小春日和。



書類が、全く片付かない。
すべて後がなくなったものばかりだというのに、これでは本日中に終わらせられるかも危うい。
溜まる一方の書類の山を前に、少年は深々とため息をついた。
それもこれもすべて、己の主に当たる、あの青年のせいなのだが、
だというのに、結局迷惑を被らされた他の部署に頭を下げるのは秘書である自分なのだから、全く困ったものだ。
はぁ、ともう一度ため息を吐くと、レイは顔を上げ、己が上司の方を見やった。

―――綺麗・・・

暖かな日差しの中、その柔らかな表情を一層緩ませ、瞳を閉じている彼。
小さく開かれた唇は、誘うように濡れた色を見せていて、今にも手を伸ばし、それに触れたいくらい。
その柔らかな感触を確かめて、そのまま吐息まで奪ってしまいたくなるほど。
いつ見ても、本当に、絵になると思う。本当に、美しい光景。
だが、現実はそう甘いものではない。
少年は苛立たしげにガタリ、と音を立てて席を立つと、先ほどまで見直していた書類を手に取り青年の眠る彼のデスクに向かった。
ここはあくまで、職場であり、執務室。
そんな日差しの下のお昼寝、などと悠長なことを容認していられる場面ではない。
バンっ!と机が叩かれ、山のような書類の一部がひらひらと床に舞い落ちた。

「っギル!!!起きて下さいっ!!」
「・・・んっ・・・レイ・・・、い・け・ずぅっvv」
「・・・・・・(怒)」


バキッ


広い室内に、少年の容赦ない殴打が響き渡った。
こちらも必死である。なにせ、非常識な上司のせいで他部署からねちねちと嫌味を言われるのは自分なのだ。
多少痛い目を見させてでも、今日こそ馬車馬のように働いてもらわねば。
肝心のギルバートは、漸く目が覚めたのか、少年に殴られた頭を痛そうに押さえている。

「っう―――・・・。レイ、どうしたんだい・・・火事とか天変地異とか・・・」
「・・・・・・・・・ええ、火事です。大火傷をしたくないのら、起きて仕事してください、ギル・・・」

あまりに的外れなことを寝惚け眼で言うギルバートに、
レイは諦め、有無を言わさず書類を突きつける。ぼーっとした顔でそれを見やる彼は、
まだ現状を理解していないようだ。

「―――ここ。サイン忘れてます。それと、お願いですから名前くらい間違えないでください・・・」
「あ・・・ああ、すまない、どれどれ」
「あ」
「あ」

その次の瞬間、デスクが黒の液体に染まった。
腕を伸ばしたギルバートの肘に、インク瓶が当たってしまったのだ。あまりの大惨事に、レイですら一瞬固まってしまう。
先ほど少年が持ってきた書類はもちろん零したインクのせいで台無し。山になって積まれていた書類にまで点々とインクが飛び散る始末。
ギルバートは漸く己のしたことの恐ろしさに気付いたのか、
ハッと血の気の引いた顔で少年を見上げた。

「・・・す、すまない・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・(怒)」

レイはもはや何も言う気がなくなったのか、ギルバートをひと睨みすると、部屋の隅のアメニティスペースへと足を運び、そそくさと片付けを始めた。被害をこれ以上広げぬよう瓶を元に戻し、被害にあった書類を片付け、ついでにギルバートの机の上の山も片付ける。これでは、目を通す前に汚してしまいそうだったからだ。
タオルを濡らし、机や床の汚れを綺麗に拭く。
レイの対処は至極的確で冷静であったが、その内心はギルバートへの怒りで煮えくり返っていた。
己の後ろめたさに、ギルバートもまた手伝おうとするのだが、その少年のオーラが怖い。申し訳なさそうに横に突っ立っていると、
漸く綺麗になった机に再び座らされ、ペンを握らされ、書類を目の前に出される。
さすがにもう、居眠りなどできないと実感したのか、
ギルバートは粛々として長文の報告書に目を通し始めた。

