侵蝕 vol.3



群青色の髪をパサパサと揺らし、官能的に喘ぐアスランに、
レイは内心舌を巻いた。
真っ白なシーツの上に薄い色素の肌を晒す彼は、もはや羞恥など忘れたとばかりに、乱れた身体を捩らせる。
うつ伏せにした彼の尻をゆっくりとなぞりあげた。
滑らかなそれに、彼が本当に男を誘う魅惑的な身体であることを知る。

「・・・う、あっ・・・」
「感じますか?ここは・・・」

尻の割れ目を開くようにその部分を撫でてやり、親指でその部分をなぞる。びくりと震えた身体は、
しかしそれだけの反応を示すだけで、抵抗の意図は感じさせない。
収縮を繰り返す淡い色のそれが少年の目の前に晒され、アスランはシーツに爪を立てた。唇を噛む。血が滲むほどに。

「い・・・、やあっ・・・」

部屋の電気が、明々とアスランの身体を照らしていた。
腰を高く上げさせられ、少年の目の前には物欲しそうにひくつく紅色の蕾。
レイは顔を寄せると、舌でその部分をねっとりと舐めあげた。唾液の濡れた感触に、途端に青年の腰が引ける。

「っひ・・・!」

だが、レイの腕はそれを許すはずもなく、強引に押さえつけ、舌を差し入れていく。
入り口を押し広げるように襞の1枚1枚に体液を絡ませると同時に、空いている手で彼の前を探った。
もう既に、十分な張りを見せるその猛りは、アスランの欲望の証。
普段なんの興味もない、といった風な顔を見せる彼の、誰よりも淫らなその姿に、
レイは口元を歪ませる。
別に、彼が欲しかったわけでもない。けれど、
かの青年の乱れた姿は、レイの目を楽しませた。少なくともこのミネルバで、彼のこんな姿を知るのは自分だけだろう。

「あっ・・・、も、っ・・・!」

その心の弱さ故に、誰かに縋るアスラン・ザラ。
縋らなければ、その孤独に押しつぶされてしまいそうな。実際、フリーダムにセイバーを落とされ、
迷いの渦の中にいた彼の表情は、まるで死人のようだった。
それが今。
興奮に肌を染め上げ、上気した頬は明らかな欲情の色を湛えている。
これは、孤独な心を埋めるためにかつての彼が選んだ手段。
レイは、それを思い出させた。ただ苦しむよりは、拠り所を見つけ、それに縋れたほうが、痛みも薄れるというものだ。
快楽に逃げ場はない。囚われ、魅せられてしまえば、それを手放すことができなくなる。
前大戦の「アスラン・ザラ」である以上、いつまでザフトに引き入れておけるかなど、わからない。
油断はできない。例え議長の言葉に賛同し、軍服に再び腕を通したとしても、
常に誰かに依存することで生きてきた彼なのだ。
一番の親友を完全に決裂してまで、ザフトの肩を持つなど、きっと続かないと予測していた。
だからこそ、彼が一時離艦した際、その監視を具申した。
目を離してはだめだと。そう、彼は誰よりも心の弱い、迷いの中のちっぽけな存在だ。
だが、だからこそ、
信じられる物を得た彼は、強い。
きっと、世界の誰よりも。自らの信じるもののためになら、必ずや力となり、利益をもたらしてくれるだろう。
そのために、この行為は必要なものだった。
"彼"の信頼を、この"場"に留めておくために。

