SUTE CD >>6〜シン・アスカ×デスティニーガンダム



※スーツCD収録のドラマの完全ノベライズですので、聴く予定のある方は聴いてから見てください。
予備知識無しにいきなり聞いたほうが面白いかもしれませんので・・・。





アカデミーに憂鬱なシーズンがやってきた。試験期間だ。
今回の試験は進級がかかってて、しかも、明日の試験科目は大の苦手のモビルスーツ工学。
配線図だのリンゲル液濃度だの、もうぜんぜんわけがわかんない。
パイロットになるのに、なんでこんなことまでおぼえなきゃなんないんだ。
モビルスーツなんて、実際に動かせりゃそれでいいと思うのに。
…とはいえ、それが必須科目である以上、なんとかしなきゃなんないんだけど…。

「う〜ん、こんなときはレイに…」
レクルームで一人勉強していたシンは、レイに助けを借りようと立ち上がったが、視界には当人の姿はない。
「って、あいつどこだろう?はあ…余裕だなあ。レイっていっつもしっかりノートとって勉強してるもんなぁ。…あ〜もう、わかんねぇ!しょうがない、休憩しよっと…。」
一気にやる気を無くしてしまい、シンは休憩しようと部屋を出て行った。

「あ、レイ!ありがと、これ。コピーさせてもらった。ノート返すね。」
レイの姿を見つけ、ルナマリアはノートを渡す。それを確認したレイは、怪訝な表情を浮かべた。
「ああ。…それにしては、プリントアウトが少なすぎないか?ルナマリア。欠けているページがあるぞ。」
「だあって、レイのノート、膨大なんだもん。だから、試験に出そうなとこだけプリント
したの。」
「ヤマをはったということか…ルナマリア、大丈夫か?外れたときの失敗は大きいぞ。」
心配そうにレイは言うが、当のルナマリアは気にも留めていない様子で、自信ありげに言う。
「大丈夫。わたしのヤマ、結構あたるんだから。」
「それでも、全範囲、しっかり勉強したほうがいいんじゃないか?」
「わかってる。プリントしなかったところも、一通りは読んでるし。自分でもちゃんと勉強するつもりだから。」
あまりにも自信たっぷりに言うので、レイもそれ以上は追求しなかった。
「なら、いいが…。」
「じゃあたし、レクルーム寄ってくから。」
そう言うと、ルナマリアはそこから立ち去っていった。
(本当に大丈夫だろうか…。)
だがレイの不安は、そこに残されたままだった。

休憩しようと自動販売機の前に立つシンは、見知った人物を見てため息をついた。
「…お、なあんだ、ルナか。」
「なあに、シンったら。浮かない顔しちゃって。」
「うるさいなぁ。何の用だよ。」
ふてくされるシンに、ルナマリアはからかうように話しかけた。
「へへ〜ん、さては、明日のモビルスーツ工学、全然勉強してなかったんでしょ。」
「うっ…余計なお世話だよ。」
「やっぱり!シンって、実技はともかく、理論がねぇ…。ま、あたしも苦手だけど。
特にメカ関係。」
苦手だという割にはそれほど深刻そうではないので、シンは不思議そうな表情を浮かべる。
「そのわりには、余裕じゃん。」
「ふふ〜ん、見てよ、これ!秘密兵器。」
自慢げに、手に持っていたコピーをばさっと広げると、シンは目の色を変えて詰め寄ってきた。
「えっ、これモビルスーツ工学のノート?」
「うん、レイの。コピーさせてもらったの。レイのノートって、分かりやすくて、しかも
完璧なんだもん。これさえあれば、明日の試験もばっちりよ!」
「へぇ…。」
「ふふん、いいでしょ。シンにもコピーさせてあげよっか?」
うらやましそうに見るシンに、ルナマリアも自慢げに言う。
「え、ホント、いいの!?」
「うん、困ったときはお互い様でしょ。」
「ありがと、ルナマリア!…って、ルナじゃなくて、レイに言うべきなのか?レイのノートなんだし。」
「…なに、なんか文句ある?」
確かに、元はレイのノートであるのだが。そうは思ったが、ルナマリアににらまれてその言葉を飲み込むシンであった。
「あ、いや、まあいいや。これすぐコピーして返す。ありがと!」
ノートを受け取りぱたぱたと走っていくシンを見ながら、ふと思い出す。
「…あ、忘れてた。あれ私のヤマ張りノートだった。ま、いっか。私のヤマは当たるんだし。」
妙な自信を持って、ルナマリアはシンが戻るのを待った。