「レ、レイ・・・」
「・・・いいから、続けてください」

まったく、世話の焼ける・・・。
背中でそう訴えながら、少年はアメニティスペースに再び足を運ぶと、
数分後、2つマグカップを抱えて戻ってきた。

今度こそ腕や肘をぶつけて書類を汚さないように、ギルバートの机に置かれたそれは、
コーヒー。しかも、ブラック。
少年は、この上司が無類の紅茶好きで、逆にコーヒーが好きでないことを知っている。ついでに言えば、かなりの甘党で、甘いコーヒーならまだしもブラックなど飲めたものではない。
だというのに、レイは彼の目の前にそれを置き、自分は好んでブラックを目の前で飲んでいる。
これ見よがしのその態度が何を意味するのか、
さすがのギルバートも気付かないはずがないだろう。
ちらりと上目遣いに少年を見やると、コーヒーを片手にじろりと見下ろして、
次の書類を手渡してくる生真面目な顔の彼。
無表情だったが、先ほどからの怒りのオーラがひしひしと自分に向けて発されていることに、
ギルバートは悲しくなった。
いや、もちろん、自分が悪いことはわかっているのだが・・・。

「レイ・・・本当に、すまない・・・」
「わかってます。ですから、早く仕事を続けてください」
「・・・でも、怒ってるじゃないか・・・」
「・・・怒ってません」

到底信じられない少年の発言に、ますます落ち込むギルバートは、
しかし少年の言葉に逆らえるはずもなく、仕方なく書類に目を落とした。
少年の暗の非難を表しているコーヒーの香り。
寝起きで喉が渇いていたけれど、我侭など言えるはずもなくその苦いコーヒーを飲み込む。
本当に、どうしてこの子供はこんなものが美味しいのだろう。
そんなことを考えつつ、書類と格闘していると、
先ほどまで己の隣で、己を睨みながらもサポートを続けてくれていた彼が、ふと背を向けた。
それは、ただ単に、空になったカップを片付けてこようと思っただけだったのだが、
ギルバートにはそう思えなかった。
なにか、見捨てられたような。
ただでさえ怒られ、呆れられたとしか思えないようなことをしてしまったのだ。
もしかしたら、当分必要最小限のことしか言葉を交わしてもらえないかもしれない。それが青年にはひどく辛かった。
どうにかして、彼の怒りを鎮めたかった。どうすれば、いい?
私は―――・・・、

「っ・・・、なんですか」
「レイ・・・お願いだから、呆れないでくれ・・・」

左手首を掴まれ、そのまま背後から抱きついてくる青年に、
少年は眉を顰めた。
少年と彼は、それなりに深い間柄ではあるのだが、こんな時に何を、と少年は思うのだ。
まったく、先ほどのあの寝顔でさえ、自分は煽られる身体を持て余していたというのに、
どうしてこの大人は時と場合を考えてはくれないのだろう。
背に押し付けられる、確かな鼓動。そして熱。
もし今、ここが執務室でなくて、さらに書類の山の前などではなかったら。
きっと、自分はすぐさま体制を変え、背を伸ばして彼の唇を奪っていただろうに。
しかし、現実は。
レイはぎゅっと拳を握り締め、唇を噛み締めた。

「別に、呆れても、怒ってもいません。ただ、仕事を片付けて欲しいだけです」
「・・・でも、笑ってくれない・・・」
「・・・・・・」

今度は、泣き落としという手段をとり始めたのか、
ギルバートの肩が小刻みに震えていた。一層強くしがみ付かれ、少年はことの重大さに改めて滝汗を掻く。
普段めったに自分からこうして誘いをかけてこないだけに、この体制は自分的に苦しい。
いや、これもきっと誘いというわけではなく、無意識の態度なのだろうが・・・―――と思った矢先、
いきなりギルバートは、自分の前に跪いてきた。
さすがに少年は驚いた。まさか、土下座でもするつもりなのか―――・・・