「達きたそうですね」
「んっ・・・あ、達きたっ・・・!」

青年を焦らそうと根元を押さえ込んでいたレイは、彼の耳元で囁いた。
一糸乱れぬ少年の軍服が、アスランの背にあたる。その堅い感触に、しかしかつての上官との淫らな行為を思い出し、
視界を奪われたままの青年は、快楽に浮かされ朦朧した頭の中で、思い出に浸っていた。
唇を離され、代わりにズブリと2本の指が突きたてられる。強引なその扱いに、けれどアスランは興奮したように荒い息を吐いた。
ぐちゅぐちゅと、卑猥な音が室内に響き渡る。耳を塞ぎたくなるようなその音を聞いて、
アスランはいやいやと首を振ったが、もはや遅い。
長い指を根元まで奥に差し入れられ、内部を探られる。ぐるりと周囲をなぞり、的確にあの快楽の根源を刺激され、
青年の口元からあられもない声音が漏れ聞こえてきた。
レイの手の中に納められたアスランのそれが、先走りの液を零し、シーツを汚していた。
後ろを刺激されるだけで、簡単に前の熱が疼いてしまう。
それは過去、男の手でいいように弄ばれ、彼好みの身体に作り変えられてしまったことを示していて、
レイの目の前でそんな身体を晒すことに、アスランは唇を必死に噛み締めていた。
だが、乱れる身体は押さえられずにいる。
何故だろう。どんなに抵抗したくとも、彼が一言耳元で囁けば、その心が一瞬にして解けてしまうのだ。

「・・・アスラン」
「あ・・・」

低い声音で名を呼ばれるだけで、指先まで痺れが走った。唇が震える。そのまま、抉るように前立腺を強く擦られる。
それは、あの、かつての上官が好んだのと同じ愛撫で、不覚にもアスランは錯覚しそうになる。
同じ声、同じ姿、同じ愛撫。アスランにとって、クルーゼは縋るべき相手。
誰もが知らない自分の孤独を、唯一理解してくれた存在なのだから。
だが、今自分を抱いているのは「レイ」という少年であって、「彼」ではないのだ。
たとえ、その声音が同じでも、姿が似ていても、彼の愛し方がかつての彼とどれほど同じであっても。
縋るべき相手では、ない。
けれど。

「あっ・・・、達かせ・・・っ!」

暗闇の中、縋れるものは一つしかなかった。
アスランの瞳の奥の幻影のクルーゼが、ふと笑みを浮かべた。あの、相変らずの皮肉げな笑みだった。
絶対的なその地位の差。どれほどトップガンであれ、たかが一隊員の自分、
何十人もの隊員たちを一つに纏める隊長格の彼。
本当は、縋ることすらおこがましいことだった。強請ることも禁じられていた。欲しいのならば、その口で求めるよう仕向けられた。どれほどの屈辱だったことか。だが、どれほどの悦びだったことか。
沢山の同僚達が憧れる中、たとえその時だけでも、自分だけを見てくれているという優越感。
心から求めれば、必ず与えられた。
もちろんそれは、自分の背後に父親である彼の上司がいたからなのかもしれない。
でも、彼を得るためにその背景が効果を示すのならば、普段は疎んじている父親という存在にも感謝することができた。
愛されたい。そうして、この孤独を癒されたい―――。
そう願って、彼の前に身を晒したのだ。
もう、身体が慣れてしまっていた。かの存在に抱かれ、そうして、快楽を奏でることに。
そうして、それは今の青年の身体も同じこと。

「いっ・・・、達かせて、ください・・・!」

だから、もう、
アスランの頭の中は、かの存在に縋ることしか考えられなかった。
2歳も年下の少年。しかも、部下に向かっての敬語など、本当は有り得ないことだというのに、
レイはくすりと笑った。もはや、自分をかれに重ねていることなど明白だった。
楽しげに、耳元に唇を寄せる。そうして、舌を差し入れる。
ねっとりと内部を蹂躙するその感触に、アスランは身を縮ませる。脳まで犯されるような気さえした。
思考が、追いついていかない。
達したい一心で搾り出したその言葉。アスランの身体が、期待に震える。
だが、レイはただ口の端を歪めると、そのまま彼の奥に埋めていた指をさっさと抜いてしまった。
いきなり失った快感に、アスランは戸惑うばかり。
次に来るものはあの、頂点へ駆け上るあの目も眩むような快楽だとばかり思っていたのに。

「あ・・・!」
「・・・俺は、レイ・ザ・バレルですよ、アスラン?」
「―――っ・・・」

思い出に溺れ、快楽の世界へと落ち込もうとする青年を、レイは意地の悪い言葉で引き戻した。
過去の記憶に浸るのもいい。だが、現実は見てもらわなければ。
今、縋れるものは自分しかいないのだということを、認めさせるために。

