04:廃墟



昔、昔。
いろんなところへ行った。ラウと、2人で。
地球もいっぱい回ったし、たくさんのプラントやコロニーにも。
中立国にも行った。平和そうな人たちばかりが、そこにいた。
なんか、あまり嬉しくなかったけど。
だって、俺が生まれたところって、今はもう、瓦礫ばかりの廃墟で。
研究所は辛うじて原形をとどめているけど、・・・なんかもう、住めないし。・・・住みたくないけど。
世界中を回ってると、たくさんのことがよく見える。
平和な人、幸せな人、喜んでる人、笑ってる人。
不幸な人、かわいそうな人、悲しんでる人、泣いている人。
紛争で瓦礫と化した町には、石垣に下敷きになっている人もいたし、
ラウが各地を回って潰していた研究所は、もちろん俺たちみたいなモルモットもいたし、
でもそのほとんどは無残に死んでいたり、生きた扱いを受けていなかったり、
うん、本当にひどかった。
人って、無情だよね。
きっと誰も、こんな事実を知らずに、笑ってるんだ。
まぁ、結局は他人事なわけだけど。
仕方ない。
でも、これが世界をの未来を担う人になるなら、やっぱりそれじゃいけないから。
ギルには、もっともっとしっかり考えてもらわないと。
こんな世界、もう終わりにしよう。
俺たちのような、哀しい存在が生まれない世界。
一部の人間だけが笑ってばかりの世界じゃなくて、みんなが笑える世界。
だって、平和な人たちの平和を守るより、
まずは不幸な人たちを守るほうが大事だろう?
保守的なことばかりしていては、結局影で俺たちが作られ続けるのに。もう、俺は許せない。
そんな運命から運良く逃れられた俺の使命は、
彼らの悲痛な心を世界に伝えることのはず。もう、二度と繰り返してはいけないと。
ただ、訴えるだけじゃだめだ。改革を。この世界は、変わらなければね。
ラウは、「これが"人間"の世界、というものだ」と言っていたけど。
諦められない、諦めたくない。
俺たちだって人間として生きたかったのに、
人間として生きられなかったのはこの世界のせいだ。

「廃墟にも、また花が咲く・・・」

ひとり呟いて、足を伸ばした。
石畳の下に、死体。もはや原形をとどめていないそれを栄養源に、
毒々しいほど美しい色の花。白や、黄色や、紅色や、たくさん、たくさん、たくさん。

「レイ?」

追ってきたギルの、ぱたぱたとした足音。
それを横目に、俺は手を伸ばす。綺麗な花。ちっぽけな命。
俺が力を入れれば、きっとすぐに失われてしまう命。でも、そんなちっぽけな命こそ、
守るべきものだろう?

「変革を、・・・」
「レイ・・・」

痛ましい顔をするギルに、くすりと笑みを浮かべる。

「・・・次は、どこへ行こう?ギル」

ラウと共に回った廃墟を、あなたと一緒に歩く。
血と泥に汚れた手をそのままに、俺はギルへと手を差し延べた。









[20のお題詰め合わせ] by 折方蒼夜 様
Update:2005/09/30/THU by BLUE

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