「ちょ・・・!ギル、なにやって・・・っ」

少年は怒りも忘れ、驚いたように声を上げてしまった。
ギルバートがいきなり床に膝をつき、己の腰に腕を回したかと思うと、その顔を少年の下肢に埋めてきたのだ。
微かに頬を染め、己の中心に服ごしに唇で触れてくる彼に、
レイは不覚にもごくりと喉を鳴らしてしまう。そもそもこんなこと、普段どれほど頼んだってやってくれない彼なのだ。
それがこうして、自分から行為を強請るかのように口付けてくるなど、思っても見なかったレイである。

「ん・・・っレイ・・・」
「っ・・・ギル・・・・・・」

上目遣いで許しを請う彼に、少年は脱力した。
今にも泣きそうな瞳で自分を見上げたまま、ギルバートはその部分へのキスを続けている。それどころか、自ら罰を望んで受けようとでもするかのように、少年のボトムのファスナーを歯で開け始めた。
少年は唇を噛んだ。下肢に熱がこもるのを止められない。だが、こんな、仕事も溜まりに溜まったままで、しかもここは執務室。
このまま、彼の誘いに乗ってしまえば、きっと己の首を絞めることになるのは確実だ。
そうわかってはいるのだが、少し目を落とせば、少年自身を引っ張り出して、口一杯にそれを頬張るギルバートの姿。
瞳を伏せて、切なげに眉を顰めながらも執拗に奉仕を続ける彼を前にして、
どうして理性を保ってなどいられるだろう。

(・・・まったく・・・・・・)

どうしてこう、この人は。
レイは手を伸ばすと、青年の髪を掻き揚げるようにして耳の裏を撫でてやった。
そのまま、頭を掴んでぐっと強く引き寄せる。ギルバートの喉の奥に自身を付きたててやれば、くぐもった声音を零しながらもうっすらと笑みを浮かべる彼。
彼のペースに乗せられ、彼の望む行為を与えてやるのは癪だったが、
かといってこの状況をわざわざ振り切って、背を向けるのももったいない。
折角、素直になってくれているのだ。あまりお目見えできない、そんな彼を楽しむのも一興ではないか?

(昔から、「据え膳食わぬは男の恥」って言うしな)

レイはちらりと時計を見やると、
それから手を伸ばし、机に備え付けのドアのロックを確かめたのだった。










「・・・あ、もっ、無理っ・・・!」
「・・・っ・・・、ギル、力抜いて・・・」

裂けるような下肢の痛みに耐え切れず、ギルバートは思わず声を上げていた。
2人だけの室内とはいえ、外に洩れないという保証などないにもかかわらず、
青年はもはや憚ることなく甲高い声を上げている。
少々心配になり、少年は上身を起こして唇を重ね、その声音を奪う。絡む舌の感触に、更に感じてしまったのか、
少年自身を取り込む青年のそこが、ぎゅ、と締め付けを増した。

(・・・きつ・・・っ)

あまりのその締め付けに、少年は眉を寄せる。
自分から誘いをかけてくるほどに素直だったギルバートに調子に乗って騎乗位を強要したのはいいのだが、
もちろん自分から受け入れることに慣れていない彼が上手くリードできるはずもない。
自分の身体の熱すら持て余す彼が、促されるままに腰を落としてみても、
下肢を傷つけるだけで終わってしまう。緊張か不安か、いつも以上に身体の硬い彼に、
レイはゆっくりと彼の前を弄り始めた。びくん、と青年の身体が震える。快楽に耐えようと、一層身体が強張る。

「っ・・・や・・・あっ」
「怖がらないで。こっちに集中していいから」
「んっ・・・」

中途半端に少年を収めたその部分が不安定で、どうしてもギルバートの意識がそちらに向きそうになるのを、
レイは彼の腰を支えてやった。二人の腹の間で、青年のそれが猛々しく天を向いている。
痛みと不安に支配されながらも、それでも彼の内部の熱はおさまるところを知らずに、
少年が軽く先端を擦ってやるだけで簡単に先走りを吐き出させていた。
今にもイきたそうな、反り返ったギルバートのそれ。