「彼は死んだのです。貴方の望む"彼"は、もういない・・・」

歌うように告げるレイの言葉に、アスランは首を振った。
わかっていることなのに、認めたくなかった。彼が、もういないことなど、とっくの昔に知っていたはずなのに、
それでも。
認めたくなくて、心の奥底に封印してしまっていた記憶を、引きずり出したのはレイなのだ。
それなのに、彼の死を突きつける少年に、アスランは憎しみさえ抱いた。
似ているのならば、夢を見させて欲しいのに。
あくまで自分はレイだと、彼ではないのだと、そう告げるレイ。
苦しかった。これでは、また孤独になってしまう。
―――失いたくない。

「い・・・、嫌だ・・・!」
「何が・・・?」

喪失感に収縮を繰り返すその部分を、レイは思わせぶりに指先で撫でた。
引き込もうとするその肉襞の動きを存分に楽しむ。だがそのもどかしい感触に、アスランは耐えかね、首を振った。
唯一縋ることのできた彼を失った事実を認めるのは、嫌だった。
だが、ならばどうしろというのか。
既にないものを求める自分の愚かさに、アスランは諦めたように自嘲した。
そう、彼はもう、"いない"のだ。
たとえ気紛れでも、自分に心をかけ、愛してくれた、
あの人はもういない。

「っ・・・う・・・」

唇を噛み締めた。だが、涙は止まらなかった。
瞳を覆う布が、みるみるうちに濡れ、その部分に染みを作った。止まらない。想えば想うほど、考えれば考えるほど、
アスランの中の激情は収まらなかった。

「アスラン・・・」

嗚咽をあげ続ける彼を、レイは静かに抱き締めてやった。
うつ伏せに押し付けていたその身体をあお向けにし、染みを作るその瞳の上にキスを落とす。
彼の存在の死を思い返し、漸く涙を落とした彼。レイはそのまま、彼の唇に自分のそれを重ね、口内を蹂躙する。
あれほど抵抗のあったキスも、今は簡単に受け入れてくるアスランに気をよくして、
レイはゆっくりと舌を絡め、そして彼の官能を刺激してやった。
涙を落とし、声を上げる彼は、その年齢に見合わないほどに、幼い。
しばし、彼の身体を抱き締めてやる。
素直になった彼はなかなか可愛いものだなと、レイは初めて思った。
もちろん、彼を追い詰めることはやめないのだけれど。

「・・・アスラン。でも今は、私がいます。ですから、悲しまないで・・・」
「っ・・・・・・」

耳元に甘い言葉を吹き込み、そのままレイは彼の下肢を探った。
再び捕えたそれは、泣いたために多少萎えてしまっていたが、行為を再開するとすぐに熱を帯びてくる。
レイは両手で彼自身を挟み込み、扱くようにして刺激を与え始めた。
胸元にキスをする。朱に立ち上がったそれに舌を絡ませると、ひくりと彼の身体は震えたが、
抵抗の色はない。少年は彼を見上げ、くすりと笑った。
手を離し、両足の腿の裏を持ち上げる。思わせぶりに足を開かせると、アスランは微かに身を捩らせた。

「レイ・・・っ」

名を呼ばれて顔を覗き込むと、彼の腕が伸びてきて、少年の背を抱き締める。
レイは少し驚いたが、緩く笑みを浮かべると頬にキスを落としてやった。そのまま、耳元へと辿る。耳朶を甘噛みしてやる。

「大丈夫です。もう、貴方は一人ではない・・・」

ことごとく優しい声音に、アスランは諦めたように体の力を抜いた。
たとえかの存在でなくとも、この少年にかの存在の面影を感じてしまった。縋るものを求めていたことを思い知らされ、もはやアスランに取り繕う余裕などない。
ぶり返した熱を解放したくて、自分から腰を押し付けた。耳元でくすりと笑う気配がしたのも、
すべて、今のアスランには熱を高める以外の何物でもない。
もう、孤独は沢山だった。
友人たちと決裂してから、どのくらい経ったろう。苦しかった。1人、板ばさみになって苦しむのも、もう嫌だった。
例え一時でも、この苦しみから彼が引き戻してくれるのなら―――・・・

