを撫でてやれば、ギルバートはひくりと震えて、脅えたような視線を向けてくる。
触れたその部分がひくりと収縮し、まるでそれを待ちわびていたかのように蠢く。
少年は笑みを浮かべ、すっと手を引いた。突然失われた感覚に、ギルバートは戸惑ったようにレイを見上げる。

「・・・レ、イ・・・?」
「足、開いて。」
「・・・なっ・・・」

思いも寄らなかった少年の言葉に、ギルバートは驚き、そして途端顔を真っ赤に染めてしまった。
そんな彼に、レイはますます笑みを深くする。
こんな彼だからこそ苛めたいと思ってしまうのだと、胸の内で呟いて。

「欲しいんだろう?だったら、自分でやって見せて」
「っ・・・、酷い、な・・・」

咎めるように少年を見るが、彼は相変わらずの綺麗な青の瞳で、
有無を言わせない、と暗に告げている。
ギルバートは諦めたようにため息をついた。疼く体を持て余して、このままでいられるはずもない。
ゆっくりと、下肢へと両手を持っていった。
少年の視線を感じながら、その部分を手で開いていく。
少年の前に自分からそこを晒すことが、ひどく背徳的な行為のようで、
ギルバートは無意識に息を荒げてしまう。
けれど、それだけでは少年は満足しないようだった。
すぅ、と目が細まる。そうすると、少年の整った面立ちが一層際立ち、冷たい印象をギルバートに与えてくる。
ギルバートは多少脅えたような顔で、おそるおそる彼を見上げた。

「・・・レイ・・・?」
「もっとだ。・・・いや、逆の方がイイかな」
「っ・・・!!」

いきなり、レイはギルバートの身体をひっくり返してしまった。
うつ伏せにべッドに押し付けられ、腰だけを高く上げさせられた格好に、
ギルバートは激しく羞恥する。
けれど、そんな彼に追い討ちをかけるように、少年の声が耳を打つ。

「自分で、広げるんだ。・・・俺に、よく見えるように」
「・・・そ、んな、っ・・・」

さすがのギルバートも、そんなことできない、と嫌そうに首を振った。
けれど、少年は許そうとはせず、青年の手を無理矢理その部分に触れさせる。
逃げようとする彼を押さえつけて、その指先をゆっくりと奥へ押し込んでいく。
ギルバートは息を呑んだ。
まさか、自分の指に犯させられるなお、思ってもみなかったからである。
一気に二本を押し入れてくる少年の容赦のなさに、ギルバートは不覚にも泣きたくなった。
乱暴なその行為は、痛みの方がより強く訴えてくる。

「・・・っレイ・・・!お願い、だから・・・っ」
「じゃあ、自分できちんと広げて。俺に、奥まで見せるようにするんだ」
「・・・・・・っ・・・」

少年の口調はどこかからかっているようで、悔しい。
けれど、仕方なく青年は、両手を後ろへと伸ばし、自身の双丘を割る。
やがて、ひくり、と収縮するバラ色の蕾が少年の目の前に晒され、ようやくレイは満足げな笑みを浮かべた。
入り口の部分にそっと触れてやれば、恐怖からかギルバートの身体が竦み、
さらに締め付けをきつくしてしまう。

「怖いのか?」
「・・・・・・っ・・・」

だが、だからといって素直に少年の言葉に頷けるはずもなく、
ギルバートは枕に顔を埋めたまま、彼に自分の恥部を晒す格好に耐え続けていた。

「・・・ひ・・・!あ、あっ・・・!」

突然、濡れた感触がその部分に触れてきて、慌ててギルバートは背後を振り向いた。
少年が、舌でその部分を舐め、内部に押し入ってこようとしていた。
入り口の襞の1枚1枚に唾液を絡ませるような丁寧な舌遣いに快感を覚える反面、
激しい羞恥がギルバートを襲う。

「あっ・・・、やめ・・・レイ・・・!」
「奥まで、しっかり解してあげるよ」
「あ、ああっ・・・!」

舐められていたそこに、ズブリと2本の指が突きたてられた。
濡らされていたせいで、あまり抵抗なく奥まで侵入させてしまったその部分は、
少年の指が内部に収まった途端、それを食いちぎるかのようにきつく締め付けてくる。
ひどく狭いギルバートの内部を、レイがぐちゅぐちゅと音を立てて拡げていった。
卑猥な音が耳を打つ。ギルバートは必死に聞くまいとするのだが、あまり効果はないようだ。

「あっ・・・、あ、あんっ・・・」

少年の長い指先が、ギルバートの中の感じる場所を強く擦った。
耐え切れずに、口元から甘い声音が洩れる。調子に乗った少年は、より深く、大胆に指を奥まで差し入れ、
彼の感じる内襞の部分を執拗に攻め立てた。
1本ですらキツかったそこが、いつの間にか弛緩し、今は3本もの指を呑み込んでいる。