「あ・・・、そこ、もっ・・・」
「いいよ、達って」
「あっ・・・!」

耳元で甘く囁かれ、許しを得たギルバートのそれが、ぐっと力を増す。
彼の手首を掴み、砲身に添えてやると、頬の朱をさらに色濃くさせながらも、それでも快感が欲しくて手が動いてしまう。
強請るように腰を揺らし、微かに当たる少年の腹に押し付けるような無意識の動きに、
少年は笑い、当人は淫らな己の身体に戸惑うばかりだった。
不意に、ぐっ、と下肢の奥の少年が、その更に奥を目指して強く突き上げられた。
痛みも忘れた身体に走る、指先まで痺れるような快感。

「っ・・・あ、ああっ・・・!!」

しがみ付いていた青年の首にさらに強く身体を寄せて、ギルバートは身体を震わせた。
一瞬後、どくどくと砲身から溢れてくる白濁。少年の胸元まで濡らすそれを吐き出す衝動に誘われるまま彼にすがり付いていると、耳元でくすりと笑われる。途端、カッと頭に血が上った。恥ずかしくて恥ずかしくて、穴があったら入りたいくらい。
だがその時、すっと手を取られ、自分の背後に触れさせられた。
少年と、自分が繋がっている証の、その部分。指先で確かめさせられ、ギルバートは一気に顔を赤くする。

「・・っき、きみは・・・っ」
「でも、入ったろう?」

くすくすと笑う目の前の少年に、ますます頬の熱を熱くするギルバートの後孔は、
信じられないくらいに大きく口を開き、少年の熱塊を深々と受け入れていた。体内に深く彼自身が収まっているという感覚と、それに伴う充足感。欲しかったものが満たされたような気分になってしまったギルバートは、
そんな己にまたもや羞恥を覚え、少年の肩に顔を埋めてしまった。

「っ・・・うぁ・・・っ」

軽く身体を捩るだけで、全身に走る奥が擦れるような刺激。
ギルバートは動けなかった。今ある快感を、受け止めるので精一杯で。

「あ・・・、動く、なっ・・・」
「動かなきゃ、達けないよ?ギル。ギルだって、ほら・・・」
「あ・・・!」

先ほど達したばかりだというのに、それは再び熱を帯びて堅く勃ち上がっている。それを確認して、
信じられない、といった風にギルバートは首を振った。
内部に少年を受け入れる快感に浮かされ、まともに思考がついていかない。
そのまま、少年は彼の腰を両手で掴み、一気に揺さぶり始める。

「あっ・・・!あ、あっ・・・!」
「ほら、捕まって」

不安定な身体の揺れに外れかかったギルバートの手を、
少年は自分の首に絡ませ、強くしがみ付かせた。そうして、再び彼の尻を撫でるように抱えて、
重力に逆らわず、己の楔に落とすように。
断続的な青年の嬌声は止まることを知らず、少年の耳に心地よく響く。
先ほど吐き出した精や先走りのおかげで次第に滑りがよくなるその結合部からは、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音。
生理的な涙が頬を伝うのを、レイは唇で吸い取ってやった。
耳元で囁いてやれば、ぐっと己を呑み込む襞が熱くなる。より一層、近くなる距離感。

「ギル・・・」
「あ、やっ・・・、レイっっ」
「いいよ・・・、ほら、もう、こんなだ」
「あっ」

先ほどまであれほどキツかったそこは、今では少年の指すらするりと飲み込んでしまう。
内部の襞の熱さを指先で感じて、少年は楽しげに笑った。激しい収縮を繰り返すそこは、さらに刺激を欲するかのように貪欲に少年自身を呑み込んでいた。
内部から受ける直接的な刺激と青年の淫らな姿がもたらす精神的な快楽に、
そろそろ少年も限界が近づいている。
濡れた手で撫でるように彼の内腿を開かせると、さらに深々と埋め込まれた男の雄を感じ、ギルバートが身を仰け反らせた。
一瞬の喪失感と、次の瞬間には全身を襲う満ち足りたような快楽に、意識のすべてが奪われていく。
少年からもたらされる快感が、己のすべてになるような感覚。
自ら求め、欲したそれが、己の望み通りに自分のものになる瞬間―――。