「レイっ・・・、お願いだ・・・」

ぐい、と足を押し広げられ、アスランのその部分がレイの目の前に晒される。
先ほど散々嬲っていたその部分は、触れるだけでそれを飲み込もうとしさえする。レイは青年の望みのままに、自身を取り出すとその部分に宛がった。
両足を肩に抱えあげ、ぐっと腰を押し付ける。途端、下肢に走る鋭い痛みに、アスランは眉を顰めた。
けれど、熱に浮かされ、その痛みと快楽に、自分のこの気持ちを紛らわせることができるなら。

「あっ・・・、あああ・・・!」
「アスラン・・・。イイですよ・・・」

求めるように吸い付いてくる彼の内部に、レイは息を乱した。
初めて味わう男の身体は新鮮で、アスランから見えないのをいいことに、口元に好色な笑みを浮かべる。
どのくらい前から後ろを明け渡していないのかは知らないが、あれほどキツかったアスランの奥が、今は強く収縮し、飲み込む相手に深い快感を与えてくる。
まさに男泣かせな身体の持ち主をこうして自分が組み伏せていることに、
レイは少しだけ優越感を覚えた。
あれほど他人を拒む青年だ、おそらくは数えるほどの相手しか関係をもったことなどないのだろう。
人付き合いも苦手で、頑なな人物なのだから。
(・・・だが)
レイは冷静な視線を彼に落としたまま考える。
そういう性格のほうが、こちらも扱いやすいというものだ。

「あ、あっ!!・・・んっ・・・」

次第に激しくなる律動に、アスランは荒い吐息を漏らしていた。
もはや解けきった唇に、その声音を抑える力はなく、部屋中に甘い声音と吐息が響いている。
だが、幸いここは個室の士官室で、隣部屋には誰もいない。
存分に彼の声を楽しめる、と、レイは口元に笑みを刻んだ。足を掴み、引き寄せるようにして何度も昂ぶりを彼の内部に滑らせる。
喪失を惜しむように追いすがる熱い襞の感触が、心地よかった。尻のあたりの柔らかな肉を強く掴むと、
アスランはより一層の嬌声をあげた。
もはや、犯されることに対しての抵抗感はないのだろう。
あれほど己を拒んでいた彼を落としたことに快感を覚える少年は、
そのまま彼の前に指先を絡めた。

「っ・・・や、触るなっ・・・!」
「イっていいですよ。私を受け入れてくださった、ご褒美に・・・」
「っあ―――!!」

先ほどまでずっと焦らし続けられてきたそれの先端を強く擦られ、
アスランの身体が一気に頂点に達した。
レイ自身を体内に受け入れたまま、互いの腹の間でその精をどくどくと吐き出してしまう。
不意打ちに唇を噛むアスランをそのままに、レイは飛び散った白濁を舌で丁寧に舐め取って行く。それを肌で感じて、再びアスランの頬が真っ赤に染まっていった。

「あ・・・、汚なっ・・・」
「あの人に慣らされた割に・・・初心なんですね。まぁ、身体は十分素晴らしいですが」
「っ!!」

羞恥を煽るように選ばれた言葉に、アスランは顔を背けた。
けれど、少年は許さなかった。顎を掴み、自分のほうに向かせる。目隠しを外され、唐突な眩しさに、咄嗟に手で瞳を覆ってしまった。
だが、そんなことに気を取られている暇など、アスランにはなく、
今度こそ容赦なく腰を叩きつけられる。達したばかりの身体には、過ぎた快楽は苦痛以外の何物でもなかった。

「っ、う・・・!あ、苦しっ・・・」

だが、もちろんレイがそれを許すはずもない。抵抗を紡ぐ彼の唇を、レイは激しく塞いだ。
再び、強引に高められた熱がアスランの身体を侵食していく。
苦痛は快楽に摩り替わり、何も考えられなくなる。ただ、頭の奥が朦朧として、つま先すら痺れそうになる。

「アスラン」

目を開ければ、目の前にレイが居た。
綺麗な、ブルーの瞳。あの人と同じ色に、アスランは引き込まれそうになる。
あの人ではない。それはわかっている、けれど―――。

「レイ・・・っ」
「今度は、一緒に達きましょう」

静かな声音と共に、下肢が激しく揺れた。
もう、アスランの身体は動くほどの力は残っていない。ただ、レイのいいように扱われるだけだ。
それでも、無意識に彼を引き寄せるように膝を立ててしまっていたことに、
アスランは激しく羞恥する。
けれど、それももう、すべて今更だった。
レイの手の中に収めされているアスラン自身も、すぐ目の前の絶頂を訴えている。