チャイムが鳴り、試験が終わると、シンはルナマリアに詰め寄る。
「ルナ!なんだよ、あれ!」
「何って?」
「試験問題。ノートと全然違ったじゃないか。これさえあれば試験もばっちり!なんじゃなかったのかよ。」
「なによ、自分で勉強してないのが悪いんじゃないの。」
「そ、それは…。でも、お前があんないい加減なものよこさなかったら、自分でちゃんと勉強してたんだ。」
「いい加減なものじゃないわよ。そもそもあれはレイのノートなんだから。」
「う〜ん、レイ!」
後ろから教室を出てきたレイは、シンの剣幕にため息をついた。
「シンもあのコピーを使ったのか。だからヤマを張るのは危険だといっただろう。」
「ヤマぁ!?ルナ、どういうことだよ!」
そんなことなど聞いていなかったシンはさらに詰め寄るが、ルナマリアの返答はそっけない。
「はいはい、悪かったわよ。でも、どうせ試験前日にあんな膨大なデータ、覚えられっこないでしょ?シンに。」
「ううっ…。」
「シン。ルナマリアを責めるのはいいが、自分が日頃から準備しておかなかった事の結果だろう。前日に慌てて詰め込もうとしても無理だ。」
レイにもそう言われてしまい、シンはがっくりと肩を落とした。
「…う〜ん、そうだけどさぁ。はぁ…俺絶対だめだ、試験。補習決定だよ。」

ところが、補習が決定したのは、俺だけじゃなかった。
「なんでシンだけじゃなくあたしたちまで!?…ううん、あたしはともかく、なんでレイまで補習なのよ?」
…なんでも、試験の自由課題として出された問題で、俺たち三人はカンニングしたと思われてしまったらしい。それというのも、レイは授業で教わったことだけじゃなく、独自に勉強したことまでノートにまとめていて、そのノートを見てた俺たちは、本当なら同じ答えになるはずがない最後の小論文で、判を押したみたいにおそろいの内容を書いてしまった、というわけ。
「納得いかない。こんなの横暴よ。」
「お前がそんな余計なもんまでコピーしたのが悪いんだろ、ルナ。コピーするときに気付けよ。」
「気付くわけないでしょう!シンも、丸写しじゃなくて、ちょっとは答え変えなさいよ。あんたにはオリジナリティってものがないの?」
「だったらお前も替えろよ。っていうか、お前が変えろ!むしろ!」
「そもそも、そんな余計なことまでノートに書かないでよ、レイ!」
「そうだよ、レイ。お前、マメすぎなんだよ。」
言い合っていた二人に矛先を向けられたが、不服そうにレイはつぶやく。
「…それは、俺が悪いということか?」
『うっ…。』
…確かに、レイが悪いわけではなく、二人は言葉に詰まってしまった…。

そういうわけで、俺たち三人は仲良く補習を受けることになった。連帯責任ってやつで。
はっきりいって、レイはとんだとばっちりだ。
「ああ、もう!だれもあてにしない!ちくしょう、見てろ。一番になってやる!負けるもんかぁ!」
気合をいれるように叫びながら、シンは部屋を出て行ってしまった。その様子にレイは笑みを浮かべる。
「ふっ…。うかうかしてると、次の試験で抜かされるぞ、ルナマリア。」
「ええ〜、シンに?」
「あいつに足りなかったのはやる気だ。本気になったあいつは、きっとすごいぞ。」
「まっさかぁ。」
「俺だって、しっかり勉強しないと、追い越される。」
「ええ!?そんなわけないじゃん。」
優等生のレイに、シンが勝てるわけなどない。そう思っていたのだが。

