たかが愛、されど愛。vol.1



久々に取れた休暇はひどく天気が良かった。

午前上がりの執務室の窓から差し込んでくる、さんさんとした日差し。
実はとある作戦の準備のため地球上にあるザフト基地にいたクルーゼは、
2階にある自室から窓の外を見やり、わくわくと胸を高鳴らせた。
今日は、地球軍に所属している恋人との久々の逢瀬の日。
最近忙しかっただけに、
この休暇はひどく嬉しい。今すぐ彼の元に飛んでいってやりたいくらい。
ああ、この基地のハリヤーを強奪してしまえば簡単にヤツの所にいけるのに、などと
よこしまなことを考えつつ、
クルーゼは普段着ることのない黒いコートを羽織った。

準備は万端。
大体休暇をとるコーディネイターたちはプラントの家族の元に帰るようだが、
とりあえず自分はシャトルではなくジェット機でアメリカ大陸行きだ。
コーディネイターを受け入れている場所でもないのでそこはハッキングの実力の見せ所、
偽造パスポート・偽造IDカードに至るまで、クルーゼにとってはセキュリティを潜り抜けることなど朝飯前。
いくら秋とはいえ暑苦しそうな黒コートを着、これまた黒い帽子を目深に被り。
フラガに言わせればさも怪しげな格好で、クルーゼは愛する者の元へ今日も行く。
内心、私をここまで夢中にさせるなんて罪なオトコだ、とか思いつつ、
口元ににやけた笑みを浮かべながらクルーゼは起動しっぱなしのモニタを消そうと手を伸ばした。





ピピッ





「ん・・・なんだ・・・?」

明らかなメール着信音に、クルーゼは顔を顰めた。
今頃緊急招集なんてアホらしいことあってたまるか。きれいさっぱり無視してやる。
とかなんとか思いつつ、気になってみてみると送信者は愛しい男。
普段から素直じゃない彼は1ヶ月も逢ってないくせにひとつも連絡を寄越さないこともよくあり、
そのため珍しくメールをくれたことにクルーゼはまたもや口元を綻ばせた。
いつもの近寄りがたい雰囲気はどこへやら、である。
・・・あんな毅然としたクルーゼにこうも締まりのない顔をさせるフラガは、
やはりある意味罪なオトコかもしれない。

だが、クルーゼの有頂天な気分もつかの間。

「・・・・・・は?!」

またもやクルーゼの口から出たとは思えない発言が部屋に響いた。
だが幸い部屋には他に誰もいない。誰かに聞かれることもないだろう。
そんなことを気にするより、クルーゼはモニタに向かったままあんぐりと口を開けた。
なぜなら、ちょっとクルーゼも予想のつかないことが書かれていたからである。

「・・・・・・・・・・・・」

クルーゼを絶句させた恐るべきフラガのメールは、しかしたった一言だけの簡素なもの。

『わりぃ、今回はパスな』

・・・わりぃ、とか冒頭で言ってるものの、全く悪びれた様子がないのが見え見えである。
それだけに、クルーゼは固まってしまった。
呆れればいいんだか怒ればいいんだかわからない。いや、多分両方だ。
なんで今、このときにドタキャンされなきゃいかんのだ。すっごいムカツク。(オイ)
結構な金をかけて海を渡るのだ、
この準備万端な状況でキャンセられてたまるか。
ひとしきり呆れたクルーゼは、ふつふつと怒りが湧き上がってくるのを感じていた。

・・・何が理由だ。
クルーゼは目の色を変えて地球軍のコンピュータに侵入した。
だが、もちろんフラガのここ最近の予定はどう見ても入っていなかった。
仕事でないことは明白だ。
ならば、友人付き合いか、女か・・・女?!断じて許せん!!
勝手に邪推して怒りに燃える男がここに1人。
クルーゼはバチッとモニタを消すと、すっくと立ち上がった。
・・・ストーカーだ。ストーカーしてやる。
クルーゼはそう決心すると、大股で部屋を出、用意させていた車に向かったのだった。

・・・フラガ、危うし。






続く。








・・・どうでもいいけど、タイトルわけわからん・・・ )



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Update:2004/08/26/THU by BLUE

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