「あっ・・・!れ、ああっ・・・!!」
「アスラン・・・っ・・・!」

レイが一層強く下肢の奥を抉ったその瞬間、
アスランの目の奥が弾け飛んだ。
白くスパークした視界が、次の瞬間には再びブラックアウトを起こし、アスランはぐらりと身体をベッドに沈ませた。
内部にどくどくと注ぎ込まれるレイの熱をぼんやりと感じながら、
しかし身体を動かす気力などない。
ただ、レイが降らせるキスを受け止めるだけしか、もうなにもできなかった。

「アスラン・・・」

何度も何度も呼ぶその声音に、魅せられる。
再び唇を重ねられ、アスランはそのまま瞳を閉じた。










ぐったりとベッドに沈み込んだアスランをそのままに、レイは彼の部屋の通信回線を開いた。
極秘回線で繋がった先は、プラントにいる最高評議会議長、ギルバート・デュランダル。もちろん、言わずもがなのレイの後見人である。

「議長」
「ああ、どうだね?アスランは・・・」

レイは青年のほうに椅子を向けた。
無防備な顔を晒して、深い眠りについたアスランに、レイはくすりと笑った。
初めから、利用されていたことも知らずに。もちろん彼の力も必要だったが、彼を引き入れた一番の目的は、
目下最大の脅威である、アークエンジェルらの戦力の削ぎ落としにあったのだから。
もちろん、こうして生かしている以上、いつ寝返られるかなどわからない。
だからこそ、より不穏分子であるアスラン・ザラには、目をつけていた。つけさせていた、というのが本音だろう。
そして、先の戦闘で、
ついに彼はその迷いから、落とされた。"フリーダム"―――レイやギルバートにとって最大の脅威に。

「・・・まだ、様子を見ましょう。どうせ、彼には今機体がない。今後、彼への次の贈り物が完成するまで、まだ保留でよろしいかと」
「そうか。君の判断に任せるよ。それまで、彼の手綱も共に頼む」
「わかりました。」

ギルバートのその言葉に、レイは回線をオープンに切り替えた。
青年の眠るベッドサイドにゆっくりと歩む。彼を起こさないようにベッドサイドに腰かける。
ゆっくりと彼の髪を梳いてやると、さらさらとした感触が指を零れていった。今は瞼に隠れてしまって見えない翡翠の瞳と、青の髪はよく似合う。

「・・・楽しそうだね」
「・・・ええ」

レイは素直に頷くと、そのまま青年の頬を撫でた。
長く行為を続けたせいで、目を覚ますことのない彼。眠り姫のような端整な顔を眺めて、レイは口の端を持ち上げる。

「貴方のためならば、どんなことでも楽しいですよ」
「私は少々寂しいがね・・・。君がいないのは」
「まったく。貴方は貴方のしなければならないことがあるでしょう。私にも、無論あります」
「そうだね・・・。近々、やらねばならぬこともあるだろう。よろしく頼むよ」
「はい」

眠り続けるアスランが、本当にちっぽけな存在だと思った。
ギルバートとのやりとりを交わしながら、レイの意識は彼ではなく、珍しく他人に向いている。
別に、彼個人に興味があったわけではない。彼は自分にとってただの駒なのだから。
そして、裏切り者。かつての上官への恩も忘れ、彼の元から転属した途端、ザフトの大義に疑問を持ち、そして離反したのだから。
恨みがあるわけではない。ラウ・ル・クルーゼを討ったのはあくまであの"フリーダム"であって、
彼ではない。陣営で考えるならば、確かに彼にも思うところはあるのだが。

「貴方は、思い出してくれましたからね。・・・ラウを」

とりあえずは、それで許してやるか、と、
レイは、彼の顔にかかる前髪を払ってやったのだった。





end.





隊長隊長書いてると、ブリーチ思い出しますがな・・・




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Update:2005/09/21/MON by BLUE

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