「そんなに食いついて・・・。本当に素直だな、ギルのここは?」
「・・・・・・っ、もう・・・いいだろう」

散々焦らされ、からかいの言葉をかけてくる少年に、ギルバートは懇願した。
くすりと笑われて、しかし今はただ、目を閉じる。
押し込まれていた3本の指を全て抜かれて、情けなくも喪失感を覚えた。
ぎゅ、と唇を噛む。手元のシーツも同じようにきつく指で噛み締めて、
ギルバートは少年の楔に貫かれる瞬間を待ち侘びる。
次の瞬間、下肢のその部分に、熱い塊が宛がわれた。
息を呑んだ。高鳴る鼓動を止められない。

「・・・っ―――・・・、あ、ううっ・・・!!」

ぐっと、重苦しい感覚が彼の下肢を貫いた。
枕に顔を押し付け、声を抑えようとするギルバートの口元から、くぐもった声音が洩れる。
散々焦らされた身体に受けるその重量感は、深く、痺れるような快感をギルバートにもたらした。
下肢を襲う圧迫感に、息ができないくらい。
浅い吐息を繰り返す青年を、レイは満足げに見下ろした。

「・・・・・・ギル」
「あっ・・・、な、に・・・は、っ」

耳元で彼の名を囁いてやれば、ぞくりと背筋が震える感覚にギルバートは背を仰け反らせた。
肩甲骨のあたりを舌で舐めてやりながら、繋げた腰を、その部分を拡げるように緩く揺らしてやる。
腰だけを高く上げさせられた格好で気だるく喘ぐギルバートに、
レイは下肢の熱が煽られるのを感じていた。
自身を強く締め付けてくる内部から腰を引けば、絡みつくようにそこが追いすがってくる。
その直接的な刺激と、淫らなギルバートの姿に、レイは浮かされたような熱っぽい瞳で彼を見つめる。

気づけばすっかり迫っている明日のことなど頭にない自分に、
レイは苦笑した。
ベッドの上でとんでもなく淫らな体勢をさせられ、それでもそれを嫌がる前に同性に犯される悦びに啼くギルバートを見下ろして、
やはり自分は彼には甘いとひとりごちる。
だが、もう、今更。
ひっきりなしに嬌声を漏ら彼を目の前にして、
この世の誰が己の内に湧き起こる欲を抑えられるだろう。
ぱたり、とシーツに染みを作るギルバートの雄を、そっと手で捕らえる。
ギルバートは当然、突然の刺激にびくりと身を震わせた。先走りの液を、砲身に擦り付けるようにしてそれを扱いてやる。

「あっ・・・、あ、・・・んっ・・・!」
「ギル・・・綺麗だ」

その白く滑らかな肌も、切なそうに顰められた柳眉も、頬を染めるその色も、
彼の美しさを際立たせる。引き込まれるようなその姿に、レイは再び彼の頬に唇を寄せる。
うっすらと開かれるオレンジ色の瞳が、とても綺麗だと思った。

「んっ・・・レイ、・・・」
「もう、・・・達きたいのか?」

手の中のギルバートは、もはや解放を待つばかり、といった体で、
震えるそれを優しく擦り上げてやる。
コクコクと頷く青年にレイは苦笑すると、彼の絶頂を導くべく腰の動きを速めた。
ぞくりと背筋を襲う快楽。唇を噛んで、衝動を抑えるが、
自分もまた限界が近づいている。
だが、もはやレイには、これで離してしまうつもりなど毛頭なかった。
アルコールのせいか、どこか行為に抵抗のないギルバートを、もっと見ていたい。
レイはちらりとサイドボードの時計に目をやった。
まだ、大丈夫だ。
・・・多分、と内心で付け加えて、抱えていたギルバートの腰を抱え直し、一気にラストスパートへと律動を大きくしていく。
それに合わせて洩れ聞こえる青年の甘い声音が、少年の理性をも狂わせる。

「あっ・・・、レ、・・・イっ・・・あ、ああっ!」
「ギル・・・、俺も・・・、っ」
「・・・っあああ!!」

耳元で囁いたその時、どくり、と互いの鼓動が鳴った。
その瞬間、ギルバートのシーツを噛む手に、これ以上ないほど力が入った。指先が白くなるほどに。
そうして、達した衝撃で激しく収縮したギルバートの内部に促され、
レイもまた自身の欲を解放する。
彼の中で断続的に吐き出されるそれにすらギルバートは感じているのか、
漏れる吐息が甘さを含んでいた。

「・・・・・・レイ、・・・っ」

腰を繋げたまま身体を反転させられ、再び下肢を襲う甘い快楽。
意識が朦朧としているギルバートは、重ねられた少年の口付けに酔ったまま、静かにその瞳を閉じた。

「・・・ギル」

背に腕を回され、強く抱き締められれば、
互いの胸に過ぎるのはまだ離したくないという思いだけ。
まだまだ続く愛を交わす行為を予感させるような深い口付けによかれと思い溺れながら、
ギルバートもまた、彼の背に腕を回し、引き寄せるように力を込めたのだった。