「や、レイ・・・もっ・・・!!」
「ああ、ギル・・・俺、も・・・っ」

息を乱した少年の声音が、青年の耳元で解放を促すと、
途端、ぶるりと戦慄くギルバートの身体。背に回された腕の力が込められるのを感じて、
少年は彼の楔で内部を強く抉る。
身体の奥の、一番感じる部分を激しく擦られ、その瞬間ギルバートは目の奥がスパークした気がした。

「っああ―――っ!!」

真っ白になった世界で、感じるのは少年と触れ合う箇所の熱と、
かれの鼓動と、そして吐息だけ。
痙攣するようにびくびくと身体をひくつかせて、青年は何度目かの精を互いの腕の中に放ってしまう。
だが、それと同時に、己の体内に熱い飛沫の存在を感じて、
ギルバートは満ち足りたように口元を緩ませた。
彼の情を受け入れた自分の身体が、どこか誇らしい気がして、嬉しくて。
瞳を閉じれば、触れ合う肌の感触と、そうしていまだ内部に収まったままの少年の熱。
うっとりと表情を緩ませて、ギルバートはそのまま意識を手放したのだった。










「・・・で、結局定時になっても終わらせられなかったわけか」
「ごめん・・・」

やってきたクルーゼに、レイは申し訳なさそうに俯いた。
いまだ、ソファに放置されたままのギルバートは気持ち良さそうに眠りの世界を彷徨っていて、
あまりの書類の多さに辟易した少年が助っ人として呼んだのが彼だったのだが、
やはりちくちくと嫌味を言われ、レイはムッと唇を尖らせた。

「そもそも、ギルが悪いんだよ。こんなに仕事を溜め込んだあげく、締め切り当日だというのに眠りこけるわ、それに怒れば今度は泣き落とし。どうしてあんなに我侭なんだか・・・」
「お前が甘やかすからだろう」
「・・・う」

口を動かしていても、淡々とギルバートの代わりに書類をこなしてくれるクルーゼはありがたいのだが、
先ほどまであんな行為をしていただけに、まともに面と向かって反論できない。
居眠りをしているギルバートもギルバートだが、
その誘いに乗って彼を貪ってしまった自分も自分だったから、尚更である。
気付けば、日も傾き、そろそろ仕事も上がりか、という時間。
当然締め切りに間に合わなかった書類も山のようで、きっと明日、ねちねちと他部署に文句を言われるハメになるのだろう。
今、こうして徹夜覚悟で仕事をしているが、果たしてどこまで終わるのやら。
いまだ自分の身長ほどもある山を見やり、レイは深々とため息をついた。

「・・・で、あいつはいつまで寝てるんだ」
「・・・・・・だって、起こしたらまた邪魔されるだけだし」
「・・・・・・・・・」

少年はただ視線を泳がせるだけで、動こうとはしなかった。
だが、大量の書類を片付ける手伝いをさせられているクルーゼとしては、視界にあるなんとも平和な寝顔がとにかく気に入らなかったらしい。手を止め、つかつかとギルバートの元に歩み寄る。

「おい、起きろ。お前のせいで、私がどれほど迷惑を被っているか・・・」
「・・・ん・・・」
「!?」

ガシリ、と腕を掴まれ、クルーゼは顔を歪めた。
相変らず、ギルバートは表情を緩めたままで、しかし己の腕を掴む腕は存外に強い。
クルーゼは怒鳴ろうと空気を吸った。だが、その時、

「・・・ラ、ウ、・・・の、い・じ・わ・るvv」
「・・・・・・・・・・・・」


ドガッ





「・・・だから、触らぬ神に祟りなし、なんだって」

書類の影に隠れてこっそり眺めながら、レイは口の中で呟いた。





end.




Update:2005/11/10/SAT by BLUE

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