「ねえねえシン、再試験の結果、どうだった?」
再試験のあと、結果を聞きに行ったところ、自慢げにシンはテストを広げて見せた。
「へっへ〜ん、どうだ!」
その点数は、いままでの比ではなくて。
「えぇ、すっごいじゃない、シン!うわ、びっくりの点数!」
「まあね。…そういや、試験中教室に入ってきたあの人、誰だったんだ?あの、髪の長い男の人。」
「ああ…。デュランダル博士って、何か、遺伝子とか研究してる偉い人みたいだけど?」
「そんな人が、なんでアカデミーに?」
「知らない。視察かなんかじゃない?」
そんな二人の横で、一人レイは深刻な表情でつぶやいている。
(まさか…再試を受けているところを、ギルに見られるなんて…。)
…まずい。が、そのつぶやきにシンは不思議そうにレイを見やる。
「あ?レイ、何か言った?」
「あ、え?…いや、何でもない。」
動揺を隠そうとはしてみても、不自然な答えになってしまう。が、ルナマリアは気付いてないようでシンの答案を広げて見せていた。
「レイも見てよ。シン、すごいよ。レイが言ったとおりじゃん。やる気になったらすごいって。ね?」
「えぇ?あ、ああ、そ、そうだな…。」
「うん?なあに、レイ?どうかしたの?気分でも悪い?」
さすがに様子のおかしいレイに気付いたのか、そう聞いていたが、レイが手にしていた答案を見て驚きの表情を浮かべた。
「ええっ!?」
「うそお…それ、レイの試験結果?」
「あ、ああ…うん…。」
レイにしては信じられない点数に、シンも動揺を隠せないでいる。
「お、俺のほうが点数いい…?」
「うっそ、信じられない…。レイがほんとにシンに追い越されちゃうなんて…。」
(……。)
沈黙してしまったレイに、慌てて二人が話しかける。
「あ、えと、ほら。誰でも調子の悪いときとかあるもんね。」
「あ、ああ…。」
「そ、そうだよ。きっと熱でもあったんじゃないか、レイ?」
「あ、いや、そうじゃ…。」
そうじゃなくて。と言おうとしたが、途中で遮られてしまい困惑するレイである。
「大丈夫だよ。ちゃんと及第点だし、進級さえ出来れば…。」
「そうそう。俺のこれなんて、ただのまぐれだし。気にするなよ。」
その言葉に、やっと冷静さを取り戻し、レイは微笑んだ。
「あ、いや…それは違う、シン。それがお前の実力だ。」
「いやぁ、でも…。」
「気を使うことはない。次は、俺がお前を追い越すぞ。」
「ふふ…。うん!じゃ俺も、絶対負けない。」
「あ〜あ、ついていけな〜い。男って、どうしてこう単純なのかしら。」
二人の様子を見ていたルナマリアは、あきれた、という風にため息をついた。

(ふぅ…まさか、ギルに見られたぐらいで、こんな結果になるなんて…。もっとしっかりしないと。ギルをがっかりさせるわけにはいかないからな。だがシンに負けるなんて…)彼の姿に動揺した自分が悪いのだが。やはりショックは大きかったようで。
「お〜い、レイ!」
「早くしないと、次の授業始まっちゃうよ!」
「あ、ああ、分かった。」
廊下の先で二人の声が聞こえ、ため息をつきつつレイは歩き出した。
(はあ…。また出遅れた…。)


――END






こんなところにれっちょ的CD感想。
・・・関さんのオチキャラの上手さに脱帽です。ホント、演技上手いよな〜
そしてレイ・・・だからお前何歳だよ(泣)・・・はぁ。

いえいえ、snow様、ありがとうございました!!




Update:2005/06/23/THU by snow

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