運命



――どこまでも続く深淵の闇。果てなどどこにも見当たらず、行き着く場所も無く。
  それでも、何かを…誰かを、探して彷徨う心がそこにはあって。

 ここは、何処だ?
 一体何を…誰を探している?
 俺は…誰なんだ?

「ロアノーク大佐?どうかなさいましたか?」
不意に声を掛けられ意識を戻すと、艦長がこちらの様子をうかがっていた。
「いや…何でもない。それより、首尾はどうだ?」
「もうじき全ての準備が完了いたします。あと五分ほどあればと。」
「…そうか。」
考え事などしている場合ではない。あと少しで作戦が始まるのだ。しかし、未だ頭の片隅に引っ掛かって離れない。
(俺は一体何を探しているのだろう…何を?誰を?)
分からない。だから探しているのだ。こうして戦っていれば見つかるかもしれないから。
「全員配置に着きました。準備完了です!」
オペレータの声がブリッジに響き、一気に緊張が増す。この感覚を、ずっと前から知っているような気がするのに。思い出せない…二年前の、あの日から。
だが、見つけてみせる、いつかきっと。
「それでは…行くとしようか。」
「了解!」
その時ふと、金の光が見えたような気がしたが、作戦開始の合図にそれは消されていった。
気のせいだとそれを振り払い、彼は告げる。
「何としても奪取せよ…蒼き清浄なる世界の、ために。」

――そして、再び運命の輪は廻り始める。





Update:2004/10/06/THU by snow

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