「ルナ!なんだよ、あれ!」

試験が終わった途端聞こえてくる騒がしい声音に、レイは密かに眉を顰めた。

正直、寝不足だ。
昨夜は、結局ギルバートに付き合ってかなり深夜が回った時間までベッドで過ごしてしまった。
そのため、半端だったテキストの確認を終えたのが、ほとんど朝に近い時間。
今更寝ても、いつもの時間には起きられないと思い結局徹夜状態。
もちろん、1日2日くらいの強行軍、どうということはないのだが、
やはり寝不足は頭にも影響が出るようだ。
思うように答えが浮かばず、理論計算もどこか注意力が散漫だった気がする。
結局は当たり障りのない結果になったとは思うが、
やはり試験前は真面目にならないとな、とレイは内心で自戒していた。

だが、そんな彼の思考を、少年の大声がかき消していく。
シン・アスカ。レイとは入学当初からの付き合いのクラスメイトだ。

「何って?」
「試験問題。ノートと全然違ったじゃないか。これさえあれば試験もばっちり!なんじゃなかったのかよ。」

どうやら、今回の試験に失敗したらしい。
だが、冷静なレイの思考回路では、それも当然のことだろうと考える。
そもそも理論系が苦手な彼は、もちろん今回のMS工学も大の苦手らしく、平日もよくそんなことを喚いていた。
にも関わらず、遅刻はするわ、授業はうわの空のことが多いわ、はっきりいって態度は散々。
レイからすれば、だからこそ苦手になるんだ、と言いたいが、とりあえずそこまでお人好しでもない。
今回は同じくクラスメイトのルナマリアに当たっているらしいが、
しょうがない奴だな、とレイはため息をついた。

「なによ、自分で勉強してないのが悪いんじゃないの。」
「そ、それは・・・。でも、お前があんないい加減なものよこさなかったら、自分でちゃんと勉強してたんだ。」
「いい加減なものじゃないわよ。そもそもあれはレイのノートなんだから。」
「う〜〜、レイ!」

ぼんやりと2人の会話を聞いていたレイだったが、
どうやらシンは自分の失敗の原因を、ルナマリアがよこしたらしいノートを使ったせいだと言っているようだ。
いきなり話題を振ってくる彼に、レイは正直呆れた。
責められても困る。そもそも自分で勉強しなかったのが悪いだろうに。

「シンもあのコピーを使ったのか。だからヤマを張るのは危険だといっただろう。」
「ヤマぁ!?ルナ、どういうことだよ!」

やれやれ、シンも大変だな。
やはり人任せでいい目を見ようという考えが間違っているのだ。
自分なら、絶対にそんな不確定なことはしたくない。
いや、そもそも他人にもらったものを馬鹿正直に信用するほうがおかしいのだが。

「はいはい、悪かったわよ。でも、どうせ試験前日にあんな膨大なデータ、覚えられっこないでしょ?シンに。」
「ううっ・・・」
「シン。ルナマリアを責めるのはいいが、自分が日頃から準備しておかなかった事の結果だろう。前日に慌てて詰め込もうとしても無理だ。」

さすがにうだうだと文句を言い続けるシンに、レイはとどめを刺してやった。
まったく、少し真面目にやれば、才能はあるはずなのだ。――――――遺伝子学的観点から見れば。
折角コーディネイターとして生まれておきながら、その能力をなかなか開花させようとしないシンに、
レイはやれやれと肩を竦めた。
シンはというと、今の言葉がかなり効いたのか、ガクリと肩を落としている。

「・・・う〜ん、そうだけどさぁ。はぁ・・・俺絶対だめだ、試験。補習決定だよ。」
「ま、せいぜい頑張ることだな。お前は努力さえすればきっと出来るんだから、今度こそ真面目にやるんだぞ」
「・・・うへぇ。・・・はぁ〜・・・」

レイの言葉に、やはりシンは深いため息をつくばかりだった。
アカデミーでは、試験で赤点を取ると、結構な回数の補習を受けさせられ、なおかつ再試験・・・というしち面倒な方法が取られている。
もちろん、それは未来のザフト軍のエリートを育てる場として当然のことではあるが、
受ける側にしてみればこれ以上の面倒はない、というのも事実だ。
泣きそうな目を向けてくるシンに、レイは苦笑し、そして元気付けるように肩を叩いてやった。

だが、確実に落ちない、いや、落ちることなどないと思われていたレイは、
この後大変な苦労を味わうことになる。
補習対象者に引っかかったのは、シンだけではなかったのだ・・・。





...to be continued.





アカデミー進級試験 side B 中編へ




Update:2005/07/01/FRI by BLUE

小説リスト

PAGE TOP